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2月26日 思わせぶり

 彼が去った後の教室は、とても静かだった。私は、外が見える机に座りながら、視線を上げていた。まさかなぁ、、、、、、、、、、、。彼がいなくなってから、もう20分が経過しようとしていたのに、まだ現実が受け止められない。頭の中を巡らせていると、ノートの罫線をなぞるという奇妙な行動をしている自分に対して驚いていた。胸の奥で何かが静かに弾けるこの音はなんだろうか?

 冬の寒さを感じるはずなのに、緊張なのかまったく感じない。私は、教室の片隅でただの言葉よりも重い匠の言葉を思い出していた。「俺さぁ、、、、、、、、。俺、お前のこと好きだから付き合ってくんね?」。まるで、1分前に言われたかのわつな臨場感だった。匠の顔を見つめたまま動けなくなった自分が恥ずかしかった。即答で「よろしくお願いします」と言うべきだったのに。私が伝えたのは、「よろしくお願いします」となんともそっけない返事だ。あの日の出来事が一瞬にして切り替わるように、大きな声が聞こえてきた。


 陽菜乃「どうしたの?」

 私  「ううん、なんでもないよ」


 先ほど、陽菜乃が帰ってきたようだった。


 陽菜乃「今日は、何してたの?」

 私  「いろいろ考えてたかな」

 

 陽菜乃は、私を通り過ぎ冷蔵庫に向かった。


 陽菜乃「私、聞いたよ」

 私  「ん?」


 私から遠ざかっていく陽菜乃の声を私は聞きとりにくかった。


 陽菜乃「・・・さんのこと」


 何と言っているかわからない。冷蔵庫からお茶をグラスに入れた陽菜乃に再び聞いた。


 私  「なんて?」

 陽菜乃「匠さんのこと」


 嘘じゃないな。陽菜乃は、確実に"匠"と言い放った。


 私  「どういうこと?」

 陽菜乃「だから、匠さんのこと」

 私  「匠がどうしたの?」


 陽菜乃が何を伝えたいのかよくわからなかった。


 陽菜乃「匠さんに会ったの」

 私  「え?どこで?」


 食い入るように聞いてしまう。


 陽菜乃「駅で」

 私  「近くに住んでるってこと?」

 陽菜乃「いや、違うよ。たまたま、こっちに来たんだって」


 そうなんだ。たまたまかぁ、、、、、。


 私  「そっかぁ」

 陽菜乃「匠さんが、また会いたいから連絡ちょうだいって言っといてって言われたの」

  

 また、会いたいって何だよ。匠の思わせぶりの発言に少しイラッとしてしまう自分がいた。

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