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第8話 アナタハ カミヲ シンジマスカ?

 皆様、ごきげんよう。


 先日、右肘に痛みが感じていたので接骨院に行ったところ、第5頚椎がずれていることに起因する神経痛との診断を受けた。

 さらに新型コロナに感染し、後遺症が出ている。

 後遺症の治療のために飲んだ薬で胃腸がやられ、トイレと往復する毎日を送っている。

 なんかよく分からないけど、どんどん状況が悪くなっている気がするのだが。

 もしかして神様に嫌われているのだろうか。


 などと、無理やり導入部分を書いてみたのだが、今回は神について考えてみようと思う。

 小説、特にファンタジー物では神の存在は必須と言えるだろう。



 そう言えば、我々日本人は外国人から見ると不思議な宗教観をしているように見えるらしい。

 お正月は神社に初詣をし、お彼岸・お盆は寺の管理下にある墓へ行く。

 そうかと思えば、ハロウィンで仮装し、クリスマスはケーキとチキンで盛り上がる。


 確かに、一体何を信じているのかよく分からない。

 唯一神を持つ一神教の信者から見るとそう見えてしまうのだろうが、日本の神道は多神教なので他の宗教に寛大だとも言われている。

 八百万の神がいるんだから、1つや2つ増えたところで大して変わらないじゃないかという感じなのだろう。


 さらに、他の宗教と大きく違うところは教義がないことだ。

 あれをしなさい、これをしてはダメといった、宗教上の制約がほぼ存在しない。


 神社には氏神制度というのがあり、大体どの土地にも担当の神が決まっている。

 なんと神社には入信の必要がなく、住む人は誰であっても自動的に守ってもらえるのだ。

 これは画期的な仕組みであり、参拝も必須ではないし、他宗教でも構わないという大盤振る舞いにも程がある優しさを見せるのだ。


 仏教には宗派ごとに教義が存在するものの、通常は宗教関係者に対してであり、信者は教義の内容をよく知らないことも多い。

 私の家は曹洞宗(禅宗)だが、禅を組むことを求められたことは一度もないし、法事の際には椅子が用意されている。

 過去には戦国時代の一向宗(浄土真宗)のように教義が危険視されたこともあったが、江戸時代に寺請制度が出来てからは、信者の獲得に力を入れる必要がなくなったことが影響していると思われる。



 ということで、我々日本人は信じるべき神の姿を見失いがちなのだ。

 そこで、私は皆様に素晴らしい宗教を紹介してみることにしたのだ。


 それは『空飛ぶスパゲッティ・モンスター教』という。


 まず教義を解説しよう。


 ・宇宙は空飛ぶスパゲッティ・モンスターによって創造された。これは空飛ぶスパゲッティ・モンスターが大酒を飲んだ後のことであった。

 ・最初に創造したものは、山、木々、小人一人だった。

 ・古代の人の身長が低いのはスパゲッティ・モンスターの触手によって頭を押さえられていたからであり、現代人の背が高いのは人口増加によりスパゲッティ・モンスターの触手の数が足りなくなったからである。

 ・信者は海賊の衣装を着る。スパゲッティ・モンスター教の教義では海賊は『(スパゲッティ・モンスターに)選ばれし民』で『人類の祖先』であり、教義の中で重要な位置を占めている。

 ・男性の乳首は痕跡器官ではなく、海賊が気温や風向きを測る簡易気象台の役割に必要だったから存在する。

 ・天国にはストリッパー工場とビール火山が約束されている。また、女性やゲイの信者のための男性ストリッパーも存在している。

 ・地獄はビールの炭酸が抜けていてストリッパーが性病持ちであるという点以外、天国と同じである。この地獄はラスベガスと同じである。

 ・学校教育では進化論のみならずスパゲッティ・モンスター創造説も教えるべきだ。

 ・教祖や教団にお布施をする代わりに、そのお金は『貧困をなくす』、『病気を治す』、『平和に生きて、燃えるように愛して、電話の通話料を下げる』ことに使う。

 ・信者は『善なるもの全てを支持し、善ならざるもの全てに反対』する。

 ・祈るとき、『アーメン』の代わりに『ラーメン』と言う。


 いや、ラーメンなのかい!

