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鬼人幻燈抄  作者: モトオ
平成編
169/216

『四月・入学・悲喜交々』・3




 夕暮れが夜の色に変わる頃、少女は一人通学路を歩いていた。

 黒髪に長い三つ編み、野暮ったい眼鏡といかにも真面目そうな容姿は、今時の女子中学生にしては珍しい。

 帰るのが遅くなったのは、委員会の仕事が長引いたせいだ。思った以上に時間がかかってしまった。

 辺りは既に真っ暗。お母さんも心配しているだろうし、早く家に帰ろう。

 こつり、こつり、足音は響く。

 帰らなきゃ、そう思うのに、少女の足はぴたりと足が止まった。

 視界の先、街灯に映し出されたシルエットのせいだ。

 闇夜を背景に翻る、毒々しいまでの赤。

 仮面で顔を隠し、赤いマントを身に纏った奇怪な男が、少女の行く手を遮るように立ちはだかる。


“怪人赤マント”


 かつて子供達を震え上がらせた、恐怖の代名詞である。

 少女は、その恐ろしさを知らない。赤マントが広く知れ渡ったのは昭和の初期。彼女が生まれる遥か以前の話だ。

 なにより、この真面目な少女は怪談だの都市伝説だのには疎く、赤マントが何者か理解できていなかった。

 理解できたとして、既に遅い。

 距離は一呼吸すら必要ないほどの速度でゼロになる。瞬きの間に赤マントは駆け、少女の眼前には仮面で隠された顔が。

 悲鳴を上げることすらできなかった。

 意識は途切れ、少女も赤マントも、闇に紛れ姿を消す。

 夜の帳は降り、通学路に人影はなく。




 曰く、赤マントは下校中の少女をさらう。

 此処に都市伝説は現実のものとなった。




 ◆




 兵庫県立戻川高校の通学路の途中、学校から歩いて十五分程の所には、コンビニ『アイアイマート』がある。

 周りに住宅は少ないが、登下校中の学生や教師陣が利用する為このコンビニは連日盛況。 特に朝は、弁当やパンなど昼の食料を調達する戻川高校の関係者でごった返すのが毎度のこととなっていた。


「いらっしゃいませ」

「……お前は、なにをしているんだ」

「レジ打ちです、お客様」


 甚夜も他の生徒達と同じく、昼食を買いにコンビニへと寄った。

 料理はできるが、作る相手がいないと張り合いもない。態々自分の弁当だけを準備するほどマメでもなく、入学してから昼食はスーパーで買っておいたパンかおにぎり、あとはカップ蕎麦などで済ませていた。

 今日は少し手を変えて、偶にはいいだろうとコンビニメニュー。適当な弁当を手にしてレジに並び、いよいよ自分の番となって、レジ担当の姿を見た途端甚夜は顔を顰める。

 今朝のレジ担当はアイアイマートの店長だ。

 初めて訪れた店だったが店長の顔には見覚えがある。

 三十代前半といった所だろうか。五尺程度の背丈、肩幅が広い訳でもなく決して体格は良くない。しかしその首は奇妙なほどに筋張っており、尋常ではない鍛錬を積んできたのだと分かる。

 店長の名は岡田貴一。

 江戸の頃から生きる鬼にして、時代遅れの人斬り。

 甚夜の知る限り最も優れた剣の使い手は、何故かコンビニ店長に収まり、レジ打ちに精を出しているのだった。 


「かっ、かかっ。ぬしが以前言っておったであろう、かつては葛野に住んでいたと。ちと興味がわいて訪れてみれば、紆余曲折経て幸運にも職を得た。いや、コンビニの店長というのも慣れれば悪くない。どうせ金は必要と働いていたが、気付けば長々と居着いてしまったわ」


