入学初日
拙い文章で、読みにくいとは思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです!!
「絶望的だわ」
王立フレイジル魔法学園。そこでは魔法を学び、また魔法に関してプライドを持った生徒たちが集う場所であり、自身の力を最大限に磨き上げんとする学校であった。その学校を卒業すれば、将来は明るいものと約束されたといっても過言ではないほどの名門である。
その名門校の入学式、希望に満ち溢れた未来への第一歩となる日に、このような発言をするものは、この少女だけだろう。
「どうして、こんな目に遭わねばならん・・・。」
その少女、ラティスはフレイジル魔法学園の門の前で立ち止まっていた。正確には、入ろうとしたところ、学園の警備員に「学園の生徒以外は、立ち入り禁止だよ」と、呼び止められてしまったわけである。
もちろん、ラティスは学園にちゃんと合格しているため、晴れて今日から学園の一員となれるはずなのだが・・・。
「ふん。これだから見た目で判断する奴は、嫌いなんだ。」
そう、問題はその少女の見た目なのである。彼女は黒髪黒目なのだ。
肉体に宿る魔力は、髪や目にその色が強く出るのだ。つまり、水属性の魔法に適応能力が高ければ青系統の、火属性の魔法に適応能力が高ければ赤系統の色が出る。水と火の両方に適応能力が高ければ紫、と二つの中間色が現れる。―――滅多にはいないが、全属性に優れているものは、白色があらわれるらしい。
また、魔力が強いほど明るい色になり、魔力が弱いほど黒に近づく。
つまり、黒髪黒目である彼女には、全属性の適応能力が極めて低く、魔力も皆無なのである。
学園の警備員はそんな彼女を見て、名門校であるフレイジル魔法学園の生徒ではないと判断したのであろう。実に不愉快である。
「おい、そこの者。これを見ろ」
ラティスは、ため息をつくと、警備員に一枚の紙を見せる。学園長のサイン入りの学園の合格通知書類である。ほんのりと学園長の魔力が込められた代物でもある。魔力付きの書類は、込められた魔力により書き換えや消去が不可となるため、最重要書類などに使用される。
「・・・え?し、失礼しましたっ!!!」
警備員は慌てて啓礼し、ラティスを中に通した。
「今年は、おっかねぇ子がいっぱいだねぇ」
密かにつぶやかれた言葉はその後門を通った誰一人にも聞こえないほどだった・・・。
「ふむ。」
ラティスは指定された教室の前にいた。扉を開けて中に入れば、これから一緒に過ごすクラスメイトにご対面できるだろう。ラティスは、一息つくと、扉を開けた・・・
「およ?もしかして君もこのクラスぅ~??へー、珍しいねぇ!!」
扉を開けるとすぐに声がかかってきた。声の主に目を向けると、そこには、緑のウェーブのかかった髪を肩で切りそろえ、深緑の瞳をした少女がいた。一部の髪がぴょこっとはねていて、猫の耳のようである。
ラティスはその少女を一瞥すると、黒板に書かれている自身の席の位置を確認した。どうやら、窓際の一番後ろの席らしく、幸せをひっそりとかみしめていた。授業中に寝ても許される席、ラティスはそう認識したのである。
「あ、あの~。無視されると、とぉぉっても!!悲しいんだよぅ~??」
「エセケモ耳少女が何の用?」
ラティスの言葉は周囲の言葉を凍らせた。それもそのはず、なぜなら・・・
「おい!!そちら御方は、フィリス伯爵令嬢メリルローズ様であるぞ!!?言葉に気を付けろ!!」
と、話を聞いていた少年B君が丁寧にも解説してくれた。
この国、メルカルトル王国には貴族が存在する。爵位が高い順に、「公爵」「侯爵」「伯爵」「子爵」「男爵」がある。身分制度は絶対性である。しかし、魔法技術の発展している国ということもあり、こうした身分制度以外に、別格の階級がある。
魔導階級は、その名の通り、魔導が優れたものほど階級が高い。これは、貴族階級よりも重視されており、多くの貴族はこうした階級にも上位でいられるよう、自身の子供に訓練を施したり、優秀な子供を用紙に向かえたりもしている。
フィリス伯爵家。身分制度においても上の方であり、なおかつ、魔導階級においてもほかに引け目をとらない家柄である。
「あら、これは失礼しました。権威の塊様に話しかけられるとは、大変迷惑極まりないので今後一切話しかけていただけないようにしていただけると幸いなのですが。」
ラティスは相手の家柄を聞いてもまったくもって、動揺もせずにただ淡々と自分の意見を述べた。本来なら、不敬に値するのだが、
「この学園では、一切の上下関係を撤廃されているしな」
教室内の空気が完全に凍った。確かに学園は上下関係をなくし対等な交友関係を求めているが、大多数の生徒は、貴族制度を重視する。きっと、卒業後のことを考えているからでもあるのだろうが・・・。
「このっ!!!黒の子の分際で!!!!」
ラティスの弁えない発言により、少年Bはさらに激情した。黒の子というのは、黒髪黒目を魔法の使えないものとして、蔑んだ言葉である。その言葉には、日陰者という意味も含まれている。
少年B君の一言で、周りにいた人々も次々に「なんであんな子が」「黒の子よ」「来る意味ないよね」などと小声で話し始める。
しかし、言われているラティスは、我関せずで自分の席に座り窓の外をボーっと見始めていた。
結論から言うと、ラティスの第一印象は最悪だった。