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28.攻略対象者の愛の戦いモブは知らず

その日…ヨハネスはガルバドール侯爵邸へ訪れていた。

アイラが不在の時を狙いやってきていた。


ヨハネスはガルバドール侯爵夫婦へアイラを自分の妻に貰いたいとお願いする為に訪れていた。

アイラとヨハネスが出かけた際にアイラがつけていたネックレスを見た時からスミスとマリは近くヨハネスが訪れるだろうと思っていた。


ヨハネスはスミス、マリ、カイルがいる応接室へ通された。

 

「今日は訪問を快く受け入れて頂き感謝します。」


ヨハネスがにこりと微笑みスミス達へ言った。


「いえ…。近々ヨハネス様が訪れるであろうと思っていましたので。」


スミスが言った。


「…そうでしたか…。では…アイラのつけている宝石を見て頂いたのですね。」


ヨハネスはにこりと微笑み言った。


「えぇ。」


スミスは頷きながら言った。


「見て頂いたのであれば話が早いですね…。」


ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。


「ヨハネス…いくらなんでも君の行動は突発すぎるぞ?ヨハネスのアイラへの気持ちは理解しているが自分の瞳の色の宝石を贈る事に何の意味があるか知らないアイラにこんな形で渡すとは…。」


カイルがどこか不満気な表情でヨハネスへ言った。


「別に突発ではない。前々からアイラには渡そうと決めていた。だからアイラに贈る宝石は前々から作らせていたんだ。それを渡すタイミングが先日だったという話だ。」


ヨハネスはカイルにフッと笑みを浮かべながら言った。


「だとしてもだ!何も知らないアイラは実はその宝石が相手が自分のものだと周りに証明する為に贈ったものだと知ったらアイラが混乱してしまうだろ。」


カイルは呆れた表情で言った。


「心配しなくても…私は絶対にアイラをそんな事で困らせたりはしないさ。」


ヨハネスは自信満々の表情でカイルへ言った。


そんなヨハネスを見てカイルはため息をついてそれ以上言うのをやめたのだった。


「それで…今日お話があるというのは…やはり…。」


すると…スミスが少し躊躇い気味にヨハネスへ言った。


「はい。侯爵の思っている通りのお話だと思います。今日は私とアイラの結婚を承諾して頂きたくまいりました。」


ヨハネスは余裕のある表情で微笑みながら言った。


「そうですか…やはり…そのお話でしたか…。」


スミスはやっぱりなという表情で言った。


(ヨハネス様が訪ねてくる時点で話の内容は予想がついたが…いざ…面と向かって言われると戸惑ってしまうな…。)


スミスはそんな事を考えていた。


「はい。私は自分の妻がアイラ以外など考えられません。アイラと結婚したあかつきには…必ずアイラを幸せにすると誓えます。アイラ本人の承諾はもちろんです。しかし…どうか侯爵…侯爵夫人…カイル…アイラの家族である三人にもアイラとの結婚を承諾して頂きたいのです。」


ヨハネスは真剣な表情でスミス達三人へ言った。


(アイラはきっと…家族に心から歓迎されての結婚を望むだろう…。アイラが家族を大切に思っているのは知っているからな。そうなると絶対に三人の承諾は不可欠だ。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「アイラは…。自分の事よりも相手の事を考える様な優しい子です。貴族の娘ですが街へ出ては平民達と過ごす事に躊躇いもせずその時間を楽しむ様な子です…。貴族の娘なので政略的な結婚もありえることです。ですが…私達家族はアイラにはいつも笑ってアイラがやりたい事をして過ごし…本当に幸せな結婚をして欲しいと思っています…。」


