クリティカル
――男は対峙している。
向かうは、化け物だ。
距離は二十m離れているが、化け物は気づいていない。体躯は腐敗しており、眼の機能は果たしてないようだ。腐った顔は、醜悪そのものだ。大きさは五m弱もあり、囚人服を着ている。両足首には鉄球が鎖でつながれており、アンデットの動きは鈍い。徐々に、距離は詰まる。足が止まると、鼻をヒクつかせた。
存在に気付いたのだ。そして、大気を震わすほどの咆哮をあげる。みぞおちよりやや上にある、不釣り合いなクリスタルが輝く。
――それでも
男は、平然としている。
男は布地の服にズボンというラフな格好。装備はククリ刀二本に、腰にはスリングショットを着用。唯一、防御的なのは革製の篭手のみ。
男はゆっくりと息を吐いた。そして、
一直線に向かって走り出す。
アンデットは男が攻撃範囲に入ると大振りの一撃を放つ。なんなく躱すと、胸の中心に一刀する。金属同士がぶつかり共鳴した。結晶に当てたのだ。男は手の感触を確かめるように、ククリ刀を見詰める。グっと強く握りしめると顔上げた。囚人の二撃も、男はさわりと躱し、同時に攻撃もしていた。
――キィイイイン
三、四、五撃も男は回避しながら、攻撃に転じている。そのたびに、金属音が鳴り響く。囚人にぬめりつくかのような切り込み。
それは正確だった。九撃目には結晶に罅が入り、
十撃目には――
砕けた。
それを期に、アナウンスが流れる。
――クリティカルが発生しました。