 空気の漏れるような不気味な笑いは、営業スマイルにしてはちと血生臭い。

 コンビニの制服に袖を通し、帯刀もしていないというのに、思わず身構えてしまう。甚夜にとって岡田貴一とはそういう相手だ。

 正直なところ、人斬りとはいえ彼に対して嫌悪は抱いていない。

 剣に至る、それだけが岡田貴一という男の全て。

 己が願いに身を委ね、ただ只管に専心する。

 随分と昔、いや、もしかしたら今でさえ。甚夜はこの男の在り方に憧れていた。


 目的があった、強くなりたかった。

 強くなればきっと、振るう刀に疑いを持たずに在れると思った。

 彼のように、一つの為に他の全てを斬り捨てられる自分で在りたいと、そう願ったことも確かにあったのだ。


「では、598円になります。お弁当はあたためますか?」

「……いや、いい」


 だからこそ、そういう相手の敬語に恐ろしいほどの違和感が。 

 24時間いつでも傍に、人斬りが笑顔で迎えてくれるコンビニ。最悪すぎるキャッチコピーである。

 手際よくビニール袋に詰められたトンカツ弁当を受け取り、どうにもすっきりしない心地でコンビニを後にする。

 久々に知人と顔を合わせたというのに、寧ろそのせいで、朝からひどく疲れた気分だった。




 ◆




「待ってたよ、葛野君!」


 妙な倦怠感のせいか、普段よりもゆっくりとした登校。

 教室に入れば、飼い主を出迎える犬の如く梓屋薫が猛烈な勢いで傍に寄って来る。もっとも顔に浮かぶのは喜びよりも焦燥だ。

 その隣に立つ姫川みやかも首をこくこくと縦に振っているところを見るに、同じく甚夜の登校を待っていたらしい。

 昨夜は一緒に駅前でクレープなんぞを食べてから家まで送った。交流をもってからまだ数週間、それなりに友好的な関係ではあると思うが、特別親しいという訳でもない。

 そんな少女達が焦りを感じさせる態度で甚夜の登校を待っていた。

 それは、つまり。


「早速の厄介ごとか?」


 甚夜の問いに、二人は揃って大きく首を縦に振る。

 そいつは有難い、零れた呟きは皮肉ではなく素直な気持ちだった。

 暴れ狂う都市伝説の方が岡田貴一の経営するコンビニよりも遥かに組し易い。

 なによりそれが「捏造された都市伝説」ならば、元凶へと繋がる手がかりを得られるかもしれない。


「内容は?」

「あのねあのね、赤マントが出たって」

「ほう、赤マントか……今度は随分と懐かしい奴が来た。幸い、すぐに動き出す輩でもなし。朝のホームルームの後にでも話を聞こう」


 赤マントは昭和初期に語られた怪人で、当時は藤堂夫妻の孫達も随分と怯えていた。

 そういう時期外れの都市伝説がいきなり姿を現すのだ。こいつは“当たり”かと、甚夜は僅かに口の端を釣り上げた。








「……これくらい、かな」


 ホームルームの後、再び屋上へと集まった三人は腰を落ち着けて話し込む。

 当然一時限目はサボる形になるがそこは仕方ない。

 内容は勿論赤マントについて。

 根来音久美子から詳しく話を聞いたみやかは、それを一言一句漏らさず甚夜へと伝える。



 一つ、最近中学校の女子の間で「赤マントが出た」という噂が流れている。

 二つ、既に二人下校中の女子生徒が姿を消した。

 三つ、女子生徒が失踪した当日に走り去る赤いマントを着た怪人が目撃されている。

 四つ、赤マントは木々を飛び移るように消えていった。とてもではないが人間に出来る動きではなかった。



「赤マントが出たの、私達の出身中学なの。通っていた頃はそんな噂全然なかったから、騒ぎになったのはここ一週間くらいだと思うんだけど」


 件の噂は久美子も又聞きだったらしく、話の出元はみやか達と同じ中学の女子である。

 その女子には妹がいて、そこから赤マントの話が流れてきた。だから噂になっている、というのはまず間違いないだろう。

 とはいえ中学校の方でも、最初の頃は噂「変質者だろ」「今時馬鹿じゃねぇ?」と信じないものが大半だった。

 しかし立て続けに女生徒が二人失踪。その上いなくなった当日、赤いマントを纏った不気味な怪人が目撃されたことにより噂は俄然真実味を帯びてきてしまった。

 女生徒は未だ見つかっていない。

 正体は分からないが、何か得体の知れないものが存在しているのは疑いようもなかった。


「人間ではできない動き、か」


 ふむ、と甚夜は小さく呟く。

 そもそも赤マントというのは都市伝説の中でも「直接的」な存在だ。

 暴行魔にして殺人鬼。誘拐の目的は性的暴行、殺害手段はナイフやバット。その存在はオカルトであっても、呪いやら念動力やらのオカルトな能力を有している訳ではない。

 赤いマントを羽織って、少女をさらいナイフで殺す。その程度なら普通の犯罪者でもやろうと思えばできてしまう。故に伝聞では判断しかねる部分もある。

 とはいえ、人間ではない動きというのならば、八割方怪異ではあるのだろう。そうでなくとも、既に被害者が出ているのならば放っておく訳にもいかない。


「ねえ、これって」

「伝聞では断定しかねるが、おそらくは“当たり”だろう。しかし、木々を飛び移るように、というのは……」


