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素直になるのが怖いから。

気付いているけど


まだ認めたくなくて。


初めてしまうと


いつか終わりがくるから


それが悲しくて…

--------------------------------------


「海に行きたかったな~」


「今、秋だからね」


「秋だから温泉と紅葉」


「楽しみですね」


「そうだね」


返事と一緒にニコッとしてくれた理央さんは凄く可愛かった。

理央さんと外出って買い物以外では、初めてかもしれない。楽しみだ。



「ビーチじゃなくてもいいナンパされたい!」


「うん、いい男欲しい」


美彩さんと夏帆さんは昼間っからビールをガブガブと飲み少し荒れている様子…

僕と理央さんは緑茶。



結局、理央さんが「どうせなら温泉で癒されたい」と、言い出しこの週末は4人で温泉&紅葉ツアーだ。


“車だと飲めないから嫌だ”ってことで、目的地の熱海までは電車移動。

車内ですでに缶ビールを何本も空にしている美彩さんと夏帆さんには驚きだ。


「ナンパ目的なんですか?」


「あれ? なお君嫉妬?」


ニヤニヤしながら聞いてくる美彩さん


「えっ、いや別に」


「可愛いな~」


「…」


「大丈夫だよ、なお君が1番だから」


「!?」


「なお君見てると私も年下ありかなって思えてきた」


「夏帆さんまで…」


「2人とも飲み過ぎ」


軽く不貞腐れたような顔でそう2人に言った理央さん


「理央の方が嫉妬してるね」


「素直じゃないね~」


「別に違うから!」


「僕は理央さんが1番ですけどね」


今度は真っ赤になる理央さん


2人でいる時は知る事が出来なかった。理央さんの色んな表情。美彩さんと夏帆さんには感謝だ。


「相変わらず一途だね」


「いいな~私も理央みたいに一途に想われたい」


「そう言うんじゃないから!」


「そう言うって?」


「付き合ってないから!」


「うん、僕の片思いですから」


「宣言しちゃうんだ」


「本当の事は、はっきり言います」


「理央、顔赤いよ~?」


「やめてからかわないで」


「……彼氏欲しい」


「夏帆さん?」


「仕事が楽しいから恋愛なんて… って思ってたけど、こうやって想ってもらえるのは幸せだな~って感じる」


「確かに、男の子といくら遊んでもそれは遊びだしそれ以上の関係にはならない。なにもしなくても隣に居るだけで安心するそんな存在って羨ましい…」


「美彩さん…」


夏帆さんは兎も角、美彩さんまであんな真剣な表情で…

お酒で酔っているせいかいつもより目を潤ませて本音を言い出した美彩さんを見ていると何だか少し心配になった。


「恋がしたいって言うより、安心感を求めているってことですか?」


「う~ん、そうかもね。ときめきや刺激も欲しいけど、それ以上に安心感や癒しが欲しいのかもね」


「微笑み合ってる家族とか見るとなんだか優しさに溢れてて泣きそうになっちゃうんだよね」


夏帆さんも美彩さんもただ彼氏が欲しいだけじゃないんだ

優しさや温かさ温もり、安心感

そう言った目には見えないものを求めているんだ…


「美彩さん」


「ん?」


「ナンパされようとするのやめてください」


「えっ? なに?本当に嫉妬しちゃう?」


「ナンパしてくる人って見た目だけで相手を選んでますよね? そこに美彩さんの求めている優しさはあまり無いと思いますよ? 美彩さんを本当に大切にしてくれる人を選んでください。」


「なお君…」


「すみません、生意気な事言って」


「ううん、嬉しいよ。そんな風に私を思って言ってくれる男の人居なかったからなんだか、凄く嬉しいあるがとう、なお君」


「本当に良い人見つけたね」


美彩となおのやり取りを見ていたら、夏帆が小さくそんなことを私に呟いた。


本当にそう思う。

こんなに相手を思って優しさに溢れている人って今の時代どれだけ居るのだろうか…

もしかしたらなお程優しい人はどこにも居ないのかもしれない。


夏帆と美彩はなおのことを気に入ったみたいで「なお君なら理央を任せられる」なんて言い出したり、

「あんな純粋な男の人いるんだね」と、感心したりこのよく分からない説明し辛い関係も2人は口を出さず見守ってくれている。


本当、2人には感謝してる。ありがとう夏帆、美彩。




「付いたー! 熱海!」


「温泉入りたいね」


「じゃ、まず旅館にチェックインしに行こうか」


熱海駅を降りてすぐ近くにある商店街で温泉饅頭おんせんまんじゅうを食べたり、抹茶と和菓子を食べたり付いて早々、熱海を満喫している女子3人。電車の中でビール飲んで駅弁食べて…


それなのにまだこんなに食べるなんて凄い胃袋だ


「「「甘い物は別腹なの!」」」


声に出さなかったのに怒られた。




「凄く綺麗な旅館ですね」


「うん、そうだね」


「いいでしょ、ここ」


「でも、値段そんなに高くなかったよね?」


「実はこの旅館親戚がやってるんだよね。だから、身内価格で安くしてもらったの。」


「夏帆さんの親戚こんな立派な旅館なんですね」


「そう、昔もよく家族で泊まりに来てて、おじさんもおばさんもいい人だよ」


「じゃ、ここは夏帆の思い出の場所なんだ~」


「ふふっ、なんかそんな言い方されると恥ずかしいから」


フロントでは、わざわざ夏帆さんのおじさんとおばさんが迎えてくれて、夏帆さんの言っていた通り

お2人ともとても優しそうな人だった。

案内された部屋はとても広くて驚いた


でも、


「あの…まさかここに4人で泊まるんですか?」


「え? そうだけどどうかした?」


「女性3人なら分かりますが、僕男ですよ?」


「なお君って大丈夫な感じがするんだよね」


「えっ?」


「無理やり襲ったり、酔った勢いでとかなさそう」


「確かにそんな感じしない。誠実って感じ」


「あぁ…そのイメージは嬉しいですが、男として見られていないって事でしょうか?…」


「まぁ、ペットだしね」


「……」


「凹まない、凹まない。お姉さんが慰めてあげようか?」


「…美彩?」


「ごめんなさい」


「大丈夫だよ、なお」


「えっ」


「私たちは、なおの事信頼してるって事だから。そんなに気にしないで。」


「…はい」



本当は嫌だったの。

なおが1人部屋になって折角の旅行なのに会えない時間があるのが嫌だった。

いつもは同じ寝室で寝てるからなんだかなおが近くに居ないと寝付けない気して…

それに、知らない間になおが変な女にナンパなんてされたらと思うと気が気じゃない…

夏帆にお願いして4人同室にしてもらったなんてなおには言えない。




なお、

私はまだ認めたくないの。

あなたを好きだと認めてしまったらきっと私は私でいられなくなるから…


もう少しだけ、なおの片思いのままにさせて。


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