責任
今回はほとんどグロ描写はありません
というかありません
ので、安心してご覧ください
ベトナムより東方に位置するフィリピンの海軍基地・・・
ベトナム戦争時には、空軍が沖縄を重要拠点としていたのと同様、フィリピンの米海軍の軍港が重要な拠点になっていた。
爆発事故の後フォレスタルが、トンキン湾からフィリピンのそこへと緊急補修のために入港することとなる。
激しい日差しの中、入港するフォレスタルを待ち受けていた技師たちもそうだが、米海軍艦船の艦魂達もその痛ましさに絶句していた。
フォレスタルの後部甲板はこれでもかと言うくらいに吹き飛び、側面には黒く焦げた跡が墨汁を吹きかけたように広がっている。
何よりフォレスタルから搬送されるけが人の数が多すぎる。
接岸後すぐに、事故で怪我をした乗組員はダラーハイドのように重傷を負った者も、
マケインのように比較的軽傷で済んだ者も、一括してフィリピンの米軍直轄の病院へと搬送される。
しかし、あれでは搬送先の病院はしばらくパンク状態になると誰もが思った。
そして惨劇を物語るのは、次に運び出されてきた物言わぬ死体が納められた袋。
百以上の数のそれは喋ることは無いはずだが、口で伝わるよりも多くの事を語っていた。
一方そのフォレスタルと同じ港に、もう一隻の空母が停泊していた。
フォレスタルよりも細く華奢に見える船体だが、彼女の名前は独立戦争時の難攻不落の要塞から取られていた。
タイコンデロガ級空母一番艦タイコンデロガ───その艦上、フライトデッキには両翼を折りたたんだ多くの攻撃機、
そして多数の行き交う乗組員と、二人の少女の姿があった。
「思ったより、酷いですね・・・。」
肩で切りそろえた水色の髪を風になびかせながら、話すのは原子力巡洋艦ロングビーチの艦魂“ロングビーチ”。
親しいものからは、ロングと呼ばれている。
「ええ、こんな光景を見たのは私、太平洋戦争以来よ。」
栗色の髪をツインテールにして、ロングビーチのそばで同じような表情で見つめるのはこの艦の艦魂“タイコンデロガ”だ。
気心知れた間柄や妹たちからはティコやティコ姉と呼ばれていた。
「フォルお姉さんは大丈夫でしょうか?」
ロングがここに居る艦魂達の誰より心配そうな表情で、ティコに尋ねた。
彼女がフォレスタル級空母でもないのに、フォル姉さんと呼ぶには実は深いわけがある。
ロングビーチは生まれてから7年後の1966年まで、バージニア州ノーフォークを母港としていた。
そう、ノーフォークと言えばフォレスタルや彼女の妹のインディペンデンスの母港でもあった。
一方のロングビーチには、彼女の妹・・・つまり同じ型の艦は彼女以外には存在しない。
つまりロングには家族が居ないのだ。
最初は寂しさから内向的な性格になっていた彼女だが、ある日から彼女の心の支えになったのが、
年が近い妹のように優しく接してくれたインディ、そして年の離れた姉のように慕っていたフォリーだった。
「やっぱり心配・・・だよね。」
その時、僅かにロングが震えているのにティコは気付かなかった。
「ティコ司令・・・ええ、だってアタシにとってお姉ちゃんみたいな感じですから。
だから本当に、生きててくれて・・・良かった。」
すると、すすり泣くようにロングが涙を流し始めた。
「うぅっ・・・本当にっ・・・一時は・・・ヒクッ・・・どうなるかと思ったんですからぁ!」
突如ロングに泣き付かれて一瞬ティコが戸惑ったが、そのままロングを優しく抱擁した。
「辛かったわね、ロングちゃん・・・。」
そう言いながら、懐から取り出したハンカチをロングに渡していた。