スミスはどこか切なそうな表情で言った。


「実は…一昨日…王太子殿下がこちらへ来られてアイラを王太子妃候補に推薦したいとのお話を受けました…。 


スミスは悩んだ表情を浮かべた後に口を開き言った。


(なんだと?!殿下直々に侯爵へアイラを王太子妃候補に推薦したいと言っただと?!まさか…殿下直々に動くとは…予想外だな。殿下もアイラに気がある事は知っていたが…本気でアイラを王太子妃にしようとしてるんだな。)


ヨハネスはスミスの言葉を聞いて内心少し混乱気味に考えていた。


「あなた…そのお話は…!」


マリがスミスの言葉を聞き慌てて言った。


「そうです!父上!その件は口外しては…!」


カイルも思わず慌てて言った。


「……落ち着いてくれ…。口外してはいけない事はわかっている…。口外したことで罰を受けるのであれば私は謹んで罰を受けよう…。罰を受けてでも娘の…アイラの幸せを心から願っているのだ…。」


スミスは切ない笑みを浮かべて慌てるマリとカイルへ言った。


「……それで…殿下はその後なんと?」


ヨハネスは少し眉間にしわを寄せながらスミスへ言った。


「殿下は…。」


スミスは意を決した表情でヨハネスへ話し始めた。


〜スミス回想〜


「侯爵…連絡もなしに突然訪ねてすまないな。」


レオンがジェシカと遭遇した日…

レオンはジェシカを帰した後にガルバドール侯爵邸へ向かっただった。


そしてレオンはスミスへ突然訪ねた事に謝っていた。


「い…いえ…。構いません。本日は休暇日でしたので。それより…我が邸にまでお越しになり一体どの様なご要件で?」


スミスは少し戸惑うもすぐに冷静になりレオンへ尋ねた。


「……。実は…侯爵と侯爵夫人に話があるのだ。」


レオンが少し緊張気味な面持ちでスミスとマリへ言った。


「話というのは…一体…?」


スミスがレオンの表情を見て緊張気味に言った。


「それは…そなたらの娘のアイラを我が王太子妃候補として推薦したいと思い侯爵達へその許可を貰いにきたのだ。」


レオンは意を決した表情でスミスとマリへ言った。


「アイラを…王太子妃候補にですか?」


スミスは驚いた表情で言った。


スミスの横にいたマリも驚いた表情をしていた。


二人が驚くのも無理はなかった。


ガルバドール侯爵家は王室に対して王太子妃候補として自分の娘の名を掲げていなかったからだった。

すでに王太子妃候補として名が上がっている貴族令嬢は数名いた為スミス達はもちろんその中の誰かが王太子妃に選ばれると思っていたからだった。


「あぁ。私はアイラを推薦したいと思ってるのだ…。」


レオンは真剣な表情で言った。


(殿下自ら王太子妃候補を推薦するという事は…推薦した令嬢に対して個人的な感情が混じっているという事…。つまり…殿下はアイラの事を…。)


スミスはレオンの言葉を聞きそんな事を考えていた。


「…殿下がアイラを王太子妃候補に推薦するということは…つまり…殿下は娘を…アイラの事を想ってくださっていると解釈してもよろしいのでしょうか?」


スミスはとても真剣な表情でレオンへ言った。


「あぁ。そう解釈してくれて構わない…。私はアイラへ想いを寄せているのだ…。」


レオンはスミスを真っ直ぐ見て言った。


(まさか…殿下がアイラを…。いや…殿下までもがアイラを…か…。)


スミスは複雑な思いでそんな事を考えていた。


「そうですか…。」


スミスは複雑な思いのまま言った。


「あぁ。母上も私がアイラを王太子妃候補に推薦する事に賛成して下さっている。父上も話をすれば快く受け入れてくださるだろう。」


レオンが言った。


「王妃様も…賛成して下さっているのですか…。」


スミスは更に複雑そうな表情で言った。


(王妃様までアイラを気に入って下さっているのか…。きっと王妃様のことだ…。アイラが王太子妃に選ばれたとしてもアイラのことを良くしてくださることだろう…。しかし…。)


