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36:着替えで一波乱

 お昼を食べて、移動をして、束の間の嬉しさを堪能した。

 テーマパークに到着して、入り口のあまりの人の多さにちょっと気分が悪くなった。


「姫ちゃん、大丈夫?」

「うん……流石にちょっと人が多いね。気持ち悪い……」


 ずけずけと無遠慮な視線が突き刺さっていやだなあ。

 頼りにしてる瑞貴はなんか使い物にならない感じになってるし。


 ただ、それよりも一番危惧しているのは、ボク今から女子更衣室に入るんだよね……。

 あの、少なくない数の人がいるんだよね……。

 それを考えるだけでうげええってなるんだけど……。


「……桜華」

「何?」

「ボクそっち側で大丈夫なのかな……」


 体育の着替えとかは何とかなった。だけど水着と言えば裸だ。

 下着を見ること見せるに対する抵抗はなくなったし罪悪感も沸いてこなくなったけれど、やっぱり女性の裸を生で見るのまだ気恥ずかしさや抵抗感が強い。


「……そういや、みんなとお風呂一緒に入ってないから慣れてないんだっけ」


 裸を見た事あるのは、桜華とくるにゃんと渡瀬先生だけだ。

 なんというか……、とてもじゃないけど、大量の人の素肌を見る勇気はボクにはない。

 体の違いとかちょっと気になりはするけれど。やっぱり、男のボクが不躾に見るのは良くないことだと思う……


「おーい、早く行くぞー」


 瑞貴が呼んでいるし、行かないと行けないんだけど。


「ひーちゃん」

「どしたの?」

「燈佳って、銭湯とか行ったこと無いから無遠慮に見られても気持ち悪がらないでね?」

「うん? よくわかんないけど、あたしは姫ちゃんの隠された所を見たいからね! 体育でもそそくさと肌見せずに着替えおってからー!」

「いくらひーちゃんでもそれはダメ。許されない行為。裸見ていいのは私だけだから」

「……いやそれはどうなのというか、振られたんじゃないの」

「諦めないって決めたから」

「ふーん、そうなんだ。桜華は強いね……」


 しみじみとした物言いの緋翠ちゃん。これは、えっと許可が出たのかな……。

 というか、いつの間にボクが振った話を知っているんだろう。さっき呼び出されたときにでも話をしたのかな。


「大丈夫だよ。燈佳はどこからどう見ても女の子なんだから」

「ん……それは嬉しいような、ちょっと寂しいような……」


 よく分からない気持ちだ。

 嬉しいはずなのに昔を否定されてる感じがして、なんか変な感じ。


「大丈夫だって、姫ちゃん。小さいのは気にしないでも……。半端なのが一番辛いのよ……」

「あー、うん……。そうだね……」


 どうやらボクが躊躇してる理由がちんちくりんな事だと思ったみたいだ。

 そうじゃあないんだけどなあ……。


「気にしたら負けだよー!」


 くるにゃんからのだめ押しである。

 いいのか……、元々男のボクがみんなと一緒に着替えても。

 変だ。前まではそんなに忌避感を覚えて無かったのに、瑞貴が好きだって気付いて、この思いがもしかしたら瑞貴にとって気持ち悪いものじゃ無いだろうかと考え始めたら、途端に同性と一緒に行動していることが悪い事の様に思えてきた。


 ボクの抵抗もむなしく……入園して、プールに連れて行かれて、気付けば女子更衣室にいた。

 服を脱いでいる人、個室に入ってシャワーを浴びている人、服を着ている人。

 肌色成分が多くて目の毒だ。それが惜しげも無く、目の前にあるのならなおさらだ。

 どこがとは言わないけれど、大きい人小さい人、それに人によっては色も違うし、量も違う。ぴんくとか茶色とか黒とか。


「や、やっぱり……ボク無理……」

「いや、ここ越えないとプールで遊べないんだけど?」

「うう……」


 分かっている、ここを越えないとプールで遊べないのは分かってる。だけど……!

 顔が熱い。恥ずかしいというか、みてはいけないものをみている気分がそうしている。

 更衣室にいる人たちは誰一人として、気にもとめていないのに、ボクだけがとても気にしている。

 中には物珍しそうにボク達をみている人達もいるし、小さい子は巻きタオルを使って着替えていたりもする。

 わからない。どうしていいのかわからない。


「うーん、見られるのが恥ずかしいなら個室を使うか、あたし達が壁になるけど……?」


 それもそれで……。見られるのが嫌なんじゃ無くて、ボクがこの場にいて良いかどうかの問題だから根本的に違うんだけど。それに、そしたら緋翠ちゃんの裸を見ることになるわけだし……。

 緋翠ちゃんには説明ができないのが辛い。


「個室、空いてるか見てくる」


 桜華が返事を待たずに先に行く。

 できれば少しくらいボクの事も鑑みて欲しいんだけれど!!


