0-0 プロローグ
「はいっ!……かしこまりました!ありがとうございますっ!」
元気な声が部屋中にこだまする。何やら電話を片手に、女の子がにこにことした表情で会話をしている。
「…はい、それではよろしくお願いいたします!失礼します。」ガチャ
「ふぅ…よかった~」
彼女は天界の名門校である“高天原立天岩戸学校”に通う女学生の“大日光”。
成績優秀、容姿端麗、才色兼備の“大日”とはこの人である。
「…自分で言うのはどうなの?」
「あれっ!?声に出てた?」
「はぁ…ばっちりね…」
私は自分の顔が熱くなるのを感じながらも、即座に言い訳を探し出す。
「い、今のは私じゃなくて…そうっ!瑞穂ちゃんが言ったんだよ!」
「ん?なんだ光?楽しそうじゃん!」
「瑞穂ちゃん、そうだよね?」
「ん~、なんかわからないが、たぶんそうだっ!」
「ほらっ!これで暦ちゃんもわかったでしょ!」
「…今のやり取りから、私は何を分かればいいのよ…?」
などと巧みに話題を逸らすことに成功した私は、目の前の2人に視線を向ける。
彼女らは私の従妹で同じ学校に通う同級生でもある。
物静かな方は“夜月暦”。典型的文学少女な見た目とは裏腹に、的確な時に的確なつっこみを入れてくれる、私のナイスパートナー。
元気な方は“稲櫛瑞穂”。見た目も中身も明るく元気なのだが、いかんせん思慮に乏しいというか、なんというか。平たく言うと脳筋である。
「…で、今の電話は何だったの?やけににこにこしてたけど」
「よくぞ聞いてくれました、我が相棒」
私は相棒なんかじゃない、というつっこみをスルーしつつ話を続ける。
「実は私、就職先が決まりました!」
「おお~、よかったな!で、どこなんだ?」
「天国地区のお役所ですっ!しかも人間管理部の転生課だって!」
私は声高々に宣言をする。
現代において転生に関わる仕事は、神々にとってキャリアとなっている。
…というのも、転生の仕事は倍率が高く、優秀な神しか従事できないのだ。
いくら私の通う学校が名門とはいえ、推薦などという生易しいものはない。
この結果は私が優秀な神として認められた証でもあった。
「じゃあ、私たちは同期ってことになるのね…」
「これでまた3人で仲良くやれるな!」
「そうだね!今からもう待ちきれないよ~」
「つくづくあなた達とは腐れ縁ね」
などと話しているうちに日が落ちてきた。
「そろそろ帰ろっか」
「夜メシ一緒に食おうぜ~」
「私ダイエット中だから、カロリー控えめのにしてね」
「何言ってんだ、暦。運動すればいいだろ。何なら私が指導してやろうか?」
「稲櫛の指導なんて、私がついていけるわけないでしょ…」
「じゃあ、私がやってる“おっぱい運動”を一緒にやろうよ!」
「それだけは死んでも嫌!」
「私たちは死ぬことなんてないぞ、神だし」
「ものの例に決まってるじゃない、察してよ!」
あははは、と3人で笑いながら並んで帰る。
夕暮れのこの一時は、何よりの楽しみだ。
しかし、学生時代も残るところ半年のみ…。
(私ちゃんとした社会“神”になれるかな~?
…なんてナーバスになっても仕方がない。だって私たちの物語はまだまだこれからだもん!)




