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クリスマスイブ

翌日、私はいつものように家を出ると学園へ向かっていた。

昨日からずっと彼の言葉が頭から離れない。

(12月24日あんたを迎えに行く。それで最後だ)

今まで事前に約束する事なんてなかった。

電話での急な呼び出しばかりで、それに最後って……何かあるのかな?

さすがにドライブじゃないよね。

でもこれで彼の目的は何なのか……それが明らかになる。


しかし待てど暮らせど、スマホが鳴る気配はない。

充電も電波も留守電も全て確認してみるが、一向に連絡がこない。

カレンダーを毎日確認する中、24日が近づいてくると、どうすればいいのか頭を悩ませていた。


そうして連絡がないままに当日になってしまった。

出かけるお兄様を見送る為、玄関前にやってくると、ニッコリと笑みを浮かべながらに振り返る。


「じゃぁ行ってくるね。今日はいつもよりも帰りが遅くなりそうだけれど、いい子にしているんだよ。ところで彩華……今日は何か予定があるのかい?」


「へぇっ!?あっ、うん一応。でも、あの、夕方には帰る……つもり……だよ……うん……」


その質問にサッと視線を逸らせると、モゴモゴと口ごもる。

何の連絡もないけど、いつも夕方には戻れるし……大丈夫だよね……。

誤魔化す様に笑みを浮かべて見せると、お兄様は徐に下げていた袋を持ち上げ私の前に差し出した。


「彩華、出かけるのなら一つお願いしたい事があるんだけどいいかな?これを使って見てほしいんだ」


その言葉に袋を覗き込んでみると、そこにはシンプルなデザインの白いハンドバッグが入っている。


「可愛い、これを使っていいの?」


「あぁ、次回売り出す予定のハンドバッグなんだ。提げた感じとか気になるところとかあれば教えてほしい」


「わかったわ」


私はバッグを受け取ると、早速袋から取り出してみる。

どんな服にでも似合いそうなカジュアルなデザインに、シンプルカラー、ベルトにはシルバーのラインが入り、チャックにはハートのチャームが付いていた。

早速肩へ掛けてみると、ベルトの長さを調節し顔を上げた。


「デザインもシンプルでどんな服にも似合いそう。それにとっても軽くて持ちやすい」


「ははっ、今日の夜にでも、ゆっくり聞かせてくれるかな」


彼の言葉に深く頷いて見せると、そのまま出かけていった。


そうして私は部屋へ戻ると、ベッドへ寝転がりながら鳴らないスマホを握りしめじっと眺めていた。

お兄様は出かけて行った、抜け出すのは容易くなったけれど、本当に今日迎えに来るのかな。

それにしても近々迄連絡一つよこさないなんて、何を考えているんだろう?

まぁ考えても答えなんて出ないよね。


私はスマホをポケットへ片付けると、体を起こし机の上に教科書とノートを広げる。

冬休みに入り、学園から出ている課題に目を通すと、ゆっくりとペンを走らせていく。

そうして課題へ集中する中、グゥ~と腹の虫がないた。

ノートから視線を外し時計を見上げてみると、正午を回っている。


もうこんな時間……いつもは午前中に待ち合わせだったのに。

もしかして遅くなるのかな……それだとお兄様が心配しちゃう、どうしよう……。


カチカチと指針が進む音を聞きながら、ペンを片手に考え込んでいると、突然に着信音が響き渡った。

私は慌ててスマホを取り出すと、受話器のボタンをクリックする。


「はい、もしもし」


「今下に車を止めてある、すぐにこい」


「下に!?っていつも突然すぎるよ!ってちょっと!ガチャッ、ツーツーツー」


きられた……はぁ……何だかなぁ。

とりあえず行くしかない。

私は徐に立ち上がると、メイドに声をかけ、さっきのカバンを肩へ掛けると、エレベーターへと向かって行く。

ボタンを押し到着を待つ中、ウィーンと機械音が響いた。


それにしても今まであんなに必死に隠していたのに、マンションまで来て大丈夫なのかな?

それか下に降りたらまた連絡が来て、どこかへ歩かされるのかな。

様々な疑問が頭を過る中、ピンッとの音と共にエレベータが到着すると静かに扉が開いた。


中へ乗り込み下へ降りていく中、1階へ到着すると扉越しに、彼の姿が目に映る。

えっ!?本当にここまで来たの!?

彼の姿に唖然とする中、ゆっくりと扉が開かれると、そこにはいつものラフな服装ではなく、ピシッとしたスーツ姿で、髪もオールバックに固めた天斗が佇んでいた。


「えっ!?なんで?こんなところまで来て大丈夫なの?それにどうしたのその恰好?私はいつもと同じ普段着だよ!?」


「ははっ、驚きすぎだろう。まぁ気にすんな、行くぞ」


天斗は私の腕を掴むと、そのまま車へと誘っていく。

彼の背中に向かって様々な疑問を問いかけてみるが、彼は応えることなく私を車の中へと押し込んだ。


そうして車が発車すると、目的が決まっているのだろう、迷うことなく進んで行く。

どこへ連れていかれるのか、不安がよぎる中、天斗はアクセルを踏み込むと、徐に口を開いた。


「そのカバンどうしたんだ?いつもと違うだろう」


彼の言葉に肩にかけていたバッグへ視線を向ける。

すごい気が付いたんだ。

男の人ってこういう事に鈍いと思っていたけれど……。


「えーと、これはお兄様からモニターを頼まれたサンプル物。使い心地を聞きたいって今日渡されたの」


天斗は赤信号にブレーキを踏むと、カバンをジロジロと眺め始める。


「ふ~ん、本当にあんた大事にされてんだな。……まぁ今回はいいか」


「うん?どういう事?」


意味のわからない言葉に天斗へ視線を向ける。

しかし彼は口を固く閉ざすと、何も話すことはなかった。

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