表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無課金無双  作者: 原雷火
9/36

「仲間を集めろ」その8

 魔法の講義が続く間、エリーは魔法使いの部屋を見回して、床にしゃがみこむと、ちらかったままの魔導書を勝手に片付けだす。


「……あっ……それはそこでいいのに」


「整理整頓くらいしなさいよ。この惨状って、女の子の部屋じゃないわよ?」


「……なら、女の子じゃなくていいし」


「ねえユーマ。本当に彼女を誘うの?」


 じとっと湿ったエリーのまなざしに、ユーマは深くゆっくりうなずいた。


「これも縁ってやつだ。それに、なんかボーッとしてて、放っておいたら一生この部屋にいそうだし」


「ま、まぁ、たしかにいつまでも部屋でごろごろしてそうではあるけど」


 二人の言葉に反応して、魔法使いの少女がぽつりと呟いた。


「……それが、そろそろピンチなんだ……ボク」


 彼女は毛布にくるまったまま、ごろごろとベッドの上を転がると、サイドテーブルの上に置いてあった冒険者免許を手にして、またごろごろと戻ってきた。


「……明後日、免許失効。冒険者じゃなくなったら、ここから追い出される……死にたい」


 ユーマがエリーに視線を送った。


「免許って有効期限があるのか??」


「ええ。連続180日以上、外郭迷宮に入らないと失効ね」


「……うん。だから連れてって。基本、死んでるから邪魔はしないよ」


「なんで死ぬのが前提なんだ? もっと前向きになろうぜ! 当たって砕けろだ」


 青年の問いに、魔法使いはため息を吐いた。


「……当たったら砕けるどころか、粉末状になって風に飛ばされるくらい……死ぬほど弱いから。ボク」


 エリーが片方の眉をつりあげながら、びしっと魔法使いを指さす。


「コスト1だからって、パーティーに寄生していっさいなにもしないつもり? 魔法使いなんだから、魔法は憶えてるんでしょ?」


「……コスト1なめるな。実際、働かないし」


 涼しい顔で、魔法使いの少女はベッドの上をごろごろした。シエンが聖母のような穏やかな表情になる。


「いいじゃない。死にたがりなんてロックな感じだし。あたしは気に入ったわよ」


「……理解が早くて助かる」


「ふふふ。死んで楽になれると思ったら大間違いよ。なにを隠そう、あたしは数多いる僧侶の中でも蘇生魔法の達人なんだから! 伊達に蘇生魔法についての講義はしてないわよ」


 魔法使いの顔から、さーっと血の気が引いた。


「……げっ……最悪。死にたい」


 嗜虐的な笑みを浮かべて、シエンは続ける。


「何度でもよみがえらせてあげるわ! 死ぬ時は痛いわよぉ。死んでもすぐに蘇生させて、何度も痛い目をみてもらうわ」


 困り顔で魔法使いがユーマに聞く。


「……どうしよう」


「なら簡単だ。俺が守ってやる」


「……う、うん」


 ユーマと見つめ合った魔法使いのほおが、ほんのり赤らんだ。エリーの耳がピクピクと小刻みに震える。


「なに格好つけてんのよ。ユーマは勇者っていっても☆1の低ランクでレベル1なんだし。それにあなたも、かばわれてばっかりじゃ困るからね。魔法使いとしてきっちり働いてもらうわよ! とりあえず、憶えてる魔法について教えてちょうだい」