 引っ掛かるのは、木々を飛び移るように逃げていった、という話だ。赤マントの特徴にそんなものはなかった筈なのだが。

 黙り込んでしまった甚夜の様子を窺うように、みやかは上目遣いで幾度か彼の表情を覗き見る。 

 沈黙が辛いのか、どことなくそわそわと、少女の方も随分と落ち着かない。結局耐えかねて、彼女の方から声をかけた。


「どうかした?」

「……いや。ともかく、赤マントは少女を誘拐し殺す危険な怪異だ。実際にさらわれた生徒がいる以上、捏造された都市伝説ではなくとも放置するのは気が引ける」

「じゃあ」

「放課後までは待てないな……その中学の住所を教えてもらえるか?」


 入学から一か月経たないうちに丸一日授業を休むのもどうかとは思うが、優先順位はこちらの方が高い。

 彼の怪異は下校中の子供を襲う。ならば放課後からでは動くのが遅すぎる。まずは下校時刻の前に粗方の調べを済ませておく必要がある。

 早々に動くとしよう。決めたからには躊躇はなく、甚夜は思考を切り替え、四肢に力を込めて立ち上がる。


「待って」


 屋上から離れようとするのを呼び止めたのは、いやに真剣な顔つきをしたみやかだった。

 緊張が容易に見て取れる。唇を震わせ、一瞬の迷いに目を伏せる。けれど薫と目を見合わせ、こくりと頷き合う。

 それで腹は決まった。二人の少女はまっすぐ甚夜を見て、声を揃えて願い出る。


「……私達も、付いて行っていい?」

「別に構わないが。準備してくるといい」

「お願い、足手まといなのは分かって……え? あれ?」


 続くみやかの言葉は戸惑いと共に途切れてしまう。

 断られると思っていた、なんとか説き伏せると意気込んでいた。

 その筈が、何か簡単に了承を得てしまった。

 少女を狙う危険な都市伝説。女子バスケをやっていたから運動は逸れない、しかし戦えるほどではない。専門知識など欠片もなく、役に立てないと自身が一番理解していた。

 薫だって似たようなもの。なのに、連れていくだけ邪魔な少女達の申し出を、甚夜は軽く受け入れる。

 なんだろう、自分にとっては都合がいいはずなのに、この肩透かし感は。戸惑ったまま目を白黒させている少女達へ、彼は小さく笑みを落とす。


「出身中学なんだろう? 君達が前に出てくれれば、私が聞き込みをするより円滑に進む。いや、正直助かるよ」

「あ、そっか! うん、任せてね!」


 出身中学なのだから後輩がいるだろうし、教師陣とも面識がある筈だ。

 ならば見ず知らずの怪しい男よりも多くの情報を引き出せる。

 その発言に納得がいったのか、「じゃあ早速準備してくる!」と薫は勢いよく教室へ戻っていく。一緒に行くはずのみやかを置いていく辺り、薫らしいというかなんというか。

 そんな邪気のない少女の行動を、甚夜は微笑ましそうに眺めている。同年代に向ける視線ではなく、まるではしゃぐ子供を見る父親のような、ゆったりとした柔らかさだった。


「随分と不思議そうだな」


 薫は先程の説明で満足したようだが、みやかは今一つ納得し切れていなかった。

 それが顔に出ていたのだろう、甚夜は苦笑を浮かべている。指摘されるとどうにもバツが悪かった。

 彼を嫌っているのではない。昨日のこともあり、葛野甚夜は怪しくはあるが、最低限の信頼はおける人物だと十分理解している。

 だとしても、態々足手まといを連れて行こうとするのは、やはり奇妙だと思えてしまう。


「そう、だね。すごく不思議。ねえ、なんで私達を連れていくの?」

「君達が頼んだのだろう……と返すのは、少し意地が悪いか」

「そんなことはないけど。でも、はっきり言って私達邪魔になるよ? だから断られると思ってた」


 単純な損得勘定の話だ。

 連れていくメリットとデメリットが釣り合わない。

 聞き込みには使えるかもしれない。しかしそれ以外は必要ない、どころかいるだけで邪魔。大体みやか達は本来彼とは何ら関係ない、所詮は助けられただけの一般人だ。頼まれたからといってそれを聞く義務はなく、我儘が通るほど親しくもない。

 結局みやかには、彼が何故こちらの意を汲んでくれるのか理解できず、そのせいで裏があるように思えてしまうのだ。


「しかし、君達は私が連れて行かなくても動くだろう? 前科もあるしな」

「……ぅ」


 否定したいけれど、できない。

 実際前回の時には、一人で夜中捜索に出て、結果口裂け女に襲われた。彼の言うことは全くもって正しく、勝手をされても困るというのもよく分かる。


「まあ、そうでなくとも断る気はないさ。母校というのならば知人友人も多いだろう。何もできずにただ待つのは辛い……私にも、経験はあるよ」


 手伝ってもらえれば有難いのは事実。断って勝手に動かれては困るというのもある。

 しかしそれも甚夜にとってはおまけ程度の理由でしかない。

 まだ幼い頃、義父である元治に守られるだけで何もできなかった自分を覚えている。いつかの未熟と少女の嘆きが重なったから、歯痒そうに俯いてしまうみやかを、足手まといと切り捨てる気にはなれなかった。


