24.モブ…赤い実はじけました
アイラが目を覚ました…
「アイラ?!気がついたか?!」
ヨハネスがアイラが目を覚ました事に気づき焦り心配そうな表情でアイラへ言った。
「ん…ヨハ…ネス様……?ここは……?」
アイラは弱々しい声でヨハネスへ言った。
(ヨハネス様が…何故いるのかしら…。あぁ…そうか…。あの火の中からヨハネス様が…助けてくれたんだったな……。)
アイラはそんな事を考えていた。
「あぁ…。私だ…。あぁ…目を覚ましてくれて本当に良かった…。ここは教会にある一室だよ。アイラが意識をなくした後にここへ運んできたんだよ。」
ヨハネスは何とも言えない表情で本当に心から安堵した様にアイラの手を握りながら言った。
「あの…私と一緒にいた男の子は…大丈夫ですか…?」
アイラは少年を心配しながらヨハネスへ尋ねた。
「あぁ。あの少年なら大丈夫だよ。医者に診てもらったらところ少し擦りむいたりはしていたが煙を深く吸ってなどはいないようだ。今は気持ちも落ち着いてるそうだ。」
ヨハネスがアイラへ説明した。
「そう…ですか…。良かったです…。本当に…。」
アイラはホッした表情で言った。
(本当に…良かった。ちゃんと皆の所へ戻れたのね。精神的なショックもそれほど大きくはない様で良かったわ。もしあの子に何かあったらと思うと怖かったから…。あぁ…あの子が無事だったと聞いたら急に自分の怪我の痛みを感じるわね…。)
アイラはヨハネスの話を聞き自分の怪我の痛みを感じつつそんな事を考えていた。
(アイラ…君は本当に自分の事より人の事を心配するんだな…。君の方が怪我を負っているというのに…。こんな目に遭ったというのに…。)
ヨハネスはアイラの怪我を見てそんな事を考えていた。
「ところで…どうしてここへヨハネス様が…?」
アイラはふと疑問に思ったことをヨハネスへ尋ねた。
「あぁ…それは…だな…実は我が公爵家もこちらの教会へ少しばかりだが寄付しているんだよ。それで…今日は直接寄付金を持ってきたところ…アイラと一緒にいた少年が必死にシスター・ラムの所へ走ってきてちょうどシスター・ラムと一緒にいた私が少年から話を聞きすぐにアイラの元へ駆けつけたんだよ。」
ヨハネスは少しばかり誤魔化す様にアイラへ説明した。
(実は…殿下と入れ違いでアイラの護衛に来たのだけれどそうは言えないからな…。)
ヨハネスはアイラに説明しつつそんな事を考えていた。
「そう…だったのですか…。」
アイラが言った。
「ヨハネス様が居なければ…私は…今頃……。」
アイラは急に自分の置かれていた状況を思い出し恐怖を感じながら少し声を震わせながら言った。
(プリラブMの世界に転生してから自分が危険な目に遭ったのは初めてじゃないけど…今日の事は本当に怖いと思った…。もし…あのままヨハネス様が来てくれなければ…私は…間違いなく死んでたから…。一度死んでるとはいえ熱くて苦しくて…思い出すと体が勝手に震えてくるほどに怖かった…。)
アイラは自分の体が震えてのに気づき必死で震えを抑える様に考えていた。
すると…
ガバッ……
(えっ……?)