 はにかみながら魔法使いはつぶやいた。


「……広範囲上級火炎魔法と、広範囲上級氷結魔法と、広範囲上級地撃魔法と、広範囲上級斬風魔法かな」


 エリーが顔を近づけて、魔法使いの少女の瞳をのぞき込んだ。


「見栄はってないで、正直に言ってくれないと困るわ」


「……大丈夫。見栄じゃない。しかし魔法力が足りないだけ」


「それって、覚えてるけど使えないってこと?」


「……うん。お見せできなくて残念」


 シエンが首をかしげた。


「なら、無理せず初級魔法を使えばいいでしょ?」


「……初級魔法、覚えてないから。ボクって天才だし。基礎より応用が先なんだ」


「あら? 奇遇ね。あたしも天才なのよ」


 ユーマが驚いたように口を開いた。


「すごいぞエリー! 二人も天才がいるなんて……このパーティー、すごいことになるんじゃないか?」


「ぜんっぜんよくないわよ! ね、ねえあなた、他に使える魔法は?」


 エリーに詰め寄られて、魔法使いの少女はぼそりと呟いた。


「……中範囲中級火炎魔法。でも、魔法撃ったら負けだと思う」


「まさか、撃てるのは中級が一回だけってこと……ないわよね?」


「……天才は一度の輝きで燃え尽きるものだよ」


 納得したようにエリーはうなずいた。


「はぁ。どうりでコスト1なわけね」


「……どやああ」


 ドヤ顔の魔法使いに、ますますエリーの身体から力が抜けていく。


 その場に崩れそうになったエリーの背後から、シエンがひょっこり顔を出した。


「でも、それだけのスキルがあるなら、神格の高い神のパーティーに参加して、サクサクっとレベルを上げてもらえばいいのに。どこからもお呼びがかからないなんて、おかしいわ」


 人差し指を立てると、魔法使いはちっちっちっと左右に振って見せた。


「……コストだけが人間の価値を計る基準じゃないってことだよ。むしろ、そういう働かせる気満々な輩は、ボクの方からお断りしてるし……でも」


 再び、魔法使いはじっとユーマを見つめた。ユーマもまっすぐなまなざしで彼女を見つめ返す。


「俺たちの仲間にならないか?」


「……うん。ユーマは前向きでがんばり屋さんっぽいから、後ろ向きで怠惰なボクを養って。デモダッテだよ。よろしく」


「おう。よろしくなデモダッテ! 危なくなったら、遠慮無く俺を盾にしてくれ」


 シエンが口元を緩ませた。


「ユーマくん、養うと守るとじゃ、だいぶ意味合いが違うわよ。ま、おもしろいからいいけど」


 エリーが口を尖らせた。


「おもしろいからって、なんでもオッケーしないでよ! ハァ……大丈夫なのかなこのパーティー。ううん、こんな状況だからこそ、影のリーダーたるわたしがしっかりしないと……」


 ユーマが拳を握って声を上げた。


「よし! さっそく外郭の迷宮に行こうぜ!」


「……じゃあ、ボク……準備するから」


 ずっとベッドの上でごろごろしていたデモダッテが立ち上がった。巻き付けるように羽織っていた毛布が、しゅるりと落ちる。


 瞬間――エリーが悲鳴をあげた。


「きゃああああああああああああああ! なんで裸なのよ?」


「……裸がニートのユニフォームっていうし」


「い、言わないわよ! って、なにまじまじと見てるのよユーマも!」


「エリーが一番胸があるな」


「バカ! 変態! あっち向いてなさい! デモダッテは早く服を着て!」


 シエンが楽しそうにほほ笑んだ。


「ほんと、変な子ばっかりで退屈しなさそうね。もちろんあたしは変な子に含まれないわよ」




 四人はパーティー申請のために、街の目抜き通りを歩いていた。行き先は冒険者ギルドだ。


 約一名、魔法の箒に横座りで腰掛けて、ふんわりふわふわ浮いている。


「……歩くの面倒だし」


「こっちがツッコミを入れる前に言い訳しないでよ!」


 肩を落としつつ、エリーは三人の一歩前に出ると、くるりと振り返った。


「ところで、二人ともわたしと組んで後悔っていうか、その……嫌って思わない?」


 デモダッテはあくび混じりにつぶやいた。


「……別に。そもそも他人にあんまり興味ないし」


 シエンも肩をすくめさせた。


「人間のエルフ嫌いなんて教会のプロパガンダよ。あの連中ならやりかねないわ。だからあたしは気にしてないわよ。っていうか、うじうじ気にしてる方が気になるわね」


「そ、そう。じゃあこの話はもうしないわ。よろしくね! ユーマも、改めてよろしく。頼りにしてるわ」


「おう! こっちこそだ! 誘ってくれてありがとなエリー!」

明日からお昼の12:00に更新です~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