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吟遊詩人はアイドルではありません!(仮)  作者: ナガイヒデキ
1章「クレイジークレイジーは止まらない!」
3/50

ギルド登録

 光が差し込んでくる。


 あまりの眩しさに一瞬、目を細めた。

 白い世界。

 が、急にふわっと色づいた景色が流れ込む。

 目の前には、開かれた門があり、その両端には二人の兵士が立っている。


「まじか!」

「わっ!」

「すげー、うごく!」

「おぉおお」


 なにやら門の向こう側から声が聞こえてきた。私より早くキャラクリが終わったプレイヤー達が奥にいるのだろう。


 わかる、わかるわよ。そりゃ、VRMMOなんて、こんなに早くに経験できるとは思わなかったし、ビジュアルの完成度もほぼ現実と同じといっても過言ではない。でもね……、


 声張り上げるちゃって、恥ずかしいわね。


 と、私は逸る気持ちを抑えて、それでも小走りに兵士に近寄った。


 必要な情報だけ兵士より聞きこむと、大きな門を潜りぬける。


 視界が広がる。


 石畳みの街並みがそこにはあった。先に行くほど登坂になっているようで、遠くまでよく見えた。数十キロ先にはまた門があるのを確認する。段々と上にブロックが上がるように、土地が積み上げられ、その境目は高い塀で区切られている。そのいびつな円錐の頂点に城が聳え立つ。三重の塀に囲まれた城。


 兵士から聞いた都市の名前。それが、


 城壁都市バリテウス。



 このパノラマ、


「すごい!」


 感嘆として声が漏れた。


 いや、待って。


 今まで、五、六メートルはあろう壁が張り巡らされていたのだ。


 第一印象としては、壁、門だった景色からの、この落差だからしかたがない……


 だれだ? 大声出してはしたない、ぷっくくくって笑ったやつは?


 私だ。



 城を見据える。中世ヨーロッパ風のお城が壮大と在る景観は、見ていても心躍る。最初の拠点は、プレイヤによってランダムで決まる。村から始まるプレイヤーもいれば、森からだっていうプレイヤーもいる。と、運営からの事前情報。まあ、サーバーの負荷軽減の処置だろうね。一応、本編はあるみたいだ。無名の冒険者が名を上げ、傭兵団に見初められ、そして後々には正規軍に成り上がるストーリーだったはず。いずれば戦争を介したPvPも導入しいくと運営も公表している。もちろん、入団を拒否ってもいい。冒険者として名を馳せてSランクハンターとして生きるのも、一つの夢の形だしね。


 もう一度、城を見やる。気持ちが高まってきた。


 ヤバい、ワクテカが止まらない!


 よし!


 気合が入ったところで、兵士より聞いた冒険者ギルドに向かうとする。この門から第二区に通じる門までの道を王国第一大通りと呼び。その大通りの右側にギルドがあるようだ。道幅は大きく、端を歩けば、もう片方の面に側した店軒はなにを営んでいるのか分からないほどだ。


 ちょっと小走り目に歩む。

 なぜかって、

 はやくギルドにいきたいけど、走るのは恥ずかしいよ!


 大通りとあって、人通りははげしい。


 いや~、いいよね。人が多いと安心するわ。人が閑散としているオンラインとか寂しすぎるし。ほとんどNPCだけど……

 でも、このざわざわ感は雰囲気がでていて好き。


 ホントいい仕事してる!


 数分、てくてくと歩いていると、


 む?


 なんか、いい匂いが……


 って、匂いもリアルにあるのか! すごいぞ! 運営!


 これはマスクデータで満腹メーターとかもあるかもしれない。こういう隠しデータがたくさんあるのはマニアックな人には堪らないだろうね。ちなみに私はあまり好きじゃない。武器の耐性度や空腹になったら動けなくなるやら、そういったリアリティは求めてない派だ。ここファンタジーだよ? いちいちなんでそんなことまで考えなくちゃいけないのか。剣振ってりゃよくない? って思うのよね。

 ちなみに脳筋ではない。

 断じて、ノウキンではない。


 大事なことなので、二回言いました。


 腰にぶらついている布袋に手をやる。中には硬貨で十万ギル入っている。金貨十枚だ。


 金貨1枚10000ギル。

 銀貨1枚1000ギル

 銅貨1枚100ギル

 鉄貨1枚10ギル

 1ギルのみ1紙幣になっており、国によって札の大きさや絵柄が違うらしい。


 っと、こまめに事前情報を挟む。


 タレの焦げた香ばしい匂いが近づいてくる。どうして、こう食欲を刺激してくるの。今は我慢ガマン。


 目の前を通り過ぎるときに、値段を確認する。

 一串200ギル。


 けっして高くない価格……


「おじさん、1本!」

「お、じょうちゃん、かわいいから、1本サービスするぜ」

「きゃー、ありがとう」

「はい、おつり」


 まさかのVRMMOで歩き食い。


 お、このタレ、いけるな!