交友関係が広かったフォレスタル。
その証拠に安否が分かり安堵を浮かべる者も多ければ、中にはロングのように大泣きをする艦魂もいた。
しかし、彼女たちとは違いショックという言葉が生易しい程の傷を心に負った艦魂がいた。
給兵艦ダイアモンドヘッドの艦魂ダイアである。
だが、彼女の姿はダイアモンドヘッドのどこを探しても居なかった。
艦魂の彼女が出奔したのではない、当然(探さないでくださいッス)と書かれた置手紙も無い。
ダイアには真っ先に向かわなければならない場所があった。
今にも泣き出しそうなダイア。
そんな彼女が居るのは現場検証が行われている最中のフォレスタル艦内。
ほとんどの人には艦魂の彼女は見えないため、検証で行き交う誰かに見つかって止められる心配は無い。
そして、ある所にまで来るとダイアは立ち止った。
フォレスタルの使われていない士官室、そのドアノブに手をかけようとするのだが、なかなかそれを握ることができない。
(怖い・・・怖いッス・・・絶対フォリー司令、私のことを恨んでるッス・・・)
しかし、意を決したダイアはついにノックをしてドアノブを回して部屋に入った。
「・・・ッ!!?」
部屋に入るなりダイアは目を見開いて絶句してしまった。
フォリーが血がにじんだ包帯を巻かれ、憔悴したような表情でベッドに横たわっている事はダイアも予想していた。
だが、ダイアが数日前に会ったフォリーと決定的に変わっていた部分があった。
ダイアの記憶では、フォリーの髪は綺麗な金だった筈だ。
だが沈没の危機に見舞われる程の重傷に、自分の艦上で多数の仲間がバラバラに吹き飛び、艦内では逃げ場を失った
クルーが沢山焼き殺されたという精神的苦痛が、彼女の髪の色を全て銀に変えていた。
言葉を失い黙り込んでしまったダイア。
「・・・ダイア」
ダイアより先に、フォリーの方が口を開くのが早かった。
怪我に障るため、かなりの小声になっているが今の艦内は静かなのでダイアにははっきりと聞こえる。
ダイアは覚悟した、きっと恨み事を言われたり怒られるに違いない。
フォリーをここまで痛めつけたのは、自分が運んだ爆弾が劣化しており、
そのため消火が間に合わずに爆発したのだとダイアは知っていたからだ。
だが、フォリーの口から飛び出したのは意外な言葉だった。
「心配かけたよね・・・ゴメンね。」
それを聞いた瞬間、ダイアは土下座の格好のまま目からはドッと涙をあふれさせた。
「ごめんなさい・・・・申し訳ないッス!! フォリー司令・・・私のせいッス、私があんな爆弾を運んで来たりなんか
しなければ、司令がこうなる事もなく、誰も死ぬことはなかったッス!!」
嗚咽を漏らしながら溜まっていた後悔が、ダイアの口から一気に流れ出た。
「ダイア・・・」
「責任は全部私にあるッス、だから私は責任を取って何でもするッス!! 死ねと言われれば、すぐにでも私の艦内の
爆薬に火をつけて自沈してお詫びするッス!!」
「ダイア、待って。 あなたは、悪くないよ。」
「司令、どうして・・・」
「私の艦で起きた事だから、責任があるのは私よ。 むしろ私が、海軍の皆に謝らないといけないくらいよ。
あなたや、妹たちには本当に心配をかけたわ・・・本当に申し訳なく思うわ。」
「やめてくださいッス! 司令は悪くないッス! あの時、私が持ち帰っていれば良かったんッスよ!」
二人が自らを責めての責任の奪い合いをしていた時だった。
部屋をノックする音が聞こえ、二人が振り向いたその瞬間・・・
「お姉ちゃ〜ん!!」
ムギュッ!