アイラは突然の出来事に驚いた。
それは…ヨハネスがアイラを優しく抱きしめたのだった。
「ヨ…ヨハネス…様?」
アイラが驚き言った。
「……アイラが震えていたから…。」
ヨハネスがアイラを抱きしめながら言った。
「あっ………。」
アイラはハッとなり言った。
(そんなに分かるくらい震えていたの?でも…どうしてだろう…ヨハネス様の体温が伝わってきて…気持ちが落ち着いてくるのがわかるわ…。)
アイラはヨハネスに抱きしめられながらそんな事を考えていた。
そして…
スー…っとアイラの目から涙がこぼれた。
「アイラ……。」
ヨハネスがアイラの涙に気づき何とも言えない切ない表情を浮かべながら言った。
「グスッ……グスッ……。」
アイラは声を抑える様に涙を止める事が出来ず泣いた。
(私…自分が思ってる以上に怖かったんだわ…。この世界に転生して優しい家族や友達…町の人たち…皆と過ごすのが当たり前になってたから…死ぬのが怖かったんだわ…。火に囲まれた時にもう…ここの皆とは会えないかもしれないと思うと怖くてたまらなかった…。)
アイラはそんな事を考えながら涙を流していたのだった。
「……アイラ…大丈夫だよ。何も心配する事はないよ。」
ヨハネスは優しくアイラを包み込むかの様に言った。
(火の中にいるアイラを見た瞬間…どれだけ怖かったことか…。もう学園行事の事もありもう二度とアイラを危険な目に遭わせないと決めたのに…またアイラが危険な目に遭ったと知った時の恐怖感…絶望感…。あと少し救出が遅れていたら手遅れになっていただろう…。絶対にアイラをこんな目に遭わせた奴を許さない…。必ず自分が犯した罪の重さを思い知らせてやる…。)
ヨハネスはアイラを優しく抱きしめながらも表情は歪ませてそんな事を考えていた。
「あ…ありがとうございます…。ヨハネス様にはいつも助けてもらってばかりで…。」
アイラがヨハネスへ言った。
(学園行事の時も…ヨハネス様が助けにきてくれた…。そして…今回も…。本当にヨハネス様には感謝してもしきれないな…。)
アイラはそんな事を考えていた。
「……そんな事気にしなくていいんだよ…。」
ヨハネスはアイラをまたギュッと抱きしめながら言った。
(今…こうして私の腕の中にアイラがいてアイラの体温を感じる事が出来てどれ程ホッとして嬉しくてたまらないか…君は知らないだろうな…。)
ヨハネスはそんな事を考えていた。
「あ…あの…ヨ…ヨハネス様……。あ…あの…そろそろ…その…。」
アイラはヨハネスにギュッとされたと同時にハッとなり体の震えが止まると急に恥ずかしさが込み上げてきて顔を真っ赤にしながらモゴモゴと言った。
「…あぁ……。」
ヨハネスはそんなアイラに気づき優しくアイラから体を離しながら言った。
(もう少し抱きしめていたかったんだけどね…。)
ヨハネスは真っ赤になるアイラを見てフッと笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
「あ…あの…本当に…今日は助けて頂きありがとうございました…。」
アイラは顔を赤くしたまま改めてヨハネスへお礼を言った。
「いえいえ…。アイラの為なら私はいつでも飛んでいくからね。」
ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。
「なっ…。」
アイラはそんなヨハネスにあたふたしながら言った。
(ヨハネス様ったらそんなサラッと男前発言するだから…。それにしても…)
アイラはそんな事を考えていた。
「ふふふ…。」
アイラは考え事をしながら急に笑みをこぼした。
「どうしたの?」
ヨハネスは不思議そうにアイラへ言った。
「いえ…ヨハネス様が急に抱きしめてこられたので驚いたのですが…不思議とヨハネス様の体温を感じると体の震えが止まって安心感を感じたのです。何だか親鳥が怯える雛鳥を包み込む様だと思ったら少し可笑しくなったのです。」
アイラはクスクスと笑みを浮かべてヨハネスへ言った。
(それに…プリラブMの攻略対象者がモブキャラの私を抱きしめるなんて展開があまりにもありなさすぎて逆に可笑しくなったんのよね。)
アイラはそんな事を考えていた。
「…親鳥と雛鳥か……。確かに…。でも…どうせなら雄鳥が雌鳥を癒やすって言って欲しかったかな。」
ヨハネスはにやりとしながらアイラへ言った。
「え…?」
アイラは思わずにポカーンとした表情で言った。
「ハハハハ…。本当にアイラは可愛いね…。」
ヨハネスは愛おしいそうにアイラを見て笑いながら言った。
パーーーン!!
