3月2日 再会
長野県から約2時間。なぜ、ここにいるのか自分でもよくわからなかった。目の前には、匠があの頃と変わらずに立っている。これが夢なのか現実なのかわからないくらいボヤけていた。
匠「久しぶりだな」
私「うん」
あの頃よりも、随分髪の毛を伸ばしており、目元がよく見えない。ただ、カッコよさはあの頃と何一つ変わっていなかった。
匠「まさか、来るとは思わなかったよ」
私「なによ、それ」
今、こうして私が匠と会っているのは、連絡がきたからだった。まさか、このタイミングでくるとは。最初は、行かないでおこうと思ったけど、今日を逃したらこの先も一生会えない可能性があると思ったのだ。
匠「来ないかなと思ってたから」
私「じゃあ、来ないでよ」
まんまと来てしまった自分が恥ずかしくなってしまう。まぁ、こうして会えたことも何かの縁なのかな?
匠「そりゃあ、困るな」
私「そんな困らないでよ」
思わずツッコンでしまう。
匠「せっかく来てくれたんだし、たくさん話そうぜ」
私「てか、こんなところに住んでるの?」
こんな田舎のところに、大学ってあったっけな?前住んでた場所はこんなところではなかったはず。
匠「まぁ、大学辞めたしな」
私「えっ、辞めたの?」
思わず大きな声を出してしまった。まったく知らない。そんな風にすら見えなかった。いつもと変わらない服装だし、話し方なんかもあの時と変化はない。
匠「そうだよ」
私「全然知らなかった」
匠「友だちとかに聞いてないの?」
私「聞いてないよ」
みんな、匠のことについては何も知らなかった。もしかしたら、知ってても気を遣って言わなかったのかもしれない。どっちなんだろうか?
匠「そりゃあ、知らないな」
私「当たり前でしょ」
匠「じゃあ、俺の家でゆっくり話すか」
私「わかった。ていうか、今何してんの?」
ずっと気になっていた。今、コイツは何をしているのか。
匠「まぁ、それも後で話すよ」
私「勿体ぶらないでよ」
匠「今は、大学辞めて働いてるよ」
私「そうなの?」
別れてから、私たちの時間は止まっていた。それが、再び動き始めた。
匠「ああ。大学辞めた時は、自分でも驚いたけどな」
私「なんで辞めたの?」
匠「そんなにやりたいこともなかったし、美優も辞めたしな。ハハハハハ」
私「なによ、それ」
匠は、あの日見た笑顔に戻っていた。




