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29/33

29.モブ…攻略対象者(想い人)邸へ行く

この日…アイラはグラマー公爵邸へ訪れていた。


アイラが到着するなりヨハネスとニーナが出迎えてくれた。


「アイラ…いらっしゃい。」


「アイラおねえさま…いらっしゃい。」


ヨハネスとニーナは満面の笑みを浮かべてアイラへ言った。


「あ…ヨハネス様…ニーナ、おはようございます。わざわざお出迎えありがとうございます。お邪魔します…。」


アイラは二人のお出迎えに圧倒されつつ緊張しながら言った。


(二人の笑顔が眩しすぎる…。)


アイラはヨハネスとニーナを見てそんな事を考えていた。


「先に私の両親へアイラを紹介するから。両親のところへ案内するよ。」


ヨハネスがにこりと微笑みながらアイラへ言った。


「は…はい。」


アイラはガチガチに緊張して言った。


(ヨハネス様のお父様とお母様か…。別に…ヨハネスの恋人だと紹介される訳でもないのに…好きな相手のご両親って考えると緊張して仕方ないわ…。)


アイラはそんな事を考えながらヨハネスについて歩いた。


アイラとヨハネスとニーナは応接室へと到着した。


コンコンッ。


「私です。ガルバドール侯爵令嬢をお連れしました。」


ヨハネスが部屋の扉を叩き言った。


「あぁ。入ってくれ。」


中からグラマー公爵が言った。


「はい。失礼します。」


ヨハネスが言った。


「アイラ…そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。」


ヨハネスが緊張でガチガチなアイラへ優しく言った。


「そうよ!絶対にお父様もお母様もアイラおねえさまを気に入ってくれるからもっとリラックスして。」


ニーナもニコニコしながらアイラへ言った。


「は…はい。」


アイラは二人の言葉で少し肩の力を抜いて言った。


「失礼致します…。」


アイラはそう言うとヨハネスに続いて部屋へと入った。


「やぁ…いらっしゃい。」


グラマー公爵がアイラが部屋に入ってくるなり微笑みながら言った。


「いらっしゃい。どうぞ…こちらへ座ってちょうだい。」


公爵夫人も微笑みながらアイラへ言った。


「は…はい…。ありがとうございます。失礼致します。」


アイラがまだ少し緊張を残したまま言った。


そして…アイラとヨハネスとニーナはソファーへと座った。


(うわぁ〜…プリラブMではグラマー公爵夫婦は出てこなかったからどんな感じの二人なのかわからなかったけと…二人とも美男美女で優しそうな感じの人たちだな…。ヨハネス様は公爵に…ニーナは夫人にそっくりだわ。)


アイラは公爵夫婦を見てそんな事を考えていた。


「今日はわざわざこちらに足を運んでくれてありがとう。ヨハネスやニーナからあなとの話を聞いてぜひ会ってみたいと思っていたから会えて嬉しいわ。」


公爵夫人が優しく微笑みながらアイラへ言った。


「こ…こちらこそ…本日はお招きいただきありがとうございます。」


アイラは深々と頭を下げながら言った。


「まぁまぁ…そんなに緊張しなくても大丈夫だ。」


公爵が微笑みながらアイラへ言った。


「はい…。」


アイラは頷きながら言った。


(二人とも…とても優しい方達だわ。)


アイラはそんな事を考えていた。


「あぁ…。ヨハネスから聞いたのだがアイラ嬢は我がグラマー公爵家の領地の街へ訪れたそうだが我が領地はどうだったかな?ガルバドール侯爵家の領地も素晴らしいと思うが我が領地もなかなかだと思わないか?」


公爵がアイラへ尋ねた。


「はい!とても素晴らしいところだと思いました。王都の街ともガルバドール侯爵家の領地の街とも違った心地よさを感じる事のできるところでした。街の人達も皆さん生き生きして活気がありましたし素敵なお店も沢山並んでいてどのお店も魅力的で目移りしてしまう程でした。それにヨハネス様に連れて行って頂いたお店のパンケーキがとても美味しくて感動しました。あのパンケーキは今まで食べたパンケーキの中で一番といえる程の美味しさでした。出来る事ならばもう一度訪れたいなと思うほどでした……あっ……。」