 スパゲッティはどこに行った?


 どうやらスパゲッティ・モンスターではあるのだが、麺類なら何でもいいらしい。

 洗礼名も勝手に名乗っていいらしいのだが、やはり麺類に関係していれば何でも良いとのこと。

 きっと『二郎』とか『天下一品』でも許されるんじゃないだろうか。


 ちなみに天国ではビールだけでなく、キンキンに冷えたドリンクバーもあるそうなので、私のような下戸でコーラ好きの人でも楽しめそうだ。

 コーラ飲み放題なんて、最高な天国じゃないか!

 これは入信するしか!



 続いてはこの素晴らしい宗教が誕生した経緯を解説していく。


 この宗教が生まれたのはアメリカだ。

 アメリカといえばキリスト教の国であり、大統領はキリスト教の聖書に手を置き、宣誓を行うのだ。

 もちろん多民族国家なので他の宗教も認められてはいるのだが、やはりキリスト教が強い国である。


 キリスト教などの強力な唯一神が存在する宗教では、神は創造神でもあることが多い。

 自然や星空、数学や物理などの法則など、この世に存在するものは計算されたように見えるほどの美しさを持っており、そんなことができるのは神が世界を作ったからだという考えに至ったためだ。

 そのため、アメリカでは半数近くが進化論ではなく創造論を信じているし、人工妊娠中絶や同性愛に拒否反応を示す人も多い。


 だが、現代は科学の発展が著しい。

 さすがに進化論を否定するのは無理がある。

 教科書でも人類は神が作ったと書くわけにもいかず、進化論が教えられそうになったのだ。

 これにはキリスト教徒たちも黙っておらず、様々な妨害を行った。

 ついには学校で進化論を教えた教師が逮捕される事態にまで発展してしまった。

 日本人から見れば意味不明なのだが、彼らにとっては死活問題なのだ。


 そんな泥沼状態の中、旗色の悪いキリスト教徒は新たな概念を生み出した。

 それが『インテリジェント・デザイン説』(ID説)である。

 これは、『一般的な進化論を認めつつも、DNAなど複雑な生命の構造は偶然出来上がったと考えるのは無理がある。 きっと人知を超えた高度な知性を持つ何かが関与したはずだ』というものだ。

 要するに『神』を『高度な知性』に置き換えただけなのだが、『高度な知性』と定義することで地球外生命体も含むことが出来てしまう訳だ。


 さらにキリスト教徒は教育委員会に息の掛かった者を送り込み、まんまとID説を浸透させることに成功する。

 この流れにジョージ・ブッシュ大統領が支持を表明したものだから、アメリカの政教分離を脅かす大問題となってしまったのだ。


 この問題に危機感を持った大学生ボビー・ヘンダーソンは『ID説が認められるのであれば、空飛ぶスパゲッティ・モンスターが世界を創造したとする説も同等に扱うべきだ』と主張。

 スパモン様が認められないのであれば法的手段を取ると教育委員会に警告をしたことで、大ブームとなる。

 その結果、教育委員会からキリスト教徒のスパイが追放され、教育の場では進化論のみを扱うこととなったのだ。

 すごいぞ、スパモン様!



 と、このような経緯で生み出された我らのスパモン様だが、当初の思惑を超えて正式な宗教になりつつある。

 ニュージーランドやオランダなどでは正式な宗教として認められているし、日本でも支部が存在する。

 なお、スパモン教は30日間のお試し期間が存在し、お気に召さなければクリーングオフ(元の神様の下へお返しする)ことも可能なのだ。

 なんとも慈愛に満ちているではないか。


 ということで、今日から私はスパモン教信者として生きていこうと思う。

 洗礼名は『チャルメラ♪』としたい。


 ラーメン!

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