百合な勇者は愚痴りたい
初投稿です。
なろうで勇者召喚や百合ハーレムを見て書きたくなりました。
とても楽しく書けました。
「* * *」以下が勇者の一人称になります。
巨大な城の豪奢な接見の間にユウリが喚ばれたのはこれで二度目だ。
一度目は地球産日本生まれのユウリがこの異世界『アウター』に召還された日のこと。王より無理矢理渡された聖剣で魔王を倒してこいと用意されていた四人の仲間と共に城を追い出されたのを彼女は一生忘れることはないだろう。
そして二度目の今、ユウリの右手には煌めく聖剣が、左手には薄紫色をした巻き角が握られていた。
「異世界からの勇者ユウリよ、それが魔王の角なのか」
手のひらほどの大きさしかない角からは吐き気がするほどの大きな魔力が宿っている。
問うてから、王は我知らず唾を飲み込んだ。想像の埒外にある魔王の強大さとそれを倒したという少女の底知れぬ強さに王は畏怖したのだ。
「はい、これが魔王サターナの角です」
ユウリは王からの質問に笑みを浮かべて答えた。
アウターへ召喚される前は平凡な女子高生であった彼女は、王との会話にも臆することなく流れるように言葉を紡ぐ。
ユウリはこの旅で凶悪な魔物や魔王はおろか、神やドラゴンにも出会ってきた。
今更地位が高いことしか特徴のない男の会話程度に怯えることはない。
「勇者ユウリよ、角はこちらで預かろう。聖剣は王の元へ」
「はい」
宰相の言葉にユウリは素直に従う。
まずは近付いてきた神官へ角を渡した。それはすぐに教会へ封印の為に運ばれる。
神官が退室してから、ユウリは王へ聖剣を届けた。
「うむ、確かに」
王は白銀に煌めく剣を受け取るとそれをオリハルコンで出来た箱へとしまう。
厳重に鎖と魔術で聖剣に封がされると、ユウリの纏っていた思わず見惚れてしまう美しさを持った巨大な神気が消えていく。
今のユウリの纏う雰囲気は勇者のそれではなく、どこにでもいる少女のものだ。むしろアウターの生物全てが持っているだろう魔力が欠片も感じられなかった。
王は魔導師長と目を合わせ、頷き合うとほっと息を吐く。
勇者と言えど、聖剣を取り上げてしまえばただの少女だ。指先一つで騎士達を動かせる王の脅威ではなくなる。
「では勇者ユウリよ、此度の活躍に対し褒美を与えよう」
幾分くつろいだ様子で王は気安くユウリへ話す。
あらかじめ用意されていた報償内容を宰相が読み上げる前に、ユウリは口を挟んだ。
「差し出がましいのは重々承知しているのですが……褒美の件に関して、私から望むものがあります」
聖剣を持った時と同じまま堂々と話すユウリに、王はピクリと片眉を上げる。配備された騎士団の雰囲気が剣呑なものとなる。
王はそれを目線で制し口を開く。
「ふむ、申してみよ」
王からの言葉にユウリは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。
まず前もって言っておきますが、私は金銭も地位も望みません。
……ご安心ください。もちろん元の世界へ送還しろとも言いませんから」
更に重くなった空気を感じ、ユウリは先手を打っておく。
魔王城への長い旅をしていく内、元の世界へ帰還する方法がないことは分かっていた。
王はユウリの物言いに訝しげな視線を送る。
「未練がないと言えば嘘になりますが、それ以上にこの世界で生きていたくなりました。
王には、私がこの世界で生きていく理由となったものを頂きたく思います」
「……聖剣はやれぬぞ」
王と騎士団の警戒が更に増す。
ユウリは緩く首を振り、体を王ではなく背後へ向けた。
そこには共に旅をした四人と旅の途中で仲間になった二人がいた。
ユウリはその中の一人、大柄な女性へ柔らかく微笑む。
「聖剣は平和になった世界には必要ないものでしょう。
私は大切な友人となったスウォルドを王国の奴隷から解放して欲しいのです」
ユウリは王へ向き直り深く頭を下げる。名前を出された女奴隷は熱に浮かれたような表情でユウリの背中を見つめている。
明らかに友情以上の何かを感じるが、王はユウリの申し出に対するメリットデメリットを考えることに忙しくてそれに気付いていなかった。
「うむ、いいだろう。力のなくなったそなたには護衛も必要であろうしな。
スウォルドを奴隷身分より解放しよう」
「ありがとうございます!」
パァッとユウリの表情が輝く。年相応の笑みに王も小さく笑みを浮かべた。
奴隷契約の解除はすぐさま行われた。
スウォルドの首から契約印が消えると、ユウリは嬉しさの余り自分よりも随分大きい彼女の腰に抱きついた。
「……い、いつまでくっついていらっしゃるの!