「痛っッ!!!」
横たわるフォリーに誰かが抱きついた。
「痛いってロング、そこ怪我しているところよ!」
ロングが泣きながらフォリーに抱きついた。
フォリーはロングに怪我しているところを触らないように言うが、ロングの耳にはまるで入っていない。
「うわ〜ん、良かった〜!! お姉ちゃんが死ぬんじゃないかって思ったら、アタシ、アタシ・・・うえっ!?」
その時、突如ロングが後ろにグイッと引っ張られた。
「はい、とりあえずそこまでよロングちゃん。 フォリー痛がってるじゃない・・・。」
後から部屋に入って来たティコがロングの後襟を掴んでいた。
「・・・は〜い。」
仕方なさそうな表情でロングが渋々返事をした。
「ええと、あなたは確かダイアモンド・ヘッドの・・・?」
「そうッス、ダイアモンドヘッドの艦魂“ダイア”ッス。」
「後は私たちがどうにかするから、あなたは自艦に戻ってなさい。 あなたも辛いでしょうけど、頑張るのよ。」
「了解ッス、ありがとうございますティコ司令。」
複雑な表情のまま、ダイアが部屋を後にするとティコはフォリーを方に居直った。
「ハイ、フォリー。 先ほど連絡があったけど、明日あなたの妹たちがお見舞いに来るそうよ。」
「そうですか、なんだか恥ずかしいです。 こんな姿を見られるなんて・・・。」
苦笑しながらフォリーが言うと、ティコがクスリと笑った。
「馬鹿ねえ、こんな時こそ姉妹の力が必要なのよ。」
「それ、ティコさんが言うと、妙に説得力があります・・・。」
フォリーの言葉はもっともである。
フォレスタル級空母の一番艦フォリーの実の妹は全部で3人、しかしタイコンデロガ級空母の一番艦ティコの実の妹は
なんと12人もおり、戦後の海軍でも稀に見る大家族だった。
さらに、タイコンデロガ級は改エセックス級とも呼ばれることもしばしばである。
その為、エセックス級の義理の姉たちまで加えるならば20人以上の超大家族となるのだ。
「今回は災難だったわね。 事故の原因はまだ定かじゃないけど、すぐに明らかになるわ。
原因さえ分かれば、今度からはそれに気をつければ良い事よ。」
「ありがとうございます、でももうおかげさまで大丈夫です。 それに、ずっとマケインにも励まして貰いましたし・・・。」
フォリーがにっこりと笑って、ティコやロングに言いかけた時・・・
その表情と言葉を聞いて、ティコの眉がピクっと動いたことにフォリーやロングは気付いていなかった。
ティコは今のフォリーと似たような光景を、去年の10月に見ていたからだ。
(やっぱり彼女と重なる・・・きっとこの子、みんなを心配させまいと。)
すると、おもむろにティコが立ち上がった。
「分かったわフォリー、とにかく今はゆっくりと休みなさい。 それじゃ、ロングちゃん行こうか。」
「え〜、まだ居るぅ!」
「もぅ、文句を言わないの。 明日また来ると良いわ、サラやレン、インディ、それからキティ達も来るからその時にね。」
「あぅ、分かりましたよぉ。 じゃあ、また明日来るからねフォルお姉ちゃん。」
ティコに引っ張られながら、バイバイと手を振りながら退場して行くロング。
扉が閉じ、自分以外誰も居なくなった部屋に戻った時、フォリーの表情が哀しげになった。
(また事故が起きるんじゃないかって、怖い・・・大丈夫じゃないのに・・・私、どうすれば良いの・・・!
もし私自身に原因があったのなら、死んでいった人たちは・・・私が殺したっていうの!?)
フォリーは自分の体を抱きしめ、目をギュッと閉じて静に震えていた。
その頃、ロングを彼女の自艦に帰るように指示した後、ティコはタイコンデロガからある艦へと、
艦魂のみが使用できるという通信を行っていた。
彼女の通信の相手はティコと同い年の艦魂で、ティコが姉でもなく妹でもなく、常に自分と対等に話をする親友の一人だった。
「・・・ええ、そんなわけであなたの力が必要なのよ。 ・・・・・・・忙しいのは分かってる。 でもこのままじゃフォリー
は立ち直れないわ。 ・・・・・・・あなたが多分、彼女の気持ちが一番わかる筈よ。 そして、貴女が多分フォリーを
立ち直らせる任務には最適だと思うのよ。 親友として、どうか引き受けてくれないかしら?」
しばらく彼女は考えていたが、親友ティコの頼みとあれば無暗に断る事も出来ず・・・さらに今回のフォレスタルの事故の事が
彼女にとって決して他人事とは思えなかったようだ。
