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迫られる決断

このままこの男の要求を受けるのは、安易すぎるわよね。

この男の言う事は信用できない、何をやらされるのかわからない。

私自身でどうにか出来る事ならなんだってする。

だけど家がばれてしまった以上……巻き込んでしまう可能性が高い。

でもミスコンに参加しないと、二条と華僑君が……どうすれば……ッッ。


「さっさと決めろ。俺はどっちでも構わねぇんだ。ここであんたを時間まで閉じ込めておけば、問題ねぇからな」


男の言う通り……。

ならここはとりあえず言う事を聞いて、後で何とか探りましょう。

あまりに無茶な要求をされれば、解放された後なら手は打てる。

それに花蓮さんの事も心配だし、今は早くここから解放してもらうのが先決。

私は決断すると、顔を上げ覆面の奥に映る瞳を真っすぐに見据えた。


「わかったわ。取引に応じる。だから早く私達を解放して」


「よし、決まりだな」


男は懐からナイフを取り出すと、後方へと回り込んだ。

硬く縛っていた縄を引っ張ると、ロープを切っていく。

自由になった腕を持ち上げてみると、手首には赤い跡が残っていた。


「まだ動くな、じっとしてろ」


鋭い男の視線に私は素直に頷いて見せると、その場に動かずにじっと男の様子を覗っていた。

花蓮さんが解放されていない現状、勝手に動けるはずがない。

私が逃げて……花蓮さんに何かあったら……。


男は扉の外へ出て行くと、一階にたむろっている彼らに何か指示を出し、また部屋へと戻ってきた。

部屋の外からバタバタバタとの足音が響く中、暫くすると、男は私は腕を引っ張り部屋の外へと連れ出した。

そのまま階段を下りて行くと、先ほど男たちがたむろっていた広場に連れて来られる。

男は固く私の腕を持ったままに二階を見上げていると、そこには男たちに囲まれた花蓮の姿が目に映った。


「花蓮さん!!!」


「彩華様!!!大丈夫でしたか?申し訳ございません、私がついていたのに……」


「花蓮さん無事でよかったわ。何もされていないかしら?」


花蓮は急ぎ足で階段を駆け下りてくると、私の傍へ走り寄る。

私は彼女の体をペタペタ触りながらに無事を確認すると、ほっと胸をなでおろした。

よかった……服も乱れていなし、乱暴された形跡もない。

私は無事を喜ぶように花蓮の体を抱きしめると、室内に大きなエンジン音が響いた。

顔を向けると、シャッターがゆっくりと上がり、そこに二台のバイクが止まっている。


「乗れ」


フルフェイスを被った男は、私の頭にヘルメットをかぶせると、後ろへ乗れと首を傾ける。

花蓮へ視線を向けると、彼女も同じようにフルフェイスを手渡されている。

その姿に私は慌てて跨ると、ぎゅっと座席を掴んだ。


「俺の腰に捕まってろ、飛ばすぞ」


ウゥンンンンッとの唸り音と共にバイクが走り始めると、私は慌てて彼の腰へとしがみ付いた。


そうして学園の近くにやってくると、男は何か確認する仕草を見せながらに、速度を緩め人気のない場所で停止した。

後ろから花蓮を乗せたバイクがやってくると、少し離れた場所で停車する。


「ここまでだ。解放する前に言っておくことがある。今日あった事は誰にも話すんじゃねぇ。もし誰かに話せば……」


私はバイクから降り、警戒するように距離を取る中、男はポケットからスマホを取り出すと、電源を入れ私へ見えるように掲げて見せる。

画面には制服を脱がされ下着姿となった花蓮の姿が映し出されていた。


「なっ、これは……ッッ、あなた花蓮さんに何をしたのよ!!!」


私はスマホを奪おうと手を伸ばすが、その腕は軽々と捕らえられる。


「何もしてねぇよ。あんたが約束を破らないように手を打っただけだ。話せばこの画像をネットにばらまいてやる。後、これを持ってけ」


男はもう一台スマホを取り出すと、私へと差し出した。


「そのスマホに電話をかける。必ず出ろ。スマホの事も他にばらすなよ。誰かがこちらを探っているとわかれば、すぐに画像を拡散するからな。まぁ、三ヶ月だけだ。全てが終われば画像を削除してやる。約束だ」


「こんなの聞いてないわ。それに約束なんて……何の保証もないじゃない!」


私は強く男を睨みつけると、彼は捕らえていた私の腕を強引に引き寄せる。


「お前が信じようが信じまいがどうでもいいんだよ。取引しねぇなら、さっきの場所へ連れ戻すだけだ」


男の瞳が間近に迫る中、私は言葉を詰まらせると、手首に鈍い痛みがはしる。

チラッと後方にいる花蓮へ視線を向けてみると、彼女もまだ解放されてはいない。

ここで断れば……次は本当に花蓮さんが……。

先ほどの写真が頭を過ると、私は小さく唇を噛みながらに頷いて見せた。


「よし、成立だ。じゃぁまたな」


男はパッと腕を話すと、ハンドルに引っかけていたカバンを取り、私へ持たせる。


「あっ、そうだ、あんたのスマホは川に投げ捨てた。GPSが入ってたからな」


男はそれだけ言うと、エンジンをふかしあっという間に走り去って行った。

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