新たな幕開け
ミスコンの結果は一位 金城 奈津美 二位 立花 さくら、三位は3年生と……私は五位に入賞していた。
しかし文化祭ポイントを取得できるのは、三位まで……。
一年の文化祭総合ポイントは、立花さくらがミスコンで二位を取ったことで、C組がぶっちぎりの一位を取り、学食券を手に入れた。
クラスメイトは五位でも大健闘と言ってくれたけれど……何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
そういえば……結局立花さくらは私をミスコンに参加させて、何をしたかったのだろうか。
彼女が何か仕掛けてくるかもしれないと身構えていたけれど、特に何もなかった。
まぁ無事に終わったからいいかなぁ。
もう出来れば彼女とは関りあいたくない。
そう改めて実感する中、波乱万丈な文化際が無事に終了すると、私の長い二日間が終わったのだった。
その後スマホは体調を崩した際、倒れた拍子に川へ落ちてしまったと説明し、お兄様に新しい物を買ってもらった。
二条や華僑くん、日華先輩にも体調を崩し遅れてしまったと、心配をかけてごめんなさいと説明した。
あの日連れ去った男たちについて何とか調べることが出来ないか、と考えてみたけれど……調べている事がばれ、花蓮さんの写真がネットにばら撒かれてしまうかもと思うと、動く事は出来なかった。
とりあえず今は、あの男からの連絡を待つしかないかな。
画像はあの男が持っているもんね。
お兄様へ相談しようと考えたけれども、やっぱりやめた。
あの男の目的がはっきりわからない以上、危険だわ。
それに最近シスコン度も高まっているし……あまり心配をかけたくない。
結局画像をどうにかしないと、どうすることも出来ないんだから。
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文化祭でにぎわっていた学園内が落ち着きを取り戻す中、私は憂鬱な思いで学園生活を送っていた。
まだ一度もあのスマホは鳴っていない。
ばれないようにするために、新しく用意されたスマホと着信音を同じにしている。
そしていつ鳴ってもわかるように、カバンに入れ持ち歩いていた。
充電は持ち歩き可能な物をこっそり購入し、カバンの中で充電している。
だけど全然鳴らないんだよね……。
もう文化祭が終わって一週間以上たつ。
教室内から窓の外へ目を向けると、校庭にある木々は紅葉が深まり、美しく彩られている。
いつかけてくるんだろう。
机に掛けてあるカバンへ視線を移す中、花蓮が心配そうな様子で私の顔を覗き込んだ。
「彩華様、大丈夫でしょうか?あの……あの日から元気がないように見えますわ。やっぱりあいつらに何か……」
気まずげな表情を見せる花蓮に私は顔を上げると、ニッコリと微笑んでみせる。
「ううん、違うの。本当に何もなかったわ。ごめんなさい、ちょっと考え事していただけ」
そう返事を返すと、花蓮は悲し気に瞳を揺らしていた。
そうして授業が終わり、家に帰ると、私はドサッとベッドへと倒れ込んだ。
今日はお兄様の帰りは遅くなるから、家には私一人。
お手伝いさんは晩御飯を用意して、もう帰宅している。
静かな部屋の中、私はカバンから例のスマホを取り出すと、真っ暗な画面をじっと見つめる。
そんな中、突然画面に明かりが灯ると、着信音が響き渡った。
突然の事にカバッと体を起こすと、慌てて受話器のボタンを押す。
「もしもし……?」
「ははっ、出るのが早いな。元気か?」
「なっ、あなたが出ろって言ったんじゃない。もう何なのよ……」
軽い男の声に頭痛がしてくる中、私は深く息を吐き出した。
「まぁいい、それよりもだ。明日10時に駅前の公衆トイレ前へ来い。誰にも知らずにな。後このスマホは必ず持って来いよ。だが自分のスマホは家に置いておけ、いいな」
「明日!?ちょっと待って、急すぎるわ、ってどうして?どこへ行くの?」
「うるさい、喚くな。じゃぁな、明日必ず来いよ」
問答無用とばかりに、プチッと電話が切られると、私は慌てて画面を見つめた。
かけなおそうと着信履歴を開いてみると、そこには非通知との文字が表示されている。
うぅ……非通知、かけなおせないじゃない。
ならどうにかして行かないと……。
私は画面を見つめたままに深く息を吐き出すと、痛む頭を押さえながらに考え込んだ。
明日は土曜日で学園は休み。
予定は特にないけれど……お兄様は確か……朝から父の職場にいくはず。
父の職場へ行くときは、いつも帰りが遅い。
ならコッソリ抜け出せばいけるかな。
あぁでもメイドさんに何て言おう。
花蓮さんの名前を使おうかなぁ。
いや、花蓮さんに迷惑を掛けたくない。
正直に話すしかないよね。
男に会うことは伏せて、駅へ行くと伝える方が正解かな。
そうやってどうやって家を出て行こうか、うんうん頭を悩ませている中、次第に夜は更けていった。