スミスはそんな事を考えていた。


マリも複雑そうな表情を浮かべていた。


「だが…まずはアイラの両親である侯爵と夫人へ私自身の口から話をしておきたかったのだ。」


レオンは真剣な表情で言った。


「わざわざ殿下自ら足を運んで頂きお話頂いた事…感謝申し上げます…。」


スミスは丁寧にレオンへ言った。


「しかしながら…。」


スミスは複雑な表情を浮かべて言った。


「しかし…何だ?」


レオンは予想外のスミスの言葉に驚き言った。


「アイラは…とても心優しい子です…。」


スミスが言った。


「知っている…。アイラはいつも自分の事よりも相手の事を心配する様な優しい娘だ…。そこも私が心惹かれたところでもある。」


レオンはまるでアイラを思い出すかの様に優しい表情で言った。


「ですから…きっと王室から王太子妃候補としての命が下れば…その命に何の文句も言わず従うことでしょう…。」


スミスは複雑な表情で言った。


「何が…言いたいのだ…?」


レオンは一瞬眉間をピクリと動かし言った。


「貴族の令嬢であれば王太子妃候補に選ばれ…王太子妃になり殿下の横に立つ事は夢であるでしょう。アイラももしも…王太子妃となったあかつきには立派に王太子妃としての公務を全うするでしょう…。しかし…アイラにとってそれが本当の幸せなのかはわかりません…。」


スミスは真剣な表情で言った。


そんなスミスの話をレオンは真剣に聞いていた。


「アイラも貴族の家の娘です…。貴族同士の政略的な事にも巻き込まれ事がないとも言えません…。しかし…アイラには幸せな結婚をして欲しいと思っています。いつも自分の事より相手…というアイラには結婚は本当にアイラ自身が心から望むものであって欲しいと私も妻も息子も願っているのです…。」


スミスは父親の顔を浮かべてレオンへ言った。


「…………。」


レオンはスミスの言葉を聞き黙っていた。


「殿下が直々にお越し下さったにも関わらず不躾な物言いをしてしまい申し訳ありません…。しかしながら私の思いは変わることはありませんので…。不快に思い罰をくだされるのであれば謹んでお受けいたします…」


スミスはとても冷静にレオンを真っ直ぐ見て言った。


そんなスミス達にレオンはフッと笑みを浮かべた。


「私としたことが…。そうだな…。侯爵の言う通りだな。私は自分自身の欲を出してしまっていたな…。確かにアイラの事だ…。きっと王命として王太子妃候補に選ばれたら文句も言わず自分の気持ちなど無視して命に従っていただろう…。しかし…その命を受けたのはアイラ自身の意志ではないからな…。」


レオンは自分に呆れた様に呆れた笑いを浮かべて言った。


「一番大切なのは…アイラ自身の気持ちだという事を忘れてしまっていたよ…。」


レオンは少し切ない表情で言った。


「殿下…。」


スミスはそんなレオンを見て言った。


「侯爵達のお陰で大事な事を再確認出来た。ありがとう…。」


レオンはバツが悪そうに笑いながら言った。


「い…いえ…。そんな…!」


スミスは慌てて言った。


「アイラは侯爵達からもこんなにも愛されているのだな…。まぁ…だが…アイラを愛さずにはいられない気持ちはよくわかるな。」


レオンは笑みを浮かべて言った。


「殿下…。不躾な事を言っておいてなんですが…娘の事を大切に想って頂きありがとうございます。」


スミスは優しく微笑みながら言った。


「あぁ…。」


レオンも優しく微笑みながら言った。


「よし…!一先ず…今日のこの話は侯爵達のところで止めておいてくれ…。だが…この先…アイラの気持ちを尊重して心からアイラが私の事を受け入れてくれた際は快く私の申し出を受け入れてくれるか?」