ここは接見の場よ、早く離れなさいっ!」
突然、微笑ましい光景に待ったをかける人間が現れた。この国の第二王女であり魔王討伐の旅に弓使いとして参加したチェリッシュだ。
チェリッシュは豪華なドレスの裾を掴み真っ赤な顔で二人を睨みつける。スウォルドは青い顔ですぐさま離れるが、ユウリは気にした風もなく自分よりも大きな彼女の手を握っていた。
ユウリの笑みがスウォルドへ向けた心からのものから仮面のような貼り付いたものに変わる。
「申し訳ありません、チェリッシュ王女」
「またそのような他人行儀な言い方を……まあ良いでしょう、お父様!」
チェリッシュは忌々しそうにユウリを睨み、その鋭さのままキッと実父を見やる。
「う、うむ……チェリッシュよ、接見の時には父ではなく王と」
「何か文句が?」
「何でもない」
苛ついたチェリッシュの舌打ちに即座に王は首を振った。
「それで、お父様。ユウリのこれからについてなのですけれど」
一応それなりに段取りを組んだ魔王討伐達成の報告会は一気にぐだぐだになった。
ぐだぐだになったが、それを第二王女へ咎められる人間はいなかった。親である王ですら口を噤んでいるからだ。
「う、うむ……勇者ユウリには生活に不自由しない金銭と地位を与え、王都でのんびりと余生を過ごして貰おうと思ったのだが……」
政治的な利用をするつもりはなかった。勇者が未だ力を持って存在すれば、王に対抗する勢力を生み出す可能性がある。
利益はこれから奪いに行く魔族領の潤沢な鉱物と人的資源だけで充分だった。
それにもし他国と戦となったなら、その時だけ聖剣の封印を解いて勇者として出向いて貰えばいいと思っていた。
「なりません!」
だがそんな王の返答はチェリッシュの気に入るものではなかったらしい。
彼女は叫び、殺気を込めて王を睨み付ける。
「お父様は救国の勇者にただの貴族となれと言うのですか!」
「ま、まずかったか?」
「当たり前です!」
当の勇者本人を無視し、王族親子は会話を続ける。
既に興味を失っていたユウリは見えないようにスウォルドの手をにぎにぎして遊んでいた。
「ユウリには妾付きの侍女長になって貰います。
ええ、もちろん侍女といえど地位はそこらの貴族よりは上です。
そしてユウリには異世界の知識を用いてこの国の内政に携わって貰うのです!」
薄い胸を大きくそらしチェリッシュは宣言した。彼女の脳内ではメイド服のユウリに自分の奉仕をさせている映像が絶賛放映されている。
「チェリッシュ第二王女よ、その提案は頂けないな」
「チェリッシュが言うならそれでいいか」と言いかけた王の口を長身の女性が止める。
チェリッシュと同じくユウリの旅に同行したこの国一番の賢者であるケインが長い黒髪をかきあげて、普段は表情のないその顔に珍しく不敵な笑みを浮かべている。
「ユウリには私の助手となって貰うぞ。
こいつの持つ知識は私の魔具製作に新鮮な刺激を与えてくれる。
もちろん、この国の利益にもなることだろう」
ケインは助手となったユウリとの隠遁生活を想像し、だらしなく弛みそうになる頬を片手で隠した。
「何を……!」とチェリッシュが怒鳴り終える前に、これまた旅の同行者である聖女マリアが凶悪なほど大きな胸を揺らして立ち上がった。
「あらあらあら、チェリッシュ様もケイン様も勝手なことばかり仰るのですねぇ。
いけませんよぉ、そんなわけのわからないことを仰っていると最高神アウター様のお怒りに触れてしまいますよぉ?」
マリアはおっとりと首を傾げながら優しそうな垂れ目に殺意を秘めて王女と賢者へ微笑みかける。
マリアは両手で上気した頬を包み、とろけそうなほど熱のこもった瞳でユウリを見つめた。現代のオタクから恍惚のヤンデレポーズと言われるその仕草は、彼女の纏う清廉な巫女服でも隠しきれない狂喜を滲ませている。
「ユウリ様はこれから神殿兵になるのです。
いつの世も勇者の隣にあるのは聖女、つまりわたくしなのですよ。
うふふ、これこそがアウター様のお望み……」
うっとりと語るマリアに「何をバカなことを!」とチェリッシュとケインは食ってかかる。女三人の言い争いは止まらない。
他の仲間、旅の途中に出会った盗賊と商人はひざまずいたまま黙っている。いや、勇者を置き去りに争う三人に冷めた目を向けていた。
「さて、帰ろうか」
きゃあきゃあと女三人が姦しく騒ぐ中、ぽつりと小さな声が発される。
普通ならばかき消されるほどのそれは、しかし発した人物が渦中のユウリであっただけにその場にいる全員の動きを止めるには充分な力を持っていた。
その場にいる全員の視線が一気にユウリへと注がれる。
だがユウリは全く気にせずに「シフ、マチ、おいで」と旅の途中から仲間にした盗賊と商人を呼び寄せる。
シフと呼ばれた元盗賊の女は灰に近い鈍い銀の髪を揺らし音もなくユウリへ近付く。マチと呼ばれた猫獣人も「はいなー」と軽い言葉と共にユウリの傍へ向かった。
「もうアタシの用事は済んだんでお暇させて頂きますね。
ま、あとは侵略でも戦争でも好きにやってください」
皆が唖然とする中、ユウリは気だるげな様子で一方的に告げる。
今までの腰が低い殊勝な態度とは百八十度変わってしまった不遜な態度に王達だけでなく旅の仲間であったチェリッシュ達も呆然としている。
「ユ、ユウリ! 何を仰ってますの?
