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吟遊詩人はアイドルではありません!(仮)  作者: ナガイヒデキ
1章「クレイジークレイジーは止まらない!」
5/50

パーティ

 目を開けると、そこは見知らぬ天井だった。


 てか、暗すぎてなんも見えないわけだが……。


 そして、


 発覚した(わかった)ことがある。私――


 攻撃耐性がない!


 ダメだ、あの感覚を思い出すだけで――両手を肩に交差して、身震いした。


 しかし、ここはどこ?


 あたりはうす暗く、1m先も見えない。四面の壁には松明トーチが飾られていて、その灯りで室内はぼやっとだけ見える。遠くで、光が差し込んでいるところは出口だろうか。


 そこを目指して進む。


 痛ッ――


 別に痛くはないのだが、足に何かぶつかった感触で声を上げてしまった。

 私が横になっていた台座と思わしい物体が別にもう一つ、いや部屋を埋め尽くさんばかりに設置してるのだろう。歩くたびに、一定の間隔をもとに台座らしきものがある。

 私は、手さぐりで進むと、なんとか出口まで来られた。

 そこは地下になっていたのか、階段がらせん状に伸びている。階段を上ると、そこは教会の中だった。

 あれは、死体安置所だったのか、どおりで、シンキくさい場所だと思ったわ。


 教会を出て、思案する。


 PT(パーティ)を組もう!



 この運営、妙なこだわりがあるのか、リアリティを求めている節がある。アイテムボックス、可視化しない敵情報、チャット機能もしかりだ。チャット関係は全部しんでいる。テル機能もなく、遠くのフレンドと話すということはできない。てか、フレンドシステムすらない。セイ機能のみ。普通の会話しかできないってこと。叫べば、シャウト機能といってもいいのかもしれないけど、それって機能ってことじゃないと思わない? もしかすると、やり方があるのかもしれないけど、今のところは立体画面タッチパネルで操作できるのは、ログアウトくらいだ。


 掲示板でPT募集ができれば、楽なんだけど……。


 もちろん、そんな機能もいっさいない!


 掲示板か。ギルドに掲示板あったから、そこから募集出せるかな?


 いったん、ギルドに戻ろうとしたが、たどり着くのに、1時間ちかくかかった。


 迷子じゃないよ! 飛んだ先(教会)の位置がわからなかったんだから仕方ないと思わない?




「どなたか《神秘の森》クエスト受けている方、一緒にいきませんか?」


「こちらレベル4前後のPTです、残り1枠、職はなんでも」


「ィッヵ……ゥバッ」


「レベル8前後で、挑発系スキルもちの前衛募集!」


 ギルド前は、にぎわっていた。

 みんな考えていることは一緒か。ここで募集してるってことは、ギルドの掲示板は使えなかったっぽいなぁ。ただ、私が参加できそうな募集枠がない!


 てか、もうレベル8とかいってる猛者もいるのか!


 自分で募集するのもなんだから、もう少し聞いてみよう……。コミュ障じゃないよ! 


「クエスト《パーティの蘊蓄うんちく》まで進んでる方、一緒にクリアしませんか?」

「クエスト《トカゲのしっぽ》受けている方、一緒にやりませんか?」

「東平原でレベルあげしませんか? 推奨レベル5」

「ィッショニ……」


 うーん、なかなか自分に合うのがないぁ。レベル1だしね。


「レベル8前……」

「クエスト《大地の……」

「のPT、残り1枠」


「……ゥサギトゥバッ。……ィキマセンカ?」


 パーティ募集の間になにかノイズが……。私にだけ聞こえるなにかですか!


 私に電波属性はついてない……はず!


 声のする方へ、


「……ィッショニ、ィキマセンヵ?」


 うん、なにか聞こえる……。耳を澄ませて、近寄っていく。ギルドの角を曲がった、薄暗い路地付近にまでいくと、


「ど、どなたか、一角兎討伐を一緒に行きませんか?」


 ハッキリ聞こえた! と思ったら、少女が目の前にいた。


 私より頭一つ分は背が低く、ボブヘアの女の子。

 服装は白を基調とした法衣を纏い、腰に小さめのロッドを下げている。


 やだ、モジモジしてる。


「一緒に、行きませんか?」


 潤んだ眼で上目遣い、さらには両手を組んで声は小さめ。


 これが、カワイイは正義なのか!