やがて、受話器に耳を当てるティコの表情が笑顔になった。
通信の相手が、ようやく引き受けてくれたのだ。
「・・・ありがとう、それじゃ明日ね。 待ってるわ。」
ティコは受話器を置くと、ほっと胸をなで下ろした。
「さて、明日彼女が来るなら臨時の指揮官を決めないといけないし・・・フォリーの妹たちの分も決めなきゃ・・・
あー、今夜は寝れないわね・・・まっ、仕方ないか。」
独り言をつぶやいた後、ティコは自室に籠って黙々と仕事を始めた。
結局、その晩中ティコの部屋の明かりが消えることは無かった。
翌日、それぞれの上官から許可を受けて6人の艦魂がフォレスタルの近くに停泊する空母タイコンデロガの甲板へと転移を完了した。
内2人はフォレスタル級空母、サラトガの艦魂サラ、同じくレンジャーの艦魂レン。
そして彼女たちの後ろから付いてくる4人はキティホーク級空母、キティホークの艦魂キティ、そしてコンステレーションの艦魂
コニー、三女のアメリカの艦魂アミー。そして原子力空母エンタープライズの艦魂、エンターである。
エンターの船体はキティホーク級を流用したものだったので、事実上エンターもキティ達とは姉妹である。
いずれの4人も、12から14歳くらいに見える程の外観上の幼さがあった。
キティホーク級は、改フォレスタル級と呼ばれるくらいに似た構造を持つ。
エンタープライズも船体はキティ達とほぼ同じであるため、フォレスタル姉妹とはキティ達と同じく義理の姉妹の関係となる。
その為、キティを始めとしたキティホーク姉妹はフォレスタル四姉妹を義理の姉として慕っていた。
逆に、フォレスタル四姉妹もキティホーク姉妹達を普通に妹のように可愛がっていた。
特に今ここには居ないインディは、キティが生まれた時に妹が出来たと一週間は喜んでいたものだった。
「ごめんね〜みんな、忙しかったでしょ?」
サラが後ろを振り向いて義理の妹たちに尋ねたが、皆手を横に振って笑っていた。
「いいえ、私たちもフォル姉さんが心配だったから・・・。」
キティが言うフォルと言うのはフォリーの事なのだが、彼女の妹達はフォルという響きを好んでいた。
一方、ティコのような先輩艦魂や親しい間柄からはフォリーと呼ばれているのだ。
「そうっすよ、むしろ水臭い話はナシですってサラの姉貴。」
コニーがとんでもないといった表情で言っているのだろうが、顔が隠れて見えない。
何に隠れているのかと言うと、大きな花束である。
中にはキティ達が作った、「早く良くなってください」などと書かれたカードが入っていた。
「フォル姉さん、これで元気になるといいけど・・・」
「大丈夫よ〜、きっと! 私たちが居るからすぐに元気になるわ。」
レンのややネガティブな発言に、常にポジティブなサラが返事を返した。
「ところで、インディは?」
「ん〜、なんか用事があって遅くなるとか言ってたわ。」
「そうなんだ・・・。」
レンが静かに言った時、サラが何かを発見した。
「ん? あれ誰だっけ?」
サラが前方に見える艦橋の前で腕時計を見ながら佇む人影を目にしたのだ。
見た目は19歳くらいで、ツインテールの金髪が特徴的なキリッとした表情の女性。
そしてそれを見た全員が、彼女が艦魂であることに気付いた。
「ええと・・・誰だっけ・・・?」
彼女の顔を知らなかったサラが首をかしげてそう呟いていた。
「遅い・・・何をやってるんだろうか、ティコの奴。」
一方、眉間に皺を寄せながら彼女はやや苛立っているようだ。
その時彼女の視線の先に、こちらを窺いながらも少し離れた前方を通り過ぎようとするサラ達一行の姿が目に入った。
彼女も、サラ達が自分と同じ艦魂であることを瞬時に見抜いていた。
「ああ、君達・・・」
「は、はい・・・何でしょうか??」
突然声をかけられたサラが少々びくっとしながら答える。
「ティコ・・・いやタイコンデロガの艦魂を見なかったか?」
「え〜と、ティコ司令ですか?」
「私たちをここに呼んだのは、ティコ司令だったね・・・。」
謎の艦魂からの質問を受けてサラが言った言葉を聞いて、レンが思い出したように呟いた。
「そうだったんですか、私たちにはサラ姉さんから連絡があったので知らなかったわ。」
アミーだけでなくキティ達もが、てっきり今回のお見舞いはフォレスタル四姉妹が企画した物だと思い込んでいた。
そして、サラがそれぞれみんなと顔を合わせるがサラと顔を合わせた全員が首を横に振るだけだった。