帰るだなんて、一体どこに……
元の世界には帰れないのですよ!」
衝撃からいち早く復活したのはチェリッシュだった。今までの物腰柔らかな態度から変わってしまったユウリに戸惑いながら喚く。
彼女をユウリは何の感情もこもらない瞳で見つめた。
「ええ、存じてますよ。アンタらが魔王を倒せば地球に帰してやるだなんて虫のいいことを言っときながらそんなこと出来やしないってのはね。
ああ、まあいいんですよ。帰ろうと思えば自力で帰れますし、今は可愛いこの娘達がいますしね」
ユウリは艶然と微笑み、スウォルドに背中を預けシフとマチの手に指を絡める。
その姿はこの国の王よりも王らしかった。
「もう新天地のアテはあるんで。
アタシは愛しいスウォルドの忌々しい奴隷契約を消せて、『サタンバスター』とかいうクソダサい名前の聖剣を封印出来たから用事は終わりです。
もうここに用はありません」
その時、戸惑いと混乱から立ち直ったチェリッシュ、ケイン、マリアが叫んだ。
「五大精霊王の一撃!」
「虚空の断罪!」
「神の鉄槌!」
チェリッシュの放った精霊の加護を用いた五色の砲撃が、ケインの唱えた超重力空間を形成する呪文が、マリアの祈りによる神の手のような捕縛の光が、ユウリを含む四人へ向かう。
余りにも鮮やかな攻撃に王はおろかこの国有数の精鋭である騎士団長も魔導師長も反応が出来なかった。
先程までユウリを取り合っていた者達とは思えない激しい攻撃。愛しさ余って殺意百倍?
いいや、それは違った。彼女達は知っていたのだ。
―――自身の持つ最強の攻撃を使わねば、彼女を止められないことに。
「六合」
ユウリは動かない。
動けないのではない、動く必要などはなかったのだ。
たった一言発した言葉によって、この城ごとユウリを破壊しかねなかった攻撃を掻き消してしまった。
聖剣が封印された今、何の力も持っていそうには見えない少女が起こしたことが理解出来ず、王達は阿呆のように口を開けている。
「それじゃ、さようなら……天后」
にこりと笑ってユウリは三人の女と共にその場から消えた。
それがいわゆる瞬間移動と言われる代物であることは、転移魔法が存在しないこの世界の人間には理解出来なかった。
「「「あああ!」」」
硬直から自分を取り戻しざわつく周囲に構わず、勇者から捨てられた女三人は床にくずおれる。
「ああ、ユウリ、愛しいユウリ。これは夢よ、夢だわ。そんな、あの優しかったユウリが妾を捨てるだなんて、あるはずないわ」
「ユウリくんおかしいじゃないか、何故私を置いていくんだい? 賢く愛らしい君を知ってしまった私は、君なしではもう生きていけないんだよ」
「有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ないぃ……勇者様であるユウリさんが聖女のわたくしから離れる? あはっ、あははっ、そんな、そんな……」
女達の悲愴な慟哭。だがそれに応えるべき少女はすでにこの国には存在していなかった。
* * *
やったー!
やった、やってやったよー!
どうも、異世界アウターに召還された女子高生勇者こと安倍遊理です。
アタシは今、王様達とのえっけん? せっけんだっけ? とりあえず王様に魔王サターナから切り取った角とクソ忌々しい聖剣を渡して、可愛い可愛いスウォルドを奴隷契約から解放して帰ってきました!
え、どこにって? それは大きな島型の船の上にあるアタシの家。アタシの能力を使って瞬間移動したのよ。
瞬間移動を使えば、まだこの世界じゃ転移魔法がないから追いつかれることはないでしょ。追跡に使う魔力探知もアタシには効果ないしね。
「ああ、これで自由だ」
思わず声が出る。長かった。本当に長かった。
まだ召還されてから半年くらいしか経ってないけど、もっとずっと時間がかかった気がする。
「あ、もちろんスウォルドもね。もう奴隷じゃないから。自由なんだからね」
アタシは瞬間移動に慣れてなくて少しふらつく三人の中から一番背の高いスウォルドに笑いかける。
元剣闘奴隷だった彼女はポニーテールにしたさらさらの黒髪の先を揺らして、クールビューティな見た目に反したふにゃっとした笑顔を返してくれた。
「はい、スーが自由になれたのはユウリさまのおかげです。ありがとうございます」
「ああもう可愛い!」
アタシはたまらなくてスウォルドの腰に抱きついた。
何この娘、マジで可愛いんですけど。いや、わかってたけどさ。見た目のデキる女な雰囲気をぶち壊すアホの娘な話し方がもう、もう……一人称が自分の愛称とかさぁ……ギャップ萌えって最高です!
