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無課金無双  作者: 原雷火
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「仲間を集めろ」その3

「大戦のことくらいは知ってるわよね?」


「えっと……たしか、魔王が率いる魔族の軍団と、そのほかの種族の連合軍の戦い……だよな?」


「そうよ。魔王軍の侵攻で大陸の2/3が魔族の領土になったの。人間の小国がいくつも滅ぼされたわ。理由はわからないけど、魔王が狙うのは人間の国ばかりだったのよ」


「そうなのか。あれ? じゃあ他の種族はどうしたんだ?」


「人間と魔族の争いだからって、静観している種族の方が多かったわ。劣勢の人間たちに最初に援軍を送ったのは、なにを隠そうエルフなのよ」


「じゃあ、エルフは恩人じゃないか?」


「大戦のことは知ってるのに、そこは知らなかったの?」


「おう。大陸の東海岸は田舎だから、あんまり情報が入ってこないんだ」


 少し困ったような笑顔になって、エリーは続けた。


「そう……エルフもずっと、人間の味方をしていられればよかったんだけど……敵の味方は敵ってことで、魔王軍はエルフも攻撃対象にしたの。


 エルフは王族を人質に取られて……王族っていっても、王位継承権から一番遠いところにいる末っ子よ。なのに、それですっかり及び腰になってしまったエルフの国は、魔王軍との取引に応じてしまった。これ以上人間に荷担しなければ、侵略はしない……ってね」


「人質はどうなったんだ?」


「釈放されたけど、魔王の呪いを受けて、生まれながらにしてもっていた王族としての力を、すっかり失ってしまったそうよ」


「なるほどな。だから人間の中にはエルフを嫌う連中もいるってわけか」


 怯えた瞳でエリーはじっと、ユーマを見つめた。


「エルフのこと、嫌いになった?」


 青年は笑顔で返す。


「助けようとしてくれたんだから、やっぱり恩人だ。それに人質になった王族のことを、そんなに悪く言ってやるなよ。その人だって被害者だ」


 エリーのほおが赤らんだ。


「あ、ありがと……信用してくれるのね」


「エリーが良い奴だからな。当然だろ」


 少女は照れ笑いを浮かべた。ほおどころか、尖った耳の先まで赤くなる。


「え、えっとね……それからどうなったかっていうと、人間は光の最高神を掲げる教会のもとに、分裂していた国々を一つにまとめて英雄王っていう王様を擁立したの。


 英雄王はエルフはもちろん、ドワーフやホビットや獣人族や竜族や水棲族……果ては魔王軍から離反した魔族さえも説得して、仲間に引き入れてしまったのよ」


「どうやって説得したんだ? みんな立場も考え方も違うだろうに」


「他の種族にとっても、急速にふくれあがった魔王軍の力が脅威だったのよ。魔族の中ですら、他種族との共存を望む穏健派の離反を招いたくらいだもの。


 英雄王は『恐怖』や『脅威』を説得の材料にしたんじゃないかしら? 人々は共通の敵っていう価値観を共有したのよ。そうして英雄王は各種族の精鋭たちを軍に迎え入れて組織を再編。魔王軍に対して最後の反撃に出たわけ」


「英雄王か。そんなにすごいやつなら、会ってみたいな」


「王都にいるけど、よっぽど名を上げた冒険者でもない限り、謁見は難しいわね」


「じゃあ有名になるか!」


「あなたって本当に前向きなのね」


「俺らならいくらでも有名になれるって! むしろ、英雄王の方が『どんなやつか会ってみたい』って、思っちまうかもな。それで、反撃のあとはどうなったんだ?」


「連合軍の快進撃はまさに破竹の勢いで、ついには魔族の領土にまで侵攻したの。そして魔王城ののど元にまで、攻略拠点となる『攻略街』を転移させることに成功した……ってところね」


「なんで一気に攻め落とさないんだ? 魔王城はそんなに守りが堅い城なのか?」


「ええ。魔王軍の主力部隊は大戦で連合軍が撃破したわ。残党も抵抗したけど、ほとんどが投降して残るは魔王ただ一人……なんだけど、魔王は城に結界を何重にも張って籠城してるのよ」


「魔王はぼっちで引きこもりなんだな」


「変な言い方だけど、その通りよ。ちなみに籠城戦の場合、包囲している方の補給が追いつかなくなって、先に干上がってしまうこともあるのよね」


 ユーマは半分口を開けたまま、納得したように頷いた。


「あ~~。だから街ごと引っ越してきたのか」


「ええ。こちらの補給線はばっちり確保できてるわ。それだけに、今朝の山賊みたいなのに街道を荒らされるのは困りものなの」


「じゃあ、このまま持久戦を続けてれば、いつかは魔王城が干上がるってわけだ」


 エリーは眉を八の字にさせると首を左右に振った。


「やっかいなことに、魔王は補給を必要としない不老不死なのよ。時間とともにその力を回復させてしまうらしいわ」


「どうして軍が攻め込まないんだ?」


「言ったでしょ? 魔王城は魔王の結界に守られてるって」


「じゃあ、このまま魔王の力が回復するのを、指をくわえて見てるしかないのかよ」


 ユーマがぎゅっと拳を握りしめた。その手をそっと包むように両手で握ると、エリーはほほ笑む。


「だからわたしたちみたいな冒険者の出番ってわけ。そろそろ次の手続きに向かいましょ。コストのことも口で説明するより、実際に見てもらったほうが早そうだし」


「街についてからずっと手続きばっかだな。早く魔王と戦わせてくれ!」


「レベル1で魔王と戦うなんて自殺行為よ。それに、わたしたちだけじゃ戦えないわ。次の手続きこそが、魔王討伐のためにはもっとも重要になるのよ」


「仲間を探すのか?」


「まあ、そんなところね。ただ、仲間にするのは人間じゃなくて……神よ」


「神って……神さまを仲間にするのか? そんなことできるのか!?」


「ええ。そのための攻略街ですもの。わたしたちだけの守護神を決めにいきましょ。詳しいことは交神所で話すわ。それに……パーティーリーダーのコストが高い方が、良い神様に出会えるっていうし」


 エリーに促されて、ユーマは立ち上がると軽く背伸びをした。


「ところでさ、エリーはどうして冒険者になったんだ? やっぱり、魔王を止めたいからか?」


「魔王を倒してエルフの評判を元通りにしたいのよ。魔王討伐のパーティーにエルフがいれば、裏切り者の汚名も返上できるでしょ?」


「そっか。じゃあ、俺もエリーの願いが叶うように、協力するしがんばるぜ」

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