レオンはニヤリと微笑みながら言った。


「はい…。その際は謹んでお受け致します。」


スミスは微笑みながら言った。


マリも優しい笑みを浮かべていた。


「あぁ…そうだ…。もしや…私以外にもアイラへの求婚の承諾を得に来ている者はいたりするのか…?」


レオンは目を細めてスミスへ尋ねた。


(ヨハネスもアイラを想っていることは知っているからな…。ヨハネス…あの者が動かないとは思えないからな。)


レオンはそんな事を考えていた。


「あ…それは…ですね…。」


スミスはレオンの言葉を聞きバツの悪そうな表情を浮かべて言った。


「いるのか?」


レオンが更に聞いた。


「いえ…承諾を得に来られたのは殿下だけでございます…。」


スミスは苦笑いを浮かべて言った。


(ヨハネス様がアイラへ自分の瞳の色と同じ宝石を贈った様だが承諾を得には来てないからな…。ただ…それは今…だけの事だろうな…。しかし…今の段階で我々の承諾を得に来たのは殿下だけなのは間違ってはないからな…。)


スミスは苦笑いのままそんな事を考えていた。


「……そうか…。」


レオンは何か考える様な表情で言った。


(侯爵の反応を見る限り…ヨハネスが侯爵達へ婚約や結婚などの承諾を求めには来ていない様だが…何かしらアイラに対して動きを見せたに違いないな…。)


レオンはそんな事を考えていた。


「あぁ…そうだ。一ヶ月後に行われる私の誕生日パーティーの招待状をアイラには私から送らせてもらっても構わないだろうか?侯爵夫婦とカイルへは王宮から招待状が届くだろうからな…。」


レオンがスミスへ言った。


(アイラへの招待状は殿下直々にか…。まあ…周りへはアイラが殿下の

直々に招待状を貰う事は招待状の封筒さえ見られなければ知られないだろうから大丈夫であろう…。それに王太子妃候補の件についても先程話をしたからアイラの気持ちを殿下は尊重して下さるだろうから特にその件に触れる事はないだろうから大丈夫だろう…。)


スミスはそんな事を考えていた。


「はい。招待状についてはそれで構いません。」


スミスがレオンへ言った。


「そうか。ありがとう。では…アイラには私から招待状を送らせてもらうことにしよう。」


レオンはにこりと微笑みながら言った。


「承知致しました。」


スミスが言った。


「そうだ…。話は変わるが誕生日パーティーにはジェシカ嬢も参加すると思う。私も厳重にジェシカ嬢を警戒するし警備体制も私の方から強化する様に伝えるつもりでいる。しかし…ジェシカ嬢は侮れない令嬢だから侯爵達も十分に警戒の方を頼む。このところは学園でも特にジェシカ嬢がアイラに接触する事はない様だが油断は禁物だ。」


レオンは真剣な表情になりスミスとマリへ言った。


(先程も…急に私を訪ねてるからな…。恐らく私の誕生日パーティーが近づいているのもあり自分が王太子妃に選ばれると思って私に媚を売りに来たのだろうが…。野心が強いジェシカ嬢が今大人しいのは何かの考えがあってだろうから油断はできないな…。)


レオンはそんな事を考えていた。


「殿下のお心遣い心から感謝申し上げます…。常にバーレン公爵令嬢がアイラに対して何か害を与えるのではないかと妻もカイルも神経を尖らせています…。二度とアイラが酷い目に遭わない様に我々も続けて警戒する所存です。」


スミスはグッと拳を握りながら真剣な表情で言った。


「あぁ。もう…二度とアイラが危険な目に遭わない様にしよう…。」


レオンは眉をひそめながら言った。


「はい。」


スミスは頷きながら言った。


横にいたマリも真剣な表情で頷いた。



〜回想終了〜



「と…その様な事があったのです。」


スミスがレオンが侯爵邸へ訪れた日の話をヨハネスへし終えた。


「そうだったのですね…。」


ヨハネスは考える様な表情で言った。


(まさか…殿下直々に侯爵達へ会いに来てそんな話をしたとはな…。教会での出来事がありより一層アイラに対する気持ちが増したんだろうな。私の様に…。殿下はアイラを王太子妃として迎えたいと思っているのは薄々感じていたが…思いの外行動に出るのが早かったな…。)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「ですが…何故…口外してはいけない殿下の話を罰を受ける覚悟までして私に話して下さったのですか?」