「もう一回確認するけど、奴隷紋は消えたよね?」
「はい、でも奴隷じゃなくてもスーはユウリさまのモノです。王国の奴隷だった頃も、今も、スーのご主人様はユウリさまなのです」
首の奴隷紋が消えたのを再確認。その間にもスウォルドは可愛い。全力で可愛い。
でもスウォルド、アタシはご主人様じゃなくて旦那様だから。あ、もちろんスウォルドは嫁ね!
「あー、そろそろいいか?」
「そやそや、イチャイチャするんはあとにしてーな」
盗賊娘のシフがわざとらしく咳払いしてから、ぶっきらぼうに話す。
うさんくさい関西弁の猫耳商人のマチも腰に手を当てて呆れた顔をしていた。
「あ! うん、ごめんね! あとでシフとマチともいっぱいイチャイチャするからね!」
「なっ……そういうことじゃなくてだな!」
「はいはい、言うんはタダやからな」
ふはは、嫁とのイチャイチャに他の嫁が嫉妬しておる。二人とも否定したりおざなりな反応をしているが、その赤い顔はばっちりアタシの目に映っているのだよ!
ああ、もう嫁達が可愛くて今日もご飯がうまい。
……え? こんなに嫁に囲まれる立派な百合女なのに王女達には何でちょっかい出さなかったかって?
出すわけねーだろ、あんなめんどくさい女共。可愛かったりキレイなら良いってわけじゃねーんだよ!
本当に本当に大変だったんだぞ、この半年間! アタシの苦労がわかるのか!
まず第二王女のチェリッシュはあの王様に育てられたのがまるわかりのワガママ女。
勇者とのラブロマンス(笑)を妄想してたのに、こんな平凡地味な女が召還されたからって、まあきつく当たる当たる。パーティ内の和が乱れたら困るから必死に優しく相手してやったけど、何度ナマクラで切りつけようと思ったか。
おまけに奴隷だからってアタシの可愛いスウォルドにも何もしてないのにきつく当たるし、あの女マジ許すまじ。
あと王国一の賢者だとかいうケイン。
どこが賢者だよ、アイツはお勉強しかできない典型的なバカだよ。
大体さぁ、頭が良ければ愛想よくふるまうくらいできるよねぇ? 魔王退治っていう命がけの旅でコミュニケーション取らないことがどれくらいヤバいことかわかってないとかありえなくない?
コイツも和を乱してばっかだったんだよねー。会話のとっかかりを作ろうと何か聞けば「そんなことも分からないのか?」って呆れた顔するし。
うるせー! 無知の知って知らないのかよ! アタシも誰が言ったかは知らないけどさ!
王女もツンデレをはき違えてたけど、コイツもクールビューティをはき違えてたね。無愛想に見下せばクールなんじゃねーんだよ、バーカ!
最後はマリアね。おっぱいに栄養が行きすぎておつむの発育が上手く行かなかった狂信者。
あんなにハイライトの消えたレ○プ目の似合う女が聖女とか。あの国マジで終わってる。
勇者と聖女は共にいるべき、むしろ一心同体とか頭の沸いたこと言ってアタシを所有物扱いは当たり前。おまけにアタシがアイツの中の勇者像と少しでも違ったことをすればヒステリー起こして喚き散らす。
いや、あれはヒステリーなんて生易しいもんじゃなかった。あれは発狂だ。
え? 他の仲間とはどうだったんだって? 勇者第一主義(失笑)のヤツがコミュニティの和なんて考えると思う?
いやー、シフもマチもいなかった始めの癒しはスウォルドだけだったのよ。
スウォルドは奴隷だからってのもあるけど自分より人を立てた対応してくれるし、話しかけるとふにゃふにゃの笑顔を作るのがめちゃくちゃ可愛くてねー。もちろん会話のキャッチボールがまともにできたのもこの娘だけだった。
って言っても三人の前で仲良くしてると罵倒と嘲笑と発狂が待ってるから、アイツらを能力で眠らせたあとにおしゃべりしてただけなんだけどね。それでも充分癒されたよ。
ね、こんな状態だったからアタシがスウォルドを溺愛するのもわかるでしょ?