アイラは公爵に尋ねられて思わず勢いよく熱弁してしまって目の前の公爵夫婦が呆気にとられているのを見てハッとなった。


「あ…あの…私ったらその…つい…話すぎてしまって…。」


アイラは急に恥ずかしくなってモゴモゴしながら言った。


(私ったら何してるのよ…。グラマー公爵家の領地が素敵な場所だったからってこんな熱弁して粗相するなんて…。公爵夫婦が引いてしまってるわ…。あぁ〜好きな相手の両親に呆れられてどうするのよ…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「ハハハハハ…!」


すると…公爵が思い切り笑い出した。


「え…?」


そんな公爵に驚きと戸惑いの表情を浮かべてアイラが言った。


「ハハハハハ…。急に笑ってしまってすまなかった。ただ…先程までガチガチに緊張していたアイラ嬢が我が領地の話をあまりにも嬉しそうに話をしてくれるものだから…ついな。」


公爵は笑いながら言った。


「は…はい…。」


アイラは逆に呆気にとられた様な表情で言った。


「ふふ…。アイラ嬢が熱弁する程に我が領地を気に入ってくれて良かったわ。」


公爵夫人は優しく笑いながらアイラへ言った。


「え…あ…はい。あの…お二人は私に呆れられたのではないのですか?」


アイラは??という表情で公爵夫婦へ言った。


「呆れるなんてまさか…。むしろ逆だ。我が領地の事をそこまで褒めてくれるのだから嬉しいに決まっているさ。ただ…あまりにも熱弁してくれるから少し驚いただけなんだ。」


公爵はふっと微笑みながら言った。


「その通りよ。」


公爵夫人は頷きながら微笑み言った。


「そう…だったのですね。」


アイラはホッとしながら微笑み言った。


「アイラ…今のやり取りでいつの間にか緊張が解けたのでは?」


ヨハネスがクスっと微笑みながらアイラへ言った。


「え?あ…本当ですね…。いつの間にか緊張がなくなった気がします。」


アイラはあっという表情で頷きながら言った。


「ね?だから大丈夫だと言ったでしょう?」


ニーナがにこりと微笑みながらアイラへ言った。


「えぇ。本当ね。」


アイラはにこりと微笑みながら言った。


「ところで…アイラ嬢は首都にあるお店でアイラ嬢が作ったものを販売していると聞いたのだけど…どんなものを作っているの?ニーナにも色々と作ってプレゼントしてくれたみたいだし。」


公爵夫人がアイラへ言った。


「はい。ニーナには私がニーナに似合うなというものを作ってプレゼントさせてもらっています…。ニーナの喜ぶ顔を見るとつい…あれもこれもと作ってしまって…。公爵家のご令嬢に手作りのものをプレゼントするのはおこがましいのですが…。それと…首都では首都にあるお店で委託販売をして頂いています。今は新たに赤ちゃん用品を販売して頂いてます。」


アイラは少し慌て気味に言った。


「おこがましいなんて!そんな事ありません!アイラおねえさまの作ってくれるものはどれも素敵で私の宝物です!」


ニーナはアイラの言葉を聞いて頬を膨らませながら言った。


「あ…ありがとうニーナ。そう言ってもらえて嬉しいわ。」


アイラは少し照れ気味に微笑みながら言った。


「確かに…アイラ嬢がニーナへプレゼントしてくれた物を見せてもらったけれど手作りとは思えない程丁寧に作られたものばかりで感心したのよ。ねぇ?」


公爵夫人が微笑みながら言うと公爵にも話を振った。


「あぁ。私も驚いたよ。貴族の女性は裁縫などはしたとしても刺繍をするくらいだと思っていたものだからアイラ嬢の裁縫の腕には感心したのだ。」


公爵も感心した表情で言った。


「そこまで褒めて頂くと…何だか恥ずかしくなりますが…ありがとうございます。その様に言ってもらえる事が何より嬉しい事ですので…。」


アイラは公爵夫婦の言葉に慌てて言うも照れながら微笑み嬉しそうに言った。


「赤ちゃん用品を作っていると言っていたけれど…赤ちゃん用品まで作れるなんて本当に凄いわね…。」


公爵夫人が感心した表情で言った。


「そんな事はありませんが…赤ちゃん用品というのは洋服を始めとして上質な物は貴族以外の人達にはなかなか手に入れるには優しくない価格の物ばかりです。ですから…少しでも上質な物を安価で沢山の方に手に入れて欲しいと思い今回は赤ちゃん用品を作ってみたのです。初めての試みだったので今回は洋服と小物を作り委託販売して頂きました。」


