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アンチ倍速視聴者に贈る屁理屈


 私は自分の意図を隠すことが恥だと思い、我慢できないため、先に述べることにする。


 自分の魂が納得することをしよう。


 だから、倍速視聴も自分の魂が許すなら行う。魂が許さないならば決して行わない。それは自分で決めるべきことだ。鑑賞というゲームをするなら、他人の魂より自分の魂を優先しよう。




 しかし、どうやら世の中はそうなっていない。


 倍速で映画やアニメを観ることに、ことさら驚く記事が書かれている。それに対する、倍速視聴者に対する罵詈雑言は山ほど書かれている。


 そして、




 演出とか演技とか間とか、つまりは「あらすじ」の外側にある情報を無視してる以上、作品について何も語るべきでない




 というような声まであげられている。作品を観たことにならない、ではなく、作品について何も語るべきでない。





 倍速視聴をする者は言葉を紡ぐことすら許されないらしい。


 語られた内容がクズならばコテンパンにされてもしょうがないだろう。しかし、それ以前の、何かを言葉にしようとすることすら許さない人もいるらしい。


 等速視聴をする自分を特別扱いしているようだが、より良い視聴を目指せば幾らでも上がある。


 吹き替えで観るな、字幕で観るな、スマホで観るな、テレビで観るな、質の悪い劇場で観るな。


 また自らが望んだことではないにしても、隣席でケータイを弄っていた、席の前を横切られた、体調不良だった、尿意等で途中退席せざるを得なくなった、といった不愉快な事も、仕方がないとはいえ、観たことにならないとしてしまえるかもしれない。何故なら、その瞬間は映画への集中が途切れてしまったのだから。




 ある映画の間が大事だと言うならば、その作品の間について貴方が論じればよい。もしくは、倍速視聴して間を見落としているということを作品評から見抜けるならば、それを批判すればいい。


 藁人形にどれだけタックルしても、強さの証明にはならない。




 そもそも、誰かの作品評が、その論者が本当に作品を鑑賞したかどうかなんて解らない。あらゆる作品評を用いて、出来の良いパッチワークを拵えたのかもしれない。


 つい最近も、出来不出来は別にして、フェミニストに成り済まして言論活動をしていた輩がいた。


 幼児でさえ、大人の好む発言を選ぶくらいのことはできる。


 当たり前のように人は偽りを述べる。そんな世の中ので、倍速視聴をしたと公言するものは、まだ誠実な方かもしれない。自ら、私は倍速視聴をしたのでそのつもりで聞いてくれたまえと宣言をして、何かしらの理由で倍速視聴する判断をした、要するに等速で観ることはしなかったという価値判断をも伝えてくれている。




 唐突だが、お刺身を用いて喩えをする。


 貴方は人生で何度もお刺身を食べたことがあるとする。そのうち何度か、大変旨いものを食べたことがある。


 しかし、何の罰か、貴方は今、とても生臭いお刺身を食べることになった。旨いお刺身と比較すれば、生ゴミのようなお刺身だ。その時、貴方は口に入れたそれをどうするか。


 私ならば急いで飲み込む。そして、一応皿のものは全て食べると思う。食べるのが無理なら残す。


 ある人は吐き出してしまう。おそらく残すだろう。


 一方、そんな生臭いお刺身を、通常通り咀嚼する人もいるだろう。料理人への礼儀だから残さないし、いつもと同じように食べているのか、味覚が麻痺していて生臭いことに気がついていないのか。いずれにせよ、私には真似できないしするつもりもない。また、生臭いお刺身を食べたから偉いということにはならないと思う。よく躾られた人という印象にはなっても、感覚が信用できる人とは思わない。




 そもそも、人はどれだけ意図どおりに観ているのか。


 皆さんの映像作品を観る手段は何ですか。私は主にスマホで、昔はたしか24インチのテレビだった。


 最近の映像作品はあらゆる視聴のされ方を想定しているかもしれないが、昔の作品はそんなワケない。スマホだろうがタブレットやPCやテレビ、全部、作り手の意図よりもあまりに小さすぎる画面だ。




 等速視聴をしていても、私は頭が悪いので洋画は言わずもがな、日本語すら聞き取れない時があり、邦画でも字幕を出していたりする。吹き替えでも字幕を出すことすらある。もはや、私の目の前の映像は当初の脚本や演技とはかけはなれたものになっている。




 私事だが、『ターザン:REBORN』という映画、金を払って観に行ったはずなのに、ヒロインの吹き替えを演じた声優の演じるアニメのキャラクターなぜか性格が偏っているのかについて考えたことと、傷口を蟻で塞いでいたことくらいしか記憶に残っていない。ほとんど何も覚えていない。頭が悪ければ等速視聴してもこんなものだ。しかし、あらすじ以外語ってはならないというのは、吹き替えで井上麻里奈さんが担当していたことや、何故か記憶に残ったシーンについても語ってはならないらしい。


