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無課金無双  作者: 原雷火
34/36

「みんながんばれ!」その1

 木漏れ日の射す森の外れに、小さな広場があった。


 ユーマたちは洞窟には向かわず、この広場で待つ。




 グルウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオ!




 怠惰の王は噂通り、森の広場に姿を現した。その身に陽光を受けて、外皮は沸々と沸き立っている。


「来たぞ! みんな……これが最後の決戦だ!」


 ユーマが剣を抜き身構えた。


 エリーが吠える。


「最後だなんて縁起でも無いわね!」


 風のように駆け抜け、怠惰の王に迫るとエリーは剣で連続攻撃を加えた。




 グルアアアアアアアアアア!




 それは、威嚇ではない絶叫だった。エリーの切っ先は弾き返されることなく、外皮の下まできちんと届いていた。


「手応え……ありね! 柔らかくなったバターみたいにサクサク切れるじゃない!」


 ユーマが追撃を食らわせた。怠惰の王の腕を切りつける。


「うおおお! 弾かれないぞ!」


 丸太のような太い腕を振るう怠惰の王。その一撃でユーマは吹き飛ばされた。


「痛ってえええええ!」


 普段は外皮の硬さで威力が増している攻撃が、今日に限っては手ぬるい。


 それでも、レベル1のユーマだったら一撃死していたところだ。


 死にかけなユーマの傷が、動ける程度にまで回復する。全快にはせず、回復量を調整しながらシエンが小さく口元を緩ませた。


「蘇生じゃなくて、ここは回復魔法ね……いいのかしらこんなので?」


 デモダッテが魔法のステッキを掲げる。


「……いくよ。中級中範囲火炎魔法!」


 怠惰の王が炎の柱に包まれた。柔らかくなった外皮が焼け焦げる。


 まるで、脱皮でもするように怠惰の王の外皮がぼろぼろと、崩れて剥がれ落ちていった。


 青い肉体の巨人が姿を現す。その赤い瞳が青くなった。


「……え、ええい!」


 魔法を撃って出がらしになったデモダッテが、怠惰の王に向かっていった。


 蝿を払うように、怠惰の王の平手打ちがデモダッテを叩く。


 瞬間、デモダッテの身体は霊魂化した。


 エリーが吠えながら、怠惰の王の背中を二連撃で斬りつける。


「ここまで……作戦通りね」


 シエンは蘇生魔法を使わなかった。


 怠惰の王の瞳が、青く染まる。だが、その視線はシエンには向けられなかった。


 霊魂化したデモダッテを見つめると、怠惰の王は魔法を発動させる。


 デモダッテの足下に、落とし穴のような魔法のゲートが開いた。


「……残念。ボク、死んでるし」


 追放魔法は不発に終わったのだ。


 ユーマが剣を構えて、怠惰の王に斬りかかる。


「うおおおおおおりゃああああああ!」


 一太刀浴びせては、ユーマは反撃を受けて死にかける。今度は、シエンは回復魔法をケチらずに全快させた。


 エリーが怠惰の王を攻撃する。そのスピードに、怠惰の王は翻弄されて、エリーに対する反撃は空を切った。


 霊魂化したデモダッテが、ふわふわ浮きながら呟く。


「……みんながんばって。草葉の陰から応援してるよ」


 シエンが舌打ちする。


「余裕があれば、蘇生させて仕事してもらうけど……ユーマくんが攻撃するたびに、反撃で死にかけるのはやっぱりキツイわね」


 怠惰の王の体力は、徐々にではあるが確実に削れていた。


 ユーマが反撃を受けながら、自分に回復魔法をかける。シエンの回復魔法と足して、傷を癒やすと青年は吠えた。


「シエン! あと何回いけそうだ?」


「次ので打ち止めね」


 続けてユーマは確認した。


「エリー! そっちは?」


「相手の動きが止まって見えるわ。絶好調よ!」


 デモダッテが挙手をする。


「……ボクも普段より身体が軽く感じられて、調子良いかも」


 エリーが剣を振るいながら吠えた。


「死んでるからでしょ!」


 外皮を失った怠惰の王は、転がる攻撃や突進をしてこない。


 それでも、振り回された巨大な腕による一撃は、当たれば致命傷になりかねない威力だった。


 エリーは口で強がりながらも、焦っていた。


「このままじゃ……じり貧じゃない!」


 剣を構えて集中し、怠惰の王を見据えると……気合いを込めて連撃を放った。


 それはZ軌道を描く三連撃だった。怠惰の王の胸にそれを刻みつけた瞬間、エリーの足が止まる。


「…………ッ!?」


 三連撃は浅かった。怠惰の王の反撃の拳が、エリーに叩きつけられる。


 ユーマは跳んだ。エリーを突き飛ばすようにして……拳の下敷きになる。


 シエンが悲鳴をあげた。


「ユーマくん! 生きてるの!? 死んでるの! 死んでたら蘇生は……」


 シエンの魔法力は、回復魔法一回分しか残っていない。


 エリーが呆然と立ち尽くした。


「ここまで……なの?」


 怠惰の王の赤い瞳が、じっとエリーを見据える。


 腕を振るって、怠惰の王はエリーをはじき飛ばした。


 前衛二人がほぼ同時に瓦解して、残るはシエンただ一人だ。




 四人の視界が、白く染まった。


 空に神の姿が浮かび上がる。


 シエンが神に向かって吠えた。


「まだ、あたしは生きてるわよ!」


 神は笑った。


「ああ。全滅なんかさせるかよ。こいつを使うぜ」


 神の手から神珠がこぼれおち、奇跡を起こす。

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