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鬼人幻燈抄  作者: モトオ
昭和編
155/216

『花の心』・2




 いつものように訪れた桜庭ミルクホール。

 グラスを傾けながら青年は、色々と経験豊富そうな店長に相談を持ち掛けた。


「女の子が喜びそうな贈り物?」

「姪にねだられてな。どのようなものがいいと思う?」

「ああ、例の」


 七緒が喜びそうな贈り物を考えていたが、どうにも思いつかない。

 そこで店長の手を借りに来たのだが、質問するとすぐさま答えを返してくれた。


「そうねぇ、お寿司とか焼き菓子かしら。姪御さん、娼婦でしょ? 仕事始まる前にお腹に詰め込めるものは喜ばれると思うわよ」

「ふむ」


 成程、然して親しくもない異性に贈るのは手作りでない食べ物がいいともいう。

 案外こういった肩肘張る必要のないものの方が喜ぶかもしれない。


「それでいくか。助かったよ、店長」

「あんまり感謝されても困るわ。喜んでもらえるかは分からないしね」


 そう言いながらも悪い気はしないのか、いつもより表情は柔らかい。

 青年は残ったウィスキィを一気に煽る。問題が片付いたおかげか、幾分気楽に酒の味を楽しむことができた。








「ああ、待ってたよ」


 店長の意見を参考に、贈り物を抱えてイチカワへ訪れる。いつもの部屋では相変わらず七緒が気怠そうに待っていた。

 さて、評価はどうなることか。

 これを、と言いながら土産を差し出せば、まるで愛し子を抱えるような丁寧さで受け取る。贈り物をそっと一撫で、その手つきはそれこそ母の優しさを思わせた。


「悪いねぇ」

「催促しておいてなにを今更」

「それは言わないお約束ってやつさ。クッキーかい?」


 娼婦への土産の定番といえば折詰の寿司だが、今回甚夜が選んだのはクッキーである。

 ナッツが多めに含まれた腹持ちのよさそうなそれは、仕事前、手早く胃に入れるにはちょうどいいだろう。

 詰め合わせは立派な分値段もお高い。見栄えも悪くないし、贈り物としてはそれなりだと思うが。


「随分奮発してくれたみたいじゃないか。ありがとう、あとで頂くよ」


 どうやらお眼鏡にかなったらしい。七緒は嬉しそうに受け取ってくれた。

 安堵の息を吐き、腰を落ち着ける。鬼を相手取るだけの剣豪が、贈り物一つに難儀しているのが面白かったのか、笑みはそのままにどこか生暖かい目でこちらを見つめている。

 しかし珍しく衣服の乱れを軽く直したかと思えば、一転真面目な顔つきに変わった。


「それじゃ、約束通り話そうか」


 突き付けられた難題もどきをクリアして、ここからが本番。甚夜も佇まいを直し七緒と向き合う。

 相変わらず独特の匂いが漂った室内。見つめ合う男女に艶っぽさはなく、僅かに空気は硬くなったような気がした。


「そうだね、母さんの現状について、なんてどうだい?」

「……随分と大盤振る舞いしてくれるな」

「言ったろ、今更母さんの味方をするつもりはないって。私に取っちゃ別に大した話じゃないさ」


 そう聞いてはいたがやはり意外だった。

 甚夜か七緒と話し合う機会を設けたのは、彼女らのことを少しでも知る為。

 しかし彼女が提示したのはマガツメの動向。まさかそこまで晒してくれるとは思ってもいなかった。


「とりあえず、しばらくは動けないから安心しな。次になんか企みを起こすのは、約束の年が近づいてからだと思うよ」

「動けない、とは?」

「あぁ、なんだろう、色々やってきた弊害というか。散々心を切り捨てて、憎しみだけを残したからね。中身が変われば器だって影響を受ける。体が化け物に近づいてきてるんだ。力は強くなったけど、反面、冷静な思考力がなくなってきてるんだと思う。あんたにちょっかいかけるほどの余裕がないんだよ」


 化け物に近付いている、冷静な思考力がなくなってきている。

 どちらも思い当たる点がある。大正、昭和と目立った動きを見せなかったのはその為なのだろう。とりあえず話に嘘はなさそうだ。 


「だからこれから起こす企みは、最終目標に直結したもんだけって訳。これはあんたに取っちゃいい話じゃないかい?」


 余裕がなくちょっかいをかけてこないと言うのならば、少なくとも暦座の者達の安全は確保されている。確かにそこは素直に有難い。

 なのに少し引っ掛かったのは何故だったか。あれの今がどうあれ考慮する理由はない。ならば単なる気のせいだろう。


「現状はそんなとこかね。後は……そういや、あんたは母さんの目的どこまで知ってる?」

「心を造る、というのは以前聞いた。世界を憎み、全てを滅ぼすというのも」

「ん、まあどっちも正解。まあでも、それはあくまで過程の話さ。母さんには目指す場所がある。そいつは最初から変わってないし、今後も変わらない。心を造るってすべてを滅ぼすのも、そこに至る為の前準備。料理を作るのに材料を切る、くらいのもんでしかない」


