勝算はなかったです
「自分が纏っていた黒い霧を吸い込み、力に変えるのが『闇落ち』です。先程も言いましたが、闇落ちするともう人間ではありません。魔力が元となった闇の霧を体に取り込むことで、身体強化されます。そして見た目は、まぁ、ああなります。」
不健康な感じになったり、爪が長くなったりするのか。
まぁ、血が黒い時点で人間じゃないもんね。
「……で、魔法より物理的攻撃のが効きます。」
「やっぱり。」
「間合いに入るのが難しいとされていますので、基本二人以上で戦います。一人で戦おうとする人は、まずいません。」
うぉい。釘をさされた。
いやでも、知らなかったんだよ。
「闇落ちした人は、そのまま放置すると誰それ構わず襲うようになります。見つけた場合は、被害が出る前に対応をするのが基本となります。」
私の行動、あってたじゃん。
「力量を測れず、突っ込むことをなんというか知ってます?」
無鉄砲、向こう見ず、無謀、命知らず、無茶、怖いもの知らず等々、上げればたくさんあるよ。
「それだけ知っていて何故、行動に移したのです?もしや、勝算があったのですか?」
勝算、なかったんですよね?って聞こえますが?
「え、殺られる前に殺ろうと。勝算なんてもはないですねぇ。」
深いため息をつかれた。
……すいません。
「はぁ。討ち取るとあのように生命が抜けて干からびます。そうなるまで油断は出来ません。」
「なるほど。」
「あと、闇落ちから受けた傷は治りが遅くなります。」
「あっ、それ聞きました。」
アレンの視線が包帯巻かれた左腕に行き、つられて私も視線を落とす。
痛いが我慢できない訳ではないし、無理に動かさなければ問題はない。
「本当に大丈夫です。」
未だにまだ心配そうな顔をするアレンにどう伝えたら安心してもらえるのかと考え、こういう時こそ微笑んでおこう。
うん?だめか。反応がない。
「被害が大きくなる前になんとかできたのでよしとしましょうよ。」
私の言葉に何か考えるそぶりをするアレン。
結果は、
「全然良しじゃないですからね。今後のことも考えて、魔法の練習と護身術を覚えましょう。それと何かあったら助けを呼ぶということを覚えてください。」
魔法と護身術はいいけど、助けを呼び慣れていない私には最後のひとつがハードル高めなんですが。
ここんとこ助けなんて求めたって誰か来てくれた記憶なんて無いし、来てくれないのに助けを呼ぶなんてバカらしくて声を上げることすらしてなかった。
誰かに頼るなんてバカらしくて、恥ずかしくて、諦めていたことだ。
期待しないほうが私が楽だから。そう思ってきた期間が長いので、言われて「はい、そうですか。」と簡単にできそうにない。
「忍耐と我慢は違うのですよ。先に救いがないときは耐えなくていいんです。それにやる前から諦めないでください。」
「……どうにもなりそうにないときは、助けを呼ぶよう努力します。」
今、私に言える最大の言葉はこれくらいなのに、
「だめです。どうにかしようとする前に呼んでください。助けますから。」
ダメ出しをされてしまった。




