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吟遊詩人はアイドルではありません!(仮)  作者: ナガイヒデキ
1章「クレイジークレイジーは止まらない!」
4/50

初戦

 え~っと、ここが武器屋かな……

 入り口から少し出て、上を見る。

 たしかに、看板には剣と盾の絵が描かれている。


 ――間違いない。


 なぜに二度見をしたのかは、


 ボロい……


 その一言につきた。


 大都市だからもっと煌びやかな店を期待してしまったようだわ。


 ふっ、しょせん、初心者ルーキーの私、最初はこんな店よね。


 はぁ……


 「おじゃまし――」

「邪魔するなら帰れ! ったく、ため息交じりで入ってくる奴がおるか! まったく最近の若いやつらは……」


 奥には、頑固爺よろしくとキセルをくわえたおじいさまが、こちらを威厳たっぷりに睨まれております。


 ハイ、ゴメンナサイ。


「そんなに嫌なら止めてもいいんじゃよ。中央区にいけば、そりゃ、わしのより良い武器があるさ――まあ、あんた(ルーキ)に買える金額かどうかは分からんがね!」


 いえいえと両手をあげながら、趣のあるお店ですよね、と小声で答える。


 わたしは、店にある品定めをしかたなく――


 ギロっと睨まれた。


 ひぇ、怖っ。ぬ、盗みませんよ、と乾いた笑いがでた。


 主人は興味をなくしたのか、鼻を鳴らしてそっぽを向く。


 き、気を取り直して――店内を見回す。


 品揃えは結構あるのね。両手武器から片手武器に弓に杖と防具類まで、幅広く取り揃えているようだ。


 両手斧を手に取る、テンションあがるわ。気分は狂戦士バーサーカ


 街で最初のお買い物って、


 1,武器

 2,防具

 3,道具


 あなたなら、何番?


 私は、だんぜん1!


 やっぱ、武器だよね。武器さえ良ければ、敵を1ターン早く倒せるって思わない?


 攻撃は最大の防御って言うよね!


 注視していると、立体画面が浮き出てきた。


『名前:ネックチョッパー。(攻撃力)40。長いグリップは持ちやすく改造しており、取り付けた刃は両刃になる。名前のごとく《首をかるもの》の異名に……』


 こ、攻撃力40! 初期装備の背中に装備している短剣なんて、D値たったの8よ……


 値段は――10万ギル!


 さ、さっきの買い物が……


 うなだれる。


 ふと、横に目をやると、


『名前:EX(レア)ゴブリンピアッサー。D35。この両手槍には……』


 D値は劣るが、レア属性だと! しかも、値段が9万ギル! 


 買える!


 両手槍の種類はこの1本だけ。


 きょろきょろと辺りを見回す、けっして怪しいものではない。PCプレイヤが何名かいるが、気付いてないようだ。


 ふっ、ほかに良い掘り出し物がないのか、探しているのかな。


 私は直観を大切にするのよ(タイプ)


 槍ってリーチあるわで、初心者におすすめって何かで読んだことあるわ。


「これ、ください!」


 主人はこちらに一瞥すると、「いいのかね?」


 ええ、と長い柄をすりすりしながら頷いた。


「まったく初心者ルーキの考えていることはよくわからんな。装備できないものを買うなんてのぉ」


 え


 え?


 ええぇぇええぇえ!


 立体画面パネルを確認する。


『名前:EX(レア)ゴブリンピア―――――――STR▲30』と申しわけない程度に文章の最後に書かれてあった……


 もしかして、STR30は必須ってこと?!


「非力そうな、おまえさんにソレが振れるのかのぉ」


「キ、キャンセルで」


「買い取りってことかの? では45000ギルじゃ」


「ちょっと待って、私は――」


「わしは、買うかどうか尋ねたじゃろ?」


 あ、


 たしかにファイナルアンサー(FA)したわ。


「で、でも」

 私は食い下がる。さすがに半額はキツイよ。


 主人は「だめだめ」と素っ気ない。


 どんなにアタックしても、首を横に振るだけだった。


 どこのお役所勤めなの!


 くぅ、これだからノンプレイヤ(NPC)は……。プログラム通りの行動しかできないのね。あまりに会話が自然だから、もっとファジーにできるもんだと思ってたわ。


 日ごろのスキップによる弊害がこんなところで……。


「私に合う武器をお願いします」


 種類は?とキセルを吹かす。


「モウ、ナンデモイイデス……」


 主人は奥へ向かい、一本の剣を持って戻ってきた。


「わしの見立では、これがいいじゃろう。価格は50000だが、49800にまけておこうかのぉ」


『名前:エスパダ。D20。このレイピアは……』


 う、さっきの値をみてるから20が低く見える。


「ハイ、オネガイシマス」


 わたしのヒットポイント(HP)は戦う前なのに0に近かった。




 ここは最初の大通り南城門から出て、西にある平原――《ハイアット平原》。


 生息するは一角兎ホーンラビット……のはず。




 なにもいない!