 って、ちがう。

 なに、さっきの自然な会話。兵士ときのやりとりも違和感がなかったわ。

 もうここが異世界だと言われても信じそうなレベル。


 そのまま歩き続けると、2本目食い終わるくらいに冒険者ギルドに到着した。


 冒険者ギルドは酒場と一体化となっているようで、入って右に厨房兼立ち飲みバーがある。入口付近にある階段上からは食器の重なる音や酔っぱらいの喧噪が聞こえ、二階は本格的な酒場になっているようだ。

 真正面奥には冒険者ギルド職員がカウンター越しに立って受付をしている。左奥は、依頼書が張り出されてるのだろう、冒険者の人だかりができている。そのうちの何人かは、私と同じ装備をしているので、PC(プレイヤ)で間違いない。


 はやい。

 なんか、負けてられないわ

 と受付に行く。


「おはようございます。今日はどういったご用件で」

「ギルドの登録にきました」

「では、こちらのカードに手を乗せてください」


 言われた通り触れると、カードが淡く光った。


 受付嬢はギルドカードをみやると、「アサヒナ アサヒ様ですね。これで登録は終わりました。そしてギルド登録の特典として、これを」

 とギルドカードと懐中時計を手渡された。

 ギルドカードには朝比奈朝日、レベル1とランクFの文字が書かれている。

「ギルドカードの裏側にはステータスがございますが、ほかの人からは見えない仕様になっております」


 裏をみると最初に設定したステータスが写っていた。


 つづいて、懐中時計を触る。前蓋がついているハンターケースという型の懐中時計だ。前蓋の裏には、アンティークには相応しくない、デジタル数字が映し出されている。

 不思議におもっているのが伝わったのか、

「こちらは神託といわれるものですが、私どもにはそれ以上のことは、よく分かっておりません」

 つまり文字盤がここVRMMO世界の時間で、前蓋の裏側は、リアル時間というわけか。

 現実世界の時間なんて、ここの世界のNPC(ひとたち)には関係ないもんね。


「では、ギルドシステムついて説明していきます」

「は、はぁ」と歯切れが悪くなった。

 ゲームでは、こういった類の会話は結構スキップして、進行を進めていくのが多いのよね。

 習うより慣れよ、が私の基本だ。

「当ギルドではFランクからSランクまであり、もちろん、上にいくほど多種多様な依頼クエストが受けれるようになります。まず、ランクの上げ方ですが、クエストを受けていただき、依頼を達成すれば成功報酬とは別にギルドポイントが加算されるようになります。このポイントを一定量ためれば、次のランクへと昇格することができます」

「ただ、注意していただきたいのは、DランクからCランクへと昇格する際のみ、昇格試練があることを覚えておいてください。もう一度、説明いたしましょうか?」

「あ、いえ。依頼を受けるのは、あっちのボードから依頼書を持って来ればいいの?」

「はい、その通りです。依頼の種類によっては、期限付きのものもありますので、そこは注意してください」


 私は一礼をして、ボードへと向かう。手近な依頼書から斜め読みしていく。依頼書にはクエストの内容と、成功報酬の金額に、獲得ギルドポイントの記載。そして、その依頼を達成できるであろう推奨ランクが書かれていた。


 なになに? 宿屋のマスターが困っている。息子が弁当を忘れていったのだ。まずは西区の宿屋にいって、話をきいてきてくれ。


 次!


 眠れないのがつらい。だれか『スリープシープのミルク』を1つ持ってきてほしい。


 つ、次!


 南区にある街灯が切れているようだ。だれか――


 …………


 ……


 Fランクは、こういうクエストが多いわね。いわゆる、お使いクエストだ。


 まあ、最初はMAP(地理)を覚えさせるチュートリアルも兼ねているんだろうけど……


 ちなみに、このVRMMOにはミニMAPもアイテムストレージもない。不憫だ。


 べつに方向音痴だから嫌いってわけじゃないよ、お使いクエストが嫌いなだけよ!


 おっ、


 指定のモンスターを退治し、その証拠を持ち帰って欲しい。


 討伐依頼(クエスト)キタ!


「これお願いします」

「ホーンラビット討伐ですね。討伐部位である一角を5本お持ちください」


 さぁ、次は武器屋よ!


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