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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺バ美肉V、異世界でスパチャ生活をする。

作者: 吉都 五日


「どっせーい!」

「ギギー!」


何とも言えない掛け声とともに刀を振り下ろす。

私の一撃は見事にゴブリンを倒した。


「ふっ。なかなかの強敵であったが我が一撃の前には…」

『双葉ー!後ろ後ろ!』

『後ろ来てるで!』

「なぬ!おわっと!」


後方から振り下ろされる棍棒。

だが忠告を見ていた私はヒラリと回避する。

棍棒持ちか。さっきの素手ゴブよりは手ごわいとみえる。

私の敵ではないとはいえ、油断は禁物で…


『いまシェーのポーズだった』

『ほんまや。懐かしい』

『時代を感じさせるなあ』

『中の人の年齢もな』

「そこ、うっさい!偶々変なポーズになっただけだから!」


煩く流れる外野の声(ログ)を無視。

いや、無視出来ては居ないが。


「グギャギャギャ!」

「うおい!さっきから危ない!」


よそ見をする私に襲い掛かるゴブリン。

ポーズに注意しながらジャンプして避ける。


「だがこの刀の錆に…いや、相性悪いな。持ち替えて…とーりゃあっ!」


棍棒と刀は相性がそんなに良くない。

鍔迫り合いをしようものならへし折れかねない。

だからリーチの長い薙刀を取り出し、一閃するもガンッ!という音とともに棍棒に防がれる。

ニヤリとする棍棒ゴブ。だが!


「あまーい!」


薙刀の柄の部分を突き出し、腹に刺突。


「ゴブッ!」

「とどめ!」


腹を抑えてうずくまった姿勢は相手に首を差し出す姿勢と同じだ。

さっくり止めを刺して終わりである。


『おつかれー』

『双葉ちゃん乙 /1000円』

『今日の戦闘も楽しかった /500円』

「双葉らぶさん、巳之助さんスパチャありがとうございます。みんなもありがと~」


私の右上に浮かぶタブレット上のナニカ、天padと呼ばれる世界と繋がるipad様のナニカに私の生放送へのコメントが溢れ出す。みんな今の戦いが良かったとか、可愛かったとか。

そういう類のコメントである。



私は、俺はいつの間にやら異世界に来て美少女になった。

所謂ヴァーチャル美少女受肉、バ美肉をやらかしてしまったのだ。

勿論、いきなり異世界に放り出されてもさっくり死んでしまう。もしくは美少女なので死ぬより辛い目に合うかもしれない。


そこは色々フォローされているのだが…

ただしその恩恵?に反して問題も多い。


私は戦っている所も遊んでいる所も勿論、寝ている所も風呂も飯もトイレも…すべて生放送されてしまうのだ。全世界に向けて。




<良いのですか?みんな視てますよ>

「いいんだよ!視たけりゃ視ろってんだバーロー!」


俺はヤケクソ混じりに一杯飲み、宿の風呂に入ってトイレへ。

風呂もトイレも絶賛生中継されているがどうしようもない。ので気にしてはいけない。


チラッとログを見ると

『豪快な双葉ちゃんモエ~』

『エrrrッロwww美少女の入浴wwwwwエッッッ!』

『ありがとうございますありがとうございます。今夜も捗ります /1000円』

『某としては先ほどの排便の方が』

『豪快な音だったね /2000円』

「もう好きにしろってんだチクショー!」


どうしてこんな事になってしまったのか。

どうして…





日本時代の私、いや俺は営業職だった。

それが上司に美少女Vtuberの中身をやれと仰せつかり。

嫌だと言った物の強引に押し通され…最後には成績次第での給料アップを提示されて折れた。


ヤルとなったら本気でやる。

もともとそういう性格であったし、おちんぎんがアップアップするとなればそりゃやる気に決まっている。

最初は『中身男かよ』『オッサンwwwコミュ抜けるわ』『くっさ。ここオッサンくっさ!』なーんて言われてたが次第に視聴者も増え。

キャラデザも和風の美少女だったこともあり、収益化できるようになれば後は人が人を呼ぶ好循環に入った。

いつの間にやら同期の中身♀と大差ない、あるいはそれを凌ぐほどの視聴者(ファン)がついた。


そして、突然襲い来る天の声。


「結果はいい感じだけど、この企画終了ね」

その一言で俺の美少女Vtuber人生は終わりを告げることになった。


やってられっかよ。サラリーマンなんてほんとクソだ。

上から言われてイヤイヤやって、自分の努力で勝ち取った成果も一言で終わり。

やってられっかバーーーーカ!