 みごとな枯れっ枯れ。もうすこし歩みを進める。


 一人のPCが、呆っと立っている。


 あ、構えた。


 そろそろPOPする(わく)のかな?


 と思ったら、こっちを警戒してただけみたい。


 ヘイヘイ、新参者は奥にいきますよっと。ドロップ判定がどうなっているのか分からないし、狩場での取り合いは好きじゃない。せっかくのVRMMO世界にまできてギスギスしたいくないしね。


 進んでいくと、あちこちにPCプレイヤが狩りをしている。ほとんどがソロプレイヤのようだ。

 一角兎ホーンラビットは、ギルドの依頼書に描いていた絵と一緒で、頭に一角生えている、紫のウサギだった。

 角も入れて、私の腰くらいまでの体長だ。それがピョンピョンはねる跳ねる。

 うわ、あの人、両手斧で攻撃あてにくそう。と精神安定にディスっておく。


 一角兎ホーンラビットの攻撃パターンは一直線に突っ込んでくる、これだけだった。あれなら、よけれそうねと、頭のなかでシミュレートしながら歩く。

 気づけば、かなり奥まで来た。

 平原ではなく森林にちかい景色に変わってる。PCもみなくなった。


 ヤバくない?


 MMOにはエリチェン(エリアチェンジ)すれば、生息する魔物が変わることがある。つまりレベルの違う魔物が出てくる可能性がある。


 葉の重なる音。


 息を飲む。そして、


 レイピアを抜き、構えた。


 茂みから出てきたのは――


 一角兎だった。しかも2匹!


 2匹か、いけるか?


 と思ってたら、攻撃してこない。いや、攻撃態勢すらしていない。

 おそるおそる近づいてみるも、なにもしない。

 ノンアク(ノンアクティブ)なのか、とちょっと一息。

 すこし、観測。気づいてはいたけど、ネームがでない。MMOだと頭上にキャラクターの名前が表示されるのが多い。が、このゲームでは非表示が基本みたいだ。まして、体力ゲージまで不可視になっている。

 バックアタックに意味があるのか分からないが、一応、後ろから攻撃してみる。

 ホーンラビットに一閃。ファーストアタック(FA)は成功。こちらに向き、臨戦態勢。さらに、もう一撃お見舞いしようとすると、横やり、いや横角が飛んできたので、避ける。

 ノンアクだけど、アクティブ状態になるとリンクするみたいだ。


 ――仲間意識が高いこと。

 まあ、予想はしてたけど。リンク上等!


 括目せよ(みよ)、ドッジボールでなぜか最後まで生きのこる私の実力チートを!


 ヒョイヒョイと避けまくりながら、最初のホーンラビットに狙いを定めて二連突き。計三回の攻撃で粒子(ポリゴン)になって消えた。


 次に、リンクした一角兎ホーンラビットに下から上に斬り上げてから、斜め下へと斬り下げる。そのまま横に切り払ったところで、粒子となった。


 粒子になった場所にドロップとして、一角が落ちている、確定ドロップでないらしく、1本しかドロップしていなかった。こちらは確定ではないが、

 ――たぶんだけど、

 レイピアは突く以外でも、叩くような攻撃でも攻撃判定として認められる。極端な話、チャンバラごっこでもOKってことか。VR(仮想現実)だとしても、基本的な体の動作は現実とはなんら変わらないからね。だから、現実世界の身体能力がVR世界にあまり差がでてこないようにしてるかもしれない。運動神経がVRで大きな差が出るなら、大勢のPC(プレイヤ)は不満を持つだろうし、ここは運営の仕様サービスってところね。


 ガサガサ


 お、ここは一角兎ホーンラビットの巣窟だったのか。

 と、のんきに後ろを振り返った。


 緑色の化け物が、そこにはいた。


 オ、オーク?


 化けオークは醜悪な顔して、手にはこん棒を持ち、すでに臨戦を整えている。


 振りかぶったこん棒をみて、とっさに避ける、


 かろうじて、よけれたが、手にこん棒が触れたようだ。


 なっ


 触れただけでも、ダメージ判定あるのか? 


 って、ノンキに考えてる場合じゃない!


 この感覚っ、


 頭では回避しようと臨むが、身体はいうことをきかない。全身に正座をしたあとに足裏を触れられたような、あの何とも言えないな感覚……


 オークの攻撃が左肩に直撃する。これが瀕死状態ってことなのか、視界が暗くなる。


 い、痛くないんだけど、


 これは、だめぇええええ――

 地面にころがるように身もだえする。


 私は人一倍感じやすいタイプなのだ。両脇を触られるだけで、奇怪な声をあげちゃうくらいに。


 オークが見下ろすかたちで、私の顔を覗き込む。必然と影を落とす。


 そして、こん棒を大きく振りかぶった。


「クッ、コロ――」




 視界は完全に真っ黒になった。





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