2月3日 秘密
陽菜乃の机は、相変わらず勉強道具でいっぱいだった。各大学の過去問や参考書が多く積まれており、今にでも落ちそうな雰囲気だった。
私 「陽菜乃、合格発表はいつなの?」
陽菜乃「明後日かな」
発言した陽菜乃は、あまり気にしていない様子だった。第一志望の合格発表はそんなものだろうか?
私 「そっかぁ。受かってるといいね」
陽菜乃「そうだね」
私 「まだ、受けるの?」
机に積まれていた過去問たちを見て聞いてみた。
陽菜乃「いや、もう受けないよ」
私 「じゃあ、なんで勉強してるの?」
陽菜乃「大学行っても勉強は続くでしょ?」
さらっと質問を返された私は何も反論できなかった。
私 「そうだけど」
陽菜乃「私は、お姉ちゃんみたいに遊ぶこともないしね」
私 「誰が遊んでるのよ」
陽菜乃「フフフフフ」
まだ、あどけなさが残る陽菜乃がもうすぐ大学生になると思うとなんとも言えない気持ちだった。
私 「ほどほどにね、勉強も」
陽菜乃「うん。そうだね」
陽菜乃は、私の何かをわかってくれたみたいに感じた。
私 「将来、就きたい仕事とかあるの?」
陽菜乃「まぁ、なんとなくはね」
私 「えっ、なになに?」
意外だ。陽菜乃がそんなことを考えているなんて思いもしなかった。
陽菜乃「ひみつー」
私 「なんでよ」
座っている椅子を少し回して答えた。
陽菜乃「この家を出る時に教えるね」
私 「今、聞きたいよ」
陽菜乃「ダメ」
陽菜乃は、口をわろうとはしなかった。
私 「なんで?」
陽菜乃「なんでって言われてもね。ひみつだから」
私 「ひみつなんだったら仕方ないけど」
諦めた。こういう時の陽菜乃は、頑固なのだ。
陽菜乃「そのうちわかると思うよ」
私 「そのうち?」
陽菜乃「うん。まぁ、考えといてよ」
私 「そうね」
私は、椅子から立ち上がった。
陽菜乃「私が答えを言う方が先か、それともお姉ちゃんが先にあてるか」
私 「なるほど、勝負ってこと?」
陽菜乃「その通り」
この時、なんで陽菜乃がそう言ったかはわからなかった。けど、後にそれが理解できるのだった。
私 「じゃあ、考えとくよ」
陽菜乃「お姉ちゃん、一緒にお菓子取りに行こう」
私 「いいよ」
陽菜乃「やったー」
意気揚々と、私たちは、階段を降りていくのだった。