「……中学の頃、女子バスケ部だったの」


 鉄のような声は、それでも窘めるような優しさで。

 だから分かった。彼は理や利とは別の理由で、馬鹿な小娘の我儘を聞いてくれようとしている。その結果、自身に不利益があるかもしれないと知りながら。

 自然、みやかは心情を吐露していた。

 そうまでさせてしまうのだ、出来る限り胸の内を明かさねば失礼だと思った。


「後輩達、厳しい先輩だったのにみんな慕ってくれた。部長になった子は特によく。だから、あの子達が危ない目にあうかもって思ったら、居ても立ってもいられなくなって。何かできる訳じゃないって分かってる、だけど……」

「ならば君にもいろいろと手伝ってもらう。状況によっては守ってやれなくなるが、構わないか?」

「……うん、分かってる。お願い、連れて行って」


 ああ、勿論だ。

 そう言った彼は無表情で、すぐに歩いて行ってしまう。

 慌ててみやかは付いていく。追いかける背中は実際の距離よりも遠く見えて、なのに何故だかとても頼もしく見えた。




 ◆




「あれ、先輩? どうしたんですか、まだ学校終わってないのに」

「赤マント、あ、知ってます! いなくなったのうちのクラスの子で」

「見た人知ってます」


 授業をさぼってかつての母校を訪れたみやかと薫は、休憩時間の度、後輩の女子達にいろいろと話を聞いて回った。

 やはり赤マントが出た、というのは間違いなく、しかし決定的な情報は得られていない。


「あれ、あんたら、どうしたの? もしかして来る学校間違えた?」


 そうして最後の休み時間に訪れたのは職員室。

 そこでは午後の授業がなかったのか、この春から教職に戻ったかつての恩師、白峰八千枝が迎えてくれた。


「お久しぶりです、白峰先生」

「久しぶり。まあ、まだ一か月も経ってないけど……って、あんまり冗談言ってられる雰囲気でもないね」


 まあいいや、ついて来なよ。

 えらく切羽詰まった様子の教え子に、只事ではないと察したのだろう。八千枝に促されて、三人は職員室から空き教室へ場所を移す。

 六限目始業のチャイムが鳴り、休み時間の騒がしさも静まった。これなら誰かに話を聞かれることもない。

 これで話の準備は整った、適当な机に腰を下ろし、八千枝は並んで立つ三人へ訝しげな視線を送る。

 改めて見ると、なんともちぐはぐなメンバーだ。

 みやか、薫はいい。その後ろに控えている、180センチくらいの少年は見覚えがない。戻川高校の制服を着ているし、みやか達の連れならば怪しい人物ではないだろう。しかしガタイのいい強面の彼とこの二人の少女では、どうにも接点があるようには思えなかった。


「で、用件は? そっちの子は初めて見るけど、まさか高校で彼氏ができたから紹介、ってわけでもないんだろ?」

「失礼しました、私は葛野甚夜。彼女達とは高校のクラスメイトです」

「へえ、もう新しい友達ができたのか。上手くやってるようで安心したよ。っと、私は白峰八千枝。この子達の元担任だよ」


 意外や意外、礼儀正しく頭を下げられる。

 みやか達も驚いている辺り、普段とは全然違う態度なのだろう。まあしっかり挨拶できるのはいいことだ。少しだけ少年の評価を上げ、しかしいつまでもこうやって雑談をしていても仕方がない。


「で、今日は本当にどうしたんだい?」


 せっかく入学できた高校をさぼって突然押しかけてきた失礼な生徒に対し、八千枝は叱ることなくちゃんと耳を傾けてくれる。

 かつての恩師の寛大さに感謝し、みやかと薫はお互いに顔を見合わせ頷き、本題を切り出す。


「先生、聞きたいことがあるんです……赤マントが出る、って噂なんですけど」

「そうなんです! その話知ってたら教えてほしいなーって」

「ん……ああ、そんな話があったね。で、それを聞いてどうするの?」


 みやか達の問いかけに、すっ、と八千枝は目を細める。

 若干空気の温度が下がった。冷めた表情に気圧され、一瞬言葉に詰まってしまう。

 何故そんなことを聞くのか、また危ないことに首を突っ込むのか。八千枝の冷たい視線は生徒達を心配するからこそだ。

 その心が有難く、けれど都市伝説が現実になると知った以上、素直にそれを受けてはいけない。


「詳しくは話せないんですけど……危ないことは、ちょっとするかも。あ! でもそこら辺は葛野君がいるから多分大丈夫!」

「お願いします、先生。どんなことでもいいですから、話を聞かせてください」


 なんとか説明しようと薫はしどろもどろ、不器用にただ頭を下げるしかできないみやか。どちらも真剣で単なる好奇心や物見遊山ではないと分かる。

 それでも、元とはいえ可愛い生徒達だ。

 ただの噂ならばともかく、既に二人の女子生徒が失踪している。中学の教師陣も事態を重く見ており、あまり関わってほしくないというのが本音だった。


「……えらく、真剣だね?」

「はい。先生が私達を気遣ってる事、分かってます。でも、本当に。少しでも赤マントの情報が知りたいんです。そうじゃなきゃ、取り返しのつかないことになるかもしれなくて」