「いいえ、全員見て無いようです。」
それを聞くと、彼女はやれやれと呆れたような表情を見せる。
「そうか、ありがとう。 では失礼する。」
そう言うと、彼女はその場をそそくさと立ち去っていた。
「行っちゃったね。」
「・・・結局名前聞くの忘れてたね。」
レンがボソッと呟いた瞬間、サラが唖然となっていた。
「・・・あ。」
「まあまあサラ姉さんにレン姉さん、また会うかもしれないじゃないですか。 それより、早くフォル姉さんの所に
向かいませんか? もしかしたら、ティコ司令はフォル姉さんの所に居るかもしれないし・・・」
その様子を見て、キティが苦笑しながら言った。
「そ、そうよね〜。 そ、それじゃ早速フォル姉さんの所に行っちゃおうか。」
(それにしても、キティ・・・妙な所以外、早くもフォル姉さんに似てきたみたいね・・・)
先頭を行くサラが、まるで後ろのキティに自分の姉を見ているような不思議な感覚を感じていた。
皆から遅れること約10分後、最初にサラ達がいたタイコンデロガの甲板上に今度はインディが現われた。
「ひゃ〜、遅れてしまった・・・姉さん達どこ行ったんだ? もう先に行ったか?」
慌ててインディが走りだす。
すれ違った艦魂達に聞くと、サラ達は艦橋の方へと向かっていたと聞いたので、インディは
てっきり皆がティコの所に向かったのだと思っていた。
そして彼女がタイコンデロガの艦橋内へと入ろうとして、角を曲がった。
しかし曲がり角を曲がるなり見えたのは、早く動く自分のせいで高速に接近してくる茶色い何かだった。
ドゴッ!!
「うおあっ!!?」
「ギャッ!!? 痛いッス!!」
お互いにぶつかり、インディが体を起こして謝ろうとした時だった・・・
相手の顔を見るなり、インディの表情が怒りモードへと変わった。
「・・・て、てめぇは!!」
「は、はい?」
フォレスタルへと転移し、フォリーが居る部屋に辿り着いたサラ達6人は、
フォリーが無事だと言う事には安堵したものの、彼女の髪の色が変わってしまっていた事に驚きを隠せなかった。
「銀色の髪なんて、まるでお婆さんだね私・・・。」
自嘲するようにいうフォリー、当然サラ達は励ましの言葉をかける。
「大丈夫だよ、髪が何色だってフォル姉さんはフォル姉さんだから。」
「フォル姉さん、コレ私たちから。」
落ち込んだ表情のフォリーに対し、キティ達は元気を取り戻すために花束を贈った。
「ありがとう、みんな・・・私の為に・・・。」
「良いんですよ、みんな姉さんが好きだという証拠です。」
「ふふ、ありがとうレン。 みんなにこう励まされちゃ、修理でき次第すぐにでも復帰できそうね。」
フォリーが感謝の言葉を述べ、続いて皆が近況報告を行い、さながら家族集会のような物が繰り広げられている。
そして、時間が経つにつれて話は変わり変わり思い出したようにサラが口を開いた。
「そう言えば、ここに来る途中に見かけない顔のアメリカの艦魂に会いましたよ〜。」
「へえ、どんな人だったの?」
フォリーが尋ねると、サラがしばらく考える。
「ええと、金髪のツインテールに・・・こ〜んなキリッとした目の人だったかな〜。」
サラがレンの顔で先ほど会った彼女の表情を再現する。
だが、レンはあまり嫌そうでは無いのを見てフォリーは苦笑するしかなかった。
「ツインテール・・・最初はティコ司令かなと思ったけど、金髪じゃないし・・・それに司令はそんな目じゃないわ。」
その時だった、やや開けられた部屋のドアの向こうからバタバタと誰かが駆けてくるような音が聞こえた。
バタンッ!と部屋の元々開いていたドアが勢いよく開け放たれ、姿を現したのは・・・
「ロ、ロング・・・どうしたのそんなに慌てて?」
「た、た、大変だよ!! インディお姉ちゃんがケンカを!!」
「ケ、ケンカですって!!? い、一体誰と!?」
落ちついていた筈のフォリーが慌ててロングに尋ねる。
「わからない、多分補給艦のような子だと思う。 〜ッスとか言うのが口癖な・・・」
その瞬間、フォリーはインディと私闘を演じているのが誰なのか、そして何故なのかまで理解した。
思わず立ち上がろうかしたのだが、治っていない脇腹から激痛が走った。
「無理よ姉さん! それより、あの子がケンカって!?」
「・・・ロング、悪いけど私の代わりにティコ司令に伝えて、サラとレン・・・そしてキティ達、インディを止めて!