ヨハネスが言った。


「……殿下にも申した通り…ヨハネス様にも同じことをお伝えしたかったからです…。殿下もヨハネス様も同じ様にアイラを想ってくださりアイラを妻に迎えたいと仰って下さってます…。しかし…王太子殿下だから…公爵家の息子だから…といった理由で私が独断で判断したくないという事とどちらも身分の高い方ですが…やはり私は…私達家族はアイラ自身の気持ちを尊重して幸せな結婚をして欲しいのです。ですので…ヨハネス様のアイラへ対するお気持ちは重々承知ですが…殿下同様…ヨハネス様にアイラ自身の気持ちを尊重して頂きたいのです…。父親としての私の気持ちはただそれだけなのです…。不躾な事を言っているのは承知の上ですが今この場でヨハネス様とアイラの結婚を承諾する事はできません…。」


スミスは迷いない目で真っ直ぐヨハネスを見て言った。


「あなた…。」


「父上…。」


そんなスミスの言葉を聞いてマリとカイルはスミスを見て呟いた。


「…失礼ながら…私も主人と同じ気持ちでございます。」


マリがヨハネスを真っ直ぐ見て言った。


「母上…。」


カイルがマリを見て呟いた。


「……。侯爵や夫人のお気持ちはよく…分かりました。確かにお二人の言う通りアイラ自身の気持ちが一番大切ですね。」


ヨハネスは少し間を空けた後にスミスとマリへ言った。


「分かりました…。今後はアイラの気持ちを尊重してどうするか決めようと思います。たとえ…アイラの気持ちが私に向かないとしても…それはそれで綺麗さっぱりアイラの為に諦めようと思います。」


ヨハネスはどこか切ない表情で言った。


「ヨハネス様…御理解頂き感謝致します…。」


スミスが申し訳なさそうに言った。


「いえ…。ですが…もしもアイラが私を本心からは受け入れてくれた際は結婚の承諾は必ずしてくださいね。」


ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。


「はい…。その時は快く承諾させて頂きます。」


スミスは微笑みながら言った。


「ありがとうございます。」


ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。


「あ…!今度…アイラを我が公爵邸へ招こうと思っているのですがそれは招かせてもらってもいいですか?妹のニーナもアイラに自分の部屋を見せたいと楽しみにしていますので…。」


ヨハネスが思い出した様に言った。


「それは構いません。アイラもきっとニーナ様にお会いするのを楽しみにしているでしょうから。」


スミスは微笑みながら言った。


「そうですか。ありがとうございます。ニーナも喜びます。」


ヨハネスは微笑みながら言った。



その後…ヨハネスはスミス達との話を終えて帰ろうとしていた。

馬車までカイルが見送りに付き添っていた。


「ヨハネス…父上の話を受け入れてくれて感謝するよ…。」


カイルが改めてヨハネスへ言った。


「いや…私の方こそ一番にアイラの気持ちを考えなければならないのに先走ってしまった様だ…。侯爵達の言い分は娘を持つ親としては当然の事だ。」


ヨハネスはふっと笑みを浮かべて言った。


「そう言ってもらえると助かるよ…。」


カイルはホッとした表情で言った。


「あぁ。」


ヨハネスはふっと微笑みながら言った。


そしてヨハネスは馬車に乗り帰っていった。


(ふぅ〜…。侯爵達がアイラの事を大切にしているのは知っていたが…まさか結婚の承諾を保留にされるとはな…。確かにアイラの気持ちが一番大切なのは間違いないが…。よりによって殿下も同時期に私と同じ行動をとるとはな…。アイラに自分の瞳の色の宝石を贈ったからといって油断はできなくなったな…。)


