黒い悪魔かそれとも熊か
しかし、運が悪いことをここで嘆いていても仕方がない。
「じゃぁ、次はどうすればいい?」
「切り替え早いわね、ありがたいわ。とりあえず、この場は私たちがなんとかするわ。すぐ見回り班も来ると思うし。あなたたちは、最初の予定通り、通りを抜けて。」
早口でレティシアが捲し立てる。
合間にあの子達に見習わせたいわ、と舌打ちが挟まれていたがなんのことかわからないので、触れずにおく。
「「りょ(っす)。」」
敬礼ポーズ付で返事をする。
「え、ちょっとなにその「りょ。」って!あと、そのポーズも!!」
「時間がないので説明は省きます。」
ウォルターと通りを抜けて行く。幾つかの角を曲がった先で、直ぐにまた足を止めることになった。
何故ならば、目の前には、さらにもう一人。
「沸き上がりすぎじゃない?」
黒い悪魔とか呼ばれる虫みたいだな。一匹見たらなんとやらのやつ。
小さい声で言ったはずなのに、ウォルターに咎められる。
「ガラが急に悪くなったっす。」
黙れ、ウォルター。処理が追い付かないのだ。
「今度はどうする?」
「ちなみに見覚えは?」
「ない!!」
「即答!ほんとっすか?」
「たぶん!!」
「えーー。」
黙れ、ウォルター。ないもんはない!!
「通り抜けるか、もとの道に戻るか。後は応戦するか……」
「最後のは、だめっすよ。絶対にだめっす。俺まだ死にたくないっす。……通り抜けるのは厳しそうっすね。と、なれば……」
チラリと後ろを振り返る。
敵に背中向けちゃいけないんじゃなかったっけ?
音をたてないように、そのまま目を逸らさずに後ろに下がる、だったっけ?
そりゃ熊か。
「戻るっ」
ウォルターの話が終わる前に目の前の闇落ちたちが突っ込んできた。
「うぉっ。」
「わっ。」
慌てて端に避ける。両端に避けた私たちの間を、闇落ちの爪が通っていく。
そのまま闇落ちから離れようと前に走る。
走り出してすぐ気づく。
ウォルターは?
振り返れば、もとの道に戻るウォルターが見える。
今まで戻ろうと話していたのでその選択か。
しかし、闇落ちたちも自分の進行方向にいるウォルターを追いかける。
ナイス、囮!!
ウォルターが囮になってくれている間に私は前に進もう。
後は頼んだ!!
そして、この道を走り抜ければ、前回と同じように開けた場所に出ると聞いている。道が合っていれば。
やっと見えたゴールにホッとしながらも足を踏み入れた瞬間、立ち止まってしまった。
道は、合ってた。
やけに寒いその場所には、約束の相手が最悪なタイミングで待ち構えていた。




