5.ヒロイン・ローズ
アイラは自分が転生したと気づいた日から毎日ハンドメイドをする時間を幸せに思い過ごしていた。
転生したと気づいてからあっという間に一ヶ月が経っていた。
この一ヶ月の間でカイルとローズは随分仲良くなった様だった。
また、アイラはヨハネスとは行き帰りで遭遇するもヨハネスに迷惑はかけたくないという思いから挨拶を交わす程度以外は会話をあまりしない様にしていた。
そんなアイラにヨハネスは残念な気持ちになっているなどアイラは知る由もなかった。
そんなある日…
カイルがアイラの部屋を訪れていた。
「お兄様が私の部屋に来るなんて久しぶりだね。いつもは私がお兄様の部屋にお邪魔してばかりだから。」
「あぁ。そうだったね。」
「今日はどうしたの?」
アイラが部屋に来たカイルへと笑みを溢しながら尋ねた。
そんなアイラにカイルも優しく笑みを浮かべて言った。
アイラはカイルが急に部屋に訪れたので何事かと思いカイルへと尋ねた。
「あぁ。実はな…その女性は何をプレゼントしたら喜ぶのかを聞きたくてね…。」
「女性が?!」
「あぁ…。」
カイルは少し聞きづらそうにアイラへ尋ねるとアイラは思わず驚いた表情を浮かべながら言った。
そんなアイラへカイルは苦笑いを浮かべて応えた。
(あぁ…きっとローズへのプレゼントね。)
アイラはカイルの話を聞いてピンときて考えていた。
「お兄様…はその…どなたか意中に想う方がいるの?」
「………。あぁ。一ヶ月近く前に知り合った同い年の子なんだ。」
「やっぱりそうなのね。ふふ…お兄様が今までそんな事聞いてきた事なんてなかったもの。よほどその方を想っているのね。」
「そうなんだ…。こんな気持ちになるのは生まれて初めての事で最初はどうしたらいいのか分からなかったが気持ちに素直になられずにいられなくてな…。」
「とても素敵な事ね。お兄様が何だかとても幸せそうなお顔をしているのを見ると私まで嬉しくなるわ。」
「ははは…そうか?アイラがそう言ってくれると何だか心強い気がするよ。」
アイラはローズの事だと分かっていたがあえてカイルへと尋ねた。
するとカイルは少し間を置いて少し照れた様にアイラへと言った。
そんなカイルを見てアイラはとても温かい気持ちになり自然と笑みを溢して言った。
そんなアイラにカイルは更に照れた様に応えるとアイラは笑顔で言った。
カイルはそんなアイラを見て笑みを溢して言った。
「それで…今度その子を我が家に招待しようと思ってるんだよ…。それで…その時に何かその子にプレゼントをしたいなと思ったんだけど何をあげていいかさっぱり分からなくてアイラへ相談しに来たんだよ。」
カイルがアイラへと少し照れた表情で言った。
(ローズを呼ぶの?うちへ?ということは…プリラブMでモブキャラの私にローズが初めて会う時ということね…。モブキャラのアイラの唯一の出演シーンね!何だかいざそのシーンになると思うとドキドキするわね。挨拶を交わすだけなのにゲームで見た光景を味わえるのはプリラブMファンとしてはドキドキせずにはいられないわね。)
アイラはカイルの話を聞きながらそんな事を考えていた。
「そうだったのね…。その方にプレゼントね…。一体何がいいかしら。女性にも十人十色で趣味や好みがあるからね…。ん〜その方は何か趣味とかはあったりするの?」
「趣味か…。そうだな…。ん〜趣味は分からないんだが花が好きだと話していたな。」
「お花?」
「あぁ。」
「それならば花言葉に意味を込めた花束などどうかしら?」
「花言葉に意味を込めた?」
