00:奇跡と軌跡のさきにあったもの★
雪降る日。
手にはチョコレートと、メッセージを添えた手紙を持って居る。
手がかじかんでとても冷たい。吐く息は白く煙る。
まだかな……。
待ち合わせの時間にはまだ十分時間がある。
早く来すぎたのだ。
あ、来た。それだけで胸が高鳴るのが分かる。もうさんざん経験してきた事なのに。未だにときめくって一体どういう構造をしているんだ。
待ったかと聞いてくる思い人に首を振って答える。
困ったように用は何かと聞いてくる。
自分も困った……。覚悟はしているつもりだったのに、そう考えるだけでちょっと頬が熱くなる。
後ろ手に隠したチョコレートはいつだそう……。うぅ、こんなんなるんだったら下駄箱に入れちゃえば良かった。
でも、今日はちゃんとするって決めたんだから。
言葉がつっかえる。目の前の思い人が苦笑している。
いえ、早く言って楽になれ!
答えは分かってるんだから、思い人は自分の答えを待ってるんだから――
「これ……バレンタインだから。チョコ作ってきた」
ち、が、う! そうじゃないんだ。でも、無邪気に喜んでる、嬉しい。
目の前の好きな人が子どものように笑っている。そんなに喜んで貰えるならもうちょっと気合いを入れて、ケーキとかにしちゃえばよかった。
……って違う、そうじゃない!
「それと!!」
もうここまで来たら、言うしか無いんだ。言うしか無いんだ!!
胸に手をあて、大きく深呼吸して、ぎゅっと目を瞑った。
あなたの反応を見るのが怖かったのだ。
溢れる想い、今まで積み重ねてきた物。
分かっている答え。渡された言葉。
左手の中指に銀の輪っかが鈍く光っている。いつもはネックレスにしているんだけれど、今日だけは特別だ。
右手でそっと左手を包む。大丈夫……ボクは、大丈夫。
目の前でまざまざと見せられる無邪気な笑顔をみて、撫でた銀の輪っかに勇気を貰って。
胸は最高潮にドキドキと高鳴っているけれど……。
覚悟は決めた。やっとだ。二学期の半ばには生き方を決めたのに、それからふらふらとしてしまった。
けれど、ようやく、いまにして、決まった……。
「ボク……ううん、わたしは、貴方のことを好きでいてもいい、ですか?」
これは巻き込まれて女の子になっちゃったわたしが、わたしの好きな人に想いを告げる話。
その為に歩んできた軌跡であり魔法という奇跡に翻弄された物語。
願わくばこの後も、良き物語であればいいなって、思ってる――!