なーんて事を最後の生放送で飲みながらぶっちゃけた。

そうすると気が付いたら俺は異世界に来ていた。


しかも演じていた美少女Vtuber皮の中に入ったままで。

という訳で見た目は美少女、中身はオッサンの迷探偵が爆誕してしまったのだ。


やってられっかチクショー。バーロイ!ってなモンである。

そして異世界で私は日々雑魚を狩り、強敵からは逃げ回り。日銭を稼いで生きている。

生きる術の殆どは日本から送られてくるスーパーチャット、略してスパチャによって成り立っている。


スパチャの事をご存じない人に一応説明しておくと、スパチャとは…ファンからの貢物だ。

推しを育成するための供物である。

スパチャにより、推しはさらに強化され、運営は潤って新しいイベントやグラフィックを産み出す資金になるのだ。

そうして推しはさらに強化され、パーフェクト推しダムになる。

あるいは足まで生えたパーフェクト推しングかもしれない。



なーんてくだらない事を放送でボヤく。するとまたスパチャ。くぅ~たまんねえ~!


<そろそろ新しい冒険に出かけられては如何ですか>

「だって痛いの嫌なんだもん」

<神も新しい双葉ちゃんの活躍が見たいと仰られています>

「え~?どうしよっかなあ…?」


先ほどから俺に話しかけてくるのは神の下僕であり俺の付き人である『ラミリス』だ。

天使だと言っているが見た目は羽の生えた妖精のような感じである。天使の輪は無い。


<これなんてどうですか?ドラゴン退治ですって>

「前に行って黒焦げにされた奴じゃん」

『火耐性とか熱耐性とか取っていけば良いではありませんか』

『鱗を貫けるような攻撃スキルもな。前の時サッパリだったじゃん』


前回、2か月くらい前にギルドで張り出されたドラゴン討伐の依頼。

アレを見て物見遊山で出かけて行った。どうせ見るだけだし大丈夫だろうと。

ところがアレよアレよという間に戦いになり。

そして俺は黒こげにされた。


じゃあ何で生きてるのかというとスパチャを利用して買った復活権のおかげだ。

残機1あるって分かって無きゃドラゴンに何か挑めるわけがねえよ。


「そうだね。攻撃は通らず、ブレスで黒こげにされたね。あの痛み忘れてないよ…」

<神は忘れることが出来るから人は生きていける。と申されております>

「カ○ル君かよ」


どこかで聞いたようなセリフである。

TV版で最後に首がもげたイケメン美少年の台詞だと思う。

俺としては彼が出てくると大当たり確定なので大好きなわけだが。


『エヴ○じゃねえか』

『ゲンド〇も似たようなセリフ言ってるぞ』

『TV版だ。神=ジジイ確定』

「ちょっと待って。俺もそれ知ってんだけど」

『あっ(察し』

『あーあ。』

『大丈夫。こいつ等もどうせネタ元は知ってる。何なら現役で見てる』

『まあ視てた』

『オッサンばっかりじゃねえか』


チャット欄に色んな意味での悲哀が入り混じる。

だがそれはいい。

ほどよく酔っ払ってきた俺は…「もう寝まーっす」とだけ言い残して寝た。


勿論の事だが、着替えも寝ている姿も生放送である。

寝てるところなんて大して見る物ないと思うが…ラミリスに聞くと毎晩一定の視聴者は居るらしい。

キモッと言えばいいかなんと言えば良いか。





翌日、冒険者ギルドに行くと全体が可笑しな雰囲気だ。

私はいつものように大して危なくない依頼を受けて、報酬とスパチャでちまちま生活しなきゃとしか思っていなかったのだが。


「おはよー。今日は何かそわそわしてるね?どうしたの?」

「双葉さんこんにちわ。それがですね、炎龍(レッドドラゴン)が現れたとの知らせがありまして」

「ほー?」

「以前にあそこに貼ってあった依頼あるでしょう?あのドラゴンなのですが、誰かが真に受けて攻撃したようで」

「…ほう」

「その際に温めていた卵が割れたとの事で…卵は二つあって、一つが孵ったのでもう一つ分の報復に来ると通達があったのです。街を滅ぼすから覚悟しろと」

「通達?誰から?」

「勿論ドラゴンからです」


…つまりこれはアレか。

俺がちょっかい出したせいで…街が滅ぶ?ってこと??


