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吟遊詩人はアイドルではありません!(仮)  作者: ナガイヒデキ
1章「クレイジークレイジーは止まらない!」
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古代文明流砂洞攻略2

「アサヒ様、スクリーンショットいいでしょうか?」

 と、さっきの真摯リーダー。

 えーっと、名前はなんだっけ? あ、戸田とだ おさむクンだ。

 《様》が気になるが、私はエサでしたね。餌はエサらしくと……。

 すこしの掏れは仕方ないよね。

 頷く私。


「ありがとうございます。では――」

 と最初は一緒でいいですかと謙虚だったが、次から次へとポージングも要求しだす戸田。

 さっきの真摯キャラはどうした?

 戸田のPT女子からもアクセやらを飾り付けされ、きゃーカワイイなど連発で写真を撮られる。

 すこし遠目に居た戸田PT男子もソワソワしだし、ついには僕も僕と一緒に間に入り込んだ。一種の記念撮影みたいになってしまった。

 まあ、それは別にどうでもいい。いや、どうでもよくないけど。そうなるだろうと予感してから。ただ、気になるのは戸田PTではない神楽PTの遊撃――ビラ配っていた女の子――名前は安西あんざい 千由ちゆちゃんだったかな。スレンダーで身長はあかねちゃんくらいか。ベリーショートの似合うボーイッシュな感じ。なんだけど……。彼女、全部撮影に写りこんでいるような気がするんだが。しかも私の背後に……。ヘイトでも擦り付ける気?


「あの、安西さん?」


「千由――」


「あ、千由ちゃん?」

 と呼び直すと千由の顔は真っ赤になった。

 一緒に撮りたいのかな?


「ツーショットとかどう?」

 心情はもう撮られまくったのでどうにでもなれ、だ。

 千由は波が引くより速く神楽PTの場所へ戻っていった。


 ありゃ、私の自意識過剰だったかな……。

 恥ずかしい!


 私の撮影会は滞りなく終了した。だが、他メンバーへの撮影会は続いていた。キラにソウも戸田PT女子から一緒にと撮影されている。そして男子も集まりだす。まあ、あの二人は二つ名が有名だからな。ミワも魔術士界では有名らしい。雰囲気はまんま魔女っ子だしね。

 洋平がソロ状態だ。


 ハミ子か。


 すかさず、あかねが介抱しにいった。が、あかねも戸田PTにお呼ばれ。

 オロオロするあかね。早く早くと手招きされ、後ろを気にしながら向かうあかね。


 また一人になる洋平。


 背中に哀愁が感じられるぞ。

 バカで、楽観的なところがオマエの良い所だよ!





 現在、私たち3PTは流砂洞にて隠密中。

 この流砂洞の入口は蟻地獄だった。これミッションで情報なかったら絶対教会スタートの死に戻りだと思うわ。死に戻りで近くに敵がいない場合は高所から飛び降り、もしくは海があれば身投げで戻れるからね。

 全滅開始は神楽が作成した地図を基に後半から女王の間までの道のりで行う予定。

 それまでは体力、魔力温存のために隠密行動を取っているのだ。

 流砂洞のアントは外骨格型だ。二足歩行の蟻といった感じ。そしてアント自体は視覚タイプなので、慣れている者には戦わずして奥へと歩を進めるみたい。私たちはレベルが低いこともあり、隊列では真ん中に位置する。先頭の神楽からの指示でアクティブリンクもなく順調に進歩していった。さすがはトップ、有能だわ。


「アント系が視覚タイプだなんて面白いわね」

「実際の性質とVRでは設定が違うと云うことでしょうか」

「このVRMMOでの感知タイプは――視覚と聴覚、臭覚、そして数は少ないけど生命感知の4種類だしね」

「うーん、だとしても臭覚タイプになるはずんだんだけど」

「あえて視覚タイプにしたのかもしれないね。たしか砂漠都市にアント生態研究書があったよ。彼女らは眼が視えるよう進化し、地下よりその形態を上へと押し上げようとしている、だったかな。そして最後の結末は、彼女ら(アント)は地上へ出る準備期間が終わり、我々を脅かすのも近いだろう、と」


 キラとあかねはゲーム設定の話に花が咲いてるな。私は話について行けないよ。私自身、ゲーム設定には疑問にすら思わない、それが設定だからと納得しちゃう性質たちなんだ。興味がないんだね……。


 まあ、楽に進めるならいいじゃないか。

 あれ? 私が一番楽観主義?


 先頭を行く神楽が手を水平に出して「止まれ」の合図をした。


 さあ、ここから全滅ルートの開始だ。




 神楽PTがアント集団に遭遇。事前情報通り単体ではなく集団行動をしているアント。前半は戦士、遊撃タイプが多く、後半につれヒラ、魔術タイプと種類が増えていく。最大6匹PTになるそうだ。


 エンカウントしたのは2匹。ウォーリアアントとパルチザンアントだ。

 神楽PTの魔術士は遊撃パルチザンを魔法で躊躇なく釣る。視覚外から攻撃による釣りは相棒の戦士ウォーリアをその場所から置き去りにした。釣り自体が上手い。1匹だけ釣った。


 でもファイア2釣りってのはどうなの? ヘイト考えなしなのか?