地球生まれがアタシしかいない独りぼっちの中で、生まれた時から剣闘奴隷なんて強制されて傷だらけで、なのにあんな可愛い笑顔をまだ作れるスウォルドの存在は救いだったのよ。
当然、シフとマチが入ってくれてからはもっと楽だった。二人ともズバズバ言うわりには空気読めるし。
イレギュラーで加わった二人だけど、今ではアタシの立派なお嫁様達です。この島型船(けっしてひょうたん型ではない)での生活を持ちかけたら、喜んで計画に参加してくれたしね。
北海道くらいの大きさがあるこの船にはアタシ達だけじゃなく、シフが養ってたスラムの子供達とかマチの商人仲間とかいろんな人が乗っている。
そう、それこそいろんな人達だ。人間だけじゃなくて獣人やエルフにドワーフなんて亜人なんかもいる。他にもいたりする。
……たとえば、魔人とか。
「あら、おかえりなさい。ユウリちゃん」
「ん、ただいま」
甘ったるい声と一緒に肩甲骨に絶妙な柔らかさを持ったものすごい質量の凶器が押しつけられる。アタシはその幸せ触感を堪能しながら、鎖骨に流れてきた彼女の緩くウェーブのかかった紫の髪を指でいじる。
四人目の嫁の胸は相変わらず巨乳だぜ。
「首尾は上手く行ったみたいですね」
「うん、角ありがとう、サターナ」
振り向いた先には優しく微笑む今代の魔王様。雪花石膏の肌に左側の目元と口元にホクロが一つずつ。そしてメガネ! 白衣! 巨乳! と、カレーと牛丼とカツ丼に鰻重まで混ぜて一つにしたような設定の宝石箱な御方だ。
本当だったらここに綺麗なラベンダー色をした巻き角までついてるって言うんだから、恐ろしい設定過多である。
そう、本来あるべき角はなくなっている。アタシがナマクラで切り落として王国に置いてきたからだ。
あのナマクラが手元にあるとアタシは自由になれない。聖剣『サタンバスター(笑)』には呪いがかかっていたから。
それは『魔王を倒さなければ』って強迫観念に駆られる呪い。剣から下された命令を実行するまでは不安感と焦燥感に途切れることなく襲われて、おまけに悪夢まで見られるっていうSUTEKIな呪いだった。急にぞわっとした恐怖とか感じちゃって、いやー強迫性障害の人ってつらいんだなぁって実感しました。
当然そんな呪い嫌だったから、チートを使って初日の夜に魔王をコロコロしに魔王城へテレポートしたのよ。
あ、魔王ってのは世界で一番の魔力を持つ者って、この世界では決まってるから探知余裕でした。
そんでもって勇者ってのは魔王を超えた力を持つ異世界人って決まってるのね、ここまでオッケー?
それでさくっと済ませようとテレポートで着いた場所は質素な家の前だった。城じゃないじゃんって驚きながら一応ノックして家に入ったら更に驚いたわ。
少しやつれた白衣の美女が真剣な顔で実験器具に囲まれてたんだもん。角しか魔王要素ないからどうしようかと思ったわ。
あ、もちろんサターナも突然の侵入者に驚いてました。
「な、何者でしゅか!」って噛んだの超可愛かった。
そしてここからが最近のラノベに増えてきたテンプレ的な話ね?
サターナ達の住む魔族領は魔力と鉱物資源が多い代わりに作物が育ちにくくて魔物も強いっていう住みにくい土地で、先々代の魔王なんかは確かに人族領まで侵略しに行ったりしたこともあったらしい。
でも何度も侵略に失敗し、どんどん数を減らし飢えていく魔人達を見て先代魔王から考え方が変わったそうな。他人のものを奪うんじゃなくて、今あるものを良くしようとした方が早いんじゃないかって。
そして着手したのが豊富な魔力を使った作物の品種改良。痩せた土地でも育つ強さと飢えをしのぐ栄養価を兼ね備えた作物とそれを効率良く育てるノウハウの構築。
その構想と研究は今代魔王であるサターナにも当然受け継がれた。
やっと民達を飢えから救える目途が立った所で、百年以上没交渉だった人族のヤツらに魔族領の鉱物資源と魔人の戦闘能力を狙われて勇者を送り込まれるってんだから、サターナも運がないよね。
……いや、送り込まれた勇者がアタシだったから運が良いとも言えるのかな?