その時…
アイラの中で何かが弾ける音がした。
それと同時に胸の鼓動が早くなった。
ドクッ…ドクッ…
ドクッ…ドクッ…
(何…?!何だか変だわ。ヨハネス様の笑顔を見た瞬間…胸の中で何かが弾けた気がした。それに…胸のドキドキがおさまらない……。)
アイラは自分の体の異変に戸惑いながら考えていた。
「アイラ…?どうかしたの?どこか痛むの?」
そんなアイラを見てヨハネスが心配そうに言った。
「え?あ…い…いえ…。だ…大丈夫です…。」
アイラは頬を赤らめて慌てて言った。
(ど…どうしよ…何だかヨハネス様の顔をまともに見れないわ…。)
アイラは戸惑いながら考えていた。
「そうかい…?それならばいいが…。」
ヨハネスはホッとした表情で言った。
ドキドキ…
ドキドキ…
アイラは変わらず胸のドキドキが止まらなかった。
「あ…あの…その…助けて頂いたお礼といっては何なのですが…何か私に願いなどはありませんか?これが…食べたい…とか…これを作って欲しいとか…。私に出来る事でお礼ができるのでしたら言ってください。」
アイラはドキドキを誤魔化す様に咄嗟にヨハネスへ言った。
「……お礼か……。本当にそんな事気にしなくてもいいんだが…本当に私のお願いを言ってもいいのかい?」
ヨハネスは何かを考える様にアイラへ言った。
「は…はい。私の出来る範囲の事でしたら。」
アイラはヨハネスの顔を直視出来ないまま慌てて頷きながら言った。
「そう…?それなら……アイラの体調が良くなったら二人だけで出かけたいな…。」
ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。
「え…?ふ…二人きりでですか?!」
アイラはヨハネスの言葉に驚き思わずヨハネスを見て言った。
「あぁ。だめかな?」
ヨハネスは少し悲しそうな表情でアイラへ言った。
「えっ…と…その…だめではありませんが…。」
アイラは戸惑いながら言った。
(私と二人きりでなんて…。)
アイラは戸惑いながら考えていた。
「では…それで構わないかい?」
ヨハネスはにこにこ微笑みながら言った。
「……はい…。私でよろしければ…。」
アイラは戸惑いながらも頷きながら言った。
「ですが…本当にそれでお礼になるのでしょうか…?」
アイラは戸惑いながらヨハネスへ言った。
「あぁ。もちろんさ!これ以上ないって程にね。」
ヨハネスはにこりと微笑みながら嬉しそうに言った。
そんなヨハネスをアイラは不思議そうに見ていたのだった。
(まさか…思わぬところでアイラとのデートの約束を取り付けれるとはな。アイラは心から私にお礼をしたいと思ってくれているのだろうが…そんなアイラの気持ちを利用するみたいで少し気が引けるが…アイラと二人だけの時間を気兼ねなく過ごせるなんて嬉しくてたまらないな…。)
ヨハネスは不思議そうにするアイラを見てにこりと微笑みながら考えていた。
アイラはヨハネスのお願いのせいかいつの間にか胸のドキドキがおさまっていた事すら気づいていなかったのだった…
そこへ…
コンコンッ!
