第6話 閑話
カイトさんが調べて分かったことを話すってこと
少年に愛する少女を殺すことを強要する世界、始祖シュエルはどうしてこんな世界を作ったのだろう。
『創力』とは、どの様なモノでも創像さえ出来れば作りだせる力。この力は神の様な人にはすぎし力である。そんなにもすごい力に何も対価はないのだろうか。ただ体力が奪われる位で釣り合うのか。そんなことはない。では、人は対価をどのように支払っているのであろうか・・・
対価とは、『創力』を使ったときに発生する目に見えないエネルギーの事で通称“負のエネルギー”という。人はそれを少しずつ世界に生み出していく。世界にとってそれは害悪である一定の量を超え、時期が来ると世界が異変を起こす。ある時は大噴火だったり、大嵐だったり。負のエネルギーを浄化しない限りそれは収まらず生物はやがて死ぬ。
負のエネルギーとは、人から生み出される。それは地上から空へと上がり一つの星に集まる。その星はかつてこの世界を作ったとされる、始祖シュエルの4人の仲間の一人だといわれている。その星が負のエネルギーを集めておける期間は500年。つまり500年たつと異変が起こる。
500年たつと世界から1人ずつの少年少女が選ばれる。少年は世界から才能を一つ与えられる。少女は負のエネルギーを背負わされるのだ。少年は少女を殺す運命を、少女は世界の害悪になる定めを。負のエネルギーを浄化する方法はただ一つ、少年が少女を殺すことだけ。そんなことが500年ごとに行われてきた。
『契約』とは、そもそもこれは契約というものでは本来ない。これは本来、犠牲になる少年少女を見つけ出すためのものである。運命の相手は自然と引き合う。故に少年少女は必ず出会う。お互いの運命と定めを知らずに。それを知った何代目かの少年少女はプレッシュを生け贄と記して死んでいった。エルフ族はそれを知らずに『契約』を世界に広めたのである。皮肉なものだ、こんなにも『契約』をしたいという者達がいて誰一人犠牲に代わりになってくれないのだから。そもそも代わる事など出来はしまい。
犠牲とは、まずなぜこのような事実が世間に出まわる事が無かったのか。要因のひとつに500年周期だったということか。500年という時間は人々から記憶を忘れさせるには十分すぎる。そしてもう一つ。少年は少女を殺すし、『創力』を使うか見るかすると、世界から情報が流れてくる。それは世界の真実、自分が『創力』を使うと少女の犠牲はなんだったのかと嘆き、『創力』を見ると人に絶望しどちらも死を選んでしまう。なんともまぁ効率のいいシステムである。絶対に事実が残らないのだから。
これが俺が約500年かけて調べ上げた世界の真実の一端である。
当時はまだアルに会う前の事だ。