 少女の両手を握り、


「私でよければ!」と、答えていた。


 ただ、失念してたことが。初期装備の私に比べ、装備が整っている。いや、防具ファッションにお金をかけているのかもしれない。私は、ファッションにこだわりはなく。あ、ゲームでの話よ、あくまで! ステ(ステータス)の高い装備を部位ごとに装備する傾向だ。だから、以前やっていたMMOのグラフィックはヒドイ。まったく、統一感がない。なにこれ、って思うが気にしない。気にしたら、負けだと思っている。


 レベルが高いってことはないよね。あのクエ、初級討伐っぽいし。私ですら、三撃で倒せる。いや、武器だけはいいんだった、私。防具に費やしてるから、武器は弱めかも? うーん、と考察中に、


「わたしもPT(パーティ)に参加してもよろしい?」と背後から聞こえた。


 振り返ると、黒い三角が揺れている。見下ろすと、とんがり帽子がしゃべっている。こちらを向いているようだが、つばが異様にデカいため、顔が見えない。声質から、女の子だと判断できる。


 女の子は鍔を手で押し上げ、


「わたしの名前は、黒崎くろさき 美和みわ。さきに言っておくけど、高1よ」


 私の驚きに、


 あ、睨まれた。


「私、朝比奈 朝日。おなじく高1」


 美和と名乗る少女は、私を上から下まで見て、不公平ねと、また睨んだ。


「あ、自己紹介遅れました。私も高校一年生です。白石しらいし あかねと申します。よろしくお願いします」

 と、あかねは律儀にお辞儀した。

 黒崎美和。大きな黒帽子に、裾が膝までしかない黒のローブ。黒いソックスを膝まで履いていた。黒髪は膝元まで伸びている。色白で顔立ちは、スッキリしているので、第一印象はゴスロリした雛人形。そして、禍々しくも大きな黒い杖を装備している。


「まぁ普通、リアル情報はご法度(NG)だけど、ここ(VR)では顔バレしてるしいいのかな」

「みんな本名?」


「自分の顔で名前だけ違うのが違和感あるから、本名よ」と美和が答える。

「わ、わたしは本名を記入するものと思ってました……」


「ちなみに、私も本名。よろしく! 白石さんは、こういう(MMO)ゲーム初めてっぽい?」


「は、はい。ゲーム自体あまりしたことないのでして……」

「わたしは、やり込むタイプよ。あと、わたしにさん付けはいらないし、名前でいいわよ」


「じゃ、私もいらない。同世代だしね」


「わ、わたしも、あかねと呼んでください」


 美和と私は、最近やっていたMMOの話題になり、違うサーバであったが、同じゲームをやっていたことが分かった。そして、美和は結構なコアゲーマだった。


 閑話休題。


「では、行きますか!」と南門へ向かおうとすると、


 あっ、とあかねがギルドを指さして、呼び止めた。


「ん?」


「え?」

「アサヒは説明書を読まないタイプね。クエストの際は、パーティ申請するのが基本よ」


「そ、そうなの?」


 ギルド受付まで来る。

「すみません、パーティ申請したいのですが」

「かしこまりました。では、ギルドカードを提出してください」


 私は、二人からギルドカードを預かる。あかねのカードが上になったとき、


「え、レベル3?」


「は、はい。依頼を達成していましたら、レベルがあがりました」


 お使いクエストは報酬だけでなく、経験値ももらえる仕様なのか。


「わたしはレベル2。一応、クエスト関係がどんな風になるのか、クリアしたときに上がったわ。そのとき、ファイアを覚えた」

「あ、わたしもヒールを覚えました」

「ええ。レベルがあがると、最初のステを基準に覚えるみたい。って、アサヒが知らないってことは、まだレベル1よね」


「うぅ、てっきり戦闘でしか、経験値はもらえないものとばかり……」


「まえにやっていたMMO(ゲームシステム)の先入観はいけない」


「3名様ですね。パーティリーダはどなた様でしょう?」


 私は二人に振り返る。


「アサヒでいいじゃない?」

「お、お願いします」


「はい、アサヒ様ですね。では、これで登録は終了です……」


 あ、あれ?


 パーティ募集にのったのに、いつの間にか自分がリーダーになっている……。


 どうしてこうなった?


「では、ご健闘をお祈りします」




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