アイラが説明した。


(前世ではベビー用品を何回か作った事があったけれど…前世とこの世界では材料が異なるし足りない物も何個かあったから試行錯誤しながら作ったんだけどね…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「確かに…上質な物を購入するのは準貴族…貴族…王族…だからな。なかなか平民達が手に入れる機会はないのは事実だな…。」


公爵がアイラの説明を聞き軽く頷きながら言った。


(この令嬢はそんな事まで考えて行動をしているのか…。貴族目線でそこまで考える者はなかなかいないだろうに…。)


公爵はそんな事を考えていた。


「えぇ。だけれども…平民達が貴族の物に興味がないといえば嘘になる…だけど貴族と同じ物を購入するのは難しい…。だけど…そんな平民達の思いを汲み取るかの様なアイラ嬢の考えは素晴らしいわ。平民達にとってやはり一番気がかりなのは値段だからその気がかりが解消されれば気兼ねなく手を出すことができるものね。」


夫人は頷きながら感心して言った。


(この令嬢は柔らかそうな雰囲気なのにしっかりと物事を考えて行動しているのね…。当主ならまだしも貴族令嬢が平民達の気持ちになり考えて行動するなんてね…。こんな娘なら王妃様まで気に入るのがよくわかるわ。)


夫人はそんな事を考えていた。


「はい。仰る通りです。」


アイラは頷きながら言った。


「きっと…アイラのその思いつきのお陰で今回の赤ちゃん用品もきっと人気なのだろう?」


ヨハネスはにこりと微笑みながらアイラへ言った。


「はい…。お陰様で委託販売でお店に置いてもらった商品はすぐに完売したみたいです。ですので今は追加納品分を作っているところです。納品分以外にも教会の孤児たちの分も作っています。今度教会へ届けに行こうと思っています。」


アイラは嬉しそうに微笑みながら言った。


(本当に毎回私の作ったものが沢山の人達に喜んで手にしてもらえててこれほど嬉しいことはないわ。)


アイラはそんな事を考えていた。


「教会にもかい…?」


ヨハネスはアイラの言葉を聞き心配気は表情で言った。


「はい…。あの日以来…教会にお邪魔出来てませんので。」


アイラは戸惑いつつ言った。


「しかし…アイラにとってあの場所は…。」


ヨハネスがボソりと言った。


「大丈夫です。あんな事がありましたがまったくもって行くのは平気ですから。」


アイラはヨハネスの表情を見て慌てて微笑みながら言った。


(確かに…あの事件は凄く怖かったけれどヨハネス様が助けてくれたお陰で本当に…恐怖はもうないもんね…。ヨハネス様のお陰よ。)


アイラはそんな事を考えていた。


「それならば…いいのだけど…。」


ヨハネスは不安そうな表情で言った。


(あんな目に遭って平気なわけないはずなのに…。それでも孤児たちの為に…。本当にアイラ…君は自分より人の事ばかり気にするのだな…それならば今後は私がアイラを気にかける存在になればいいだけだ…。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「コホン…。それだけの腕があるのであればアイラ嬢は自分でブランドを立ち上げて店を作るというのは考えていないのかい?」


公爵が咳払いをしてアイラとヨハネスの雰囲気に割って入り言った。


「え?私自身のお店ですか?」


アイラは思わず驚き言った。


「そんなに驚くことかな?私はそれほどの腕があり実際にアイラ嬢の作るものは王都のみならず我が領地の住人達の耳にも入る程の人気ぶりだ。店をかまえてもおかしくはないだろう?」


公爵はフッと微笑みながら言った。


(この令嬢は本当に欲がないのだな…。普通の貴族の令嬢ならば真っ先に金を儲ける事を考えるだろうに…。まぁ…聞くところによるとこの令嬢は売上金の半分以上を孤児のいる教会に寄付してる様だから心から相手の事を考えての行動なのだろうな。)


公爵はアイラの驚きぶりを見てそんな事を考えていた。


「その様な事は考えてもいませんでしたので…。」


アイラは戸惑いながら言った。


(確かに…前世ではいつかは小さくてもいいから自分のお店を持ってみたいとは思ってはいたけど現実にならないまま死んじゃったからな…。転生してからはモブだから立ち位置的にハンドメイドを好きなだけ出来る嬉しさが大きかったし委託販売も出来て満足だったから店を持つなんて考えもしなかったな…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「きっと…アイラ嬢が店をかまえたら大盛況だと思うがな。それに今よりもより一層色々な人にアイラ嬢の作ったものを手にとって貰える機会が増えると思うがな。」


