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巻き込まれて女の子になったボク  作者: 来宮悠里
ふたつめの願い
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13:倒れてしまった日

 重い頭を、落ちそうな瞼を気力だけで持ち上げて、学校に行った。

 みんなに心配されたけど、愛想笑いで乗り切れたと思う。


「おはよ、元気は……なさそうだな」

「あはは……、朝はありがとね」


 ぷつりぷつりと意識が飛ぶ。

 目を閉じればすぐに眠気に持って行かれる。

 決意をして、気合いを入れたら、落ち着く所に落ち着いてしまったのだ。


 瑞貴と電話をしたあと桜華の顔を見て、昨日の理不尽な応対を謝ってさらに落ち着いて、安心しきっていた。


 HRをやり過ごし、一時限目までの僅かな時間で眠ってしまおう。

 そう思って、机に突っ伏した。


「燈佳、起きろ」


 体を揺すられる。もうちょっと眠っていたい。


「授業始まるぞ」

「ふ、う……?」

「大丈夫か? 体調悪いなら保健室行くか?」


 心配そうにボクを見下ろしてくる瑞貴。

 別に体調が悪いわけじゃないんだけど。


「大丈夫、だよ」


 頭を起こして、やっぱりまだふらつく頭を抑える。

 頭の奥が重たくて、気を抜けばすぐにでも寝入ってしまいそうだ。


 号令を遠くに聞いて立ち上がる。

 ああ、これ、ダメな奴だ……。

 膝から力が抜けて崩れ落ちる。


「ちょ、おい!」


 意識が砕け散るように闇に沈む。

 だけどいくら待っても冷たい床の感覚はせず、何かに支えられて居るような、そんな感覚。


「すいません、保健室連れて行ってきます」


 どこか遠くでそんな声が聞こえた。

 ああ、どうしたんだろう、ボク。体が言うことを聞いてくれない。

 そこでボクの意識はぷつりと途切れた。



「早く教室に戻ったらどう?」

「先生この状況で、戻れと?」

「あーまー……、それなら仕方ないっかー」

「うす。察して貰ってありがたいです」


 声が聞こえるし、柔らかい何かに寝かされてる……?


「あっ……」

「おう、起きたか」


 白いカーテン、白い天井。

 保健室だっけ……?

 縁遠い場所だったからすぐには、どこだか判別がつかなかった。

 すぐ側には瑞貴が居た。えっと……?


「ボク……えっ?」

「倒れたから、連れてきたんだよ」


 倒れた? 確かにずっと眠かったけど……。

 ああ、一時限目の号令の時に視界がブラックアウトしたときか。

 段々思い出してきた。

 寝覚めが悪かったのと、昨日のことで心が一杯一杯になってしまって、眠ったはずなのに全然眠れた気がしていなかった。

 それに多分、この残暑の暑さもプラスして、倒れたのかな……。


「今何時間目!?」

「二時間目が終わるぞ」

「うそっ!?」

「ホントだ。そろそろ手を離して欲しいくらいなんだが……」


 えっと……?

 うわああ!! なんで、ボク瑞貴の手を握ってるの!? ねえなんで!?


「ご、ごめんっ!」


 謝って即座に手を離す。

 恥ずかしい……、顔が熱い……。


「気にするな。昨日の今日だし、大丈夫かなとは思っていたから」


 恐る恐る瑞貴の顔を伺ったら、瑞貴も顔が赤かった。

 えっと、これって瑞貴も恥ずかしかったって思ってくれていいのかな……。

 それだったらボクも嬉しい。ボクなんかに触れてて恥ずかしいって思われたとかちょっとだけ誇らしく思う。


「榊さん、起きたのー?」

「あ、はい。すいません……」

「いいけど、ちゃんとご飯とか食べて、悩みがあるなら相談して、しっかり睡眠取らないとダメよー」

「はい……」


 全くもってその通りである。

 昨夕は作ったのにもかかわらずご飯は殆ど食べなかったし、悩みも解決しないまま寝入って、悪夢を見た。だから睡眠も禄に取れてない。


「まだ暑いしね、熱中症の疑いもあるから、もうちょっと休んでいくといいよー」

「ありがとうございます。そうしていいですか?」

「いいよいいよー。はい、瀬野くんは教室に戻った戻った!」


 渡瀬先生が、瑞貴を追い立てるように保健室から追い出していった。


「さて、それじゃあ、何に悩んでるのか聞いちゃいましょうかー」

「えっと……」

「黙っててもバレる物よー」


 にこやかにそんなことを言う渡瀬先生。ボクの事情を知っていて、なおかつ相談できる大人の女性。

 確かに渡瀬先生はうってつけの人だ。


「聞いて貰ってもいいですか……?」

「はいどうぞ。子供は大人を頼るのが仕事だからね」


 そういって笑う渡瀬先生は確かに大人の人だった

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