部屋の扉が鳴った。
「はい!」
アイラが言った。
「シスター・ラムです。ガルバドール侯爵家の皆様がおいでになりました。」
扉を叩いたのはシスター・ラムでアイラへ言った。
「あっ…!お入りください。」
アイラは慌てて応えた。
ガチャ…
それを聞いたスミス達が血相を変えて部屋に入ってきた。
「「アイラ!!」」
部屋に入ってきたスミス、マリ、カイルの三人は心配そうな表情でアイラへ言うとアイラの元に駆け寄った。
「お父様…お母様…お兄様…。」
アイラは三人の表情を見て何とも言えない表情で言った。
(凄く心配をかけてしまったみたいね…。三人とも今にも泣きそうな表情だわ…。)
アイラは三人を見てやるせなくなりつつ考えていた。
「心配かけて…ごめんなさい…。」
アイラは申し訳なさそうに三人へ言った。
「アイラが謝ることではないだろう?!こんな…怪我まで負って怖い思いをしたというのに…。」
スミスは声を震わせながら言った。
「お父様…。」
アイラはそんなスミスを見て切なそうに言った。
「アイラ…本当にあなたが無事で良かったわ…。」
マリが目に涙を浮かべながら言うとアイラを優しく抱きしめた。
「お母様…。」
アイラはマリを抱きしめ返しながら言った。
「アイラ…さぁ家に帰ろう。」
カイルは何とも言えない表情を浮かべるもすぐに作り笑みを浮かべてアイラへ言った。
(また…アイラを危険な目に遭わせてしまった…。今回は本当に危険だった。アイラをこんな目に遭わせた者を決して許さない…。)
カイルは内心は腸が煮えくり返りそうなのを必死に抑えながら考えていた。
「はい…。」
アイラは頷きながら言った。
「ヨハネス様…この度も娘を助けて頂き本当にありがとうございました。本当に…何とお礼を言っていいのか…。」
スミスがすぐ側にいたヨハネスへ深々と頭を下げ言った。
「侯爵様…頭を上げて下さい。」
ヨハネスは慌てて言った。
「前にもお伝えしましたが…アイラを助ける事は大きい小さい関係なく私の中では絶対な事なのです。ですから…お礼を言われるまでもありません。アイラが無事で本当に良かったです。」
ヨハネスは真剣な表情でスミスへ言った。
ドキッ…
アイラはそんなヨハネスを見てヨハネスの言葉を聞き思わずドキッとした。
(わ…私がお兄様の妹だからヨハネス様はいつも良くしてくれて…助けてもくれるのよね…?だから…さっきのヨハネス様の言葉が私は特別みたいに聞こえたのも勘違いよね…。だって…私はモブだし…ヨハネス様がこの先想いを寄せるのはローズさんなんだから…。)
アイラは胸が少しチクり痛むのを感じつつそんな事を考えていた。
「ヨハネス様…。嬉しいお言葉…ありがとうございます。」
スミスは言葉を詰まらせながらヨハネスへお礼を言った。
そんなスミスを見てヨハネスはにこりと微笑んだのだった。
そこへ…
コンコンッ…
部屋の扉が叩かれた。
「私です…。少しお邪魔してもよろしいかしら?」
扉の外でメインが言った。
「え…?!お…王妃様?!ど…どうぞ…お入り下さい。」
アイラはメインが部屋を訪れた事に驚き慌てて言った。
ガチャ……
「ありがとう…。お邪魔させてもらうわね。」
そう言いながらメインが部屋へ入ってきた。
アイラや周りの皆も姿勢を正した。
「楽にしてもらって構わないわ…。」
メインが周りを見て言った。
そしてメインはアイラの元へ近寄った。
「アイラ嬢…怪我の方は大丈夫なの?意識が戻って本当に良かったわ…。今日は私が誘ったばかりにこんなことになってしまって本当に申し訳なく思っているわ…本当にごめんなさいね…。」
メインはとても心配そうに申し訳なさそうにアイラへ言った。
「お…王妃様!謝らないで下さい。私がこうなったのは王妃様のせいではありませんし…それに…それに…私は今日お誘い頂いて本当に良かったと感謝しています。自分の知らない事を沢山知ることも出来ましたし子供達の時間もとても楽しかったのですから…。」
