8話.兄と自分
「この帝王国は狙われすぎだ。
妾が討ち滅ぼしてやろうではないか」
士郎と低い声帯の間に割って入る…
勇者リーベル・グラニフラの姿がそこにあった。
「お前はぁ、勇者リーベルだなぁ?」
「そうだが。お前は魔王だよな」
「ご名答だっこと。俺はぁ、
魔王、ベルクラ・デールバード勇者様よぉ!?
俺っに勝ってる自信の程わぁ!?」
「妾は負けたことなどない」
「その歴史も今日で終いだっよ!」
魔王ベルクラが手を正面に出し、炎を、リーベルに向けて、放つ。
リーベルはその炎を極太い剣で抑えてから
真っ二つにし、炎が消える。
「さっすが、勇者っ様だヨォ!」
ベルクラは楽しそうにゲラゲラと笑う。
そして、手を上に上げ、その手の平から
六つの炎が円を作った。
その円をリーベルに向け放つ。
一つ一つの炎がリーベルを襲う。
そしてリーベルは一気に向かってくる六つの炎を
剣で討ち払ったり、斬ったり、壁に押し潰したりして
自分の身を守る。
そして、足早に、ベルクラに向かい、剣でベルクラに斬りかかろうとした。
「無意味っ!」
ベルクラが叫んだ途端、リーベルの足元に炎が浮かび上がる。リーベルのふくらはぎは、炎に燃える…でもなく
赤く赤く、皮膚をなくした。
「うっ…はっ」
痛みに喘ぐことしかできないリーベル。
動きが鈍った。
立てなくなった。足が動かない。
「立て、勇者リーベル」
その声が聞こえた。頭に直接聞こえるように。
それは死んだ兄の声だった。
10個上の兄は皆認める英雄だった。
リーベルが幼い時、魔人混合真っ只中だった。
人族は、勇者、英雄、冒険者を集め戦った。
リーベルの前に立つ、魔王と思わしき男が
リーベルを殺そうとする。
だが、すでに満身創痍の兄がリーベルを守った。
だが、その途端兄は灰となり散った。
当時の最強の勇者、ウララ・ザリ・チュラニカ に守られ、
かなりな傷を負ったながらも、リーベルは命を拾った。
兄は助からなかったが―
あぁ、思い出した。あいつだ。
兄を殺し、リーベルを殺しかけたあの魔王だ。
あれが今、自分の前に立っている。
なのに何故自分は立たない。痛い?そんな弱々しいことで?自分に笑えてきた。復讐は?しないのか?
するに決まってる。兄のことも全部。
自問自答を繰り返して、リーベルは立ち上がる。
「勇者リーベル。お前は…強くなったな」
頭の中に兄の声が聞こえる。
そしてリーベルは口角を上げた。
「何っ!?何故笑う!?」
ベルクラは目を見開く。
「復讐ね。痛めつけて、徐々に徐々に殺してやるよ」
リーベルはベルクラに剣を向ける。
「期待してるよ。勇者リーベル」
そして両者の足音が鳴り響く…
―戦闘第二幕の幕開けが鳴り響く
リーベルの過去編でした!
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