公爵が言った。


「確かに…今よりももっと沢山の方に私の作ったものを手にとって頂けるのは嬉しいです…。」


アイラが言った。


「そうだろう?そういう案もあるというのを頭に入れておくのもいいと思うぞ?」


公爵は微笑みながら言った。


「はい。」


アイラは頷きながら言った。


(私の…自分のお店か…。)


アイラはそんなことを考えていた。


「間違いなくアイラおねえさまがお店を開いたらすぐに大人気になるに違いないわ!」


ニーナは笑顔で言った。


「ふふ…ありがとう…ニーナ。」


アイラは表情を和らげて微笑みながら言った。


「あら…あなたもうこんな時間だわ。」


すると夫人が時計を見てハッとなり公爵へ言った。


「あぁ…本当だな。話していたらあっという間に時間が過ぎていたな…。」


公爵が時計を見て言った。


「アイラ嬢…せっかく来てもらったのに申し訳ないんだがこれから私と妻は出かける用事があってな…。ここで失礼することになるが申し訳ない…。」


公爵が申し訳なさそうにアイラへ言った。


「い…いえ…。私の事は気にならさらないで下さい。わざわざ公爵様と夫人にこの様な時間を設けて頂いただけでも感謝していますので…。」


アイラは慌てて言った。


(どこまでも謙虚なのだな…。)


公爵はそんな事を考えていた。


「我々もアイラ嬢と話が出来て嬉しかったよ。」


公爵は優しく微笑みながら言った。


「私もよ。アイラ嬢に会って話が出来て良かったわ。今度はお茶でも飲みながら話でもしましょうね。」


夫人も優しく微笑みながら言った。


「はい。是非…楽しみにしています。」


アイラは嬉しそうに微笑みながら言った。


「アイラ…私は父上達を見送ってくるからアイラはニーナとお菓子でも食べながら待ってて。」


ヨハネスがアイラへ言った。


「分かりました。では…公爵様、夫人…今日は短い時間でしたが貴重な時間を過ごす事が出来て感謝致します。お気をつけてお出かけ下さい。」


アイラは微笑みながら頭を下げて公爵夫婦へ言った。


「あぁ。ありがとう。」


「ありがとう。」


公爵夫婦が笑顔で言った。


そして…公爵夫婦とヨハネスが先に部屋から出ていった。




部屋から出たヨハネスと公爵夫婦は玄関に向かい歩いていた。


「アイラ嬢はとても素晴らしい令嬢だったな。実際に会ってみてそれがよくわかったよ。」


公爵が歩きながら言った。


「えぇ。ヨハネスとニーナが夢中になるのがよくわかったわ。あんなに心がきれいな貴族令嬢には初めて会ったわ。」


夫人も歩きながら言った。


「えぇ。だから…会えばわかると言ったでしょう?」


ヨハネスは微笑みながら二人へ言った。


「だからこそ…ガルバドール侯爵がヨハネスの提案を保留にしたのもよくわかる。アイラ嬢は自分の事より人の事を考えて優先している優しい子だ…。そんな子にヨハネス…もしくは殿下が結婚を申し込めば断らないだろう。貴族の令嬢にとって政略結婚など珍しくはないからな。だが…それは逆にアイラ嬢を傷つけてしまう事になるだろうからな。ガルバドール侯爵がそんな娘の姿など願ってもないだろうからな…。」


公爵が言った。


「アイラ嬢は本当に心から好きだと思う相手と結婚すべき令嬢だものね…。」


夫人が言った。


「わかっています…。ですが…私は自分の妻にはアイラしか考えられません!」


ヨハネスが言った。


「そうだろうな…。ヨハネスにここまで言わせる令嬢はこれまでもこれからもアイラ嬢だけだろうからな…。」


公爵はふっと微笑みながら言った。


「だからこそ…アイラ嬢の気持ちに寄り添ってあげなさい。あんなに素敵な令嬢ならいつ横から取られてもおかしくないから焦る気持ちもわかるけれどね…。」


夫人は真剣な表情で言った。


「はい…。」


ヨハネスが言った。


(横から取られるなんて事は絶対にさせないけどな。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「それから…とにかく何があってもアイラ嬢を守ってやることだ。」


