エピローグ
夕飯は攻略祝いということもあって、普段の冒険者酒場ではなく、奮発してレストランに向かった。
ごちそうが並び、普段はテンションが低めなデモダッテが、珍しく大はしゃぎだ。
シエンも楽しそうに、ミルクのおかわりをしまくった。
エリーとユーマも、今日までの苦労をねぎらいつつ……いつの間にか、話題は神のことになって、女子三名による悪口大会が始まってしまった。
お疲れ様会がお開きになったのは、深夜十二時を回ったあたりだ。
ミルクの飲み過ぎで意識を失ったシエンを、エリーが担いでいる。
途中で睡魔に連れ去られて、帰ってこなかったデモダッテは、ユーマの背中で寝息を立てていた。
宿舎へと続く帰り道。
エリーが小さくため息を吐く。
「おっきな子供が二人、いるみたいね」
ユーマが笑った。
「そうだな」
「二人ともだらしないわね。まったく」
「二人がいてくれたから、俺たちは冒険に出ることができたんだし……俺、エリーと出会えて本当によかった。改めて、ありがとう」
「お礼なんて別にいいわよ。こっちこそ、パーティー組んでくれてありがとね。本当は不安だったの。冒険者免許を取得しても、エルフのわたしを仲間にしてくれる人がいるかな……って」
「エリーは良い奴だから、そんな心配しなくてもいいって」
まっすぐな眼差しで優しく微笑むユーマに、エリーの頬が赤らんだ。
「あ、あのね……勇者にだけは知っててほしいことがあるの。実は……わたし……」
思い詰めていたエリーが、決心をして言いかけた……その時。
二人の視界が真っ白に染まった。
「リア充爆発しろ! 勇者ユーマ、そして剣士エリーよ。あとついでに寝てる二人もだが、緊急事態だから強制的にこっちから呼ばせてもらったぞ」
白い空間に神の姿が浮かんだ。エリーが吠える。
「ちょっとなによデリカシー無いわね! 今、すっごく良い雰囲気だったのに!」
神がにやりと笑う。
「知るか。そんなことより……時間限定の突発迷宮が姿を現した。さっそく攻略に向かうのだ!」
エリーの目が点になった。
「はぁ? 疲れてるんだけど。今、打ち上げが終わったところなんですけど!? 常識までないわけこの貧乏神!」
神は肩をすくめさせた。
「そう言うな。今回の突発迷宮は猫系モンスターで埋め尽くされている。しかもこいつらは、もふり放題だし、倒さなくてもOKだ。
クリアすると無料で神珠が一つ手に入るんだ。これがどんだけチャンスかってことは、お前らもよくわかっただろ!」
瞬間、怒っていたエリーの顔が、ゆるゆるの笑顔になった。
「猫ちゃんもふり放題……い、行きましょうユーマ!」
ユーマが背中側を確認した。
「二人とも寝てるぜ?」
エリーが鼻を鳴らす。
「ど、どうせ狸寝入りでしょ?」
エルフの少女の言葉に、シエンがあくびを交えて返事をした。
「あら、ばれてたの」
エリーの顔が真っ青になる。
「ほ、本当に起きてたの。じゃあ、さっきのわたしとユーマのことも……はうう」
ユーマの背中側で、デモダッテが呟く。
「……ボクは寝てるよ。むにゃむにゃ」
四人が起きているのを確認すると、神は遙か遠くを指さした。
「さあ行け勇者たちよ! 無料で神珠を手に入れるのだ!」
ユーマが笑顔で頷く。
「おう! 行こうみんな!」
ユーマたちは今日も旅立つ。無料の神珠を求めて、無課金の限界に挑むように。