悪環境とはいえ住み慣れた土地から引き離しちゃったけど、たくさんの作物が育つ肥沃な土地(船だけどね)とアタシ(=チート)という安全が手に入ったんだからねー。
アタシ的にもサターナが魔王だったのは嬉しかったよ。
さっきも言ったけど魔王ってのは魔力量だけで決まるから、どんな性格のヤツが魔王になるかは生まれてくるまでわからないんだけど、サターナはまじめで研究者肌のおっとりさんで設定の塊だからね。胸キュン余裕でした。
何より話が合うのが良かった。魔法談義超面白い。旅をしてからは本当恋しかった。スウォルドと違ってずっと一緒にいられるわけじゃなかったしね。
サターナの為なら人類を敵にしても良かったんだけど、そこは忌々しい屑鉄が許してくれない。
つかあの剣装備すると魔力に対抗する神気をまとえる代わりにアタシのチート能力低下してたんだけど、マジなんなのアレ。アタシの足しか引っ張りやがらねぇ。
そんなナマクラを手放すためには目的を遂げる必要があった。つまり魔王であるサターナを倒すってこと。
もちろんそんなことできないししたくなかった。サターナに会うたび鳥肌が立つほどの不安と焦燥に追い立てられながら、ユウリさんは必死に助けるための抜け道を探しました。
そして見つけました。というか、直接ここの主神であるアウターちゃん(金髪ロリ)に聞きました。
簡単だった。角を切り離せば良かった。
サターナの莫大な魔力は角に蓄えられてるらしくて、魔王と認識されるのは大きい魔力のせいだから、原因である魔力(を蓄えているもの)さえなくなれば魔王がいなくなった(=サターナが魔王でなくなった)と認識されるらしい。
簡単ではあった。でも嫁(当時は嫁予定)の体を傷つけるなんて血を吐くほど嫌だった。
実際罪悪感で胃液は吐いた。
うん、まあやらないとアタシの呪いも解けないしサターナも狙われたままだし、報償でスウォルドも自由にしてあげられないからやったけどね。
今も角のないサターナを見ると胃がシクシク痛む。
「……そんな顔をしないでください。わたしはユウリちゃんがわたしの角で自由になれたことが嬉しいんですよ?」
アタシの顔を見てサターナが苦笑しながら髪をなでてくる。サターナを見つめて物思いにふけるアタシはひどい顔をしてたんだろう。
サターナはそんな風に言ってくれるけどさ、今は髪の毛に隠れちゃってるけどさ、結構切断面グロいまんまなんだよね。
聖剣の持つ神気とやらは魔力を持つものには火傷のような症状を与えるらしいから、角のあった場所はケロイドになってしまっているのよ。
アレ作ったの王国のヤツららしいけどどうやって作ったんだよ……。
「でもね、アタシはサターナが傷ついたままなのは嫌だよ……もちろん、スウォルドもシフもマチもね」
サターナだけじゃなくて、スウォルド、シフ、マチと順番に見ていく。
奴隷剣士だったスウォルドはもちろん、子供達のために危ない橋を渡ってばっかだったシフや被差別民の獣人であるマチの体にも傷は多い。
「四人に約束したよね。
聖剣の呪いを解いて力を解放できたら、アタシのお嫁さんになってって。
アタシね、独占欲も征服欲も所有欲も相当強いんだ。
大好きなみんなの体にね、アタシ以外のモノが残ってるのが許せないのよ」
たとえ傷ついた事実は消えないとしても、目に見える傷跡なんてなきゃないに越したことないはず。
これからこの島で暮らしていけば生きるのに精一杯なんてことはなくなる。心に余裕ができれば、傷跡を見て悲しくなる機会は増えてしまうだろう。
地球の整形技術だって元は傷を消すための技術なんだしね。後顧の憂いは早めに取っとくべきだと思うのよ。
ただの欺瞞でしかないけどね。
……はい、そこー。今アタシがいいセリフ言ったんだから「サターナの傷はお前のせいだろ」とか言わないー。
さっきも言った通り事実は消えませんよ。忘れるつもりもない。
もう二度と傷つけないために、傷つけたんだからね。
これからはどんなものからも傷なんかつけさせないよ。
「今から、傷を消すね」
伺いではなく、これは宣言。アタシは一方的に告げ、右手を四人へ伸ばす。
召還されてからちょこちょこ使っていたアタシの能力を今、初めて百パーセント解放する。
「十二の方位に象られし陽の鬼神よ。
平安からの契りによりて汝の式を今再び与えよう。
我は闇を晴らし、真理を明らかとする者。
その名の呼びかけに応えよ。
十二天将が天一、上神・貴人、顕現!」
あべゆうりは おれの かんがえた さいきょうの しょうかん じゅもんを となえた!
はずかしさに あなが あったら はいりたい!
おへその下がぞわぞわするのは断じてアタシの中の厨学二年生が暴れているからではない。
丹田に封印されていた霊力が解放されているからなのだ。
っていうかこれ考えたのアタシじゃないですーこのセリフ言わないと出てこないって彼らが言ったんですー。
彼らってのはあれだ。
今アタシの目の前に顕れた金色の五芒星から出てきた彼、貴人を主神に据えた集団。
平安時代の有名人。オタクなら誰もが一度は憧れる陰陽師界のトップスター、安倍晴明。
その彼が操った最も有名な式神、十二天将だ。
何でアタシが十二天将を操れるのか。
そんなのは簡単な話だ。
それはアタシが安倍晴明の生まれ変わりだから、らしい。
……じ、自分で言ってるわけじゃねーし!