「姫ちゃんってそういえば恥ずかしがり屋だったもんねー。最近は慣れてたから気にしてなかったけど、体育の着替えの時も真っ赤になってたくらいだし」

「う、うん……」


 恥ずかしがりじゃあないんです。単純に女性の素肌を見るのが恥ずかしいだけなんです。

 いや、蓋を開けてみれば結局女子も男子と変わらないのは分かってるし、何より更衣室に充満する制汗剤の臭いは筆舌に尽くしがたい物があるのだけれど……。

 意外と漫画的なあれは少ないとは言え、絶対に無いわけでは無い。まあ本気で嫌がる人もいるし。

 ボクは幸い、桜華バリアーがずっとあったからその手の対象にならなかったけれど、時折ぞくりとする視線を感じることはあった。


「まあそれはさておき、姫ちゃんの発育具合はどうなんでしょうかねえ?」

「ちょ……! その手はなに!? ボクに何をする気!?」


 正直ボクの残念発育具合を触っても面白みは無いと思うよ!?

 やめて、まって、本当にその手はやめて、せめてやるなら着替えるまで待って!!


「ひーちゃん……ダメでしょ?」

「いたっ……」


 暴走しかけてた、緋翠ちゃんを戻ってきた桜華が止めてくれた。

 よかった。流石に服の上からだったら服がぐしゃぐしゃになってしまう。それは嫌だ。


「シャワールームが空いてたけど、そっちで着替える?」

「あ、うん。そうする。ちょっと行ってくるね」


 一目散に逃げるようにシャワールームへと駆け込んだ。

 後ろからそこまで恥ずかしがらなくてもという緋翠ちゃんの声が聞こえたけど、無視無視。これ以上はちょっと刺激が強すぎて辛かった。下手したら鼻血ものだよ!?


 個室に入ると、やっぱり床が濡れていた。そのままワンピースを落として着替えるのは却下だ。折角の服が濡れてしまう。

 塗れないための着替え方でやらないと……!

 肩紐から腕を抜いて、服をくるっと半回転させてチャックを下ろす。スカートをたくし上げて、シャツを脱ぐ要領で一気に脱ぐこれやると髪が引っかかることがあるからあんまり好きじゃ無いんだけど、今日は大丈夫だった。

 下着だけの姿になって、どうして今日に限ってこれにしちゃったんだろうって思う。桜華と一緒に買いに言って、ちょっと目に止めてたら買う物の中にちゃっかりと入ってしまっていたあれ。いわゆるちっぱい向けのセットである。

 初めてつけたけど、なんというかデザインが可愛すぎて、ボクなんかがつけていいのかと思ってしまうレベルだ。

 桜華は可愛い大丈夫、見られてもそれなら堕とせるっていうけど、そう言うつもりは一切無い。ただ、なんとなく一度も着ていないのがあるのはなあと思っただけなんだ。


「喜んでくれるかな……」


 水着は少しだけ、ほんの少しだけ細工をしている。やっぱり小さいのより少しでも大きく見せたいし。

 一度試しにつけたけど、少しだけ谷間が強調されたんだよ! ボクのこのサイズでいけたのは結構嬉しかった!


「ん、今日は多分大丈夫。朝の瑞貴の照れっぷりなら……今日はイケル……よね?」


 下着を脱いで、バッグから水着を取り出す。フリルを段重ねにして、胸元を隠すタイプのトップス。それと、ティアード状になっているパンツ。

 正直男物の短パンタイプのしか穿いたことがないボクにとって、このぴったりした感じは少し恥ずかしい。

 だって、殆ど下着みたいなものじゃない……。世の女性陣はよくこの格好で海とかいけるよねえ……。


 服を畳んでバッグの中に入れてロッカールームに戻る。相変わらずの肌色空間で目のやり場に困るけど、じろじろ見なければいいだけなんだ!


「覚悟決まったみたいね」

「覚悟って、そんなんじゃないよ」

「えっと、そうじゃなくて、自分を偽る覚悟?」


 桜華の視線がボクの胸元に注がれている。

 慌ててボクは胸を隠した!


「い、いいじゃん! やっぱりちょっとでも大きい方がいいだろうし……」

「姫ちゃん……。涙ぐましい努力だけど、諦める方が……」

「緋翠ちゃんまでなんてことを!!」

「むう……姫ちゃんやっぱり細いなあ……お腹のお肉もない……」

「ひゃあ! な、何するのさ!」


 いきなり脇腹のつまむとかどういう神経してるの!?


「いやあ、だって、あたし、こんなんだし」


 こんなんだしとかいって、脇腹をつまんでみせるけれど、ボクからしたら全然太ってるようには見えません。

 というか、緋翠ちゃんはオーソドックスなビキニタイプだ。やっぱり女は肌を見せてなんぼなのか。

 持ってる奴が憎い……!


「大丈夫、太ってないから。安心していいよ、ひーちゃん」

「……桜華のその胸見たら色々自信無くすわ」


 うん。何か動作をする度に奴のおっぱいは揺れる。ゆっさゆさと揺れる。とても憎いです。


「よーし、みんな着替え終わったなら早くプールいこー!」


 本当にスク水だったくるにゃんが指揮を執る。

 みんなの荷物を一つのロッカーに纏めて、鍵はなぜかボクが預かることになった。

 そして、先に待っていた二人と合流した。


「お、おお……健ちゃん、水着美人が四人もいる……」

「そうだな……」

「可愛い系から綺麗系まで取りそろえてるぞ」

「そうだな……」

「四人ともすっごく似合ってる!」

「そうだな……」


 立川くんがそうだなマシーンに変貌していた。疲れ果てている辺り、来るまでに瑞貴の期待感溢れる話に付き合っていたのかな。

 それにあんまりこういう所来るイメージが無いから当てられたのかなあ?


「それじゃあ、遊ぼうぜー!!」

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