ヨハネスはため息をつきながら馬車の中でそんな事を考えていたのだった。


(アイラの気持ちはもちろん大切だが…だからといってアイラを他の男に渡すなど想像もしたくない…。一先ず早めにアイラを我が邸に招こう。)


ヨハネスは深刻そうな表情でそんな事を考えていたのだった…




ヨハネス達の状況などまったく知らないアイラはその頃……


ハンドメイドの新作商品を納品する為に王都の街へ訪れていた。


「サリーさんこんにちは。」


アイラがサリーへ笑顔で挨拶をした。


「アイラさんこんにちは。」


サリーも笑顔でアイラへ挨拶をした。


「今日は新作の商品を持ってきました。」


アイラは笑顔で言った。


「新作ですか?一体どんな物なのですか?」


サリーは目を輝かせて言った。


「赤ちゃん小物や赤ちゃん服に親子でお揃いで着ることの出来るお揃い服です。」


アイラは持ってきた商品を鞄から出しながら言った。


「まぁ…これは…!何て可愛いくて素敵なのかしら!」


サリーはアイラが鞄から出した商品を見て目を輝かせて言った。


「これは何ですか?」


サリーが小物を指差して言った。


「これは…振ると音がなるものです。赤ちゃんが泣いた時にあやしたり、赤ちゃんが一人遊びする時に使ったりするものになります。」


アイラがサリーへ説明した。


「音が鳴るのですか?!」


サリーは驚いた表情で言った。


「はい。中に鈴が入っていますので!ほらね?」


アイラは小物を振って音を鳴らして見せながらサリーへ言った。


「うわぁ〜本当ですね!こんな赤ちゃんに使うもの初めて見ました!」


サリーはとても珍しいものを見るように驚きながら言った。


(それはそうでしょうね。これは前世の知識を活かして作ったものだしね。この世界に赤ちゃんをあやすグッズみたいなものが平民の間では高価な物でなかなか買えないからね…。それなら手作りなら安価に提供出来るって思ったのよね。)


アイラはサリーの反応を見ながらそんな事を考えていた。


「そうでしょう?貴族などが子供に使っているものともまた違う感じのものなのです。中の鈴以外は布と綿を使っているので赤ちゃんが口に入れてしまっても安全なものになっています。万が一噛んでしまい破れて中身が出てしまって赤ちゃんが誤飲してしまわない様に表地は三重に重ねた上にしっかり縫いつけてありますので安心して使って頂けます。」


アイラはサリーへ丁寧に説明した。


「そんな細かいところまで気を使ってるのですね…。」


サリーは感心した表情で言った。


「赤ちゃんの物は安全性を重視しなければならないと思いましたので。それにこれなら布で手作りしていますので街の方々に安価で販売できますので。」


アイラは笑顔でサリーへ説明した。


「確かに…貴族の方々が使用されている赤ちゃん用品は高価なものばかりですし基本的は特注の物ばかりですので平民である我々には手の届くものではありません…。ですので…アイラさんがお作りなったこの商品を安価で販売させて頂けるなんてとても光栄に思います。きっと皆さん凄く気に入って購入して下さいます。」


サリーが嬉しそうに言った。


「そうだといいと思っています。他にも違う種類のあやす物や赤ちゃんの着替えをさせやすい服…親子でお揃いで着れる服を何点か持ってきましたので。売れ行きが良さそうであれば追加で作らせて頂きますのでその際は仰って頂けたら作業を進めますので。」


アイラはにこりと微笑みながら言った。


「はい。ありがとうございます。本当にアイラさんが作る商品はどれも人気ですぐに売り切れてしまうのできっと今回もすぐに売り切れてしまうでしょうから是非追加の物を作って頂けると助かります。」


