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突然の奇襲

久方ぶりに学園へ登校すると、私は花蓮と並ぶように校内を歩いていく。

そうしてクラスの扉を開けると、なぜか教室内の女子生徒達が怒涛のようにこちらへ押し寄せてきた。

えっ、なっ、何っ!?

突然の事に動きを止めると、彼女たちは私の周りを囲んでいく。

もしかして……集団リンチ……!?

そんな恐ろしい想像が頭をよぎる中、生徒たちを恐る恐る眺めてみると、なぜか期待に胸を膨らませたようなその視線に、私は口を半開きのままに固まった。

何だかキラキラとした視線を向けられているようだが……さっぱり意味がわからない。


戸惑いながらに立ち尽くす中、花蓮は私の前に割り込むと、彼女たちを無理矢理に引きはがしていく。


「ちょっと、あなたたち何なのよ!彩華様は病み上がりなのよ!」


ひぃっ、こんな普通の学園で様づけは……うぅぅ。

花蓮に様づけは……と声をかけようとしたその刹那、一人の生徒が私の腕を掴んだ。


「一条さん病み上がりで申し訳ないのだけれど、お願いがあるの!」


「そうなの、一条さんしか頼る人がいないのよ!」


一人の声に皆がのっかると、縋るような視線が向けられる。

お願い……?

彼女たちの様子に疑問符が浮かぶ中、私は花蓮に大丈夫だと目くばせすると、彼女はゆっくりと後ろへと下がっていった。


「何でしょうか?私に出来る事であれば……」


「よかった!一条さんにしかできない事なの!ねぇ、これを見てほしいの!」


そう目をキラキラさせながらに、私の前に一枚の紙を差し出した。

そこには「☆文化祭メインイベント☆来たれミスコン!」と大きな文字が飾られている。

ミスコン……?

何だろうと思いながらに首を傾げて見せると、生徒は期待を込めた眼差しを浮かべたままに、私の手を取った。


「一条さんには、文化祭でぜひミスコンに参加して欲しいのよ」


「心配しないで、必要な物は私たちが何とかするわ!だからお願い~~~~」


その声にかぶせるように、他の生徒達からも懇願される中、私は未だに状況がつかめないでいた。

文化祭はわかる……でもミスコンとは何だろう……。

どうして私なのだろう……。


「あの……ミスコンとは何でしょうか……?」


そう問いかけてみると、花蓮が生徒をかき分け、私の前にやってくる。


「そうですわね、彩華様は外部生ですものね……。ミスコンというのは文化祭での恒例の行事なのですわ。学園内の生徒で美を競うのです。彩華様の美貌であれば優勝は間違いないでしょうね」


また様づけ……はぁ……。

もう立花さくらに色々とばれているし問題はないか……。

ってそれよりも美を競うだなんて、無理無理……。

立花さくらの事がなくても、あまり目立ちたくないんだから……。


「えっ、いや、その、私には無理じゃないかな。えーと……荷が重いというか……」


「そんなことないわ、クラス満場一致で一条さんが良いとなったのよ!」


「そうよ、北条様から色々聞いたの。一条さん茶道や舞踏、華道も出来るのですよね!ミスコンで注目の的、優勝も夢じゃない!」


なぜか自信満々な彼女の口調に私は大きく目を見開くと、花蓮へと顔を向ける。


「花蓮さんどうして……?」


「あら……私はただ彩華様の素晴らしさをクラスの人たちにも知ってもらいたくて……話してはいけなかったかしら……?」


その言葉に私は苦笑いを浮かべると、出そうになるため息をグッと飲み込んだ。

言ってはいけないことはないけれど……出来ればそっとしておいてほしかったな……。

そんな考えなど伝わるはずもなく、頬を引きつらせていると、生徒の一人がどこからかペンを取り出した。


「一条さん、これにサインをしてくれるだけでいいの。お願い!!」


「えっ、あの、どうしてそんなに……みんな必死なのかな……?」


「決まっているわ!ミスコンに出て入賞すれば、クラスにポイントが入るのよ!」


ポイント?

文化祭にポイントがあるの……?

よくわからないといった様子を浮かべていると、別の生徒が乗り出す様に顔を寄せた。


「そっか、一条さんは知らないよね。文化祭で一番ポイントを稼いだクラスに賞品があるのよ!なんと今回は一年分の学食無料券!!!これは取りに行くしかないわ!」


「そう、だから少しでもポイントを稼いでおきたいの!一条さんお願いします!」


「でも……私が出ても入賞できるかわからないし……」


「逆に一条さんが入賞出来なきゃ、このクラス他に入賞できる人がいないわ」


そうきっぱりと言い切る姿に、頬が引きつっていく。

いやいや……まぁ……一条彩華は綺麗だし、きっといけるのかもしれない。

けれど中身は普通の一般人だよ!

そんな人前で何か出来るとは思えない。

うぅ……どうするべきか……。

どう断ろうか必死に頭を悩ませる中、いつの間にか私の手にペンが握らされていた。


「ねぇ一条さん、みんなの為にお願いします!」


「うぅ……入賞できない可能性が高いけれど、本当にいいの?」


そう何度も問いかけてみるも、集まった生徒はコクコクと何度も深く頷いて見せる。

そんな彼女たちの勢いに、私はあきらめるように大きく息を吐くと、紙の上にペンを滑らせていった。


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