公爵が言った。


「はい。何があっても…私の命をかけてでも絶対にアイラの事は守ってみせます。」


ヨハネスは真剣な表情で言った。


(これ以上…アイラを辛い目などに絶対に遭わせない。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「でも…ヨハネスこれだけは覚えておきなさい。アイラ嬢はもしも…あなたが危険に晒された時には迷わず自分の身を投げ出してまであなを守る様な子だということを…。自分よりも相手の事を気遣う様な娘だから。だから…だからその事は頭には入れておきなさい。」


夫人が真剣な表情で言った。


「分かりました…。しっかりと覚えておきます。」 


ヨハネスは頷きながら言った。


(まぁ…そうならない様に私がしっかりアイラを守るがな…。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「さぁ…見送りはここまででいいからアイラ嬢とニーナのところへ戻るといい。」


公爵が言った。


「早く行かないとニーナに取られてしまうわよ。ニーナはあなたに負けない程アイラ嬢が大好きな様だから。」


夫人がクスっと笑いながら言った。


「では…そうさせてもらいます。父上…母上お気をつけて…。」


ヨハネスはニヤリと微笑みながら言うと急ぎ足で客間へ戻って行った。


「ふふ…あの子ったら。妹にしか優しさを向けなかった子が妹以外の女性に対してあそこまで感情をあらわにする日が来るとはね…。」


夫人がくすくす笑いながら言った。


「そうだな…。出来る事ならばヨハネスとアイラ嬢に結婚して欲しいものだな…。」


公爵がふっと微笑みながら言った。


「そうね…。ヨハネスの気持ちがアイラ嬢に伝わる日が来ればいいわね…。」


夫人はふっと微笑みながら言ったのだった。




ヨハネスは公爵夫婦と別れて足早にアイラとニーナの元へと向かった。


ヨハネスが客間へ到着して扉を開けようしたその時…

部屋の中からアイラとニーナの会話が漏れてきた。


「ねぇ?アイラおねえさまは今…好きな人…男性はいないの?」


ニーナがアイラへグイグイ尋ねた。


「え…?す…好きな人…?」


アイラは慌てて言った。


「そう!カイルおにいさまにとってのローズ様みたいな。」


ニーナは目を輝かせて言った。


(ニーナの奴…何て話をしているんだ…。アイラの周りを牽制しているのだからアイラの周りには男は寄ってこないはずだ。だから今…アイラに好きな相手などいる訳がないだろう…。)


ヨハネスは扉の前でそんな事を考えていた。


「えっと…その…。」


アイラは戸惑いながら言った。


(ニーナったらこんな直球に聞いてくるなんて…。ニーナのお兄様の事が好きなのよ…なんて言えるわけもないしどうしよう…。これは答えを言うまで引き下がらない目だわ…。う〜ん……。)


アイラは戸惑いつつそんな事を考えていた。


そして…アイラは少し悩んだあとに…


「その…えっと…いるわ…。」


アイラは悩んだ末に言った。


「え……?!いるの?!」


ニーナはアイラの予想外の反応に声を大きくして驚いて言った。


(なんだと?!アイラに好きな人が…いる…だと…?!!)


部屋の外にいたヨハネスも驚きを隠せずそんな事を考えていた。


「え…?えぇ…。」


アイラは驚いたニーナを見て目をパチクリさせながら言った。


(そんなに驚く事だったのかしら…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「まさか…おねえさまに好きな人がいたなんて…。」


ニーナはギョっとした表情でボソっと呟いた。


「え?なに?」


アイラはニーナが何と言ったか分からず聞いた。


「ううん…何でもないの…。それよりおねえさまの好きな人って誰なの?」


ニーナは笑顔で誤魔化しながらアイラへ尋ねた。


(まさか…アイラおねえさまに好きな人がいたなんて…。そんな素振りこれまで全然なかったのに…。それならお兄様とアイラおねえさまが結婚して私のおねえさまになる計画はどうなるの…。)


ニーナは内心は戸惑いつつそんな事を考えていた。


「それは…秘密…。」


アイラは恥ずかしそうに言った。


(さすがにそれは言えないわ…。私の好きな人はヨハネス様だなんて…。ヨハネス様は私をお兄様の妹くらいにしか思ってないのだから…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「えぇ〜〜。絶対誰にも言わないから教えて!ねぇ?アイラおねえさま〜。」