「ええ。花にはそれぞれ花言葉というものがあるのよ。例えば…赤い薔薇ならば愛情や情熱。百合ならば純粋や無垢の様に花言葉があるの。だからお兄様の気持ちを表した花言葉の花を選んで花束にして渡すのもいいかなって思うわ。その方はお花が好きならきっと花束の花の花言葉が分かるはずだからお兄様の気持ちも伝わるんじゃないかしら。」
「花にはそんな花言葉があるんだな…。うん…。そうだな。それはいいな。そうしてみるよ。花言葉を調べて花束を作ってみるよ。」
「ええ。是非そうしてみて。あっ!私がお花の様な髪飾りを作るからそれも一緒に渡してあげて。女性は歳など関係なく髪飾りが好きなものだから。」
「本当か?ありがとう。アイラ。やはりアイラに相談して正解だったよ。本当にありがとう。」
「いいえ。どう致しまして。」
アイラへカイルはお互いの話を聞いてローズに何をプレゼントしたらいいかを話し合った。
そして、アイラの提案もありで無事にカイルの悩みが解消されたのだった。
カイルはその後アイラへ改めてお礼を言うとアイラの部屋から出ていった。
カイルが部屋を去った後にアイラは早速ローズへと渡す髪飾りを作り始めた。
(ローズはほんわかとした可愛い女性だったわね。ゲームをしてるこちらまで癒やされる様なキャラだったもんね。だから、ローズに似合う髪飾りなら美しさより可愛さを追求して、尚且派手すぎずな優しめの感じの髪飾りがいいわよね。)
アイラはプリラブMのローズを思い浮かべながら髪飾りのデザインを想像しながら考えていた。
そして、アイラはリボンにニ種類の淡い色のレースを緩めにギャザーを寄せて縫い付けた。
そして、その上から中心回りのみに淡い色の大きさの違うビーズを縫い付けた。
仕上げに髪紐ではなくバレッタを縫い付けた髪飾りを完成させた。
「うん!ローズにぴったりな髪飾りが完成したわ!」
アイラは完成した髪飾りを見つめながら満足そうな笑みを浮かべながら呟いた。
翌日にはカイルへ完成した髪飾りを託したのだった。
※
その日から一週間後……
ローズがガルバドール侯爵家へと訪れる日がやってきた。
アイラはカイルより一足先に家へと戻っていた。
アイラはカイルがローズを連れて帰ってくるのをドキドキしながら待っていた。
その時だった……
カイルが家へ帰ってきたのだった。
アイラはカイルが帰宅したのに気づくと部屋から出て玄関へと向かった。
(あぁ…プリラブMのヒロイン・ローズとご対面ね。ふふ…嬉しいわ。私が前世でローズを王太子妃→王妃にしようと奮闘していたのが懐かしく思うわ。)
アイラは玄関へと向かうのに階段を下りながら表情をニヤつかせながらそんな事を考えていた。
そして、アイラが階段を下りたところにカイルとローズがいたのだった。
「お兄様…お帰りなさい。」
「あぁ。アイラただいま。」
アイラはまずカイルへ笑顔で言うとカイルも笑みを浮かべてアイラへと言った。
「アイラ…こちらが前に話した同い年の子だよ。ローズだ。」
カイルが少し照れくさそうにアイラへローズを紹介した。
「ローズ…こちらが私の妹のアイラだよ。」
カイルはローズへアイラを紹介した。
「初めまして…。アイラと申します。」
「初めまして。私はローズと言います。」
アイラが優しく微笑みローズへ挨拶をするとローズもアイラへと挨拶をした。
(きゃーー!生ローズだわ!ピンク色の髪の毛に薄い水色の瞳にあのヒロインオーラ…。あのモブキャラ・アイラとの挨拶を交わすシーンを自分自身で体験したわ!どうしよう…感動して泣きそうだわ…。)