 けれどその物言いは、既に“関わってしまった”後のようにも聞こえる。

 ここで子供が興味本位で首を突っ込むな、と切り捨てるのは果たして正しいのか。

 八千枝は、ちらりと後ろに控えている少年の顔を盗み見る。成り行きを見守っているだけで、割って入るつもりはないようだ。

 連れてきたからには彼も関わりがあるのだとは思う。それでも傍観している、いや、見守っていると言った方が正しいか。

 結果はどうあれ少女達の行動を助けも邪魔もしない。同道してきたというよりは、まるで保護者のような雰囲気が感じられた。


「そっちの君も、赤マントのことが知りたくて来たんだよね?」

「はい、そうです」

「その割には積極的じゃないみたいだけど」

「単に役割分担を決めているだけです」


 役割分担? 聞き返すも彼は何も答えない。

 みやかや薫が情報を集め、甚夜は赤マントと対峙する。何もできない無力を知っていた、だからそういう形を崩す気はなかった。

 甚夜の内心など分かる筈もなく、八千枝が悩み対応に困っている間も、二人の少女は懇願するように瞳を潤ませている。

 そういう目には、ちょっと弱い。

 八千枝は乱雑に頭をガシガシと掻いて、諦めたように大きく息を吐く。


「あー、もう! 約束! 危ないことはしない! それならちょっとくらいは話したげる」

「……あ、はい!」

「私も、約束します」


 その約束はどこまで効果があったのやら、薫とみやかは手と手を握り合い無邪気に喜んでいる。

 本当に分かっているのかね、この子達は。

 肩を竦める心配性な教師に、仏頂面の少年はやはり冷静なままだ。


「無茶をさせるつもりはないので、そう心配しないでください」

「……頼むよ、ほんと」


 危ない目にあわせるつもりはないと、穏やかさの中に固い一本の芯が感じられる声だった。

 なんというか、初対面の子の方がストッパーとしては期待できる当たり、如何ともしがたいものがある。

 とはいえ落ち着いた物腰のこの少年を頼るしかないのが現状だ。八千枝はもう一度、大きく溜息を吐いた。




 ◆




「最初は、四月の初め。入学式から三日後だったかな。女子生徒が下校中にいなくなった。その時すでに“赤マントを見た”って話だったんだけど、所詮は噂って感じで誰も信じてなかった」


「でもすぐに二人目の女子がさらわれた。その時もやっぱり赤いマントを着た変質者が尋常じゃない速度で走って、街路灯をけって屋根を走って、木々を飛び回る猿かってくらいの速度で逃げ去ったって話だよ」


「女の子だしね。変な噂が流れたらコトだって、家族も学校も何も言わなかったから、表向きは騒ぎになってない。ご家族さんはともかく、学校の方は面倒ごとなんざ御免だってのが本音だろうけどね。くそったれ」


「失踪した二人は学年も違ったし、特に親しかったわけでもないって聞いたよ。共通点といえば、ああ、真面目なことくらい? 二人とも、眼鏡をかけて三つ編みで、大人しい女の子だったよ」





「……と、こんなところかね」


 一頻り話し終えて、八千枝はゆっくりと息を吐く。

 ちょっとと言いながらも、彼女は知る限りの情報を教えてくれた。厳しいように見えて、結局のところ生徒の味方をしてくれる。つまり八千枝は根っからの先生だった。


「ありがとうございます、白峰先生」

「満足した? でも、さっきの約束はちゃんと守ってよ?」

「私がついてるから大丈夫ですって、先生!」

「あはは、梓屋の大丈夫は全く信用できないねー」

「ひどいっ!?」


 ほんと、この子達のこと頼むよ?

 後ろに控えている甚夜へ目配せすれば、言葉を発さずただ頷きで返してくれた。高校のクラスメイト、会って間もないだろうに、彼は既に保護者ポジションに落ち着いている感じがある。