 心を造るのは、切り捨てた自分の心を埋める為。

 そして自分が望む通りの鬼を生む為。

 全てを滅ぼすのも、それ自体が目的ではない。

 七緒が語るのは甚夜が初めて知るものばかりで、自然と熱も籠ってくる。


「では、マガツメの最終目標とは」


 視線は鋭さを増していた。仇敵の秘密に迫ろうというのだ、それも無理からんことである。

 いつの間にやら甚夜は食い入るように話を聞いており、しかしついに核心へ至ろうという時、突き出された七緒の掌に制された。


「ああ、駄目駄目。今回の贈り物じゃそこまでは教えてやれないねぇ」


 流石に今のは、年甲斐もなく若干苛立った。

 そこまで話しておいて中断というのは、初めから話さないよりもたちが悪い。理不尽だとは自分でも思うが、甚夜はそんなことを考えてしまった。


「おい」

「そいつは、私を喜ばせる贈り物を持ってきてからじゃ聞かせられないんだ。悪いね」

「先程クッキーを受け取っただろう。それで満足したのではないのか」

「そりゃ、もちろん嬉しかったけどね。でもあれは“私に”じゃなくて、“馴染みの娼婦に”、だろう?」


 ぐっ、と甚夜は言葉を詰まらせる。

 図星だ。腹持ちのいいクッキーは、七緒ではなく娼婦が喜ぶものをと考えて選んだ。

 彼女は笑顔で受け入れてくれたが、考えてみれば、今回の件はそもそも与えられた問題をクリアできていない。


「納得してくれたみたいだね。さあさ、今日はここまで。次の贈り物楽しみにしてるよ」

「いや、おい。待て」


 甚夜の反応などお構いなしに、笑顔で部屋を追い出されてしまう。

 しかも今回に関しては彼自身下手を打ったという自覚がある為まともな反論もできなかった。

 そうやって放り出された男を、外にいた女給が何事かと妙な目で見ている。娼婦を訪ねてきたが半刻も経たず帰らされるのだ。非常に無様で滑稽な構図であり、実際女給は「あらあら、可哀そうに」と憐れみ半分面白半分といった様子だった。


「……上等だ」


 屈辱に肩を震わせ、拳を強く握りしめる。

 次はぐうの音も出ない贈り物を用意してやる。何やら間違っている気がしないでもないが、甚夜はそう心に決めたのだった。




 ◆




「へ、七緒さんの好きなもんっすか?」


 もはやなりふり構ってはいられない。

 頼ったのは甚夜が知る中で最も七緒と親しい青葉である。

 アパートへ帰って来るや否や行き成りぶつけられた質問に、少女は驚きから大きく目を見開いていた。


「いや別に教えるのは構わないっすけど、どうしたんすかいきなり?」

「彼女と話をするのには貢物が必要らしい」

「はあ」


 訳が分からない取った様子の青葉に、事のあらましを離せないところは省いて説明する。

 それでも十分納得したらしく、うんうんと何度も頷いていた。


「へぇ、七緒さんが姪。あれ? 甚さんが、七緒さんのお母さんのおにいさん、ってことは」

「どうした」

「いえ、七緒さんのお母さんの話、前に聞いたんすけどね。なんか“うちのお母さんは実のお兄さんに恋しちゃって嫉妬してお兄さんの恋人にひどいことして嫌われて、それでも未だにちょっかいかけてるはた迷惑な変態さんだ”みたいなこと言ってたんすけど」

