第2話 あと少しで鼻血が出る所だったよbyアル
ロリコンも度が過ぎると怒られるということで第2話です
あの後、アルは学院内を案内してもらっている。
リアはずっと扉の前で待っていた。
「お兄ちゃん。ここが学食です」
「あぁ、分かったよ。次は1-Eの教室なんだけど」
アルは自分が担当する教室を聞く。
ちなみに場所を覚えているのはカイトさんであったりする。
「もしかしてそこがお兄ちゃんの担当ですか!」
「そうだよ」
リアと合流した時からずっと手を繋いでいる。
移動しても移動しても人に会うことが無く少し疑問に思っていたカイトだったが特に問題ないかと考える事をやめていた。
アルはその事に全く気が付いていない。
「そこ私のクラスなんです。良かったです、お兄ちゃんといられる時間が増えて」
(へぇ、1年生でもう生徒会長なんだ。・・・あれ?今は春だから入学して2週間で決まったことになるの?この学校はどうなってるのかな)
「(アル、学校ではなく学園だ。それに生徒会長なんていつ決めてもそう変わらない。それより、『創力』は俺が言う事を君が教える、でいいんだな)」
(よろしく)
「(君も覚えておけ。いいな)」
(だが断る!)
「(ハァー)」
覚えておくだけで役に立つ事を全く覚えようとしないアルにかなり呆れているカイトさん。
頑張れ苦労人カイトさん。
「ここが1―Eです。さぁ、入りましょう」
アルはリアに手を引かれ教室に入った。
その光景は正に兄妹の姿そのものだった。
(リアちゃん可愛いよね。これが妹萌えってやつかな。ねぇ、カイトさん)
「(・・・・・・)」
カイトは無視を決め込んだ。
「あれ?誰もいない」
教室に入ったアルの第一声がそれだった。
もう授業が始まっていてもおかしくない時間にもかかわらず、この教室には誰もいなかった。
そもそも、なぜアルが時間割を知っているかというと、当然ヘレンに教えてもらったからなのだが。
「当然ですよ、お兄ちゃん。ここに入れるのは今日これから行われる試験をクリアした1年生だけなんですから。・・・それにしてもお兄ちゃん」
「何かな、リアちゃん」
「確かお兄ちゃんは『創力』を使えなかったはずです。いつどこでその力を手に入れたんですか」
そう聞かれたアルは焦った、『創力』について知っていることなんてたかが知れているし、かといってカイトさんのことを話すわけにもいかない。
そこで、そんなアルを見かねたカイトが話をうまく変えるためにこう言った。
「(アル、君の妹は優秀だ。試験もなしにこの教室に来たのだろう。とりあえず、始祖シュエルのご加護を受けたというんだ。優秀だからこそこれで信じてもらえるはずだ)」
アルは言われるがまま言った。
「始祖シュエル様のご加護だよ。それにしてもすごいねリアちゃん。さっきの話からすると試験なしでこの教室なんでしょ?」
「はい。頑張りましたから。ずっと、お兄ちゃんに教えてあげたかったんです」
何とか話を変えさせたカイト。
そして褒められて本当にうれしそうに笑うリア。
笑うリアを見て思わず頭をさすってあげたアル。
(俺、何にも覚えていないんだけど。なんだろうこの気持ち。リアちゃんの事は命をかけて守りたい。この笑顔を守ってあげたいって思うな)
「(守りたいこの笑顔、という奴だろう。その気持ちを忘れなければ君はどんな状況であれ頑張れるさ。・・・しかしこんな話をしていると不吉はことが起こる伏線のようだな)」
「そんな伏線いらないよ」
何処か寂しそうに言ったカイトだったがすぐにいつも通りになり、アルもあまり気に留めなかった。
「???何か言いましたかお兄ちゃん」
「ううん、なんでもないよ。リアちゃんの髪の毛は落ち着くと思っただけ」
「私もお兄ちゃんの手が落ち着きます」
その後、アルは5分くらい頭をなで続けた。
「それじゃあ、次いこっか」
そして、アルとリアは学園の隅々まで見て回った。
手を離したときリアは少し残念そうにしていたがアルは気が付かなかった。
気付いていたら興奮状態になっていただろう、まさに心がデストロイ!