ニーナは目をキラキラさせて言った。


(こうなったらアイラおねえさまの好きな相手を聞き出してどうにかしてその相手とアイラおねえさまをくっつけない様にしないとだわ。)


ニーナはそんな事を考えていた。


「こればかりはニーナにも秘密よ…。」


アイラは誤魔化し笑いを浮かべて言った。


「お願いよ…おねえさま〜!」


ニーナは食い下がり言った。


「本当にそれだけは秘密よ…。好きな人がいる事もニーナにしか言ってないのだから…。」


アイラは困り顔で言った。


「そんな…。」


ニーナはアイラの表情を見てこれ以上は聞いても絶対に教えてもらえのいと思いながら言った。


(誰なんだ…。アイラの好きな人というのは…。確かにアイラの周りにいる男共は牽制しているというのに…。まさか…殿下…か…?)


部屋の外ではヨハネスが絶望したかの様な表情を浮かべて考えていた。


(そんな…そんなことはありえない…。どうしたらいいのだ…。)


ヨハネスは混乱しながら考えていた。


すると…


「そういえば…お兄様はまだ戻らないのかしら…。」


部屋の中からニーナがそう言うのが聞こえた。


「そうね…。ヨハネス様遅いわね…。」


アイラが言った。


(まずい…。)


ヨハネスはハッとなり考えていた。


そして…


コンコンッ…


ヨハネスは咄嗟に部屋の扉を叩いて部屋の扉を開けた。


「お待たせしてしまってすまない…。」


ヨハネスは部屋に入ると微笑みながらアイラとニーナへ言った。


「あ…!お兄様が遅いから呼びに行こうと思ってたところよ!」


ニーナがムスっとしてヨハネスへ言った。


「すまない…。」


ヨハネスが申し訳なさそう言った。


「大丈夫ですよ。ヨハネス様…こちらへお座り下さい。」


アイラが申し訳なさそうなヨハネスを見て優しく微笑みながら言った。


「あぁ。」


ヨハネスは頷きながら言いうと椅子へ座った。


「今日…両親へ会ってくれてありがとう。両親もとても喜んでいたよ。」


ヨハネスがアイラへ言った。


「こちらこそ…お二人に会えて嬉しかったです。お二人ともとても素敵な方でした。」


アイラは嬉しそうに言った。


「ニーナは夫人によく似てましたし…ヨハネス様は公爵様とよく似ておられました。ニーナはきっと将来はとても美人になると確信しました。」


アイラはにこにこと微笑みながら言った。


「それに…ヨハネス様は今も素敵ですが…歳を取っても公爵様の様にまた違う素敵さが増すのだろうなと思いました……っ……あっ………。」


アイラは少し照れ気味に言うもハッとなり口を手で抑えて思わず下を向いた。


(やだわ…。私ったらついヨハネス様の事をかっこいいなんて言ってしまったわ…。どうしよう…。ヨハネス様はかっこいいとかそういうの嫌がる攻略者だった…。)


アイラは焦り気味にそんなことを考えていた。


「ヨハネス様…その申し訳ありません…。その…あの…かっこいいというのはその…。」


アイラは混乱気味にどうにか言い訳を伝えようとしてヨハネスをチラりと見た。


ドキッ……


ヨハネスをチラりと見たアイラが思わずドキッっと胸を高鳴らせた。


アイラが見たヨハネスはとても穏やかな笑顔を浮かべていた。


(な…何…?あの笑みは…。は…破壊力が凄すぎるわ…。心臓の鼓動が止まらない…。あんな愛おしそうな笑みを向けられたら一瞬何か勘違いしそうになったくらい…。)


アイラは心臓の高鳴りを感じながらそんな事を考えていた。


「あの…ヨハネス様…?」


アイラは無言で微笑むヨハネスへ言った。


「アイラは私の事をかっこいいと思ってくれているんだね…。そうか…。」


ヨハネスはとても嬉しそうに優しく微笑みながら言った。


「え…?あ…はい…。あ…いえ…。そうじゃなくて…。えっと…。ヨハネス様はかっこいいと言われるのがお好きではないのですよね…?もし…私の発言が不愉快でしたら…謝ります…。軽はずみな言動…申し訳ありません。」


アイラは戸惑いながら言った。


(どうしよう…。ヨハネス様に嫌われちゃったら…。)


