古代文明流砂洞攻略2-2
「みなさん、お集まりいただき有難うございます。主催のミワです」
お集まり頂いたというPTは私の見知った人達だった。
それも当然で、前回攻略時と同じメンバーだったのだから。
「早計で申しわけないですが、募集スレの内容は本当ですか?」
真摯リーダーが律儀に手を挙げている。えーっと名前なんだっけ? あ、そうだ、戸田くんだ。
「以前はそれで失敗したはずだが」
「ミワ、もういいんじゃない?」
「ええ、そうね」
「募集内容はすべてウソだよ」
「ウソ? いや、なんでまたそんな……」
「前回は姉御を出汁に使われたので、その意趣返しとハメるためにね。まあ、本当はもっと楽に攻略できる方法もあったんだけど――」
「ダメよ。それは正攻法ではないし、それに――すべてが正しいか分からない……」
「まあ、僕としてもあの方法は面白くないからね」
ええっと――何を言っているのかサッパリ分からない……。
ヤバい、攻略組から2カ月離れてスローライフな冒険を送っていたからなぁ……。話についていけない。
ええい、ガンバレ、わたしの灰色の脳細胞よ!
「ちょっと待ってくれ。以前たしかに僕はPTを集めるために、あさひさんを出汁に使った。それは悪いと思っている。だが、ハメるって云うのはどういう事だい? それ如何によってはこちらも相応しい態度をとらせてもらうが――」
「いや、ハメるってのはキミじゃないんだ」
「じゃあ、一体なんの話なんだ――」
「ハイハイ、そこまで。話が進まないんだから。私から今回の作戦内容をお話しします。募集スレで攻略開始時間は本当よ。ルートは全滅ルートを指定してましたが、これがウソ。本来予定しているのが――最短ルートです。もし私たちの推測通りなら、女王の間にはあるはずのものがない。否、逆説的には――ないものがあったと云うべきね」
「どういう――」
「ただ云った通り、これはあくまで推測。予測の範囲になれば――指示はその時伝えます」
ミワの強い口調に神楽の質問の声は消され、そしてその後からも質問などは出なかった。
私たちは流砂洞を隠密行動で進んでいっている。
先頭は神楽PT、中盤が私たち、殿が真摯PTと以前と同じ隊列だ。
道中、私は先の説明を欲した。まず最初に言っていた楽にクリアできる方法。だがそれについては教えてもらえなかった。推測がすべて正しければと、仮定の話だからと。これだとミワの言う正攻法も同じ、つまるところ、説明はしないと言われたも同然だ。ただ正攻法にはかなりのPSがいるらしく、ミワのお眼鏡にかかったのは以前組んだPTだったと。まあ、組んだ経験があるから連携もしやすいしね。だが、よく神楽が募集に乗ったなぁと思ったが――。
LOはベータ版でありLv制限が設けられている。Maxlv40のPCはこの2カ月でかなり多くなった。その結果、このエンドコンテンツに参加するPCも比例した。
だが、それに反し誰もクリアした者は出てきていない。
神楽PTも御多分に洩れなかった。彼自身、何度も挑戦したはずだが、その成果は見込まれていない。トッププレイヤとしての知名度は最早なくなっていた。原因は、今の流行――隠れクエストによるレア装備収集が大きい。トップのステータスが何で測れるかは、エンドコンテンツクリアでないなら、装備品になるのは自明の理。エンドコンテンツクリア報酬自体のほとんどがレア装備品であるのだから。レアであればあるほど有名PCに躍り出る。それに、きっと今日までに発見されていない強力な武器防具を手に入れれば、エンドコンテンツもクリア可能だと思われていた。現にドラゴンシリーズを入手したPCは強かったのだ。
トップを走っていた神楽にとってLvは追いつかれ、武器防具が揃っていく後続に焦りが出たのだろう。
解析班あかねの居るPTからの募集ともあり、募集内容に疑問を持ちつつも、藁をも掴む思いで参加したであろうと言うことは容易に想像できた。
神楽PTが小部屋の前で立ち止まる。「待て」と後方に手を挙げ合図を送る。
室内には数匹のアント。通路から近いアントがくるりと背を見せると否や、GOサインをすかさず出す。神楽PTが一気に走り込む。
アントの視力はせいぜい半径10m程。針を縫う如く、正確に走り抜ける神楽PT。前回も思ったが――上手い。
そして、隊列の中盤をキラが微調整する形だ。こちらも手を挙げ、私たちはピタッと止まる。数秒後にはアントが振り返る。もし立ち止まらなければ、見つかっていた。キラも誘導が上手い。というよりむしろ、先が分かっているみたいな動き方だ。
キラは手を下すと、走り出す。それに続くPT。
ようへいが走りながら、「なぁ、もうすぐ女王の間だろ? そこは雑魚を倒すんだよな?」
「いや、一匹も倒さないからいいんじゃないか」
とキラは不敵に笑った。そして、とうとう――、
アライアンスという大人数でありながら戦闘回数0と驚異的な数で――青銅製の高さ10mはある両開き扉前――女王の間に辿り着いたのだ。
キキキ、と錆びた音を出しながら神楽はゆっくりと重厚な扉を開ける。
神楽が入って少しの間。何かに気づいたのか、
「こ、これは――」と、何かに驚いていた。
続いて私たちも女王の間に入る。もちろん眼前にはジャイ-アント8匹だ。
敵は大型蟻8匹で間違いない。
だが、なんだこの違和感。なにか抜けている?
瞬時に理解する。
指揮官の姿が見あたらなかったのだ。