妹に興奮する兄の姿がそこに有った、落ち着けアル。
アルとリアが学園をまわっていたちょうどそのころ。
学園内にある会場に全生徒が集められていた。
「これから、第一回選抜試験を始める。試験官はこの私ヘレンが務める。結果は明日の早朝に各自の部屋の伝書箱に送られる」
本当ならばもう少し後に行われるはずだったのだが、今日行われることになった。
リアがアルを探しに行ったのが一週間前になる。
この広い空の下で特定の人間一人を探し出すなんてことは最低でも一カ月はかかるはずだとヘレンは考えていた。
それが実際には驚くほど速く、たったの五日で見つけ出してしまったのだ。
さすが生徒会長、仕事が早いである。
それを聞いたヘレンは大急ぎでこの試験を始めたのだ。
その時にヘレンが思ったことはアル専用レーダーでも付いているのではないかと。
アル・キリヤ。
今から約8年前、記憶を無くしてしまった少年。
当時11歳の普通の少年。
自分が知っている兄が変わらずにいるとは思っていなくとも、変りきった兄を実際にその眼で見るのはつらいだろう。
また、突然に妹と言われ相当に混乱しているのはアル本人だ。
あの兄妹がどういうふうに関係を築いていくか分からないがそれを見守ってやるのが正しい事だろう。
いやな仕事をさせてしまったなという罪悪感。
カイトが『創力』で作った資料に書いてあったことを思い出しヘレンは罪悪感を覚える。
しかしヘレンは思考で判断が鈍るようにはなっていない。
それはそれ、これはこれと割り切って考える。
それに今までも幾千幾万のモノ達をさんざん利用してきたのだ。
何を怖がっている。
何を不安がっている。
これくらいの事はあの時に覚悟していただろう。
当に戻れない所まで来ているんだ。
「試験内容は・・・・・・・
(待っていろ、私の可愛い妹ティヒア。すぐにカイトと助けてあげるから)
「リアちゃん。可愛いよね。別れるときに笑いながら「7時ごろに迎えに来ます。またあとでね」だって。危なかった。あと少しで鼻血が出る所だったよ」
今、アルは用意された自分の部屋でカイトと話している。
「(・・・・・・)」
ちなみにカイトは無視を決め込んでいる。
「ねぇカイトさん。なんでさっきから黙ってるの」
今の発言から分かる通り最初の方はちゃんと話していた。が、さすがに2時間も同じ話をされては参ってしまう。
妹自慢も度が過ぎると困るものだ。
カイトさんは我慢強いが、誰しも我慢の限界というものがある。
ちなみにアルはバカである。
「おーい、カイトさん」
「(・・・・・・)」
「居候~」
「(・・・・・・(怒))」
「ロリコンカイト~」
「(・・・・・・ふぅ)」
ぶつり、と何かが切れたような音が聞こえた。
「―――――――――っ!!!」
次の瞬間、アルが頭を抑えてベットに倒れる。
あぁ、とても痛そうだ、額から汗が溢れ出てきた。
「痛い痛い痛い痛い痛い!ちょカイトさん!?やめてマジ痛い。痛いって!いくら俺がさっきリアちゃんに踏んで欲しいとか思ってたからってこれは痛すぎ!やーーーーー!!」
失礼、アルは変態である。
「君はもう少し抑えることが出来ないのか!!同じことを何度も何度も。それを聞くこちらの身にもなってみろ」
「わ、分かったからやめて!これ以上痛みを作らないでーーー」
それにしてもはたから見れば1人でしゃべっているおかしな人である。
『創力』を使ったカイトが作っているのは『全身複雑骨折した時の痛み』である。
普通の女性がこれを作った場合、やられた者は死ぬだろうがそこはさすがカイトさん何の危険もないのだ。
さすがは最高の『創力』使い 災厄のカイトである。
カイトには一切の痛みは無い。普段はリンクしている感覚を切っているからだ。
これをするとつなげ直すのに苦労するから滅多なことにはしないのだが。
ちなみにどのくらい苦労するかというと三日間休み無しで走らされる位、しかも全力で。
カイトさん昔それをやり遂げたらしい。もちろん何も使わずに。
化け物染みている、カイトさんマジパナい!
それはそうとアルがかなり大きな声で叫んでいるのに誰も気づかないのは防音設備がしっかりしているからであって決していじめとかではない。
丁度いいので(何が丁度いいのか分からないが)この部屋について説明しておこう。
まずは配置からだ、この学園は大きく分けて5つのエリアに分かれている。
ここは生徒や教師が主に暮らす寮のような所、通称「白い鳥」
学食は別のエリアにある。
教師は一階、生徒は2階から8階まで。
9階から15階は日用品などのお店がある。
生徒の部屋は3人一部屋で分かれている。
教師は1人一部屋である。
アルとカイトの部屋は玄関から入って右側5番目の部屋105号室だ。
目の前には階段、左斜め前には教師用のエレベーター、右斜め前には・・・・何か作るらしい。
審議中という看板が堂々と立っている。
部屋の特徴といえば広いの一言だ。
次にキッチンが無い。風呂とトイレ、洗面所はある。
ベットは最初からあり、聞いて驚け!部屋代がなんとタダなのだ。
大丈夫かこの学園、金なくなってつぶれないの?ホント。
さらに驚くべきことに給料前払いでベットの上にお金が置いてあったのだ、しかもかなりの額。
お!先ほどのお仕置きが終わったようだ、説明はここまでにしよう。
「カイトさん、ごめんなさい」
「(もういい、こちらもやり過ぎた。だが、体の調子は悪くないだろう)」
「うん、逆に良すぎるくらいだね」
「(さっきついでに『痛みを堪えて体を良くする方法』を試してみた。効果はあったようだな)」
「そんなことまでしてたんだ。通りで痛いはずだ」
複雑骨折については何も知らないアル。
知らない方がいいのかもしれない。
トラウマにならないようにカイトさんが調節しているだけ幸せなアル。
その後7時まで2人とも睡眠をとる事にした。
「(おっと、一応寝過ごすことが無いように人形を作っておこう。形状は・・・風ゴーレムでいいか)」
パチン!
カイトが指を鳴らしたらそこには風を纏った小さな亀がいた。
ごーれむ?
アルは記憶障害だった!?
今ではかなり明るいですが当時は・・・・・・やっぱり変態でスタ。
始祖シュエル~この世界を作った偉い人。ぶっちゃけ神様
最高の『創力』使い~あくまで最高、最強ではない。
災厄のカイト~500年前のことです。ある意味黒歴史
カイトさんはどんな人生を歩んできたのか。
想像を絶する苦労をしてきたのだろう。
カイトさんは頑張った
それでは今回はこの辺で、また逢う日まで