アイラは不安に思いながらそんな事を考えていた。


「そうだね…。普段は不愉快に思うな…。だけど…アイラになら何度でも言ってほしいくらいさ。」


ヨハネスは満足げな表情で言った。


(アイラは…私をかっこいいと思ってくれているのだな…。ハハハ…アイラに好きな相手がいると聞いて奈落の底へ落とされた気持ちだったが…私にもまだ勝算がありそうだな。アイラの好きな相手がたとえ殿下であろうと私は絶対に諦めないし殿下に渡すつもりもない。あんなに令嬢達から言われて不快に思っていた言葉をアイラの口から聞くだけでこれほどまでに心地よさが込み上げてくるのだから不思議だ…。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「あの…では…怒ってらっしゃいませんか?私のことを嫌いになったりもしないですか?」


アイラは恐る恐るヨハネスへ言った。


「もちろんさ。私がそんな事でアイラを嫌うわけがないだろう。」


ヨハネスは微笑みながら言った。


(むしろ…好きな気持ちが増して大変だ。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「良かったです…。」


アイラはホッとした表情で安心した笑みを浮かべて嬉しそうに言った。


(良かった…ヨハネス様に嫌われなくて…。ヨハネス様が私の事を女性として好きになることはないってわかってるけど…更に嫌いになられたら悲しかったから…本当に良かった。)


アイラは心からホッとしてそんな事を考えていた。


「アイラおねえさまったら心配しすぎなんだから。」


ニーナはくすくす笑いながら言った。


(アイラおねえさまに好きな人がいたとしても…どうやらまだお兄様にもチャンスがありそうね。アイラおねえさまが私の本当のおねえさまになる計画はまだ崩れてないわね!)


ニーナはそんな事を考えていた。


「本当ね…。」


アイラはくすくす笑いながら言った。


「あ…そうだわ…。忘れるところだったわ。今日はニーナにお土産を持ってきたの。」


アイラはハッとなりニーナへ言った。


「お土産?!」


ニーナは目を輝かせて言った。


「えぇ。1つはお茶菓子よ。マカロンっていうお菓子なの。」


アイラは微笑みながらニーナへマカロンの入った袋を手渡しながら言った。


「マカロン?どんな食べ物だろう…。開けてみてもいい?」


ニーナは袋を受け取るとワクワクした様子でアイラへ尋ねた。


「えぇ。」


アイラは頷きながら微笑んで言った。


(この世界にはマカロンというお菓子は存在しないみたいだから作ってみたのよね…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「うわぁぁ〜!!カラフルでかわいい〜!!」


ニーナは袋を開けて中に入っていたマカロンを見て目を輝かせて言った。


「お兄様見て!可愛いでしょ?」


ニーナは嬉しそうにヨハネスへ言った。


「あぁ。そうだな。本当にアイラはニーナが喜びそうなものをよく解っているね。」


ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。


「おねえさま!食べてみてもいい?」


ニーナは目を輝かせて言った。


「えぇ。」


アイラは微笑みながら言った。


そして…ニーナがマカロンを1つ手に取り口へ運んだ。


「んん!!?ん〜おいひいわ…。口に入れた瞬間口の中でふわっと溶けて甘さが口の中に広がるわ!」


ニーナはマカロンを一口食べてほっぺが今にも落ちそうといわんばかりの表情で言った。


「ふふ…気に入ってもらえたようで良かったわ。」


アイラはニーナを見てくすくす笑いながら言った。


「あ…そうだ。ニーナ…食べているところ悪いのだけれどもう一つのお土産を渡してもいいかしら?」


アイラがハッとなり言った。


そんなアイラにニーナがマカロンを食べながら頷いた。


「これなの。開けてみてちょうだい。」


アイラはマカロンとは別の袋をニーナへ手渡しながら言った。


ニーナは袋を受け取ると頷きながら袋を開けて中身を取り出した。


「うわぁ…可愛い…。」 


ニーナは取り出した中身を見て言った。


袋の中身は髪飾りだった。


「実は…その髪飾りは…私とお揃いなのよ…。ほら…。」


アイラは少し照れくさそうに微笑みながら自分の頭を指さしながら言った。


「わぁ〜本当だ!アイラおねえさまとお揃いの髪飾りだわ!」


ニーナは嬉しそうに微笑みながら言った。


「もちろんアイラおねえさまの手作りなのよね?」


ニーナは笑顔で言った。


「えぇ。」


アイラは笑顔で頷きながら言った。


「本当に…アイラおねえさまは何でも可愛く作れるのね!」


ニーナは感心しながら言った。


「実はね…先日ローズさんから私とローズさんのお揃いの髪飾りを貰ったの。それを貰った時にとても嬉しくて…ニーナともお揃いの髪飾りがつけたいなとその時に思ったの。だから…思い切ってお揃いの髪飾りを作ったの。」


