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巻き込まれて女の子になったボク  作者: 来宮悠里
育まれる想い

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24:テスト終わりの一幕

 七月になった。連日記録する猛暑日で、ボクはそろそろ溶けて死にそう。元々夏は暑くて苦手だったけど、ここ二、三年は特にひどいと思う。

 期末テストも終わって、残すは夏休みまでの消化日程となった。

 テスト勉強は真面目にやらなかったけれど、多分大丈夫。赤点さえ取らなければ問題無いしね。


 この学校には水泳部はあっても体育の授業で水泳の授業がない。ボクとしてはみんなの裸を見ることが無くてほっと胸を撫で下ろしている。流石に女になって三ヶ月あまり、生活に慣れてきたとは言っても、やっぱり女性の肌を見るのは良心が咎める。

 でもこの暑い中だとプールの授業ないのは辛い。水にぷかぷか浮いてるだけでも涼めるくらいだし。


 空調は利いているけれど、やっぱり窓から差し込む日差しは夏のそれで、窓際がボクの席のせいもあって、日差しで死ぬ。

 日よけのカーテンとかあって無いような物だし。暗幕持ってきて、暗幕。


「さて、それじゃあ、水着を買いに行こう!!」


 うん、何がさて、なのかよく分かりません。

 誰かボクに説明してくれないかな?


「テストが終わったからってやけっぱちにならないで」


 全くだ。緋翠ちゃんはどうやら、テストの調子が悪かったようだ。だからこんな意味不明なことを言っているわけなんだね。

 てっきり夏の暑さに頭がどうにかなってしまったのかと思った。


「ボクはまっすぐ帰って、家で涼みたい……」


 こんな猛暑日の中なのに出かける気にはならない。

 ウォータープルーフの日焼け止めだって限度があるし……。

 女になって、何が大変って地味に肌が弱いことが大変だ。五月の良く晴れた日に薄着をして出かけて、夕方には肌が真っ赤になってしまったのが思い起こされる。あの時は桜華ちゃんに一杯怒られた。

 それ以降は毎日朝出る前には必ず日焼け止めを塗るようにしている。


「姫ちゃんはだらしない。折角だから遊ぶの!!」

「あー、これ駄目なパターンだ。結果が芳しくなかったからやけくそになってるパターン」

「う、うるさい……。なんで一緒に勉強したのにみんなはそんなに余裕なのよ……」

「えっと、ボク今日熱くて死にそうだから手加減できないけど、トドメ刺していい?」


 ボクは机に突っ伏したまま言った。

 手加減できないのは主に髪の量的な問題だ。熱くて死ぬ。流石に夏場はアップで纏めないとキツイかも……。そういう意味じゃ髪留めを買いにいくのに出かけるのはやぶさかではない。生理も終わり際だし、活動する分には支障は無いしね。ちょっとは元気!


「今のあたしは無敵なんだから、どんときなさい!」

「地頭の違い」

「うぐっ……」

「勉強の効率化の仕方」

「ぐう……」

「後早起きできないこと」

「それは関係無い!!」


 実は関係ある。余暇をどう使えるかが勉強をする上での肝なのだ。

 ボクはみんなの分のお弁当を作るから、早起きだし、家を出るまでに一時間くらいの余裕がある。そこでさらっと復習をするだけでも全然違う。


「燈佳ちゃんの言うとおり」

「桜華まで敵なのね……!?」

「私は遅くまで勉強してるだけ。燈佳ちゃんは早起きして勉強してるだけ。少しは勉強に時間を割いたら。得意と不得意に差があるのはひーちゃんだけだよ」

「うぐぐ……」


 そう、緋翠ちゃんは割とムラがあるタイプ。数学や理科といった理数系は得意なのに、それ以外はてんでダメ。中間テストでも赤点を取っていた。だから、総合順位じゃ下の方に居る。

 桜華ちゃんは満遍なく九十点を取って上位に。ボクは若干の手抜きをして八十点。ちょっと目立たないくらいがいい。多分真面目にやれば桜華ちゃんより上は取れる。

 一番ずるいのは何の勉強もしてないのに、天乃丘の赤点ラインである五十点をギリギリで取る瑞貴だ。ある意味でずるい。


「勉強しなくても五十は余裕で取れるだろ……」

「たまに授業中寝てる瑞貴に言われると腹立つ!!」

「適当に手抜いて補習をやり過ごす、これが重要だ」

「あんたは、ギリギリを狙いすぎ。実力テストも中間テストも、赤点プラス一から五ってどういうことよ……」

「あんなもん、設問読んで、配点予測すれば余裕で行けるだろ。ホントは全教科ジャスト五十点取りたい位なんだぞ?」


 それもそれでどうなの……。変に準備はいいのに、こう言うのでスリル狙うなんて……。


「瀬野はなんというか、頭がいいのか馬鹿なのか理解に苦しむな」

「ひでえ!」

「正直、低い点数取ると内申に響くだろう?」

「まあ、別にそもそも推薦で大学行くつもりもないからなあ。やるなら実力勝負で東大目指すくらいが一番燃える」

「ホント、瀬野はわからん……」


 立川くんが、呆れてる。ボクはもう呆れを通り越して諦めている。

 瑞貴なら、普通に東大現役合格しそうだし。


「さて、話を戻すけど、みんなこれから水着を買いに行くのか?」


 瑞貴が話を戻した。

 できればもう少しここで涼んでいたいけれど、学校の空調設備メンテナンスがお昼からあるみたいで、涼んでいられるのも後一時間やそこらなのだ。

 否が応でも、次の涼める場所を探さなければならない。

 お家帰りたい……。


「そのつもりよ! この前のテーマパークのプール行くの!」

「ああ……そういや結局まだ一回も行ってないもんなあ。一応六人分は調達してるし、夏休み入ったら行くかー」


 話が決まっている……。ボクはもう暑さでダメになりそうなのに、みんな元気だなあ……。


「俺も行っていいのか」

「健ちゃん……」

「なんだ」

「……流石に俺も水着女子三人四人の中に男一人はつれえ」

「まあ、なんだ……そうだな。その気持ちはわからんでもない」


 なんか、三人四人って……ああ、くるにゃんが不確定要素か。でもちゃんと誘えば来そうではあるけどなあ。

 監視役とかいいながら、全然監視してないし。

 でもどこからか黒猫さんの姿で見ては居るんだろうけれど。うーん、謎だ。


「ふっふっふ! そうと決まったら早速出発! 悩殺してみせるんだから!!」


 あー、うん。その役割は桜華ちゃんだから。圧倒的戦力差に打ちのめされればいいんだよ。緋翠ちゃん。

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