 怒り心頭のパルチザンが魔術士へ走り出す。

 神楽が立ちはだかる。きっと挑発アビで速ヘイトを剥がすと思われたが――

 神楽は盾を構え前傾姿勢、そしてそのままパルチザンの動きを阻害した。


 まさに壁役!


 そして器用に防ぎながら剣で攻撃、なんなくヘイトスキル・アビと使わず攻撃ヘイトのみでタゲを持ち返したのだ。


「あんな止め方があるのか」しきりに感心する洋平。


 と、ウォーリアが気づいた。他魔術士2名が瞬時にファイア2をお見舞い。神楽はすかさず挑発で引き剥がす。2匹相手になるのに、神楽は防御系スキル・アビ使用していない。


 おいおい、大丈夫か。と心配をよそに、ウォーリアが神楽に近づく前に、釣り役の魔術士が範囲フレアで一掃。5分もしない戦闘だった。


 敵のHPが可視化しないこのVRMMOでよくここまで練度を高めたものだ。最悪、フレアで止めさせなければ、魔術師は死んでいたのではないか?


 これがトップの闘い方か。


 もう一つの――戸田PTは堅実的だった。盾役の戸田は、防御スキル・アビを回しながらタゲを固定している。STも戸田の背後に行く敵を阻害しながらヘイトを取る。アタッカーは全員クールリキャストを頭に全部叩き込んでいるようにリキャ毎に使用。敵対心もあえて取らないように攻撃スキルなど一段階下のものを使っている。ヘイト・時間を管理したPTといったところか。最悪の場面を想定して戦闘をしている感じだ。


 2PTの違った戦い。

 私は耳を澄ます。

 剣と剣とが交じり合う音。連携の掛け声。注意を呼びかける声。合図の音。


 うん、いいリズム。


 それに引き換え……。


 私の前方で爆音が轟く。


「ぬお、いきなりファイア連発すな!}

「洋平、カベ、壁!」

「いきなりできるか!」

「あ、1匹すり抜けました」

「おう、まかせろよぉ」

「ナイス、ソウ!」

「洋平、ちゃんとしなさい」

「初敵でできる範囲じゃねぇ」

「ヘイトもらうね」

「テメエ、それはオレの得物――」


 怒号、叱咤、爆音、嘲笑――。


 うん、うるさい……。

 あと、あかねちゃん。他PTに辻ヒールはやめなさい。

 ヒラが困った顔して、こっち見ているよ……。

 あかねちゃん、辻ヒール禁止ね!


 この雑多感。

 しっちゃかめっちゃかだよ。

 けど――


 それでも不思議とリズムはいいんだよね。


 まあ理由は分かる。

 キラだ。

 キラの攻撃音がドラムの役割を兼ねている。

 この一定の正確な韻律が良いリズムを生んでいる。


 だから――私はその流れに逆らわず、


 おっ、洋平が曲に気づく。

「きた、『伝説の魔法少女』」と美和。

 ヒューと他PTから口笛が聴こえる。


 みんなを音の流れ(ミュージックロード)に誘うのだ。





「よし、この先にある大広間で一旦休憩でも取ろう」

 進歩状況は、私の歌の効果もあってか、飛躍的にアップした攻撃力(DPS)により予定していた時間を大幅にカットできそうとのこと。懐中時計では全滅開始20分を経ったと示していた。前回はこの辺りまで来るのに1時間以上かかったらしい。

 そのせいか神楽はかなり機嫌が良さそうだ。


 そのうち鼻歌でも歌うんじゃないか。


 戦闘後の戦利品集めをしながら他PTで雑談タイム。結構な惨殺量なので多量のドロップ品が落ちているのだ。その品を均等に、そして交流という意味付でもPTにもしくは個人に欲しい希望品があれば交渉も始まる。さすがに、ここまで同じ種類の敵だとすでに持っているドロップ品ばかりだが。

 ふと見ると、

 キラが神楽PTの女子1名と親しく話していた。


 ほほー、これはこれは

 キラも隅に置けないね。

 と思っているとキラがこちらに近づいて、


「別に今のは姉御が思っていることじゃないから」

 と訂正してきた。


 オマエは草食系か。てか、一体だれに言い訳してるんだよ……。

 それにその言葉、さっきの子にとっても失礼なんですけど!


 まったくキラは女心を分かってないな。


「あの、あさひさん。吟遊でしたよね? 今更ですが、楽器が見当たらないような……」

 キラと入れ替えに神楽がやって来た。「ああ、その背負っている武器ユニークですか? そこから音が出るとか――」


 いえ、普通の大剣ツヴァイですけど……。


 ……。


 VRでは表情が分かりにくいけど、現実では顔が引きつってそうだな。

 ゲームは遊びじゃないって。




 そして――事件は起こった。


 おっと。

 洋平が急に止まったのでぶつかりそうになる。

 なにやってんのよ。

 早く行ってよね、あとがつっかえちゃうじゃない。

 PTの総MP量も半分以下なんだし、サクッと広間の雑魚を倒して休憩しましょ。


 洋平が前方を差す。


 大広間の入口で神楽が固まっていた。



「バ、バカな。なぜ、こんなところに――」





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