2月21日 CM
ゆっくりとしたリズムが私の脳に刻まれる。そのリズムは、よくCMで流れている歌であった。神城は、今日もご機嫌だった。何がそんなに楽しいのかはわからないが。いつものように、タオルでワイングラスを拭きながら、店長と話しているようだった。今日は、17時頃から人はいたが、そこまで混んでいるようではなかった。食器を洗いながら、話す余裕もあった。
神城「今日も疲れたな」
私 「今日は何してたんですか?」
店長と話し終えた神城がやってきた。
神城「今日は、朝からバイトしてたよ」
私 「他のバイトですか?」
神城「ああ。もう大変だよ」
大変と言いながら、どこか楽しそうにも思えた。
私 「明日もですか?」
神城「春休みは、ずっとバイトだよ」
私 「なんで、そんなに勉強してるんですか?」
ちょうど、店長から料理を持っていく合図が聞こえた。
神城「はいよ!」
颯爽と歩き出した。店長が渡してきたのは、できたてのカルボナーラだった。お皿の上からは、熱々の湯気がたっている。クリーミーなソースに包まれたパスタは、とても綺麗だ。とろりとした卵黄とパスタ混ざり、私のいるところまで黒胡椒の香りが漂ってくる。お腹が減ったな。この時間になっても、まだ私はご飯を食べていなかった。皿をテーブルに持ち運ぶ神城は、私の視界から消え去った。そんなことをしていると、洗い物の皿が私の前に出される。そして、再び洗い物がスタートした。
神城「これも、お願いしまーす」
神城の手から、ドレッシングまみれのお皿が返ってきた。
私 「はーい」
神城「元気?」
私 「まぁ、ボチボチです」
神城「元気ないじゃん?」
洗い物をしながら、首を横に振った。
私 「そんなことないですよ」
神城「ホント?この前よりは元気なさそうに見えるけど」
私 「元気ですよ」
本当のところ元気ではなかった。何か理由があるわけではないけど、今日の朝に雨が降ったこともあり、頭痛があったからだ。やはり、気圧の変化には弱い。
神城「じゃあ、いいけど。明日バイト入ってる?」
私 「いや、空いてますよ」
神城「明日さ、合コンあるんだけど一緒に行かない?」
店長が一瞬こちらの方を向いていることに気がついた。私は、思わず大きな声を出してしまってきたのだ。慌てて、ボリュームを下げ、何食わぬ顔で洗い物をし続けた。