12月14日 バイト
今日も、朝からスマホでドラマを見ていた。気温も寒くなってきているせいか、いつもに増して布団から出たくなかった。しかし、昼から仕事の面接が入っており、そのことを考えると無性に腹立たしかった。
今日で、バイトの面接は、6つ目だ。その内4つは、内定したが、断った。今日行くところもそうなるだろうなと思いながら、ベットから出て、歯を磨いていた。
応募したバイト先は、一人の店長が経営する創作料理屋さんだった。私の家から自転車で10分ほど経ったところにある。私は、服を着替えて、陽菜乃の自転車で向かった。信号で止まることがなかったため、思ったより早くついてしまった。
店内は、暗くなっており、人がいるかわからなかった。思い切って、ドアを開けてみると、小太りな男の人が厨房にいた。厨房にいた小太りの男の人が歩いてきた。
男の人「どうも」
私 「今日、13時から面接していただく、土屋と申します」
男の人「店長の佐藤です」
歩いてきた男の人は、店長らしい。年齢は、40歳ぐらいだろうか。髪の毛が刈り上がっていることもあってか、威勢がよく見えた。
私 「よろしくお願いします」
店長「はい、お願いします。えっと、土屋美優さん」
私 「はい」
店長「若いね。大学生?」
店長の力強い質問に圧倒された。
私 「いえ、大学やめました」
店長「そうなんだ、じゃあ暇だね」
私 「‥‥はい」
店長「今は、何してるの?」
私 「家にいます」
店長「まだまだ若いんだから遊ばなきゃ。ハハハ」
店長は、楽しそうに笑っていた。
私 「はぁ‥‥」
店長「うちで働く気あるの?」
私 「はい」
店長「だったら、採用するよ」
まだ会って、2分くらいしか経っていなかったのに採用されてしまった。
私 「はい」
店長「明日から、バイト入れる?」
私 「大丈夫です。何時からですか?」
店長「18時から」
私 「いけます」
店長「じゃあ、頑張って」
そう告げると、面接は終了した。店長は、料理の仕込みがあるため、厨房に戻って行った。
今まで、受けた面接とは異なったため、少し驚いた。面接が終わったので、再び自転車で家に向かった。家に着くと、2階の自分の部屋に戻り、パジャマに着替えた。
喉が渇いたので、水を飲みに行こうとした時、横の部屋にいた妹の陽菜乃に出会った。
妹 「何してたの?」
私 「あぁ。面接行ってた」
妹 「新しいところ?」
陽菜乃は、興味深々に聞いてきた。
私 「うん。そっちは?」
妹 「今日は、家で勉強」
私 「そうなんだ」
妹 「どこの面接受けたの?」
陽菜乃は、私のバイト先が気になる様だった。
私 「料理屋さん」
妹 「料理作るの?」
私 「作らないよ」
妹 「作らないんだ笑」
私 「私が、料理作るわけないでしょー」
妹 「でも、堂上さんの時、作ってたじゃん」
私 「もう、それいいでしょ」
堂上さんとは、昔、私が付き合っていた彼氏だった。聖徳高校の時からで、私が大学をやめるまで付き合っていた。
妹 「面接は、受かったの?」
私 「一応」
妹 「いくの?」
私 「迷ってる」
妹 「迷ってるの?」
私 「うん。なんか、めんどくさいなって思って」
陽菜乃は、私の重い腰を必死に上げようとしていた。
妹 「えっー、行ってきいよー」
私 「うーん」
妹 「お姉ちゃん、行ってきて」
私 「どうしようかな。陽菜乃、知ってる?世の中って弱い人に優しくないんだよ」
私は、陽菜乃に語ってみせた。
妹 「ん?」
私 「世の中はさ、できるかできないかのどちらかなんよ。だから、私みたいな中途半端は、何してもダメなの」
自分がいかにできないかということを説明し、やらない理由を作ろうと必死だった。
妹 「そんなことないって。それ言ったら私の方がダメだよ」
私 「どこがよ。優しいし性格いいし、頭いいし」
妹 「どれも大したことないよ。そんなんあったって、何の役にもたたないよ。私は、お姉ちゃんみたいになりたいな」
陽菜乃がおかしいと思ったが、少し嬉しかった。
私 「頭おかしいんじゃないの」
妹 「ホントだよ。学校行ったって、何かあるわけじゃないし、毎日似たような日を過ごしているだけ。だったら、お姉ちゃんみたいに、毎日何かに、挑戦する方がいいじゃん」
私 「どこが挑戦なのよ。私は、陽菜乃みたいに頭良くなりたかったな」
妹 「お姉ちゃんなら、今からなれるよ」
私 「そんなん無理だよ」
妹 「無理って決めつけたらそうなるよ。お姉ちゃんは、ずっと私の理想でいてほしいからね。
私 「‥‥」
妹 「じゃあ、私勉強してくるね」
そう言って、妹の陽菜乃は、勉強しに行った。私の生活を、陽菜乃がいつも前をてらしてくれた。重くのしかかった私のストレスを小さくしてくれ、明日へよ一歩が踏み出せそうだった。