「命とお金は大事に」その4
白い空間に並んだ四人は、バッファーにお願いして神を呼んだ。
空に神の姿が浮かび上がる。開口一番、神はあきれ顔で四人に告げた。
「お前ら、いったいなにしてたんだ?」
代表でユーマが一歩前に出る。
「弱点を克服しようとおもって、それぞれの役割を交代してみたんだけど、全然だめだった!」
神はため息を吐いた。
「お前らが縛りプレイしてどうすんだ!」
「縛りプレイってなんだ? エリー、知ってるか?」
「し、知らないわよ! こら貧乏神。ユーマに変な言葉を教えないでちょうだい!」
「変な言葉じゃねーよ。縛りプレイっていうのは、あえて有効な戦術や、効果的な武器や便利な技なんかを使わないで、クリアを目指すというストイックかつ、高尚な行為だ。
今日、お前たちがやってたのは、特技を封印して……まさに、自分の手足を縛ったまま戦った、縛りプレイだっていいたいんだ。っていうか、なんでそんなことした?」
「俺たちが弱点を克服できれば、神さまも前向きになってくれると思ったんだよ。けど……つ、次は一勝! 一勝してみせるぜ!」
「あー……前にログインした時にそんなこと言ってたよな。律儀な奴め。いいから、ユーマは勇者の仕事をしろ!
あと、お前たちが階層をクリアして得たボーナスの神珠で装備ガチャをしてやったから、剣士のエリーが着るように。いいな!」
デモダッテがちょこんと首を斜めにした。
「……着る? 斬る?」
空から光り輝く宝箱がユーマたちの前にゆっくりと降りてきた。
エリーが目を丸くさせる。
「え? わ、わたしが斬るって……新しい武器をくれるの? どうしたの貧乏神じゃないの? 熱でもあるの病気なの明日あたり死ぬの?」
「うるせぇ! ガチャだからなにが出るか、回してみないとわからねぇんだよ。たまたま剣士向けが出ただけなんだ」
ユーマが笑顔になった。
「ありがとうな神さま! エリーも口では怒ってるけど、本当はすごいうれしいんだ」
「ば、ばか……そんなことあるわけないでしょ? ともかく、わたししか装備できない武器なら仕方ないわよね。はぁ~~んなにかしら。
銀のレイピアかな? もしかしてファルコンソード!? どうしよう、今のわたしに装備できない高レベル武器だったりしたら……がんばって強くならなくちゃ!」
シエンがあくびをした。
「ふあぁ……エリーちゃんって武器マニアだったのね?」
「い、いいでしょ別に! 武器……っていうか、剣は剣士の心だもの」
「じゃあ、良い剣だったら、今使ってる剣はどうするの?」
「もちろん売却するわよ」
「心を売るのね?」
「違うわ! 次に使ってくれる人に譲るのよ。それにこの戦友……鉄のレイピアとの思い出と、その魂はずっとわたしの心の中で生き続けるの」
講釈するエリーの脇をすり抜けて、デモダッテが宝箱を開いた。
「……これボクのー」
「あ! こら、わたしのよ! わた……し……にたい」
宝箱からデモダッテが取り出したのは、布地の面積が極端に少なく、宝石が留め金部分にあしらわれた……ビキニアーマーだった。
神がにんまりとした笑顔でうなずく。
「気に入ってくれたかエリーよ?」
「ふ、ふざけるなー! わたしの期待を裏切ったわね!」
「武器と言った憶えはないぞ。お前が勝手に勘違いしたんだろうが」
デモダッテが、アーマーの胸の部分を自分の胸にあててから、落ち込んだようにうつむいた。
「……残念、ボクじゃ足りないみたい。これはエリーにぴったりだよ」
腰鎧……といっても、ほとんど薄布なのだが、それを手にしてシエンが頷いた。
「鎧の留め金の部分にあしらわれてる宝石、ただの飾りじゃないわね。これ、魔法力が込められてるわよ。一種の防御力場を発生させているみたい。
極端に布の部分が少ないのは、運動性をあげるためね。今よりも守備力をアップしながら、エリーちゃんの長所である俊敏さが上がるわよ」
ユーマがぽつりと呟いた。
「弱点を補強しつつ、長所を伸ばすなんて……やっぱ神さまってすげぇ!」
エリーがじっと、ユーマを見つめた。
「ね、ねぇ。ユーマ……どうしても着なきゃ……だめ?」
「エリー。嫌なのか? 俺が着るか?」
「そ、それはいけないわ! あなたは勇者なのよ? 変態じゃないんだし……うう、けど、わたしだって……こ、困るっていうか……」
シエンがエリーの耳元で囁いた。
「朴念仁なユーマくんにアピールするチャンスなんじゃない?」
エリーは目を見開いて、ユーマに告げる。
「こ、これはあくまでパーティーの戦力アップのためであって、すっごく恥ずかしいけど、実利をとるために……き、着てあげるわ」
足下で傍観していたバッファーを地面に寝転ばせ、お腹をモフモフとさわりながら、デモダッテはぽつりと呟いた。
「……ばかばっか」