多分、インディの相手は給兵艦ダイアモンド・ヘッドの艦魂のダイア、私に老朽化した爆弾を運んできた子なんだけど
ダイアは悪くないの! だからお願い、インディを止めて!」
フォリーの悲痛な叫びを聞いて、一瞬サラ達が顔を見合わせる。
だが、必死なフォリーの表情を見てすぐに彼女たちの意は決した。
「わかったわ、姉さんはそのまま安静にしてて〜!」
「私も行ってきます。」
「あ、待って下さいサラ姉さんにレン姉さ〜ん!」
「って言ってるキティ姉さんも待って〜!!」
「ええと・・・やっぱり私も行ってきます!」
「わわっ、私はティコ司令のとこに行かなきゃ!」
エンターを最後に慌ただしく部屋を飛び出した妹たちは、一路インディを探しに軍港へと向かった。
一方ロングはその慌ただしさに目を回しそうだったが、彼女はティコの元へとなんとか走り出した。
一方、タイコンデロガの士官室・・・
「zzz...zzz...もぅ...zzz...たべれな〜い....」
ティコが机に涎を垂らして眠っている傍らに、彼女はいた。
「ティコ・・・やれやれ、人を呼んでおきながら・・・」
サラ達が言っていた謎の艦魂の女性が、呆れたように呟いた時だった。
先程と同じようにティコの部屋のドアが勢いよく開け放たれ、息切れ状態のロングが現われた。
「はぅわっ!!!?」
その音で、ティコがビクッとなり飛び起きるように目を覚ます。
「ハァ・・・ハァ・・・ティコ司令、インディお姉ちゃんがダイアっていう給兵艦の子とケンカを!! って、あ〜あなたは!!」
「ん? ロングか、久しぶりだな。 ところで今ケンカとか言わなかったか?」
「え? あ、は、はいっ・・・この艦の艦橋のすぐ外だそうです!」
「そうか・・・!」
するとロングと面識のあった彼女はまるで疾風のように部屋を飛び出していった。
それを見ていたティコだが、寝起きでぼんやりしているのも災いし未だに状況が掴めていない。
「・・・それで・・・ファ〜・・・どうしたんだっけ? ロングちゃん?」
「はぁ・・・もう一回言うんですかぁ?」
「お前のせいで、フォル姉がっ!!」
「あぐっ!!」
インディは、ダイアに殴る蹴るといった暴行を加えていた。
しかも、ダイアは反撃せずに一方的に為されるがままの状態である。
「お前・・・さっきからなんで反撃しねえんだ?」
「それは・・・やっぱり、責任は私にあると思ってるからッス!」
唇を切り、鼻血を出しているダイアだがインディの怒りは収まらない。
「知ったような口をきいてんじゃねぇ!!」
拳を振り上げ、インディがさらに一発を加えようとした時だった。
「やめなさい、インディ!!」
その声を聞いてインディの動きが止まる。
「お姉さん、ダメですっ!!」
同時に、キティとコニーによってインディの右腕が抑え込まれる。
「サ、サラ姉・・・それにキティにコニー。」
「インディ、今すぐ止めなさい!」
「放してくれキティにコニー、コイツのせいでフォル姉は・・・」
「姉さんが言ってたのよ。 ダイアは悪くないって・・・」
「えっ・・・フォル、姉さん・・・が?」
フォリーが言ってたというサラの言葉は、インディの怒りのボルテージを著しく下げた。
その証拠に、ダイアを掴んでいたインディの左手が彼女から離れた。
「本当にごめんなさい、ダイア・・・インディったら勘違いをしていたみたいで・・・。」
必死に謝るサラ、その時彼女はダイアが物哀しい笑みを浮かべており、そして手にピストルのような物を持っていた事に気付き、
思わず息をのんで後ずさりをした。
「ダイア・・・それって。」
「ん? ああ! 私のピストルが!!」
インディが自分が持っていたピストルがいつの間にかダイアの手にあるのに気付き、慌てて取り返そうとする。
「来ないでくださいッス!!」
銃口をこちらに向けられ、インディはもちろんサラ達も迂闊に近づくことができない。
「やめて、ダイア・・・インディを撃たないで!!」
サラはてっきりダイアが反撃のために使うのではと思ったが、それは間違いだった。
「大丈夫ッスよ、これはこう向けるんじゃなくて・・・こう向けるんッス。」
ダイアがインディの方向から、なんと自分の頭へと向けた。
重責を感じていたダイアの心は、既に限界を突破していたのだ。
「それでも同じですダイアさん、撃っちゃダメです!!」
キティも必死に止めようとするが、近づけないし止める事が出来ない。
さらにダイアはもう聞く耳を持っていないようだ。
「さよならッス、せめてこれで許して欲しいッス!」
「ダメエエェェッ!!!」
ダイアがトリガーに力を入れのと同時に、サラは思わず駆けだしていた。
(駄目、間に合わない!!)