<端的に言えばそういう事です>

『あちゃー』

『やっちゃったね。どうしよっか…』

「ちょ、ちょとまって!?」

「はい?」

「いや。ゴホン、今日はゴブリン倒してる場合じゃなさそうだ。では私はこれで」

「はい、避難をされるならお早めに」

「ありがと。カティアさんも早めに逃げてね」

「はい。すでに準備は済んでおります」


受付嬢のカティアさんはいい笑顔で避難用の鞄を見せてくれた。ギリギリまで残って後で避難するんだって。私も宿に帰って放ってある道具を片付ける。


<戦わないのですか>

「三十六計逃げるに如かず、だよ!」

<貴方の行いが招いた結果ですよ>

「うぐ…でも勝てないでしょ!だから尻尾撒いて逃げるの」

<神はガッカリしたと申されております>

「がっかりでも何でもすりゃいいじゃん。残機もないし死ににいくような真似出来ないよ!」


そういうと空はどんより曇り、しとしとと雨が降り始めた。


「そんなにガッカリしなくても…」

<神はこの世の希望を失ったと申されております。もう援助打ち切ろっかなーと申されております。>


『あれ?映らなくなった』

『通信障害か?そんなの有り得るのか?』

『神~映らねえぞ~?まさか自分だけ楽しんでるのかー?』

『あれ?スパチャも出来ない』


ログは流れているが他の機能は切断されているようだ。

スパチャもないとなると、これ以上俺がノンビリ生きるのも…戦うのも厳しいかもしれん


「…マジかよ」

<逃げるなら早く逃げるべきだと考えます>

「あー…分かったよ。逃げてもどうせ俺を追ってくるんだろ?」

<是。ドラゴンは双葉さんの匂いを覚えています。この地上のどこに逃げても追いかけてくるでしょう>

「分かったよ!ヤりゃいいんだろ()りゃあ。だから神様、あんたも応援してくれよ!それと放送見てるみんな!俺はドラゴンを止める、いや!倒す!そのためにも支援を頼むぞ!」


その瞬間、空は晴れ渡り、奇麗な空気が街に満ちた。

ドラゴンに攻められるという情報で混乱していた街が、一気に静まり返り。冷静さを取り戻したようだ。


「…まずはレベルアップだ。ドラゴンのレベルは?」

<およそ2500程です>

「アホかっつーの…今あるカネを全部レベルにツッパしたら?」

<1000程です>

「半分以下かよ」

『だめだ。\(^o^)/オワタ』

『耐性で勝負するしかないんじゃね?』

『ここは金圧で勝負だろ /10000』

「おほっ。ささはるさんナイススパです。こんな時に助かる!」

『負けるか /20000』

『ヌーン /30000』

『札束ビンタじゃああ /100000』

「わたヌキさんありっす。双葉らぶさんアリっす!1919攻撃さん?ありがとうございます!!!つーか最後の千九百十九?だよな!?そうだと言えよ!」



まあ若干おかしなネーミングだが深く気にしてはいけない。


スパチャや広告収入で得たお金はそのままこちらのお金に換金して使える。そして、日本から欲しい物を手に入れたりも出来る。

さらには俺を回復させたり復活させたり…レベルアップやスキルを取得することにも使えるのだ!