 ある意味安心ではあるのだが、なんとも不思議な少年だった。


「そんじゃ、これでおしまいでいいね? 明日はちゃんと学校行きなさいよー」

「はいっ」

「本当にありがとうございました」


 手をひらひらと振りながら八千枝は教室を後にした。空き教室に残された三人は言葉もなく顔を突き合わせる。

 聞きたいことは聞けた。赤マントの怪人の存在は確実、かの怪異は少女をさらう。おそらく、女生徒は既に手遅れだろう。


「やっぱり、口裂け女と一緒、だよね?」

「そう、だね。赤マントは本当にいる……」


 放置すれば三人目が出てもおかしくはない。

 そして、もうすぐ放課後。都市伝説に語られる怪人赤マントの時間だ。

 少女達の表情が強張る。存在を知ったとしても、所詮彼女達は一般人。怪異に抗う力などもたない。

 けれどこの場には、そいつをどうにか出来る存在がいる。


「さて、粗方の情報は聞けた。二人とも感謝するよ」

「葛野君……これからどうするの?」

「釣り上げて、刈る」


 端的に答える彼の声は、普段の調子となんら変化はない。力強さはなく、不敵な響きもなく、まるで「今日はいい天気ですね」とでもいうような気軽さだった。

 緊張感がないのではなく、気負いがないと表現した方が適切だ。赤マントと対峙する程度、日常の一コマと何も変わらない。あまりに自然すぎる物言いからは、油断ではなく相応の自負が感じられた


「曰く、赤マントは下校中の子供、特に少女をさらう。囮を準備して早々に蹴りをつけるつもりだ。幸いにも被害者の共通点は分かっているしな」

「あ、そう言えばせんせー、さらわれた二人とも眼鏡かけた三つ編みの女の子だって言ってたもんね」


 名案だ、と薫がぽむりと両手を叩く。

 成程、確かにそれが一番手っ取り早いか、とみやかも納得した。

 同時に彼があまり時間をかけたくない、つまりこれ以上の被害は容認できないと考えているのも分かったから、少しだけ安堵する。

 正義の味方ではないと以前言っていたが、行動自体は私的な利益に基づいていても、根底にはちゃんと良識がある。

 率直に言えば、彼は案外お人よしなのだと知れて、みやかの口元に微かな笑みが浮かぶ。


「確かに、分かりやすい特徴だね。じゃあ囮役は私か薫?」

「いいや、世話になったが、これ以上は流石に危険だ。勝手で済まないがここらで家に戻ってほしい」

「え? なら、どうするの?」


 当然ながらみやかの想定では、自分か薫のどちらかが囮役だった。

 しかし甚夜は打てば響くような速度で、明後日の方向の答えを返す。


「私しかいないだろう」


 ぴしり、と少女二人が凍り付く。

 一瞬彼がなにを言ったのか分からなかった。いや、多分言い間違い、或いは聞き間違いだ。そうだ、そうとしか思えない。このガタイこの強面で囮役に立候補するなんて、そんなまさか。


「眼鏡をかけた、三つ編みの女子。扮するのは容易そうだ」


 聞き間違いじゃなかった……!?

 なんで自信満々なの? ていうか、え、女装する気? 180近い背丈の細マッチョの女装、しかもこの強面で三つ編み眼鏡? なにそれ罰ゲーム? 見てる方もやってる方も罰ゲーム以外の何物でもないんですけど。