アイラは慌ててメインへ言った。
「アイラ嬢…。」
メインが言った。
(本当にこの娘は…自分がとても怖い思いをしたというのに誰かのせいにして責めたり不満を抱いたりしないのね…。それどころか感謝だなんて…。)
メインはそんな事を考えていた。
「それよりも…子供達が心配です。今日の事がトラウマなどにならなければいいのですが…。」
アイラが心配そうに言った。
「……それは心配せずとも大丈夫よ。シスター・ラムを始め他のシスター達も子供達へのアフターケアをきちんとしてくれるはずだから…。それにあの子達ならきっと大丈夫よ。」
メインはアイラを安心させる様に優しく言った。
「そうですか。それでしたら心配いりませんね。」
アイラはメインの言葉を聞き安心した様に笑みを浮かべて言った。
(本当にどこまで人の心配をするのかしら…。本当にどこまでも優しい心の持ち主なのかしら…。でも…今日の事でレオンはカンカンになるでしょうね…。)
メインはそんな事を考えていた。
「王妃様…この様な時に何なのですが…ご奉仕関係なくこれからもここの子供達に会いにきてもよろしいでしょうか?図々しい話なのですが…。」
アイラは少し言いにくそうにメインへ言った。
「…えぇ。構わないわ。アイラ嬢の好きな時に訪れるといいわ。シスター・ラムにも伝えておくから。」
メインはフッと笑みを浮かべて言った。
「本当ですか?!ありがとうございます。今日は焼き芋もスイートポテトも無理だったので子供達とまた作りたいなと思ったので良かったです。」
アイラは嬉しそうに言った。
そんなアイラを見てメインを始め周りにいた皆も思わず笑みを浮かべたのだった。
「ガルバドール侯爵…夫人…今日は令嬢を危ない目に遭わせてまい申し訳なかったわ…。」
メインはスミス達の方を向いて頭を下げて言った。
「お…王妃様!頭をお上げください。アイラが言った様に王妃様が謝られる事など一つもないのですから…。」
「そうです…。どうか…頭をお上げ下さい。」
メインを見てスミスとマリは慌てて言った。
「……ありがとう…。こちらの事は気にせず今日はアイラ嬢を自邸でゆっくり休ませてあげて下さい。こちらの事は私が処理しておくから安心して下さいね。」
メインがスミスへ言った。
「お心遣いありがとうございます。」
スミスが言った。
そして…
その後、アイラの元へシスター・ラムと子供達がやってきてシスター・ラムはアイラへ謝罪と子供を守ってくれたお礼と教会へ訪れてくれたお礼を伝えた。
子供達はアイラを心配しつつもアイラの笑顔を見て最後は安心したのか子供達も笑顔になった。
アイラが助けた少年はアイラへ助けてもらったお礼を伝えた。
少年が思ったよりも元気そうでアイラは安心したのだった。
そして、アイラは子供達とまた教会へ訪れる事を約束したのだった。
そして…
アイラ達ガルバドール家は教会前に停めてある馬車へと向かった。
馬車まではカイルがアイラを抱えた。
ヨハネスが"私が抱きかかえたかったのだが?"という視線をカイルに送っていたがカイルはそこはスルーしたのだった。
馬車へ着くとカイルはアイラをゆっくりと馬車の中へと座らせた。
続いてマリも馬車へと乗った。
「アイラ…辛かったら横になっていいのよ?」
マリが優しくアイラへ言った。
「はい。ありがとうございます…お母様。」
アイラは笑みを浮かべて言った。
馬車の外ではメインとスミスが…
ヨハネスとカイルがアイラに聞こえない様に声を落として話していた。
「今日のこの事件に関して…こちらで納屋に火をつけた犯人を拘束しておきますから…後日王宮へおいで下さい。」
メインがスミスへ言った。
「はい。かしこまりました。ありがとうございます。後日伺わせて頂きます。」