サリーは嬉しそうに言った。


「分かりました。では…作業は時間を見つけて進めておきますね。」


アイラは笑顔で言った。


「はい。」


サリーは嬉しそうに言った。


(あぁ…本当に前世の頃を思い出すな。こうやって委託先に納品して自分の商品がまた色んな人の手に渡るのが本当に嬉しいな…。これからもこんな風に大好きなハンドメイドをしながら生活していきたいな…。)


アイラはそんな事を考えていたのだった。



その後アイラはサリーと共に新商品のディスプレイを進めた。


そして…アイラはふと時計を見た。


「わっ…!もうこんな時間!」


アイラは時計の時間を見て思わず驚き言った。


「アイラさんどうされたのですか?」


サリーがそんなアイラを見て慌てて言った。


「今日この後に知り合いとお茶をする約束をしているのです。その方との待ち合わせ時間まであと十分程しかないのです。」


アイラは慌てながら言った。


「あら…!それは大変!こちは私に任せてアイラさんは待ち合わせ場所へ急いで下さい。」


サリーが慌てて言った。


「本当ですか…?では…申し訳ありませんが残りのディスプレイをお願いします…。」


アイラは申し訳なさそうに言った。


「そんな事気にしないで下さい!さぁ!急いで!」


サリーは笑顔でアイラへ言った。


「ありがとうございます。では…お言葉に甘えさせて行ってきます。」


アイラはサリーにそう言うと急ぎ足で店を出て待ち合わせ場所へと向かった。


そしてアイラが待ち合わせ場所に着くとそこには一人人物が立っていた。


「ローズさん!」


アイラはローズの姿を見るなり言った。


アイラが待ち合わせをしていた相手はローズだった。


「アイラ!」


ローズは笑顔で言った。


「はぁ…はぁ…。お待たして申し訳ありません…。」


アイラは息を切らせながら申し訳なさそうに言った。


「大丈夫よ。私も今着いたところだから。」


ローズはにこりと微笑み言った。


「さぁ…お店に入って息を落ち着かせましょう。」


ローズは微笑みながら言った。


「はい。」


アイラは頷きながら言った。


そして…二人はお茶をする為に店の中へ入った。

そして…頼んだティーセットがくるとお茶を飲み始めた。

 

「息切れは落ち着いた?」


ローズがアイラへ言った。


「はい。」


アイラは頷きながら言った。


「そんなに慌てて来ることなかったのに。」


ローズはくすくす笑いながら言った。


「お待たせする訳にはいきませんから。」


アイラは慌てて言った。


「相変わらず律儀ね。」


ローズは微笑みながら言った。


「ローズさん!今日はお誘いありがとうございます。お誘いの手紙をもらって嬉しかったです。」


アイラは嬉しそうに言った。


(この前は二人だけのお茶会をジェシカに邪魔されちゃったからね…。次の機会を考えてたらローズさんから誘ってくれたから嬉しかったのよね。)


アイラはそんな事を考えていた。


「そう言ってくれると誘って良かったわ。」


ローズは微笑みながら言った。


「はい。」


アイラも微笑みながら言った。


「今日はね…アイラに渡したい物があるの。」


ローズはそう言うとアイラの前にリボンがしてある箱を置いた。


「これは…?」


アイラは不思議そうに言った。


「開けてみて…。」


ローズはにこりと微笑みながら言った。


ローズにそう言われ頷いたアイラはそっと箱のリボンを解いて箱の蓋を開けた。


「わぁ〜〜!」


箱の蓋を開けたアイラは箱の中身を見て思わず声を上げた。


「きれい…。」


アイラは箱の中身を見て思わずうっとりした表情で呟いた。


「気に入ってもらえたみたいで良かったわ。」


ローズはアイラの反応を見て嬉しそうに言った。


「はい。とっても気に入りました。きれいでとても素敵なデザインの髪飾りです。」


アイラはにこにこしながら嬉しそうに言った。


「そうでしょ…?実はね…これ私とお揃いなのよ。」


ローズは照れ笑いを浮かべて言った。


「え?!ローズさんとお揃いなのですか?!わぁ〜そんな…!とっても嬉しいです。」


アイラはローズの話を聞き目を輝かせながら言った。


(まさか…プリラブMのヒロインとお揃いの物を貰える日がくるなんて…。私みたいなモブキャラに…。)


