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文化祭の準備で

ますます校内が文化祭の色に染まっていく中、授業が終わった放課後、各クラスは文化祭の準備に勤しんでいた。

もちろん私たちのクラスも同じ。

今は茶席用の野点傘を自作しているところ。

どうも茶室の貸し出しは上級生に取られてしまったようで……それなら外でとの事になったようだ。

まぁ。あれは買うと高いからね……たとえ買ってもこんな場でしか使えないだろうし、作ったほうが経済的だろう。


皆が茶席の準備を進める中、私と花蓮は茶席に必要な物の準備に取り掛かっていた。

家にあるものは高級すぎるため……ワンコインショップで簡易な道具をそろえていく。

この世界のワンコインショップすごい。

以前私が暮らしてた世界よりも、本当に何でもそろっていた。

お茶も本格的な抹茶ではなく、簡易な一般の方でも喜ばれそうなものを選んでいく。

そうして放課後買い出しへと走り回りながら一通り必要な道具が揃うと、花蓮とお茶をたてながらに試作していった。


夕暮れになり、花蓮は用事があるようで先に帰ってしまうと、私は手持ち無沙汰になってしまった。

作業する生徒たちの元へ向かうと、文化祭委員を務めている生徒へ声をかける。


「こちらの作業は終わったのだけれど……何か手伝えることはあるかしら?」


「あー、それじゃ、準備室からダンボールとカラーペンをとってきてくれないかしら。今手が離せなくて……」


わかったわと返事を返すと、私は一人教室の外へと出て行った。


廊下では皆文化祭の準備で騒がしい。

大きなダンボールを窓の外へ出し、ペンキで何かを描いている姿や、衣装を作っているのだろうか……女子生徒たちが集まり寸法を測っている。

そんな中、通路を挟んだ隣のCクラスからも、楽しそうな声が耳に届いた。

そっと顔を向けると、廊下には大きな布がかかっている。

Cクラスは何をするんだろう。

二条や華僑君も残って準備をしているのかな。

立花さくらと一緒に……。

彼女の事が頭をよぎり気持ちが暗くなる中、私は気を引き締めると、階段を下りながらに準備室へと足を進めていった。


そうして一階へやってくると、3年生たちが集まっていた。

学年最後の文化祭で、テンションが上がっているのだろう……皆楽しそうに盛り上がる姿を横目に進んでいく。

準備室は教室のある校舎と別の棟にある。

私は生徒たちから離れるように廊下を進んでいくと、ふと後方から私を呼ぶ声が耳に届いた。


「彩華!」


呼ばれる声に振り返ると、そこにはお兄様の姿があった。


「お兄様どうしたの?」


「彩華こそどうしたんだい。……どこへ行くのかな?」


「うん、準備室へ物を取りに、頼まれたんだ」


そうニコニコと話すと、お兄様はなぜか暗い表情を浮かべて見せる。

そんな姿に首を傾げて見せると、お兄様は言いにくそうに視線を逸らせた。


「ところで彩華、まだミスコンを辞退していないようだけれど……今ならまだ間に合うよ」


「あぁ……そのことか……。あのねやっぱりミスコンに出ようと思うの。出るからには頑張るつもりだよ。色々心配をかけてごめんなさい」


そうニッコリ笑みを浮かべて見せると、お兄様は小さく息を吐き出した。


「はぁ……それなら早急にルールを変更しなければいけないね……」


その声は呟くように小さく、周りの音にかき消される。


「えっ、お兄様なんていったの?」


「いや、何も……」


そう言いながらにお兄様は優し気な笑みを浮かべると、行くところがあるからと慌てた様子で去って行く。

どうしたのかな……?

そんな事を考えながらにお兄様の背を見送ると、私も準備室へ続く廊下を進んでいった。



暫くすると、校舎から離れ生徒たちが少なくなってくる中、渡り廊下を進んでいくと、向こう側から華僑の姿が目に映る。


「華僑君!」


「一条さん、こんなところでどうしたんですか?」


準備室へ行く旨を伝えると、華僑も同じのようだ。

並んで歩くのは……また女子からの反感をかうのが怖いが……生徒が少ないこちらの校舎なら大丈夫だろう。


「そういえば華僑君のクラスは何をするの?」


「あー……僕のクラスは……その……コスプレ喫茶ですね」


「いいねぇ~楽しそう。華僑君もコスプレするの?」


華僑は言いよどみながらに視線を逸らせると、頭を垂れた。

そんな華僑君の様子に笑みがこぼれる中、二人並びながらに準備室へやってくると、ドアは少し開き中から物音が耳に届く。

誰かいるのかな……?

そっとドアを押しながらに中を覗き込むと、薄暗い室内に抱き合う男女のシルエットが映し出された。

思わずその場で立ち止まり目を凝らしてみると、そこに居たのは二条と立花さくらだった。

二条は立花さくらの腰へ手を回し、彼女は二条の胸の中へ体を預ける……二人の姿はまるで恋人同士のようだ。

そんな二人と視線が絡むと、私は慌てて扉から離れ深く頭を下げた。


「あっ、その、ごめんなさい」


「おぃ、待て!違うんだ、一条!!!」


「一条さん!?」


驚く華僑をそのままに、逃げるようにその場から離れると、後方から私の呼ぶ声が耳に届く。

しかしその声を振り切るように廊下を走ると、私は逃げるように近くにある部屋の中へと飛び込んだ。


【おまけ】


「一条待て!」


そう声を張り上げ立花さくらを突き放そうとすると、体がガッチリと捕まれる。


「離せ!!!」


「行かせないわ。二条君はここへ残るのよ」


わけのかわらない言葉に立花を強く睨みつけると、捕まれた腕を振り払う。


「あ~、痛いなぁ……。二条君があの子を追いかけていくなら……私何をするかわからないよ」


その言葉に立ち止まると、俺はグッと拳を握りしめ、華僑へと視線を向ける。

すると華僑は俺の視線に深く頷くと、一条が走り去っていった方へと駆けていった。


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