アイラはプリラブMの世界と同じシーンを自分自身で体感した事に興奮気味になり思っていた。
「アイラと呼んでもいいかしら?」
「え?あ…はい。もちろんです。」
ローズがアイラへと尋ねるとアイラは慌てて応えた。
(え?えっと…アイラとローズって確か挨拶を交わすだけじゃなかったかしら。モブキャラとの会話だから私がゲーム進めるのに適当に飛ばしただけかしら…。)
アイラは挨拶以上にローズが話しかけてきた事が前世でプリラブMをやっていた時にはなかった事だったので驚きながら考えていた。
「本当に?ありがとう。では…アイラよろしくね。私のこともローズと呼んでくれて構わないわ。」
「え…?い…いえ。そんな呼び捨てなどには出来ませんので。」
「でも…私はあなたより身分が低いから歳など関係なく呼び捨てにしてもっても構わないわよ。」
「身分などは関係ありません。年上は年上ですので…ローズさんと呼ばせて下さい。」
「……。では…そう呼んでくれて構わないわ。」
「はい。」
ローズはアイラが了承すると嬉しそうに言った。
そしてアイラへも自分の事を呼び捨てにしても構わないと言うとアイラはさすがにそれは出来ないと困った表情を浮かべて言った。
そんなアイラへ驚いた表情をしながらもローズは言った。
(アイラってこんなにローズと会話してたのかな…。)
アイラは普通にローズと会話している事を不思議に思いながら考えていた。
「アイラ、私はローズを部屋へと案内するから何かあれば私の部屋に来てくれたらいいから。」
「ええ。わかったわ。お兄様。」
カイルがアイラとローズの会話を微笑ましく見ていた。
そして、カイルはアイラへと言うとアイラは笑顔で応えた。
そして、カイルとローズは二階のカイルの部屋へと向かったのだった。
(はぁ〜生ローズと話が出来て感動だわ…。でも…あんなに仲が良さそうな二人だけれどお兄様の恋は結局実らないまま終わるのよね…。何だなそう考えると胸が痛むわね。)
アイラはカイルとローズが去った後に前世でファンだったゲームのヒロインローズに会えた事に感動した反面兄の恋が実らないと知っている事を複雑に思いながら考えていた。
アイラはそんな事を考えながら自分の部屋へと戻ったのだった。
自分の部屋に戻ったアイラはカイルの恋が実らない事に胸が苦しくなったので気を晴らそうとハンドメイドをやり始めた。
(この世界ではハンドメイドで作った物を売ったり出来る場所ってないのかな…。ハンドメイドをして色々と作るのはいいんだけど前世ではイベントやネットで販売してたから色んな人の手に取ってもらえる機会があったけどこの世界では作っても色んな人に手に取ってもらえる機会がないもんね…。どこかにそういう機会や場所があるといいんだけれどな…。)
アイラはチクチクとへアアクセサリーを作りながら考えていた。
(ん〜街で販売するのは難しいのかしら。貴族の令嬢が街で販売するのはやっぱりおかしい事なのかな…。前世の記憶を知るまでは普通の令嬢として過ごしてきたけどやっぱり身分というのは大きい世界だから貴族が街で手作りのものを売るなんて無理に等しいのかな…。)
アイラは更に手を動かしながら悩み考えていた。
その時…
家の玄関のベルが鳴った。
「あら…お客様かしら…。今日はローズさんだけがお客様だと思っていたけれどお父様かお母様もお客様が来る予定だったのかしら…。」
アイラはベルを聞いて呟いた。
「ん?でも…今日は確かお父様とお母様は家を空けていたんじゃなかったかしら…。」
アイラはふとそんな事を思い呟いた。
すると…
コンコンッ!
