表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/147

悲憤慷慨

そうして学園の外へやってくると、始業の合図が鳴り響き始める。

しかしそんな事には気にも留めずに歩き続ける中、彼女はただただ静かに後ろについてきていた。

授業が始まってしまったけど……今は立花さくらと話すことの方が大事。

私は用心深く辺りに人がいない事を確認すると、握りしめた手を離しながらに、ゆっくりと振り返る。

そうして真っすぐに立花さくらを見据えると、恐怖を必死に押し殺しながらに、震える唇を持ち上げた。


「どうして……どうしてそんなに平然としていられるのよ!あなたのせいで奏太君が、それに花蓮さんや北条家までも……ッッ」


「ははっ、奏太がどうしたっていうの?私は何もしていないわ」


「はぁっ!?あなたが奏太君を操ったからこんな事になったのよ!!!」


「ふんっ、操るなんて……何を言っているの?そんな事出来るはずないじゃない~。夢でも見たんじゃない?ねぇ、証拠はあるの?」


彼女の問いかけに言葉を詰まらせると、私は悔しさに拳を強く握りしめた。

証拠なんてない……。

だからこそお兄様にも言えなかった……。

私だってこの目で見ていなければ信用はしなかっただろう。

でもあれは絶対夢じゃない……現実だった……。


「それよりも~私はあなたが奏太に襲われている間……ずっと一条先輩と居たのよ。そんな私に何か出来るはずないじゃん。それにあなたを最初に見つけたのは私と一条先輩よ。感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないわ」


立花さくらは勝ち誇った様子で笑みを浮かべると、楽しそうに笑って見せる。

そんな彼女の姿に思わず飛びつくと、怒りで唇がわなわなと震え始めた。

悔しい……。

彼女の胸倉をつかみながらに、キッと立花さくらを睨みつけると、彼女は煩わしそうに私の手を振り払った。


「何よ、その目。まぁ~良いじゃない、あの子はおまけみたいなものなんだから~」


「……何を言ってるの?おまけってどういうことよ!」


「あぁ~もう、うるさいわね。おまけはおまけよ。彼は当て馬に近いわき役よ。居ても居なくても同じ彼はもう必要ない人間なのよ」


「そんな人間……存在しないわ!!!あなたの目的は一体何なの……?私が邪魔なのなら……他の人を巻き込むのはやめなさいよ!!!」


そう思いっきりに怒鳴ると、彼女は何か……含ませるような笑みを浮かべて見せる。


「彩華ちゃんは必要な存在だよ。だからこうして私が転入してきたんじゃない~」


「……っっ、どうやって転校してきたのよ……あなたは一般人でしょう」


「ふふっ、そ・れ・は・ね、花堂君にお願いしたの。彼ってお金持ちでしょう~。だから簡単に転校出来たのよね」


花堂家が……。

もしかして花堂君も転校してきている……?

いえ、そんな事、彼の家が許すはずがない。

ならどうして彼がこれほどまでに彼女に協力するの?

花堂君は彼女の事を好きだと話してた……なら同じ学園で通いたいと思うものじゃないの?

どうして……。


シーン静まり返る中、握りしめる拳に力が入っていく。

爪が肉に食い込む感覚に小さな痛みが走る中、私は必死に高ぶる気持ちを抑え込んでいった。

このまま言い合いをしていても無駄よ。

落ち着きなさい、ちゃんと彼女の目的を確認しないと……。

そんな私をよそに、彼女は嘲笑的な笑みを浮かべて見せると、私の顔を覗き込でくる。


「ねぇ、ねぇ、ところであなたミスコン出るんでしょ?」


「ミスコン……どうしてそんな事を聞くのよ……」


「出るのかどうか聞いているの。答えて」


立花さくらはスッと目を細めると、私の腕を握りしめる。


「……今から断りに行こうと思っていたわ。だから私はミスコンには出ない」


「あら、それは困るなぁ。あなたもミスコン出るのよ。もし辞退するのなら……二条君や華僑君も奏太と同じ目にあっちゃうかもしれないねぇ。クスクスクスッ」


その言葉にカッと血が上ると、私は腕を大きく振りかぶっていた。

そんな私の様子に彼女はまた煩わしそうな視線を向けると、振り上げた腕を簡単に止めた。


「鬱陶しい、やめてよねぇ。でっ、どうするの?」


「私を脅しているの……?」


「脅しているなんて人聞きの悪い、私はただ彩華ちゃんと一緒に文化祭を楽しみたいだけよ。ふふっ」


余裕の笑みを浮かべる彼女の姿に、怒りのあまり体が震えだす。


「あなたの目的は一体なんのよ!なんで……どうして……」


「それは教えない。あなたはただ私の言う通りにしていればいいの。それが正しいのだから……」


立花さくらはそう静かに話すと、真っ赤な瞳が私を射抜く。

彼女は本気だわ……。

どうしてこんな事をして平気でいられるのよ……。


「わかった……ミスコンに参加するわ。だから……彼らには手を出さないで」


「ふふっ、良い返事ね。私は約束は守る主義よ。あぁ~ミスコン楽しみねぇ~。アハハハハハッ」


立花さくらは嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべると、私の横をすり抜けていく。

そのままどこかへ去ってく姿を、じっと睨みつけると、何もできない自分の弱さに、いら立ちだけが募っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=282141413&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