アタシもう高校二年生だし? 中学二年生なんてずいぶん昔の話だし?
いや、本当の話、アタシ自身も「はぁ?」だったわけよ。
王国に召還される直前、謎の真っ白な空間でアウターちゃんからそう言われたときはね。
え? 今ですか? もちろん信じてますよ! テレポートだの魔法無効化だのいきなり使えたんだしね!
それに現に今、目の前に貴人出てきたしね!
ただまあ、出てきたのはナース服を着たそこそこ体格の良いお兄さんなんですけども!
これでも男の娘って言うのかな?
『なっ……主様ぁ! なんで私だけこんな格好なんですか!』
「いやー貴人ちゃんって言ったらやっぱり【優しい・回復・女性らしい】じゃない? やっぱり白衣の天使かなぁって。
うんうん、ナース服はミニが一番よね」
『いやぁ! 私は男だって言ってるじゃないですかぁ!』
必死にミニスカの裾を引っ張って伸ばそうとする姿が萌えよのぉ。
性格・能力・容姿共に前世からの引き継ぎだけど服装だけはこっちで指定できて良かったわ。
それはいいとして、貴人ちゃん、アナタの女の子っぽい話し方も問題があると思うのよ。動きも女形の人みたいだし。
『うぅ……勾陳はかっこいい鎧だし、大裳なんかババアなのに文官の格好で冠と帯までしっかりつけてるのに……』
がっくりうなだれながら貴人ちゃんはぼやく。
どうでもいいが、もっさん(大裳)に絶対ババアとか言うなよ? ぶちコロコロされちゃうぞ?
でも「BBA結婚してくれ!」はセウトなんだよな。女の人ってデリケートデスネ。
「うん、まあ、貴人ちゃんのプライドとかゴミ箱に捨てといて。
アタシのマイスイートハニー達の傷を治しちゃくれませんかね?」
『はぁ、本当にもう……貴女は前世から式神扱いが酷いんですから……』
なーんて貴人ちゃんはため息を吐いてるけどその表情は笑っている。
まあね、式神にお願いなんて普通はしないしね。
貴人ちゃんは四人の愛しい嫁達に目を向ける。
そして四人に負けないくらい綺麗な顔で微笑んだ。
『では主様の奥方予定の皆様方、お覚悟はよろしいでしょうか』
え、ちょ、なにその命取る的な言い方。
つか、アタシがやれって言ったの! 確認取らなくていいの!
それに予定じゃないの! もう嫁決定なの!
って、アタシはぷんすかしたけどスウォルド達は貴人ちゃんの言葉に何か思うことがあったみたいで、一度お互い目を合わせたあと、こくんと頷いた。
「はい。スーは今までもこれからもずっと一生ユウリさまのモノなのです」
「あー、子供達も世話になってるしな……ユウの気持ちに応えないわけにはいかないさ」
「くふふ、ユウリはんみたいな優良物件、商売人のウチが逃すはずないやろー」
「ユウリちゃんにはわたしの命だけじゃなくて魔人達の命まで救って貰ってますからね……いえ、こんなの言い訳ですね、わたしがユウリちゃんと一緒にいたいんです」
スウォルド、シフ、マチ、サターナと順番に話したあと、四人は声をそろえて言った。
―――安倍遊理のお嫁さんになりたいです、と。
……ああ……
夢にまで見たアタシのお嫁さん。
ずっと欲しかった、家族。
……しかも地球じゃ絶対無理ゲーな、タイプの違う美女に美少女のハーレム結婚エンド。
「ありがとう異世界! 我が生涯にいっぺんのヘブゥッ!」
『はい、それじゃあ奥方様方の傷を消しましょうね……あ、主様。そこ邪魔です』
ラ○ウのポーズしようとしたら、思いっ切り自分の式神に吹っ飛ばされた件について。
うん、次回はもっと際どいコスプレで召還してやろう。
四人の傷は貴人ちゃんの能力『転創』で一瞬で消えた。
サターナの角も無事に生えてきた。
ただ角に補充したのがアタシの霊力だったからか、ラベンダー色じゃなくて、深いワインレッドの巻き角になってたけど。
これはこれで似合うからいいか。
それが終わったら、家のリビングでまったりお茶です。
あ、お茶はメイドコスプレ(クラシックタイプ)させた貴人ちゃんにいれてもらいました。
アタシは薄型テレビに似た魔具に映る船の進行状況をチェックしながら、嫁四人を侍らせてさくさくと残りの天将達を顕現させる。
久しぶりの再会を喜び(式神達との記憶は異世界召還時に思い出した)、早速お仕事してもらう。
天空や騰蛇はかなりごねたけど、そういう言うこと聞かない悪い子とは別室でじっくりOHANASHIして納得してもらった。
あと「こんなに顕現遅いとか主さんマジムカ着火ファイアっしょー!」とチャラチャラした朱雀には問答無用で腹パンしといた。