「あ、あの、葛野君それは、ちょーっと、きついんじゃないかなぁって。あは、あははは」

「正直に言えば、君達のどちらかを庇いながら赤マントとやり合うよりは楽だと思うが」


 そっちじゃなくて、きついのはあんたの女装だよ。

 言いたいけど、何故か甚夜は自信たっぷり過ぎて非常に突っ込み辛い。というか、この自信はどこからくるのだろうか。


「……葛野君。囮役、私にやらせてくれない?」


 そんな惨劇は止めなければならない。意を決したみやかは、重々しく口を開いた。

 彼女に力はないが、この状況でなら唯一有利な点がある。囮役が女であった方がいいなんて、考えるまでもないことだった。


「姫川……。すまないが、こればかりは。相手は赤マント、年頃の少女にはちと荷が勝ちすぎる。どのような結果になっても君が不快な目に合う」

「それでもいい。お願い、自己満足かもしれないけど。後輩達の為に、私の我儘を聞いてくれた葛野君の為にも、力にならせて」


 必死の懇願だった。

 甚夜は僅かに逡巡する。そもそもみやか達を連れてきたのは、その意思を尊重したから。可能なら彼女の心を無碍にするような真似はしたくないが、流石に囮役は危険だ。

 相手の力量が分からないこと以上に、対峙するのが赤マントならば、その場に少女を連れていくのは躊躇われた。

 しかしみやかの目はまっすぐに甚夜を見ている。

 高校生になったばかりの少女には似つかわしくない決意がそこにはあって。

主に彼の女装を避ける為だったが、それでも本気の想いは確かに伝わる。


「……危険だぞ」

「分かってる」

「守り切れるとは限らない」

「もしもの時くらい、ちゃんと覚悟してる」


 細面の綺麗な少女かと思えば、案外頑固だ。

 そういえば、この娘の母はやよいだったか。甚夜は随分と昔、懐かしい夏休みを思い出す。成程、頑固は母親譲りかと思わず小さな笑みを落とす。


「分かった、ならば頼めるか?」

「……うんっ」


 ぱあ、とみやかは普段の冷静さからは想像もできないくらい明るい笑みを浮かべた。

 危険な真似をするというのに仕方のない娘だ、と甚夜は思う。

 よかった、強面マッチョの女装姿を回避できた、とみやかは思う。

 お互いの笑みの意味は全く違う。若干以上のすれ違いに気付かぬまま、二人は下校の時刻を迎える。

 いつの世も変わらない、黄昏はあやかしの領域だ。






 ちなみに、葛野甚夜の正体は、言うまでもなく鬼である。

 鬼は百年を経ると固有の<力>に目覚める。

 遠い未来を見通す。膂力を異常なまでに高める。個体によってそれは変わるが、高位と呼ばれる鬼は一様に特殊な能力を身に付けているものだ。

 甚夜の持つ<力>は<合一>。

 取り込んだ<力>と<力>を合成する能力。

 そして彼には<空言>……幻影を見せる、<隠行>……姿を消す、二種の<力>がある。

 つまるところその二つを複合すれば、「少女に化ける」くらい何の問題もなくできるのだが、当然ながらそんなものみやかが知る筈もなかった。




 ◆




 赤マントに対する囮は、自ら願い出たことだ。だから文句はない。

 葛野甚夜のことは詳しく知らないが、その腕前なら口裂け女の件で十分に理解している。

 彼に守ってもらえるのだ、恐怖も然程だ。

 しかし姫川みやかの体は震えている。


「なんかすごい恥ずかしい……」


 理由は恐怖ではなく、極度の羞恥。つい数か月前まで着ていた筈の中学の制服。たった一か月のことなのに、高校生になった今袖を通すと妙に気恥しい。

 ついでに眼鏡をかけ、腰まである長い髪を三つ編みにして、いかにも真面目そうな女子生徒を気取ってみる。

 生まれつき髪の色素が若干薄く、光の加減で茶にも見えてしまうのはマイナスだが、夜だからそこまで気にはならないと思う。

 今のみやかは「真面目そうな三つ編みをした眼鏡の女の子」。赤マントにさらわれた二人の女生徒と同じような印象だった。


『似合っているぞ』

「ありがと、全然嬉しくない」

『別に皮肉ではないが』

「かもしれないけど、高校生になって中学の制服が似合うは褒め言葉じゃないからね?」


 ふむ、年頃の女の子は難しいな、なんて甚夜は呟いている。

 というか、あんたも同い年だから。彼は意外と天然ボケなんだろうか。


「でも本当に見えない……どうなってるの?」

『なに、ちょっとした大道芸だ』


 八千枝から情報を聞いた後、薫は安全の為に家へ戻り、みやかはこうやって囮役に徹していた。

 中学の頃の制服を纏い、眼鏡と三つ編み。今迄したこともない恰好は、今一つしっくりこない。

 ちなみに髪を編んでくれたのは甚夜だ。妙に手馴れている理由を聞くと、「かつては娘によくやっていた」と冗談で返された。そうやって誤魔化す辺り、まだまだ距離は遠いようだ。

 ともかく準備を整えた二人は、赤マントが目撃されたという時間帯に合わせ下校。夜の通学路をみやかと甚夜は並んで辿る。


 しかし傍目には少女が一人いるようにしか見えない。

 どうやっているのかは分からないが、甚夜は姿を消してみやかの傍に控えていた。

 彼が<隠行>と唱えた瞬間、その姿は掻き消えた。それを見た時は流石に驚いたが、しばらくすると少しは慣れて、普通に会話するくらいには落ち着いた。

 考えてみれば漫画に出てくる退魔師なんかは、すごい陰陽術とかを使っている。多分彼も同じように、隠形の術的なサムシングを使えるのだろう。そう思えば然程不思議な話でもないのかもしれない。