スミスは頷きながら言った。
「今回の納屋に火をつけた者はすでにこちらで拘束して内密に王宮の地下へ連行させてある。殿下にもすでに報告済みだ。詳しいことは手紙を送り知らせるよ。」
ヨハネスは険しい表情でカイルへ言った。
「そうか…。助かったよ。ありがとう…。とにかく今回の件は許すことは出来ないからな…。」
カイルは表情を歪ませて言った。
「あぁ…。」
ヨハネスはとても冷たい表情で頷きながら言ったのだった。
その後…ガルバドール家は自邸へと帰って行った。
アイラは帰宅するなり再度医者にて検診をしてもらい…
火傷の具合や擦り傷の具合…煙を吸い込み喉や気管…それに肺などに異常がないかを念入りに診てもらった。
検診が終わるとさすがに疲れていたのかアイラは夜までぐっすりと眠ったのだった………。
※
教会での出来事から二日後…
ガルバドール侯爵邸にカミラが訪れていた。
学園でカイルからアイラが怪我をしたことを聞き学園が終わったあとにお見舞いにきていたのだった。
「カミラ…心配かけてごめんね…。」
アイラが申し訳なさそうにカミラへ言った。
「いいのよ…。カイル様から話を聞いた時は驚いたけれど思ったよりも元気そうで安心したわ。」
カミラが笑顔で言った。
「えぇ。」
アイラも笑顔で言った。
「それにしても…大変だったわね。アイラが無事で良かったわ。」
カミラがホッとした表情で言った。
「えぇ…本当に。あの時ヨハネス様が助けて下さらなかったらきっと今頃はあの世だったもの………。」
アイラはカミラに話しながらも急にヨハネスが抱きしめてきたことを思い出しつつ顔を赤くしながら言った。
「え?どうしたの?急に顔を赤くして。体がしんどいの?!」
カミラは急に顔を赤くしたアイラを見て慌てて言った。
「ち…違うわ。しんどいわけではないの…。ただ…。」
アイラは顔を赤くしたままもごもごと言った。
「ただ…何なの?」
カミラは不思議そうに言った。
「だから…その…実は……。」
アイラは少し困った表情になり言った。
そして…
アイラはヨハネスとの出来事をカミラへ説明した。
「と…いうわけなのよ…。」
アイラは説明し終わると照れた様な困った様な表情で言った。
「つまり…ヨハネス様の笑顔を見ると胸がドキドキして…その時に胸の中で何かが弾ける音がしたのね…。」
カミラがアイラの説明を聞いて考える様な仕草で言った。
「えぇ…そうなの。」
アイラが言った。
「それに…その前にもヨハネス様を前にしてドキドキしたりふとした時にヨハネス様の顔が浮かぶこともあったのよね…。」
カミラは更に言った。
「えぇ。」
アイラは頷きながら言った。
「う〜ん……。」
カミラは悩む仕草を見せて言った。
(ヨハネス様…!やりましたね!とうとうアイラもヨハネス様を好きになった様です!!鈍感なアイラに負けず押して押して押してを貫いた甲斐がありましたよ!めでたく両思いですよ!!)
カミラは表情には出さなかったが内心はニヤニヤしながらそんな事を考えていた。
「それは…つまり…。」
カミラが溜める様に言った。
「つまり…?」
アイラが聞いた。
「つまり…俗に言う赤い実がはじけた…!つまり…アイラはヨハネスに恋をしているのよ!!」
カミラはどや顔でアイラへ言った。
「へ…?私が…ヨハネス様に…恋…?」
アイラはカミラの言葉を聞き一瞬??となり言った。
しかし…冷静に考えたアイラは先程よりも更に顔を赤くした。
「えぇぇ〜〜!!」
そしてアイラは思わず声を大きくして言った。
「そんなに驚くことかしら?」
カミラは驚くアイラに冷静に言った。
「え…ええ…だって…それは…驚くわよ…。」
アイラは混乱気味に言った。
(私がヨハネス様に恋してるですって?!そ…そんな事……。前世でも恋なんてしたことなかったこの私が?!)