前世のアタシ、なんでこんなウザい朱雀(略してウザク)にしちゃったのかな。
「ユウ、これからどうするんだ?」
「ふぇ?」
アタシの右側に寄り添うシフに突然聞かれて、つい変な声が出る。
あ、痛、痛い。腰を抱いてた手を褐色の太股に伸ばしたら思い切りつねられた。
そんなムチムチしてるのがいけないと思います。
「そやそや、これからどないするん? ずっと『島船』を動かして漂流しとるつもりなん?」
左側、拳一つ隙間を空けたところに座るマチにも聞かれる。
ちなみにアタシの左手は彼女のオレンジ色のしっぽに巻き付かれてます。
うへへ、すべすべ気持ちいいです。
「あー……んとねー、自分の都合になっちゃうけどしっぽを取り返しにいかなきゃならないんだよね」
「尻尾ですか? ユウリちゃんは獣人じゃないですよね?」
アタシの背中にしなだれかかるサターナの不思議そうな声。
相変わらず背中のチートが気持ちいい。
「うん、生粋の人間。
でも前世が狐の神獣と人間のハーフだったのよ」
首を傾げる三人にアタシは説明をする。
あ、ちなみにスウォルドはアタシのお腹に抱きついて話を聞いていません。
本当にアホの娘可愛い。
「アウターちゃんから聞いたんだけど、アタシの前世……セイメイって言うんだけど……セイメイもこっちの世界に召還されたことがあるらしいの。
その時は魔王じゃなくて魔神復活だったらしくて人じゃなくてアウターちゃんに召還されたらしいのよ。
まあ、さっくりとOSHIOKIしたらしいからそれはいいんだけど」
三人は驚いてるけど、ここが本題じゃないのだ。
「よくないですよ」とサターナは言うけど、聞こえなーい。
「で、魔神を改心させたご褒美に自分の飼いきれなくなった式神やら住む場所がなくなった妖怪―――こっちでいう魔物ね? が住めるような場所をもらったんだって。
その時にセイメイの持ってた九つのしっぽを魔具に変えて、みんなの生活に役立つように置いてたんだって」
この『ノア』も魔具の一つなんだと。
全然しっぽに見えないんだけどねぇ。
「だけどあんまりにも便利すぎるからかな。
最近そのしっぽの取り合いで妖怪達の国で戦争が起こってるらしいのよ。
このままじゃアウターが壊れるかもってんで、取り返しに行くことになったってわけ」
召還前にアウターちゃんと色々お話したのはこのため。
神様一同に土下座で迎えられたのはいい思い出です。
「ん……ユウリさま、そのヨーカイさん達の島はどこにあるんですか?」
寝起きみたいなとろんとした顔でスウォルドが聞いた。
あ、スウォルド話聞いてたんだ。
「世界の裏側よ」
アタシが答えるとテレビの画面に突如異変が起きる。
どこまでも広がっていた海は消え、黒い闇が広がっているのだ。
アタシは動揺するシフから右手を離し、マイク型の魔具を召還する。あー、テステス。
よし、感度良好。アタシは島内放送を流した。
『あーノアに在住の皆さん。
一応島の代表をさせて貰っているユウリ アベです。
今からこの島っていうか船は、お盆型をしているアウターの裏側へと向かいます。
アタシの一存で決定してしまったのは申し訳ないですが、今まで通りの生活をして頂く以外のことはあなた方に求めません。
あなた方の安全と生活は勇者のアタシが保障します。
三十分もしたら、転移が始まるでしょう。
怖いでしょうけど腹くくってついてきてください』
一方的な宣言と共にマイクを切る。
島民の安全誘導は念話で式神達に頼んでいる。
あとは黒に染まり始めたテレビ画面を見つめるしかない。
ああ、胃がシクシクする。
勝手に決めて島のみんな怒るかなぁ。
「だいじょうぶですよ、ユウリさま」
アタシのお腹に顔を押しつけたまま、スウォルドが言った。
「そうだ、ここの奴らはお前に命を救われたものばかりだぞ。
たとえ口約束といえど安全を保障するお前の決断に従いこそすれ、反発するものはいないさ」
「そやそや、むしろ世界の裏側なんて市場開拓やん。商人としては嬉しい話やわ」
シフに腰を抱かれ、マチがアタシにもたれる。
「それに、何があろうともわたし達四人はあなたの味方ですよ。
夫を支えるのが妻の役目でしょう?」
サターナにゆっくり頭をなでられ、少しずつ不安が溶けていく。
……うん、そうだね。
嫁四人とのハーレム新婚生活のためにも、島民とのほのぼのNAISEIのためにも、突っ走らなきゃね。
「それじゃあ、さっくりしっぽを取り返しに行きますか!」
安倍遊理のアタシTUEEE生活はまだ始まったばかりだ!
ここまで読んでくださりありがとうございました。