アイラが照れくさそうに言った。


(ニーナは妹みたいと私が一人で勝手に思ってるからそんなニーナとお揃いのものを着けて出かけたらより楽しいだろうな…って思ったのよね…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「アイラおねえさまがそんな事を考えてくれたなんて嬉しすぎるわ…。この髪飾り大切にするし今度この髪飾りを着けてお出かけしましょう!」


ニーナはにこにこと嬉しそうに言った。


「えぇ。そうしてくれたら嬉しいわ。」


アイラは嬉しそうに言った。


「ニーナだけずるいな…。せっかくなら私とアイラのお揃いの物も作ってくれたら良かったのにな。」


ヨハネスは少し不貞腐れた表情で言った。


(ニーナとアイラが仲良くなるのはいいことだが…いつもニーナにばかりで妬けるな…。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「え…?あ…そんな…。そんなおこがましい事などできませんから…。」


アイラは思わず慌てて言った。


(実は…ネックレスのお礼にとヨハネス様とお揃いのブレスレットも作ったのだけど…渡す勇気がなくて家に置いてきたのよね…。おこがましいって気持ちもあったし…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「おこがましくなんてないさ!アイラからプレゼントしてもらえるなら何個だって欲しいくらいさ。」


ヨハネスは優しく微笑みながら言った。


(アイラから貰った物なら何だって私の宝物になるからな。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「ヨ…ヨハネス様…あまりからかわないで下さい!」


アイラは慌てて言った。


(そんな事言われたら本気にしちゃいそうになるわ…。ヨハネス様は面白半分で言っているのだろうけど…。)


アイラはそんな事を考えていた。


「え〜本当なのにな。まぁ…いいさ。いつかその気になったら作ってくれるかい?」


ヨハネスはアイラの慌てぶりを見てふっと微笑みながら言った。


「……は…はい。」


アイラは少し照れくさそうにしながら頷いて言った。


(私に渡せる勇気が出るといいのだけれど…。)


アイラはそんな事を考えていた。


その後も3人で楽しくお茶を飲みながら会話を弾ませていた。


あっという間にアイラが帰る時間になった。


「今日は…本当にありがとうございました。とても楽しい時間を過ごす事が出来ました。」


アイラが玄関先で微笑みながらヨハネスとニーナへ言った。


「こちらこそ…とても楽しい時間を過ごす事が出来たよ。よかったらまた遊びに来てくれると嬉しいな。」


ヨハネスが微笑みながら言った。


「え?あ…はい。ご迷惑でなければ…またお邪魔させて頂けるなら私も嬉しいです。」


アイラは照れくさそうに言った。


(ニーナや公爵夫婦にもだけど…ヨハネス様とこうして話せる時間があるのはとても嬉しいから。)


アイラはそんな事を考えていた。


「まったくもって迷惑などではないからね。」


ヨハネスは優しく微笑みながら言った。


(むしろ…毎日来てくれてもいいほどだ…。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「はい…。ありがとうございます。」


アイラは微笑みながら言った。


「おねえさま…私もおねえさまがニーナの家に遊びにきてくれるのは大歓迎だからね!」


ニーナは嬉しそうに言った。


「えぇ。ありがとう。」


アイラは微笑みながら言った。


「では…私はこれで失礼します…。」


アイラが頭を下げながら言った。


「あぁ。気をつけて。」


「おねえさま気をつけてね!」


ヨハネスとニーナが言った。


そんな二人にアイラは頷きながら微笑んだ。


そして…アイラはグラマー公爵邸を後にしたのだった。




アイラがグラマー公爵邸へ訪れた日から四日後…

ガルバドール侯爵邸へ王太子であるレオンの誕生日パーティーの招待状が王室からガルバドール侯爵家宛とは別にレオン個人からアイラ個人へ届いたのだった…


招待状が届いた時のアイラはまさかこのレオンの誕生日パーティーがプリラブMの最終イベントだとは知る由もなかった……


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