アイラは混乱しつつそんな事を考えていた。
「でも…事実話を聞く限り間違いなくアイラはヨハネス様に恋をしてるんだからその気持ちを認めないと。」
カミラはにこりと微笑みながら言った。
「……。え…えぇ…。」
アイラは顔を赤らめたまま少し考えて諦めた様に言った。
(そうね…。改めて考えてみたらここ最近ふとした時にヨハネス様の事を考えたりヨハネス様の顔が浮かんだりしてたし…ヨハネス様の笑顔を見てあんなにドキドキするなんて…恋以外に考えられないよね…。すでに恋愛しているカミラもあんなに自信満々に断言してるんだし…。はぁ…それにしても…まさか…プリラブMの攻略対象者に恋をしてしまうなんて…なんて不毛な恋なのかしら…。初恋だっていうのに…。)
アイラはそんな事を考えていた。
「あっ……。」
そしてアイラはその時ふとあることを思い出して声を出した。
「どうかしたの?」
カミラが言った。
「今度ね…ヨハネス様と二人で出かける約束をしたのだけど…ヨハネス様に恋をしていると気づいた今どんな顔をして出かけたらいいのかしら…。」
アイラは戸惑いながら言った。
「どんな顔っていつも通りでいいんじゃないの?」
カミラは首を傾げながら言った。
「私は…自分の気持ちに気づいた今…いつも通りになんて無理な気がするのよ…。」
アイラは更に戸惑いながら言った。
(あらあら…。アイラは本当に純粋な子だし恋をするのが初めてだからそう思うのも仕方ないのかしら…。)
カミラはそんな事を考えていた。
「まぁ…まぁ…今考えたって仕方ないことだわ。それにせっかく二人きりで出かける事が出来るんだから思い切り楽しまないと。」
カミラは笑顔で言った。
「楽しむか……。緊張しすぎて楽しめるか心配だわ…。でも…ヨハネス様を退屈させる訳にはいかないものね…。」
アイラは悩みながら言った。
(ヨハネス様ったら…アイラと二人で出かける約束を取り付けるなんてやるわね。アイラは色々と悩んでるみたいだけれどヨハネス様はアイラと二人きりで出かける事ができるってだけでそれ以上は望まないでしょうね…。まぁ…アイラの事を抱きしめたようだから抱きしめたり手を繋いだりは涼しい顔してしそうだけれど…。)
カミラはそんな事を考えていた。
「大丈夫よ。きっとヨハネス様はアイラと過ごすってだけで退屈なんてされないわよ。」
カミラが心配そうにしているアイラへ笑顔で言った。
「そうだといいのだけれど…。ヨハネス様は私がお兄様の妹だから良くして下さってる様だし…ヨハネス様は沢山のご令嬢たちからの好意を嫌悪してるって聞いたから私の気持ちも気づかれない様にしないといけないわね…。」
アイラは複雑そうな表情で言った。
(そう…ヨハネス様はプリラブMの攻略対象者だから…ヨハネス様はローズさんに恋をするのを私は知ってるのよ…。)
アイラは胸がチクリと痛むのを感じながら考えていた。
(え…?アイラ…あなたはどこまで自分の事に鈍感なの…?私だってすぐヨハネス様のアイラに対する好意を気づいたというのに…。あぁ…まったくアイラは人のことには敏感で鋭いのに自分の事になると本当に鈍感だわ…。ヨハネス様…どうやらこの恋の行方は一筋縄ではいかない様ですよ…。)
カミラはアイラの言葉を聞きギョッとなりつつ考えていた。
「と…とにかく…あまり考え込み過ぎず自分の気持ちを抑えこもうとするのもやめなさいよね。」
カミラはどうにかフォローしようと言った。
「……わかったわ。…カミラ…話を聞いてくれてありがとう。こんな事を相談できるのはカミラしかいないから今日話すことができて良かったわ。お陰で自分の気持ちにも気づく事ができたしね。」
アイラはにこりと微笑みながら言った。
「アイラ……。」
カミラはそんなアイラを見てアイラを愛おしいと思いながら言った。
「ふふ…これからも私で良ければいつでも相談にのるからアイラは1日でも早く元気になって学園へ来てね。」
カミラは笑顔で言った。
「ありがとう…。」
アイラは嬉しそうに微笑みながら言った。
(なかなかの不毛の恋をしてしまったけど…初めての恋…この気持ちを大切にしたいな…。)
アイラはそんな事を考えていたのだった。
こうして…
この日アイラはカミラと話をした事で自分のヨハネスへの気持ちに気づいたのだった……
アイラとカミラがガルバドール侯爵邸でそんな話をしていた同じ頃…
ヨハネスとカイルはレオンと共に王宮の地下へと向かっていたのだった……
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