月の歌
ご飯の後、お風呂について尋ねると、とりあえずお風呂はあるらしい。ほとんど皆、魔法で済ませてしまうらしいが。
トイレの場所も確認できた。元の世界なら、各自、非常口の確認をしておいてねって言われるパターンだな。
教えてもらったので、早速お風呂を済ませて部屋に戻る。
やっぱり魔法やシャワーのみで済ませるよりも湯船に浸かった方のが断然気持ちがいい。と、いいながらも湯船の中で体育座りが基本だけど。
しかし、部屋に戻っても特に何かすることがない。
本を読もうにも引っ越してきたばかりなので、読む本がない。
仕方がないので、寝床に付くことにする。
だからといって、すぐ寝付けるわけではない。
元の世界でやっていたことと同じようにベットに寝転がりながら窓から空を見上げる。
空にはポッカリと月が浮かんでいる。
銀色の月が。
そう、こちらの世界は月の色が白銀なのである。
そして一周りぐらいでかいし、けっこう明るいのである。
あと、ちゃんと月の満ち欠けはある。
眠れないときは、月を見上げるに限る。
窓から見上げる月は、ただそこにあるだけで、なにも言わずにただ浮かんでいるだけだ。
それが私にはとても優しく思えてならないのだ。
後はただ、月を見ながら歌うのだ。
別に大声で歌おうと思っているわけではない。口ずさむぐらいなのだ。
そして、いつのまにか眠ってしまい、夜が明ければ御の字である。
童謡であれば、ふるさとを思う歌や負われてとんぼを見る歌、からすが鳴くから帰る歌など寂しく思う歌が多いように感じる。
童謡でなければ、舞台の上に取り残されたり、海の底で貝になりたかったりする。あと、自分の事を忘れないでと手紙を書きなぐる歌とか、私の今の状況と同じように月や星、空を見上げる歌が多い。
明るい歌やポップな歌を知らないわけではないし、嫌いなわけではない。
でも、パッと思い浮かぶのは重い歌ばかり。
自分のレパートリーの無さに呆れる。
でも、好きなものは好きなのだ。
例えそれが、他人と相容れなくても、他人に共感されなくても。何時までも爪弾きにされて、仲間外れにされて、蹴落とされても。
好きなものを好きだと言いたい。言えないのならせめて、思ってもいないことに同意をしたくないだけだったのだ。
他人の顔色を窺って合わせて、好きでもないものを好きだと笑って群れていなくてはいけないなんて。
それなのに裏で悪口を言うなんて器用なことは出来ないのだ。
仲間に属さない他人には何をしたってかまわないと思っているやつの相手なんてしていられない。
私だって女子なのだ。一人でいるより群れていたいし、興味のない話より好きな事を話していたい気持ちはわからなくはない。
熟、女子と言うものは面倒な生き物なのだ。