「……変態かどうかはともかく、大体合ってるな」

「……甚さん、大概どろどろな家庭環境だったんすね」


 呆れか同情か、目を細めて乾いた笑みを浮かべる青葉。

 どろどろしているのは事実、否定する気にもならない。それよりも意外なところから青葉と交流があったのはマガツメの娘の方だと知れて、少しだけ安心した。


「まあ、な。それより」

「あ、そっすね。七緒さん、櫛集めが趣味見たいっす。花の飾りのついたやつがお気に入りだって前言ってました」

「櫛、か。ふむ……有難う、助かったよ」

「いえいえー。あと、花は黄色の花が好きみたいっす。というか、お母さんも自分も白い花は好きじゃないって。雪が嫌いだからとかなんとか」


 白い花と雪が嫌い。あからさますぎる嗜好にはあまり触れたくなかった。

 それはともかくとして、よい情報を得ることができた。早速明日にでも店屋を覗いてみるとしよう。

 そう考えながらも青葉の夕食の準備も進めていく。感謝の印に、今夜は一品増やしておこう。








「おや、つげ櫛。スズランの透かし彫りかい? 案外とセンスがあるじゃないか」


 再び訪れた娼館イチカワ。七緒への贈り物は、つげ櫛である。

 つげは細工物の材料として親しまれてきた樹木で、印鑑や家具、装飾品の類の材木として使われるが、中でも有名なのが櫛の素材としてだろう。

 つげ櫛は古来より女性への贈り物として人気が高く、恋の和歌の題材としても度々取り上げられる。つげで出来た櫛を贈ることは、密やかな恋慕の表現だった。

 勿論七緒に対して恋愛感情を抱いている訳ではない。しかし、彼女も一夜の恋を売る娼婦。泡沫の想いを贈るのも悪くないだろうと、敢えてつげ櫛を選んだ。


「いや、中々照れるね。今度は私の趣味に合わせて、その上で娼婦としての私にも気遣いを見せてくれたって訳だ」

「喜んでもらえたようで何よりだ」

「ああ、本当に嬉しいよ。それじゃあ、こっちもお返しをしないといけないね」


 世辞ではなく、本当に喜んでくれている。

 どうやら今回はうまくいったらしい。

 僅かに頬を染めたまま、七緒ははにかんだ笑みで昨日と同じように語り始めた。


「今日は、そうだね。私達マガツメの娘について詳しく知ってもらおうかな。あんたが最初に知りがってたのはこういう話だろ?」


 マガツメを知る。その為には切り捨てられた一部、娘達と腹を割って話すのがいいと思った。

 だから七緒と向き合おうと決めた。その通りだと頷いて示せば、彼女も応えるように微笑んでみせる。

 再び淀みなく口を開く。つげ櫛が功を奏したからか、声は昨日よりも明るい調子に聞こえた。


「私達は母さんが切り捨てた心の一部、元々無貌のあやかしだ。それが人を取り込むことで人格を得る。例えば私は、七緒っていう娼婦を食べてこの人格を手に入れた。でも、七緒がこういう性格をしてたって訳じゃない。母さんの切り捨てた心と七緒の人格とが混じりあったのが今の私。例外は、向日葵姉さんかな」


 その辺りは大体知っている。

 向日葵が他の娘達とは違うのも、何となくではあるが感付いてはいた。だがこうまではっきりと口にする辺り、彼女は姉妹の中でも特別な存在なのだろう。


「向日葵は、他の姉妹とは違うのか?」

「うん。向日葵姉さんは長女。一番に切り捨てられた心……母さんが持ってた“にいちゃん大好き”って感情の塊だから。他の誰かを取り込まなくても自我がある。そんだけ強い思いだった。だから、姉さんだけは特別。まぁ、最後の役割があるからって理由もあるんだろうけど」


 最後の役割。気になる言い回しだ。

 しかし問うよりも早く七緒は説明を続ける。分かっていて、邪魔をした。そんな風に思えた。


「次は、なんで私達を生んだかって話」

「なんでもなにも、手駒が欲しかったからだろう?」

「ああ、やっぱり勘違いしてた。そいつは違うんだ。母さんにとって、娘達は必要な手駒じゃない。寧ろ不必要だから私達は生まれた」


 一瞬浮かべた笑みはひどく寂し気だった。

 以前も彼女は母に捨てられたと語った。関係を断ったとはいえ、複雑な心境は変わらない。まだ割り切れていないのは容易に見て取れた。


「母さんは“にいちゃん”が大好きだった。だから、あんたと敵対する上で初めに向日葵姉さんを生んだ。そりゃそうさ、大好きなんて気持ち敵に向けてたら戦い辛いったらありゃしない。姉さんが長女ってのはそういうこと。にいちゃんへの想いを捨てなきゃ、そもそもあんたを傷つけるような真似は出来なかったのさ」

 

 甚夜と敵対する上で、必要だから娘を造ったのではない。

 敵対する上で、邪魔になるから慕う心を捨てて、それが結果として娘になった。

 だから向日葵は幼い姿をしていても長女だ。

 彼女はマガツメにとって何よりも大切で、何よりも捨てなければいけない感情だったから。


「勿論、他の姉妹もそこら辺は一緒だよ。母さんは邪魔になる心をひたすらに切り捨ててきた。その結果生まれたマガツメの娘はみんな花の名を持ち、名と同じ<力>を持ち、在り方を表す言葉がある」

「在り方を、表す?」

「そ、花言葉ってやつさ。向日葵姉さんを表す言葉は“私は貴方だけを見詰める”。だから<力>は、設定した対象への遠隔視。ずっとあなたを見ていたい、どこにいても見つけられる。そう在りたいって願いが形になったのが姉さん。思い当たるとこはあるんじゃないかい?」