「葛野君が近くにいてくれるのは安心だから、別にいいけどね」

『評価は嬉しいが、そう大した男でもない。盾代わりに思っていてくれればいいさ』

「いや、あんたで盾代わりてどんな人外魔境よこの町」


 思わずあんた呼ばわりしてしまって、恥ずかしさに少し顔を逸らす。

 言われた本人は『それくらい砕けてくれて構わないが』と対して気にしていない模様。しかし男子との交友の少なかったみやかには、少しばかり難易度が高過ぎる。

 それに自分で言っておいてなんだが、口裂け女や赤マントが闊歩する町は十分人外魔境のような気もした


「来ると思う? 赤マント」

『君なら囮としては十分だと私は思うが、その辺りは好みの問題だからな』

「好み?」


 奇妙な言い回しが気になって聞き返すと、何故か甚夜は一瞬口籠った。

 何か言いにくいことなのだろうか。追及すべきか迷っていると、当事者なのだから話さねばならないと彼の方が思ったらしく、少し言いにくそうに話を続ける。


『赤マントの都市伝説には元となった話が幾つかある。有名なところをあげると“青ゲット殺人事件”、“阿部定事件の軍人の外套”“紙芝居・赤マント”辺りか』


 みやかの知る赤マントは、子供のころ読んだ霊能力教師が活躍する漫画に登場する「赤と青と白、どれがいい?」と色を選ばせ、その答えによって殺し方を変える殺人鬼だ。

 しかし彼が言うには、赤マントはそもそも現実の事件を元にした都市伝説であるという。


『元々の特徴は“下校する子供、特に少女をさらい殺す”。色を選択させるのは、本来派生形に当たる赤いマント・青いマントのものだ』

「女の子を……だから、私が囮になるの反対してたの?」

『まあ、な。年頃の娘にあまり生々しい話はしたくなかったという理由が大半だ』

「どういうこと?」


 またも歯切れが悪くなる。

 そこまで話して濁されるのも気掛かりだ。今度は、小さな溜息と共に甚夜は続きを聞かせてくれた。


『青ゲット殺人事件では“人さらい”と“殺人”。阿部定事件では“赤い外套”と“恐怖”。紙芝居・赤マントからは“神出鬼没さ”。それらが統合され赤マントの原型となった。では、どこから“少女をさらう”という特性が出てきたかといえば、阿部定事件。そして紙芝居・赤マントが流行った時期に起こった事件を由来としている』


 赤マントの元ネタでも特に有名な、「紙芝居・赤マントと現実の少女暴行殺害事件が結びついた」という説である。

 谷中の少女暴行殺害事件は赤マントの由来について良く持ち出される説だが、これが広く知れ渡ったのは、紙芝居の作者である加太こうじの著書『紙芝居昭和史』に記された内容を弁証としている。

 といってもそのほとんどは愚痴で、作者曰く「俺の書いた紙芝居が赤マントの噂の出どころだと警察に難癖つけられて無理矢理押収された」とのこと。

 事実、赤マントの紙芝居が流行していた当時、東京日暮里駅近くの谷中墓地で少女が性的暴行を受けた上で殺害されるという事件が起きていたようだ。


 また阿部定事件の舞台となった東京市荒川区尾久は、昭和初期に商店の若い主婦が連続して三人も殺されるという事件が起こった土地であり、「女は尾久に行くと殺される」と噂になったこともあった。

 この二点をもって、赤マントのキャラクター性に“女に対する執着”が付加された。

 赤マントを構成する要素に置いて、女殺し及び女性に対する性的暴行は、非常に大きなウェイトを占める要素なのである。


『かつて東京の日暮里駅近くで、少女が暴行して殺害されるという事件が新聞に載った。また、あの辺りには墓地があってな。そこにたむろしている不良が、学校帰りの少女に性的悪戯をしたということもあったらしい』

「……ねえ、それって。すごく、いやな予感がするんだけど」

『君の想像通りだ。赤マントが少女を狙うのは、女性を凌辱する目的があるから。とすれば、被害者は赤マントにとって“そういう対象”であって然るべき。つまるところ、眼鏡と三つ編みというのは、単に好みなんだろう』


 そう言うと甚夜は姿を現し、みやかを背に庇い抜刀する。

 視線の先には街灯、人影、そして外套。

 どくりとみやかの心臓が大きくはねた。

 突如として現れた影、にじみ出る気配は人のそれではなかった。

 なんともタイミングのいい。計ったように現れたのは夜に映し出された赤色。

 赤い、マント。仮面。手にしたナイフ。

 都市伝説に語られる赤マントの怪人が、此処に存在している。


「まあ……なんだ? よかったな、君は魅力的だそうだ」

「嬉しくない、嬉しくないから」


 赤マントの視界からみやかを隠すように立ち、甚夜は微妙ではあるが気遣いの言葉をかけてくれる。

 その態度にようやく気付く。ああ、関わらせたくなかったのは身の危険よりもそういう理由だったのか。

 みやかを囮にして赤マントが現れたなら、それは性的な対象に見られているということ。現れなかったら、お前には魅力がないと言われたも同然。確かに生々しい話で、どのような結果でも不快な目に合う。

 なんというか、物凄い脱力感に襲われる。

 赤マントの怪人は、怖い。怖いが、そういう現実的な下種さを知ると、怪奇的な恐怖感は幾分か薄れ、代わりにひどい嫌悪感が込み上げてきた。


「ともかく、釣れたのは事実。早々に片付けさせてもらうぞ、赤マント」


 一転、彼の纏う空気が変わる。

 気配は研ぎ澄まされ、翳した刃、切っ先の向こうには赤マント。 

 呼応するように、都市伝説の怪人は外套を翻しみやか達に襲い掛かった。






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