「よし…まずは熱耐性、火属性耐性をとろう。そして…」




俺の思う最強のビルドが完成した。

と言っても対炎龍用ビルドだ。


恐ろしいブレス対策に火、熱耐性。

そして爪や尻尾、咬み付き攻撃対策に斬撃耐性と衝撃耐性。

そして、基本攻撃力アップに急所攻撃。

万一のために緊急復活権を取得。これで準備万端だ。


「いくぞおおおお!」


俺はレベルアップした身体をフルに使い、避難民がごった返す道ではなく屋根の上を通って皆と反対方向に進んだ。

そして門の外で待つこと数分。奴が現れた。


巨大な、そして深紅に輝く身体。

力強い羽ばたきはそれだけで圧を発する。はっきり言って飛ばされそうだ。

しまった。風圧耐性が必要だったな。

そしてドラゴンは俺を見ると大きな声で吼えた


「ゴンギャアアアア!!!!」

「うわ!うっさ!」


耳栓も必要だったか。

ドスン!と眼前に降り立つ。

無造作に爪を振るってくるが、さすがにそれはかわす。

そして殴る。課金で狩った武器で。

課金リストの中で攻撃力の最も高かった『トールハンマー』をドタマに振り下ろそうと思ったが届かないので前足のつま先に。


殴るとドゴオオオン!という音とともに雷が落ちる。

ドラゴンはめっちゃ痛そうだが俺は何ともない。やべえクソチート武器だこれ。

さすがはアラブの石油王がぶっこんでくれた課金で買っただけのことある。パネエ武器だわ。


「石油王ありがとおおお!」

『イイノヨ。ガンバレ』

「おうよ!いくぜえ!」


見ろ、ドラゴンよ。これが真の勇者の持つパワー。

気?霊圧?呪力?フッ…それらよりはるかに上の力。

課金力だ!


ふはははは!

ザコとは違うのだよ!ザコ(前回の私)とは!


ぼこぼこと殴っているとドラゴンが素早く後方にジャンプで下がり、大きく胸を震わせながらのけぞり…


「ブシャアアア!」


やべえ、ブレスだ。

だが熱、火耐性MAXの私には炎龍のブレスなど…やっぱり痛い。


溶ける装備、ブスブスと焦げる肌に髪。

でも前回のような為す術もなかった状態ではない。

まだまだ!


「ぬおりゃああ!」


ブレスの圧にさえ負けなければ。

全力でブレスを吐いている最中のドラゴンは弱点丸出しである。

ガン開きでゴルシ風に剥いた白目。パカッと開けた口。

どちらも狙い放題だ。


「どっせーい!」


放ち続けられるブレスの海を掻き分け、顔の真ん前へ。

課金で買ったアイテムストレージスキルの中から槍を2本取り出し、両目に突き刺す。


「ギャオオオオン!」

「これでおわりじゃああ!」


両手で目を覆い、大きく口を開けて仰け反る。

大きく開いた口腔内へ撃ち込むの視聴者お勧めだったはロマン砲。


<もう少し上です>

「おう!くらえ!パイイイル!バンカアアアア!」


右腕が捥げるかと思うような衝撃。


パイルバンカーから射出された巨大な槍はドラゴンの口から上に向かって入り、延髄を突き破った。

ブレスは中断され、ズズン…と大きな音を立てて崩れ落ちるドラゴン。


「ふはは!正義は勝つのだ!」

<素晴らしい勝利でした。神もお悦びであられます>

『双葉ちゃんぱない』

『かっこよかった /1000』

『パネエわマジで /1000』

『カッコヨカッタデス /50000』

「風間さん、みよドヤさんあざーっす。石油王たくさんありがと!」


ドラゴンと戦っている間はコメント欄なんて見る暇がなかったが、みんなめっちゃ応援してくれていたようだ。そして終わってからはスパチャの嵐だ。げへへ、たまらんのう。



こうして私は龍殺しのSランク冒険者になった。


「どっせーい!」

「グギャギャギャ!」


だが倒しているのはやはりゴブリンだ。


『なんかゴブリン飽きた』

『可愛いけど同じ事ばっかりだとね』

『もっと危険な事にチャレンジしない?またドラゴンとか?』

「殺す気か!」


視聴者からの反応も悪い。当然収益額も落ち込む。

でも仕方ない。


<神もそろそろ違うことしてほしいと言っておられます>

「金が無いから無理」


お金が無い。

ついこの間必死な思いをしてドラゴンを倒した。

だが、あの時に沢山獲得したスキルと装備品はレンタルで。

使ったアイテム、回復薬や攻撃力アップ等のドーピング剤は借金をして買った。


つまりスキルは消えてなくなり、残ったのは借金だけ…という事だ。

その借金の利子は今の収益と比べるとほぼ同程度。つまりジリ貧もいい所である。


<もっと派手に稼げる方法を探りましょうよ。たぶんちょっとエッチな配信なんかも視聴者爆増ですよ>

「絶対ヤダ」

『血沸き肉躍る戦いでもいい』

『ゴブリン以外なら何でもいい』

『トイレ!トイレ!』

「変態死ね!滅びろ!」



ああ、どうしてこうなってしまったのか。

お願いだから誰か私の平穏を返してほしい。神様…


<神はちょっとエッチな配信を期待しています>

「バカ神死ね!滅びろ!」


軽い息抜きで書きました。

月一本くらい短編を投稿したい、と思ひて幾星霜。

そんなペースで書けるわけがなかったのだ。


~宣伝~

↓リヒタール内政戦記連載中です。応援お願いしまーっす


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