アイラはジーンとなりつつ考えていた。


「ふふ…。そんなに喜んでくれるなんて私まで嬉しくなるわ。」


ローズは嬉しそうに言った。


(こんなに喜んでくれるなんて…。ジェシカ様がお茶会で見た私達の仲を見て考えて下さって…私とアイラの事を考えて選んでわざわざ贈って下さって…更には自分が贈った事は伏せて私がプレゼントする形にしてあげてくださいとメッセージまで添えて下さって…。こんなに良くして下さったジェシカ様には感謝しないといけないわね。)


ローズはそんな事を考えていた。


「本当にとても嬉しいです。ローズさん本当にこんな素敵なものありがとうございます。」


アイラは満面の笑みでローズへ言った。


「いいのよ。私もアイラとお揃いの物が着けれるなんてとても嬉しいから。早くお揃い着けて出かけたいわね。」


ローズがにこりと微笑みながら言った。


「はい。早くお揃いで着けるのが待ち遠しいです。」


アイラは笑顔で言った。


そんな嬉しそうなアイラを見てローズは優しく微笑んでいたのだった。


その後も二人はお茶を飲みながら夕方まで楽しく時間を過ごしたのだった。



その日の夜…アイラはローズから貰った髪飾りをカイルへ自慢していた。


「お兄様これを見てください。今日ローズさんとお茶をした際にローズさんがプレゼントしてくれたのです。とても綺麗な髪飾りでしょ?」


アイラは嬉しそうにカイルへ言った。


「ローズがこれを?確かにとても綺麗だな。何よりアイラの顔を見ると嬉しいのが伝わってくるよ。」


カイルは少し驚いた表情を浮かべるもすぐに笑みを浮かべて言った。


「ふふ…。だって実際にとても嬉しいですから。それにこれ…ローズさんとお揃いなんですよ。」


アイラは嬉しそうに言った。


「そうなのか?私ですらローズとお揃いの物をまだ身につけていないというのに…。何だか妬けるな。」


カイルは笑みを浮かべながら言った。


「是非…お兄様もローズさんとお揃いの物を身に着けてください!」


アイラはにこりと微笑みながら言った。


「ハハ…そうだな。」


カイルは笑いながら言った。


「早くお揃いで着けれる機会が来ればいいな〜って思います。」


アイラは嬉しそうに言った。


「そうだな。」


カイルはそんなアイラを見て微笑みながら言った。


(ローズが私に前もって何も言わずアイラへプレゼントをしたのか…。ローズが私に何の相談もなくそんな事をするのは珍しいな…。ローズに会ったら話してみるか…。)


カイルはふとそんな事を考えていたのだった。


この日アイラはローズから貰った髪飾りをベッド横の台の上に置いてベッドへ入った。


(少し前にはヨハネス様から素敵なのネックレスをプレゼントしてもらって…今日はローズさんから素敵な髪飾りをプレゼントしてもらって…。何だかモブキャラの私がメインキャラからプレゼントしてもらうなんて変な感じだわ…。でも…とても嬉しいな…。)


アイラは幸せな気持ちになりそんな事を考えながら眠りについたのだった……


ご覧頂きありがとうございます★


他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★


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ヤンデレ公爵令息の溺愛ストーカー日記♡転生令嬢の破滅回避生存日記☆(※不定期更新)



私が悪役令嬢?!…ならばシナリオ無視して全力で推しを守り愛し共に幸せになる所存です!!

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