1月25日 公園
時刻を見ると、もう16時30分を過ぎようとしていた。夕日が空を染める中、私は陽菜乃と二人で八代公園に来ていた。「お姉ちゃん!!この木陰、とても気持ちいいね」。陽菜乃が微笑むと、私も調和のとれた笑みで彼女に頷いてみせた。
「たしかに、そうだね。でも、もうちょっといると日が暮れちゃうよ?一緒に帰ろうよ」。私がそう言うと、陽菜乃は少しは寂しそうにしていた。「えー、もう帰るの?あとちょっとだけ、、、、」。なぜ、陽菜乃がもう少しいたいのか、私にはわからなかった。何かあるのだろうか?ここ最近の私は、急激な変化に頭も心も変わってきているように感じていた。それがいいのか、悪いのかすらわかっていなかった。
でも、自分の中で12月の頃と比較して明らかに変わっていることは確かだった。あの頃は、なかなか外に出ることすら難しかった。でも、今は、バイトもして少しは外の世界に触れることすらできるようになっている気がした。全国には、私と同じような気持ちを抱えている人や同じように引きこもっている人は多いと思う。そんな人たちにいつか、、、、、、。いつか、、、、。手を差し伸べられる人間になれたらな。
私は、我に帰ったように陽菜乃を見た。「暗くなったらよくないから、帰ろう」。私は陽菜乃に手を差し伸べた。彼女は素早く手を取り、私たちは一緒に公園を後にした。しかし、陽菜乃の足取りがどうやら遅い。そして、公園を出てすぐ立ち止まった。「どうしたの?」と後ろを振り返り尋ねた。陽菜乃は恐る恐る私に話し出した。「私ね、高校生活であまり友達ができなかったんだ。大学行ったら、ちゃんと友だちできるかな?」
私は少し止まったがすぐに話し始めた。「引きこもりの私でも友だちはできたんだ。陽菜乃なら、絶対できるよ」。妹は、少し不安そうに頷いた。「でも、もしできなかったら、、、、」。話を止めた陽菜乃に何か言わないとと思い話そうとした瞬間、陽菜乃は、話し出した。「もし、友だちできなかったら、お姉ちゃんの友だち、ちょうだいね」。何よ、それ。私たちは大声で笑い合った。
なぜかわからないけど、次の瞬間、私は陽菜乃の背中を軽く抱きしめた。「大丈夫。陽菜乃なら、ちゃんとできるよ」。私の胸あたりに少し冷たいものを感じた。その冷たさが何をさすのかは言うまでもなかった。彼女は、ずっと何かを抱えて生きてきたんだろう。勉強という彼女の長所以外の部分で。




