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とある日のマンションで(二条視点)

北風が窓を揺らし結露が流れ落ちていく。

外は寒そうだな、そんな事を考えていると、玄関からチャイムとけたたましい音が響いた。


ピーンポン、ピンポン、ピー、ピーポン、ピーンポン。

ドンドンドンッ、ドンドンドンドンッ、ドドドドッ、ドンドドンドンッ。


扉の方から激しく叩く音が部屋に響き渡ると、何事かと慌てて立ち上がる。

玄関へ向かいそっと扉を開けてみると、そこには妹の香澄が鬼の形相をして飛び込んできた。


「かっ、香澄!?どうしたんだ?」


「お兄様、お兄様!全くお兄様がぼうっとしているからこんなことになるのよ!しっかりしなさいよ!」


頭に響く甲高い声に俺は思わず耳を塞ぐと、慌てて扉を閉める。

キーンと耳み音が残る中、こめかみを押さえながらに、香澄へ視線を向けた。


「落ち着け、突然どうした、俺がどうかしたのか?」


そう問いかけてみると、香澄はキッと目を細めると、俺を強く睨みつける。


「お兄様がヘタレだからこんなことになるのよ!あぁもう!!!さっきここへ来る前に見ちゃったの。お姉様が黒い高級車から男と一緒に下りてくる姿を!信じられなくて、本当にお姉様かと見直したんだけど、お姉様男と見つめちゃっていい雰囲気で……。あぁもう、お兄様がウジウジと行動しないからこんな事になるのよ!」


予想だにしていなかった言葉に茫然とする中、俺は目を見開きその場で動きを止めた。

一条が男の車に……?

どういう事だ?いや、そんなまさか……ッッ。


「本当なのか?本当に一条だったのか……?」


「私がお姉様を見間違えるはずなんてないわ。それに嘘を言ってどうするのよ!身長も高くて手も足も長くてスラッとしていて、大人の男って感じで……。男の顔はサングラスをかけていてはっきりと見れなかったけれど、なかなかのイケメン男子だったわ。って違う、もうお兄様どうするのよ!お姉様はお兄様の婚約者になってもらわないと、私の本当のお姉様にならないじゃない!」


大人の男……まさかそんな事……一条に男の影なんて今までなかった。

それにもし一条の傍に男が居ると知れば、歩さんが黙っていない。

最近父の仕事上歩さんと会う機会が多いが、特に変わった様子はなかった。


「いや、だがそんな事、歩さんが許すはずないだろう。歩さんは何も言っていなかった」


「そんな事知らないわよ。でもお姉様の事だし、一条先輩には秘密にしているんじゃないかしら。だから家の前じゃなくて、その手前の公園で車を停車していた。うん、そう考えると辻褄があうわ。あぁ、お姉様がコッソリ男と会っていたなんて信じられない……」


泣きそうに顔を歪める香澄の様子に、今言っていた事は真実なのだと実感する。

いやだが、どう考えても不可能だ。

彼女を一番に想っている歩さんから隠れるなんて、そう簡単には出来ない。

あの人ならありとあらゆる手を使って、男を見つけているはず……。


「お兄様!それよりも今すぐにお姉様へ会いに行って、クリスマスを一緒に過ごす約束を取り付けてきて!この間お姉様に聞いたら、何も予定がないって言ってたわよ!全くお兄様は何をしているのよ。お姉様は美人で優しくてパーフェクトなんだから、おちおちしてたら他の男に奪われる事ぐらいわかっていたでしょう!」


うぅっ、それはごもっともだな。

少し目を離せば彼女の周りにはハイエナのように男が集まってくる。

容姿端麗、文武両道、性格も申し分ない上、なんといっても一条家の長女だ。

男が放っておくはずがない。

そうなるとわかっているから、歩さんも極力一条をそういったパーティーへは参加させないよう手を回しているからな。

だからこそ学園以外で、彼女が男と面識を持つタイミングは少ないはず。


「ほらっ、さっさと行くわよ!」




痛いところを突かれぐうの音も出ない中、香澄は俺の腕を強く引っ張った。

そのまま外へ連れ出されると、一条の部屋の前へと引っ張られていく。

香澄は躊躇することなく扉を叩くと、中から彼女の澄んだ声が耳にとどいた。

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