不吉な考えがサラの頭をよぎった時だった。
サラを後ろから高速で金色の何かがすり抜けると、そのままダイアの方へと向かった。
バーーンッ!!
ピストル特有の破裂音が響き、誰もがダイアに弾が当たったと思い目を閉じていた。
そして恐る恐る一番最初に開いたのは、サラだった。
すると彼女は目の前の光景に目を見開いた。
硝煙の白煙を上げる弾はタイコンデロガのフライトデッキに潰れた形で落ちていた。
そして一方のダイアは、気絶しているのか目の前に立つ女性の左腕に抱えられていた。
「まったく、命はそう簡単に投げ捨てるものでは無い・・・。」
そう言う彼女の右手には、金色の柄を持つサーベルが握られており、サラはこれで間一髪弾丸を叩き落としたのだと思った。
俊足で間合いに入ると言い、正確な太刀裁きといいまさに神業だ。
「あ、あなたはさっき会った・・・。」
サラが呟いた時、後ろからロングとそしてティコ司令が慌ただしく駆けてきた。
「オーリス、今の音って!?」
「大丈夫だ、銃弾を弾いて彼女は気絶させた。」
それを聞いて、ティコがふぅっと一安心のため息をつくと、気を失っているダイアを抱える。
「・・・流石は、米海軍最強と言われるだけのことはあるわね。」
「ふん、だが偉大な先達の方々に比べれば、私などまやかし程度だ。」
「良く言うわよ・・・。 今まで負けたこと無いくせにっ。」
すると、ティコはサラ達が「この人だぁれ?」と言った表情を浮かべている事に気付いた。
「ああ、そう言えばあなた達はまだ彼女に会った事無かったわね。
紹介するわ、彼女はエセックス級の11番艦、オリスカニーの艦魂オーリスよ。」
エセックス級と聞いてあまりの敬意から言葉を失ったサラ達に、オーリスは深々とお辞儀をした。
「先ほども会ったが、私が空母オリスカニーの艦魂だ。 皆からはオーリスと呼ばれている。」
言い終わった直後、オーリスがサーベルの刀身を鞘に納めた。
そして彼女こそ、後にフォリーを元帥と呼ばれるまでに成長させた功労者だった。
Loc.Inside of USS Forrestal(CV-59)
場所:米空母フォレスタル艦内
クッキーや紅茶を飲みながらくつろぐ6人の姿が・・・
サラ「危なかったわ、もう少しでダイアちゃん死ぬとこだったわ。」
インディ「だって、腹立って・・・。」
レン「インディ・・・どうせなら私を・・・いえ、何でもないわ・・・」
↑顔が真っ赤なレン
インディ「レン姉、今何か・・・」
レン「気のせいよ!」
インディ「気になる・・・にしても最後あたりの“成長”って言葉気にならない?」
サラ「気になるわ〜、すっごく。 私どうなってるんだろう(ワクワク)」
キティ「とまあそんな皆さんに朗報ですっ! こちらの作者のJINさんと、三ノ城先生がキャラ設定を共有しました。そして、私や皆さんが成長した姿が三ノ城先生の小説『キティホーク・極東の<The First Navy Jack>』で登場します。」
サラ「キティはまたいろいろと頑張ってるみたいね。」
キティ「えへへ、おかげ様で。」
レン「でも、三ノ城先生の作品見た後にこっちを見ると・・・」
インディ「ギャップに苦しみそうだな。」
サラ「そこは〜、JINさんのせいじゃないかな?」
レン「そう言う事にしておきましょう・・・」
ティコ「それはさておき、作者のJINさん・・・何か計画している事があるみたいよ。」
フォル「へぇ、初めて知りました。 ティコさん、どんな企画なんですか?」