 言われて、向日葵の振る舞いを思い出す。

 確かにあの娘は、出会って間もないうちから過剰なほど甚夜を慕っていた。そのからくりに気付き、知らず奥歯を強く噛む。

 沸き上がる感情が何だったのかは、彼自身にも分からなかった。


「地縛は“束縛”。<力>は、鎖による行動・能力の制限。あなたを縛り付けたい……願いっていうか欲望? 傍にいたい離れてほしくない、たとえ鎖でつないでもってな感じかね。なんともまあ、我が母ながら危ない趣味してるよ実際」


 江戸の頃に合った、南雲和紗を喰らった鬼女だ。

 確か彼女も、自分はいらない子供だと言っていた。素直に母と呼べない、寂しげな娘だった。


「東菊は“しばしのなぐさめ”。記憶を消す<力>は、忘れてほしいという願い。こんな自分を忘れてほしい。或いは、いがみ合った過去を忘れたかったのかもね。ともかく、忘れたかったし忘れてほしかった。そうすればもう一度昔に戻れるかもしれないっていう、淡い希望が東菊。もっとも、馬鹿みたいな策略のせいで台無しにしちまったみたいだけどさ」


 東菊は母さんが手ずから調整をかけたから、例外的に取り込んだ女の人格をそのまま継承していると七緒は付け加えた。

 言われずとも知っていた。彼女は、確かに彼女のまま会いに来てくれた。


「古椿は“私は貴方を常に愛します”。言葉の方は綺麗だけど、肝心の<力>は人をのっとって操るなんてえげつないもんになっちまった。元々は、褒められたもんじゃないが、一応は愛情だったんだよ。愛しているからこそ、あんたを好きにしたい……ちょいとはしたないが、それだって女心さ」


 南雲叡善に囚われ操られた憐れな娘。三枝小尋を取り込んだ、正直に言えばあまりいい印象のない鬼女である。

 とはいえ<古椿>のおかげで溜那を救えた。そういう意味では感謝していた


「私達姉妹は、皆あんたへの想い。必要ないから捨てた後も、大切で。だけど、いらない想いだってある。私は表す言葉は、母さんにとって見たくもない欲望。だから手駒にもしてもらえず、本当の意味で捨てられてこの街に辿り着いたんだ」

「それでは、君の名は」

「いずれ分かるよ。全部が終わった時、私の<力>を依頼の報酬として払うんだから」


 約束だったろ?

 そう締め括った七緒は満足げだ。おそらくそれは、なんとも言えない表情をしている甚夜を見たからだろう。

 切り捨てられた心の一部。そうと知りながら深く考えてはこなかった。

 けれどその意味を知った今、かつて対峙した鬼女たちの見方が少しばかり変わってしまった。

 向日葵を除き、全てを喰らって来た。それを思えば余計に心臓が締め付けられる。

 なによりああまでマガツメが壊れてしまった理由を知り、憎悪と共に得も言われぬ感情が沸き上がるのを自覚した。


「ああ、よかった。こんだけ話してなんの反応もなかったらどうしようかと思った」

「流石に、思うところはあるさ」


 マガツメが壊れたのは、甚夜と敵対する為に、彼への想いを次々と捨てていったから。

 逆に言えば、鈴音にとって兄への想いは、捨てれば人格に異常をきたすほど、広く深く心に根差していたということ。

 そこまであの娘を追いつめてしまったのだと、今更ながらに理解させられた。


「あんたがそういう男で安心したよ。分かってくれたかい? 母さんは、本当にあんたが好きだったんだ。鬼に落ちてからも、こんだけ沢山の想いを捨てなくちゃ敵になれないくらい好きで。どれだけ切り捨てても、想いは後から後から湧いてきて。……比喩じゃなく、母さんにとってはあんたが全てだった」


 だから、それをどうか忘れないでほしいと。

 いつか母さんを斬り捨てる日がくるとしても、その想いだけは嘘にしないでくれと、七緒は祈るように願う。

 甚夜は何も返せなかった。

 知りたいと自身が望んだ。けれど深すぎる愛情を目の当たりにして、なのに憎しみは今も胸を焦がした。

 混沌とした感情は形にならず、ただ口を噤むことしかできないでいる。

 しかし彼女は明確な答えを求めていた訳ではないらしい。返答できなくとも穏やかに瞳を揺らす。


「それじゃ、今日はこれでおしまい。最後は、母さんの<力>と最終目標かな。それに相応しい贈り物をしてくれたなら、話したげるよ……また来てくれるの、楽しみにしてる」


 甚夜はここで話は終わりだと言われても、大した太反応もできなかった。

 ちらつく懐かしい笑顔と、それさえ塗りつぶす憎悪。

 纏まらない感情を押さえつけ、「ああ」と短く返すのが精一杯だった。






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