 別に等速でも倍速でも変わらないだろう印象だ。




 そもそも倍速視聴だけが悪いのか。インネンつけるつもりで言うが、巻き戻しや一時停止をすることはどうなのか。


 それらは等速に戻して視聴し直したとしても、作り手の「間」は既にぶっ壊されている。真剣な表情でシリアスな場面を俳優が演じても、半開きの眼で一時停止してしまったら台無しになることは間違いない。


 そして、人生が決して逆戻りしないように、事の大小は関係なくぶっ壊してしまったことは取り返しがつかない。その巻き戻しや一時停止をしてしまった時、完璧を目指すならばその鑑賞を中止し、最初から視聴をやり直すくらいしか方法はない。他人に厳しいアンチ倍速視聴者らは、巻き戻しや一時停止をするくらいならば、必ず最初から見直しているだろう。




 また、なぜ映画やアニメなどのみを倍速視聴してはならないと決めているのか。


 バラエティーやYouTuberの動画を早送りやスキップを利用しつつ観たことのある人は、倍速視聴者に対してどの面を見せるつもりだろうか。またそれらに含まれるCMも、作り手が貴方に捧げる映像の一部であるため、貴方の独断で無駄と決めつけ早送りしてはならない。退屈でも貴方は我慢しなければならない。何故なら人に倍速視聴をするなと要求するのだから、自分は出来ていることが最低限のマナーであろう。


 もしくは、映画等とバラエティーやYouTubeの違い、そして前者のみ等速視聴しなければならない理由を明確にしてくれなければならない。まぁ優れた方々ばかりであると思われるので、容易く成し遂げることでございましょう。




 決してバラエティーもYouTubeも早送りはしない、CMも全て観るという人がいたとしよう。


 そんな貴方は地上波で観た映画を語ってはいないだろうか。アンチ倍速視聴者らは、その矜持が偽りでないならば、だいたい編集でカットされるところの多いそれらを基にして作品を語ってはいないはずだ。


 もし語っていたならば、二枚舌であり、二枚舌の持ち主の言論は到底信用してはならないものである。先の例に出した成り済ましのように、悪びれもせず自分を偽った上で他者に過大な要求をするならば、酷いパワハラ気質の持ち主ではないだろうか。そのようなことは決してありえないと信じています。




 アニメを観る人も同様。テレビ放送では不思議な光や湯気に包まれていた女体等が、DVDでは雲散霧消していることがある。また細かい修正が施され、よりよい作画になることもある。そういう作品の場合、テレビ放送のみでアニメを語ってはならない。なぜなら最新の情報を無視しているからである。


 同じく映画もあらゆるバージョンがある作品は、全て観ていない人は作品を語ってはならない。おそらく研究者ならば当然のように行っていることなので、仮に素人だからといって怠ってはならない。




 もちろん、これまでの過剰にアンチ倍速視聴者らを責める言葉は冗談である。私の本意ではない。タイトルにあるように屁理屈である。


 しかしこの屁理屈を通して、私がアンチ倍速視聴者の言論に違和感を抱いているということは、読み手に伝わっていると思う。


 他人を自分の期待する行動を取るように命じることは、この屁理屈のように酷いものである。


 私自身、ほとんどの映画はテレビ放送で観た。洋画の場合、ほぼ全て字幕か吹き替えで観ている。映画館で観たものよりテレビや配信で観ることが多い。本当に正しい鑑賞をしているとは言い難い。


 アンチ倍速視聴者らの言い分もわからないことはないが、やはり、他人を貶めることで自分の行動を正当だと言い張っているように思える。


 今の世の中、映像作品が溢れている状況で、自分は正しいことをしている選ばれた鑑賞者だと言い張るために、取るに足らない倍速視聴者を叩いているように思える。




 冒頭に述べたように、自分の魂が納得する時点で語ればいいと思う。


 倍速視聴を選び、語り、その内容がクズならば批判される。


 等速視聴をして語ったとしても内容がクズならば、等速視聴をしたことは何の言い訳にもならない。


 皆、そういうゲームをしているはずだ。



批判はあると思います。

けれども、倍速視聴は罵倒された当然であるというような状況には否と言いたかったので書きました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 倍速視聴、何が悪いのかってわたしも思います。 そもそも創作物は受け取り手がどう受け取るかという問題であって、たとえば、イラストなんかその顕著な例ですよね。倍速のしようもないので、イラストを見…
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