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彼の目的は

この男……高級車を見る限り、一般人ではなさそう。

でも彼の顔を見る限り、パーティーなどで見た覚えはない。

さすがにそこで出会っていれば、目元が隠れていようが気が付くはず。

いや……う~ん、最近はあまり参加していないから、自信はないけれど……。


なら一条家から隠れようとするのは、もしかしてお兄様と面識があるのとか……。

電話でもお兄様にばれたくないと話していた。

でもそれならお兄様を通して私と接触したほうが、不信感はないと思うんだけど。

いや……お兄様は私を溺愛しているからなぁ……そっちの方がハードル高いか。


それにしても色々と手の込んだ事をする割には、私を連れ出して……ドライブ……?

いえ、そんなわけない。

絶対に何か他の理由があるはずよ。

スマホが手元にない今、まずはこの男の事を探ってみましょう。

気を抜かないようにしないと……。

でもとりあえずお兄様にばれたくないのなら、そんなに遅くまで連れまわされないわよね……。

私が夕方までに戻らなければ、お兄様ならすぐに探し始めるだろう。


「そんな難しい顔しなくても心配ねぇよ。それにもう来ちまったんだ、楽しんでいけよ。マジで俺はあんたをどうこうしようとは考えてねぇ。あんたの兄貴も怖いからな、暗くなる前には家に帰すよ。それともう一つ、はっきり言ってお前は俺の好みじゃないからな。お子様には興味ねぇんだよ」


男はニヤリと口角を上げると、シフトレバーを下ろしていく。

何なのよ、この男……ッッ。

でもこのタイミングなら、相手の事を聞いても不自然じゃない。


「お子様って、あなたはいくつなのよ。そんなに年は変わらないでしょ?」


「バーカ、教えねぇよ。まぁお前よりは年上だな。おこちゃまなお嬢ちゃん」


彼の言葉に苛立つ中、私はグッと抑えると、深く息を吐き出した。

なんで名も知らないこの男に、そこまで言われなくちゃいけないのよ。


「それよりもなんであんたみたいなお嬢様が、サクベ学園へ来たんだ?普通エイン学園へ入学するもんだろう?」


彼の問いかけに私は気まずげに視線を逸らせると、そっと口を開いた。


「何でもいいでしょ。あなたには関係ないことだわ」


そうそっけなく答えると、男はゆっくりとアクセルを踏み込んだ。


「まぁいい。ほら、雑談は終わりだ。さっさと決めろ。どこでもいいぜ」


私は彼を窺うように顔を上げると、サングラスの奥の瞳が微かに見える。

今聞いても何も教えてもらえなさそうだな。

とりあえず、ドライブをすればいいのか……。

色々思うところはあるけれど、考えてもわからないし……どこへでも連れて行ってくれるのなら……。

私はそこである店が頭を過ると、男へと顔を向けた。


「行きたいところならあるわ」


私はある場所を指定すると、男は驚いた様子で笑って見せた。


そうして車が止まると、そこは有名なジャンクフード店だった。

あぁ一度でいいから来てみたかった。

お金持ちの一条家の人間だと、こんなところへ来られるはずがない。

いつも有名なホテルのレストランだったり、家にシェフを呼び寄せてケータリングだったり……。

実家だと料亭ばかりだったしねぇ。

そんな中でジャンクフードが食べたいなんて言えるはずない。

あんな生活をしていた本物の一条 彩華は、ジャンクフードの存在すら知らないだろうな。


「お前……本当にここでいいのか?」


「えぇ、じゃ買ってくるわ!」


私は後部座席から財布を取り出すと、お店の方へ足を向ける。

するとガクンッと体が傾くと、腕が強く引っ張られた。


「おぃ、待て。俺が払う。あんたを無理矢理に連れてきているからな」


男の言葉に顔を向けると、彼は私の手を掴み中へと入って行った。


美味しそうな匂いが漂う中、店内は人でごった返している。

私はキョロキョロと視線を向けると、空いている席へ帽子を置き、レジへと向かった。


「あんた……。生粋のお嬢様なのに、こんな場所へ来たことあるのか?」


驚いた様子をみせる彼に、私は頬を引きつらせると、誤魔化す様に苦笑いを浮かべて見せる。

前世はこういった場所へよく来ていたとは答えられないよね。

私は逃げるように男から視線を逸らせると、店員へと顔を向けた。


「えーと、ハンバーガーのポテトのセット、ドリンクはアイスティーでお願いします。あなたも何か頼む?」


「……俺はコーヒーで良い」


「じゃぁ、ホットコーヒーを一つ追加して下さい」


「畏まりました」


店員はニッコリと笑みを浮かべると、レジをポチポチと叩いていく。

暫くしトレーに乗った商品が現れると、私はウキウキしながらに席へと運んでいった。


トレーには包み紙に包まれたハンバーガーと、ポテトが並ぶ中、アイスティーへストローをさすと、自然と頬が緩んでいく。

あぁハンバーガーにポテト、懐かしい!

この世界でジャンクフードを食べられるなんて!

私はハンバーガーをパクリと頬張ると、ケチャップと濃い味の肉のうまみが舌の上に広がっていく。

やっぱりジャンクフードはいいなぁ。

この濃い味が癖になるんだよねぇ。

もちろん料亭とかレストランとかで食べるご飯も美味しいけれど。

私は幸せな気分に浸っている中、向かいでは男が呆れた様子で笑みを浮かべていた。

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