ティコ「ん〜良くは分からないけど、読者数の所を見て『あと15人だ!』とか妙にはしゃいでたわ。」
インディ「・・・なんか良い事が起こる気がしないんだが。」
レン「みんなでタイムスリップして、黒鉄先生の大和特攻に・・・。」
他全員「「「「それだけはダメッ!!」」」」
サラ「ていうか、私たちアメリカの空母の艦魂だからさ〜!」
ティコ「戦艦大和を救う側じゃなくて、もろに攻撃する側よね・・・。」
インディ「レシプロ機ならともかく、ジェット機なら・・・言っちゃ悪いが、戦艦大和瞬殺フラグだな。」
フォル「ついでに、作者のJINさんも作家として死亡確定ですね。」
レン(言いだしっぺの私は攻撃されないのね・・。)
その時・・・外で何やら物音と喋り声が・・・
フォル「誰かしら・・・あ!」
会議室の小さな窓に映った水色の何かが一瞬で通り過ぎた
フォル「今の、誰かしら?」
インディ「・・・今の、頭か? だったら、ロングじゃないのか?」
その時、誰かがインディの服の裾をツンツンと引っ張る
ロング「インディお姉ちゃん、私ここに居るよ。」
インディ「おわっ、すまんすまん! 台詞が無かったんでツイ・・・」
ティコ「私見てこ〜。」
ドアを少し開けて顔を覗かせるティコ
ティコ「・・・反対側の会議室に、誰か知らないけど何人か居るみたい。」
フォル「思いだしました。 反対側の会議室に来客予定がありました。」
サラ「お姉ちゃん、思いだすの遅〜い。」
フォル「ごめんね、サラ。」
インディ「それで、誰なんだ姉さん。」
フォル「それが、JINさん名義になってて・・・許可あるまで覗くなって! 私の艦内なのに・・・!」
サラ「・・・・・・。」
レン「・・・・・・。」
インディ「・・・・・・。」
ティコ「・・・・・・。」
ロング「・・・・・・。」
全員「「「「「「怪しいっ!!!!」」」」」」
一方、反対の会議室・・・
???1「へぇ、こんな風になってたんですか。 これが、フォレスタルっていう空母なんですね。」
???2「でも、私たちシェルドハーフェン級戦艦より、ちょっと狭いわね・・・。」
???3「仕方ない。 私たちは、後に航空戦艦に改装できるように設計された戦艦。
フォレスタル級・・・私にレーザー攻撃をしてきては、結構簡単に沈んだものだ。」
JIN
???4「それにしてもこの艦、127mm砲8門で艦を守れると思ってるのかしら?」
???5「艦長、いくらなんでもこれは瞬殺レベル、設計評価なら間違いなくDですよ。」
???6「うむ、せめて超重力電磁防壁でもあれば、少しは話も変わってくるのだろうが。」
JIN(やっぱり、できねぇ・・・)
???1「この世界には、超兵器って無いんですね・・・。」
???3「平和だな。 空母と聞いて、てっきりリヴァイアサンやムスペルヘイム辺りが出てくると思ったが。」
???2「この空母、ペーターシュトラッサーより小さいわね(笑)」
???6「核ミs、ゴホンッ、巡航ミサイル一発で終わりそうだな。」
???5「これなら、JINさんが作中で建艦した航空戦艦シェルドハーフェンの主砲斉射で沈めれますね。」
JIN「こいつらをあいつらに会わせる事できねぇ!!!」
???1「?? 何か言いました?」
JIN「ん? いや・・・何でもない。」(どうか、変な事が起きませんようにっ!)
???5「この小説の、感想や評価をお待ちしています。 って、なんで私たちが言ってるんですか!?」
???6「副長、構成上・・・仕方ないと思ったが良い。」