アイラの部屋の扉が叩かれた。
「アイラ様…カイル様のお友達がお越しになられたのですがカイル様のお部屋へ訪ねても応答がないのですがいかがしたらよろしいでしょうか?」
部屋の外から執事のジャンが少し慌てた様子でアイラの部屋へと訪れてアイラへと伝えたのだった。
「え?お兄様が?」
アイラはジャンの言葉に驚きつつ言った。
(あ〜もしかしたら今…お兄様はローズさんに花束を渡している時かもしれないわね。だからジャンが部屋を訪れてもそれに気づかないくらい緊張してる最中なのかもしれないわ。)
アイラはジャンの話を聞いてそんな事を考えていた。
「分かったわ。私が代わりに出るから玄関で待っていて貰ってちょうだい。」
「はい。畏まりました。」
アイラは考えた末にジャンに伝えるとジャンは返事をしたのだった。
アイラは客人を待たしてはいけないと急いで玄関へと向かった。
(お兄様のお友達が何の用だろう…。今日はローズさんが家にくる予定だったからお兄様もお友達へ先約があるのを伝えると思うんだけどな…。)
アイラはそんな事を考えながら階段を下りたのだった。
階段を下りた玄関先にカイルの友達らしき人物が立っていた。
「お待たせして申し訳ありません…。只今、兄は先約がありまして……。」
アイラは玄関先に見えたカイルの友達らしき人物へ慌てて言ったがその人物を見て言葉が詰まったのだった。
「え?ヨハネス…様…?」
そこに居たのはヒロインの二人目の攻略対象であるヨハネスが居た。
ヨハネスがいる事に衝撃を受けたアイラが呟いた。
「やぁ!アイラ!」
ヨハネスは笑顔でアイラへと言った。
「え…っと…。こんにちは。ヨハネス様。あの…今日はお兄様は先約がありまして既にお客様がお見えになっていまして…。」
アイラはハッとなりヨハネスに慌てて言った。
「そうなのかい?カイルは今日そんな事言ってなかったけどな。でも…そうか…。それは残念だが先約があったなら仕方ないな。急に訪れた私が悪かったな。」
ヨハネスは困った表情を浮かべながら言った。
(え?お兄様…お友達の方にローズさんが来るの伝えていなかったの?も〜ちゃんと伝えておかないと…。)
アイラはヨハネスの話を聞いて内心は困ってそんな事を思っていた。
「申し訳ありません…。」
アイラは申し訳なさそうにヨハネスへと言った。
「アイラが謝る事はないさ。急に訪れた私が悪いんだから。先約があるなら残念だが…またの機会に出直すよ。」
「はい…。一応…ヨハネス様が来られた事をお兄様へお伝えしてきましょうか?」
「いや…構わないよ。先約があるなら邪魔しては悪いからね。」
「そうですか…。」
ヨハネスは謝るアイラへ優しく言うとアイラはカイルへ伝えて来ようかと言ったがヨハネスは首を振りながら応えた。
「では…また出直すよ。」
「はい…。」
ヨハネスは残念そうな表情を浮かべてアイラへ言うとアイラは頷きながら応えた。
「あれ…あの時のお姉ちゃん……?」
その時…ヨハネスの後ろからヒョコっと顔出した小さな女の子がアイラを見て呟いた。
「ん?あらっ!あなたは…あの時の迷子になってた……ニーナ?!」
アイラは急に少女に声をかけられ驚いたがニーナの顔を見てあっ!となりニーナへと笑顔で言った。
「あれ…ニーナ、アイラを知っているの?」
「うん!前に私が街でお兄様とはぐれてしまった時に声をかけてくれて一緒にいてくれたお姉ちゃんよ。」
「え?!あの時のお姉ちゃんがアイラ?!」
「うん。そうだよ。」
ヨハネスは普通にアイラと会話をしているニーナに首を傾げながら尋ねるとニーナは笑顔で応えてヨハネスへと説明した。
ニーナの話を聞いて驚いたヨハネスが言うとニーナは頷きながら嬉しそうに応えた。
「えっと…あの…もしかして…ニーナは……。」
アイラがヨハネスとニーナの会話を聞いてもしやと思いヨハネスへと尋ねた。
「あぁ。ニーナは前に話していた年の離れた私の妹だ。」
ヨハネスはアイラへと言った。
「えええええーーー!!!」
アイラはヨハネスの言葉を聞いて思わず驚き大きな声で言ったのだった………。
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