表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

一話

 転入初日、星野姫(ほしの ひめ)(高校二年生)は漫画の様な出会いに憧れ学校近くの曲がり角で待機していた


 これで準備は万端だ。

 時間も遅刻ギリギリ、食パンもよし、新品の子供っぽい柄のパンツも穿いたし、私の事を印象付けるために大きなリボンもした。

 後はこの曲がり角で男子生徒とぶつかれば、万事順調だ。

 毎回ここで失敗するけど、今回こそは成功して見せる。

 いつもは自然さを優先しすぎて、進行方向の角に待機していたからぶつかる直前でお互いが止まるなんてハプニングもあったけど、今回は不自然でもいいからぶつかりやすい角に待機したし、ぶつかる確率は上がったはず。


 それにしても、あんまりこの時間に登校する生徒っていないんだなぁ。

 通っても自転車だし、ぶつかりたくないな。

 後数分待って来なかったら、最初のイベントは諦めて向かわないと遅刻しちゃうかな。


 誰か来た。

 一瞬だけ見たけど、あれは男子の制服だった。

 後はタイミングを見計らうだけだ。


 よし、今だ!

 全力で走り出すと我ながら完璧なタイミングだった。

 後はパンツが見えるように転ばないと、周囲に危険物はなし、尻もちをつくように両膝を立てて、スカートを捲りあげて、彼から見やすいようにする。


「いったぁい、どこ見てるのよ」


 中々いい感じに可愛く言えたんじゃない?

 完全に当たり屋みたいだけど、これは成功したんじゃない?


「いてて、ごめん大丈夫? あっ」


「えっ? きゃっ、もしかしてみた?」


「ごめん、見てない、いや見たけど、見えちゃったというかなんというか」


「この変態!」


 よし、完璧だ。

 走り去りながら心の中でガッツポーズをする。


 できれば同じクラスがいいけど、そこは時の運、でもこの普通は絶対にしないような大きなリボンは印象に残るはずだ。



「今日は転校生が来たから紹介するぞ。入ってこい」


「星野姫です。よろしくお願いします」


「あっ!」


「あんたはさっきの!」


 さっきぶつかった男子がいた。

 まさかこんな偶然があるなんて、今回は運もいい。


「お前達知り合いか? だったら丁度海空の隣が空いてるからそこに座ってくれ」


 なんでそこ空いてるの? 誰か自殺でもしたの?

 不自然に空いている席に向かうと、他に比べて少しぼろい気がする。

 ここ座って大丈夫なの? 呪われたりしない? それか見えない人様の席とかじゃないよね?


「さっきは悪かった、だからそう警戒しないで座れよ」


 私が気にしてるのはそこじゃない。


「ふんっ」


 この机については深く考えないようにしよう。

 折角同じクラスで隣の席になったんだし、大事なのはこれからの事だ。


 朝のホームルームが終わると、一人の女子生徒が私の元に近寄って来た。

 クラスでも一際可愛い子だけど、もしかして委員長?


「星野さんでいいんだよね。もしかして兄さんが何かしちゃった?」


 まさかの海空くんの妹!?

 普通姉弟って同じクラスにならないんじゃないの?


「えっと、二人は兄妹なの?」


「大体合ってるかな。私は雪村夏希(ゆきむら なつき)、兄さんとは家が隣で兄妹みたいなものだし」


 幼馴染……だと……!?

 しかも、兄さんと呼ぶ幼馴染とか、そんな存在が現実世界にいていいの?


「兄さんってデリカシーとかないからいっつも失礼なことしちゃうんだよ」


 これは私が海空くんを狙っていると気づいてのけん制?

 新参者の出る出番は無いって言いに来たの?


「海空、あんた星野さんに迷惑かけてないでしょうね」


「嫌だな、委員長、そんなわけないだろ」


「そんなのが信じてもらえるくらい、善行詰んできた?」


 追加で三つ編みメガネっ子委員長まで来た!?

 転校して何人か委員長見てきたけど、こんなに委員長っていうのがぴったりな人初めて見た。


「私は桜井鈴音(さくらい すずね)。このクラスの委員長をしてるからこの馬鹿が何かして来たら言ってね」


「はい」


 まあ、雪村さんと違ってこの委員長は海空争奪戦には入ってこなさそうかな。


「こんにちはー!」


「日向、どうかしたのか?」


「今日は先輩が目当てじゃないですよ。転校生がこのクラスに来たって聞いたんで来たんです」


「迷惑かけるなよ?」


「先輩じゃないので迷惑かけませんよ」


「俺にもかけないでくれ」


 更に元気っ子で後輩の新キャラ!?


「先輩が日向のいうこと聞いてくれたら、他の人にちょっかいかけずに済みます」


「わかったよ、たまにいうこと聞いてやるから他人に迷惑かけるなよ」


「騒がしくてごめんね、この子は風音日向(かざね ひなた)ちゃん、被服部で兄さんに服を着せるのが趣味なんだって」


 何その設定……、普通それって美少女に着せて楽しむんじゃないの?


「予鈴が鳴ったから早くさっさと教室に戻れよ」


「はーい。そうだ、お昼空いてますか?」


「春姉と約束があるから無理かな」


 ここまででキャラが広いのに、その上姉キャラがいるの?

 いや、まだ実姉という可能性もある。


「そう言えば兄さん、お姉ちゃんに呼ばれてたもんね。今朝も台所でお弁当作ってたよ」


 実姉じゃないのかよ!

 何この状況、出会いは完璧だったはず。

 少女漫画みたいに食パン咥えて走って、男子とぶつかったのに、ライバルが次々と現れた。

 もしかしてこの男子ギャルゲ主人公か……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